HubSpot活用ガイド|BtoBでの使い方・運用設計の全体像

HubSpot活用ガイド|BtoBでの使い方・運用設計の全体像

HubSpotを契約すれば成果が出る、とは限りません。高機能なBtoBマーケティングプラットフォームだからこそ、「契約したものの何から使えばいいかわからない」「機能が多すぎて全体像がつかめない」と手が止まる担当者もいます。自社の目的に沿って使う機能を選び、目的設計からデータ整備、獲得、育成、計測の順に運用へ乗せたときに、商談数や受注につながります。

機能の一覧から使うものを選ぼうとすると、使わない機能の設定にまで時間を取られて手が止まります。導入支援の現場で運用が軌道に乗る会社は、目的設計、データ整備、獲得、育成、計測を1段ずつ運用へ乗せ、前の段が回ってから次の機能を開いています。料金プランを選ぶのも、自社運用か外注かを決めるのも、いまどの段にいるかが分かってからで間に合います。

契約した直後の担当者と導入を検討中の意思決定者では立場が違いますが、どちらにとっても手がかりになるのは、自社がいま目的設計・データ整備・獲得・育成・計測のどの段にいるかです。その段が分かれば、開く機能も、料金プランも、自社運用か外注かも、順に絞り込めます。

HubSpotとは何か|BtoBで何ができるツールなのか

HubSpotとは、マーケティング・営業・カスタマーサービスを一つの顧客データ基盤の上で統合的に動かすためのプラットフォームです。HubSpotを入れる価値は、どの部門も同じ顧客データを見て動ける状態をつくれることにあります。

HubSpotは、リード獲得・育成、商談管理、顧客対応といったBtoBの一連の業務を、分断させずに一つの基盤で扱えるように設計されています。従来は、マーケティングはMAツール、営業はSFA、サポートは別システムというように部門ごとにツールが分かれ、その間でデータが連携されないという問題が起きがちでした。HubSpotはこの分断を解消し、同じ顧客レコードをマーケと営業が共有しながら活動できる点に最大の特徴があります。

もう一つの特徴は「インバウンド」という思想です。広告で一方的に売り込むのではなく、有益なコンテンツで見込み顧客に見つけてもらい、関係を育てながら商談につなげるという考え方を、製品設計そのものに落とし込んでいます。BtoBのように検討期間が長く、関係構築が成果を左右する領域と相性が良いのはこのためです。

HubSpotを構成する6つの製品とSmart CRM

HubSpotは、役割の異なる6つの業務別製品(Hub)と、それらの土台となる顧客データ基盤「Smart CRM」、AI機能群「Breeze」で構成されています。図1は各製品の役割です。

HubSpotの製品構成 Breeze(全体を支えるAI機能群) Marketing Hub リード獲得・育成(MA) Sales Hub 商談・パイプライン管理 Service Hub 顧客サポート・CS Content Hub サイト・CMS・SEO Data Hub データ連携・自動化 Commerce Hub 見積・請求・決済 Smart CRM 全部門の顧客データを統合する記録基盤 ※すべてのHubは同じSmart CRM上の顧客データを共有して動く
図1:HubSpotの製品構成。土台のSmart CRMが全顧客データを統合し、その上で各Hubが連動する。部門ごとにツールが分かれていた状態を、一つのデータ基盤に集約できる点が構造上の強み。

BtoBマーケティングで中心になるのは、リード獲得・育成を担うMarketing Hubと、商談管理を担うSales Hubです。営業が商談をスプレッドシートで管理しているなら、Sales Hubの使い方に沿って、商談ステージの定義から移していきます。なお、かつての「CMS Hub」は現在Content Hub、「Operations Hub」はData Hubに名称が変わっています。図1のCommerce Hubにあたる見積・請求・決済の領域は、2026年6月に発表されたRevenue Hubが扱っています。製品の構成と名称は変わることがあるため、契約前にHubSpotの公式製品ページで確認してください(2026年9月時点)。

HubSpotでBtoBの成果を出すための全体像|運用ロードマップ

HubSpotで成果を出すには、全機能を一度に使おうとせず、「目的設計→基盤整備→獲得→育成→計測改善」の順で段階的に運用へ乗せます。入口は機能ではなく、自社の業務プロセスです。

HubSpotを使いこなせない企業の多くは、機能の多さに引きずられて「とりあえず触ってみる」進め方をしてしまいます。しかし高機能なプラットフォームほど、目的とプロセスの設計が先にないと、どの機能から手をつければよいかがわからず初期設定で止まります。たとえば契約直後の担当者が最初の1週間でワークフローの画面を開いているなら、フェーズ1の「何の数値を改善するか」が決まっていない可能性があります。BtoBで成果を出すには、次の5つのフェーズを順番に踏みます。

BtoBで成果を出す運用ロードマップ 1 目的・KPIを定義する 何の数値を改善するかを先に言語化 2 初期設定とデータ基盤を整える プロパティ・パイプライン・計測の土台 3 リード獲得の導線をつくる フォーム・LP・トラッキングを接続 4 ナーチャリングを自動化する スコアリング・ワークフローで育成 5 計測して改善を回す レポート・アトリビューションで検証 フェーズ1〜2を飛ばすと、3以降がすべて機能しなくなる
図2:HubSpot運用の5段階ロードマップ。上流の目的設計とデータ基盤を固めてから、獲得・育成・計測へ進む。機能単位ではなくフェーズ単位で運用を組み立てるのが定着の条件。

5段階のロードマップは、HubSpotに限らずMAやCRMの導入全般に当てはまります。HubSpot以外のツールと比べながら導入を進める場合も、MA導入の進め方に沿って目的の定義から始めれば、同じ順番で進められます。

狙う企業を絞って営業と進める場合は、HubSpotでABMを実装する手順に沿って、ターゲットアカウントとティアの指定から始めます。

HubSpotの使い方|導入から運用までの基本ステップ

HubSpotの使い方は、アカウント登録・初期設定・データ移行という土台づくりから始まり、その後にスコアリングや自動化といった応用機能へ進みます。最初に手をつけるべきは応用機能ではなく、データの信頼性です。

HubSpotは公式サイトから無料でアカウントを発行でき、会社情報の登録やチームメンバーの招待、メール送信ドメインの認証などの初期設定を済ませることから運用が始まります。送信ドメインの認証が済んでいないと、メールが迷惑メールに振り分けられやすくなり、後のナーチャリングの数字がすべて下がります。導入直後にやるべき設定を抜け漏れなく進めたい場合は、HubSpot初期設定チェックリストを手元に置いて作業するのが確実です。

初期設定と同じ時期に、既存の顧客データを整理してから取り込みます。重複や表記ゆれが多いデータをそのまま入れると、セグメントもレポートも機能しなくなります。取り込む前に、データクレンジングの手順で会社名の表記とメールアドレスの重複をそろえておきます。

土台が整ったら、応用機能を段階的に運用へ乗せていきます。どの機能から開くかは、プランと、いま詰まっている段で決めます。

  • ワークフロー(自動化):リード育成やタスク自動化を担う中核機能です。Professional以上のプランで使えます。最初の1本は、資料請求後のお礼メールと営業へのタスク通知のように、ワークフローの設計の中でも手作業が確実に減るものから作ります。
  • リードスコアリング:見込み度合いを点数化して優先順位をつけます。Marketing HubまたはSales HubのProfessional以上が必要です。営業が優先順位を付けられずに困り始めたら、リードスコアリングの設定を入れます。
  • MQL設計:どの状態を「商談化が見込めるリード」とみなすかの定義です。営業とMQLとSQLの定義を合意してから、HubSpotでのMQLの設定に落とし込みます。
  • レポート・ダッシュボード:成果を可視化し改善につなげます。最初はレポートの設計を、週次の会議で見る数字に絞って作ります。
  • アトリビューション分析:どのチャネルが収益に貢献したかを把握します。チャネル間で予算を動かす判断が必要になったら、アトリビューションレポートを設定します。

5つの応用機能を一度にすべて使う必要はありません。図2のロードマップに沿って、自社のフェーズに必要なものから順に運用へ組み込みます。

メール配信を始める段階では、最初の配信の前に購読タイプとマーケティングコンタクトの扱いを決めます。マーケティングメールの配信設定と運用ルールを先に決めておくと、配信停止の問い合わせや契約数の超過を防げます。

名刺管理、Web会議、SFAなどとつなぐ段階に入ったら、HubSpotと外部ツールの連携方法の選び方に沿って、アプリ・データ同期・汎用連携・APIのどれを使うかを決めます。

HubSpotは無料でどこまで使えるのか?|料金プランの考え方

HubSpotには無料プランがあり、コンタクト管理・フォーム・基本的なメール配信などはここで始められます。ワークフローによる自動化やリードスコアリングはProfessional以上が必要なため、「無料でどこまでやり、どのプランに切り替えるか」を先に決めておきます。

HubSpotの料金は、製品(Hub)ごとに Free・Starter・Professional・Enterprise の段階があり、複数製品をまとめて使うためのバンドル(Customer Platform)も用意されています。さらに、ログインして操作するユーザーに必要な「シート」という単位で課金される仕組みが採用されています。プランや価格は改定が多いため、見積もりを取る前に最新の料金を公式サイトで確認してください。

プランを選ぶときの判断軸は次の3つです。

  • まず無料・低価格プランで基本的な運用フローを確立し、必要な機能が明確になってから上位プランへ移行する方が、費用対効果の観点で合理的です。
  • 「ワークフローによる自動化」「リードスコアリング」はProfessional以上で使える機能で、Starterでは使えません。自動化を始めたい時期が決まっているなら、その時期に合わせてProfessionalへの移行を予算に入れます。
  • 誰にどのシートが必要かを整理しないと、想定より費用が膨らみます。契約前に、営業・マーケ・CSのメンバーを「日常的にデータを更新する人」と「レポートを見るだけの人」に分けて人数を数えます。

無料プランと有料プランの違いや切り替えの判断基準は、HubSpotの無料・有料の違いとどちらを選ぶかで具体的に整理しています。

【独自の視点】HubSpotで成果が出ない企業は何が違うのか

HubSpotで成果が出ない原因は、ツールの操作の難しさよりも、目的の曖昧さ・体制の不足・部門間の分断といった組織側の問題に起因することがほとんどです。ツールを変えても組織の課題が残れば、同じ問題が繰り返されます。

支援の現場で見ていると、「HubSpotが使いこなせない」と相談される企業の多くは、ツール固有の問題で行き詰まっているわけではありません。導入目的が組織内で共有されていない、初期設定が不完全なまま運用が始まっている、マーケと営業でデータが分断している——こうしたオペレーション側の課題が根本にあります。

原因を組織側とツール側のどちらに置くかで、次の手が変わります。原因を「ツールが難しい」と誤認すると、「別のツールに乗り換えれば解決する」という誤った結論に向かいやすいからです。最初に問うべきは「どう設定するか」ではなく「誰がどのプロセスのためにこれを使うのか」です。ログインする人が月に数人しかいないなら、使いこなせない原因と解決策で自社の状態に近いパターンを探します。導入の計画段階なら、導入が失敗する理由を契約前のチェック項目として使えます。

組織体制が整っていない会社でも、外部の専門家に設計を任せながら内製化を進める方法があります。運用に使える時間が週に数時間しかないなら、社内リソースが足りないときの対処法から、外部に任せる作業と社内に残す判断を分けます。自社がどの原因に当てはまるか整理したい段階でも、運用設計の観点からご相談いただけます。

自社がどの原因に当てはまるかを確かめるときは、使いこなせない7つの原因を、ログイン状況とレポートの利用状況に照らして1つずつ確認します。

HubSpotは自社運用と外注のどちらが良いのか?

自社運用と外注の選択は二者択一ではなく、「戦略・コンテンツは内製、設定・運用の専門領域は外注」という分業が現実的な解になることが多いです。判断の軸は、社内に習熟した人材を継続的に確保できるかどうかです。

HubSpotは直感的なUIを持つ一方、ワークフロー設計やスコアリング、レポート構築には一定の学習コストがかかります。担当者が一人しかいない状態では、その人の離職で運用が止まるリスクがあり、深く習熟する時間も確保しづらいという構造的な問題があります。とくにマーケ専任がいない、あるいは一人で兼務している企業では、この問題が顕著になります。

体制によって、最初に絞る範囲が変わります。

まず、社内でできる作業と外に出す作業を一覧にして分けてください。判断に迷う場合は、体制設計の段階からご相談ください。

自社運用を選ぶ場合は、社内の運用担当に受けさせるHubSpot認定資格の順番を担当業務から決め、合格した範囲の設定を自社のポータルで再現させます。

HubSpotと他のMA/CRMはどう違うのか|比較の視点

HubSpotは、複数部門のデータを一つの基盤に統合しやすく、中小〜成長企業が扱いやすい設計である点が比較上の強みです。一方で、大規模で複雑な営業プロセスを持つ企業では他ツールが適する場合もあり、選定は自社の規模とプロセスに依存します。

ツール選定でまず整理しておきたいのが、CRMとMAという概念の違いです。営業の商談管理とマーケのリード育成のどちらを先に整えたいかを、CRMとMAの違いに照らして決めてから、製品を比べます。代表的な競合製品と比べるときは、次の観点で見ます。

機能の多さだけでツールを選ぶと、使わない機能に費用を払い続けることになります。比較表を作る前に、自社のフェーズ、運用できる人数、統合したいデータの範囲の3つを書き出してください。

HubSpotの記事を目的別に探す

HubSpotの記事は、選び方・導入・マーケティング機能・営業機能・データと連携・運用体制の6つに分けています。いまの段階に近い見出しから読み始め、必要な機能の記事へ進んでください。

選び方・料金・他ツール比較

契約前の段階なら、プランの差と他のMA・CRMとの比べ方から読みます。マーケティングコンタクトの課金の仕組みは、契約後の費用を左右するので契約前に確認しておきます。

導入・初期設定・移行

契約が決まったら、工程表と初期設定の順番を先に固めます。旧ツールから移す場合は、移行の手順と導入でつまずく条件もあわせて確認します。

マーケティング機能

リードを集める機能(フォーム・LP・チャット・広告・SNS)、育てて営業に渡す機能(メール・ワークフロー・スコアリング・MQL)、施策の成果を束ねる機能(キャンペーン・A/Bテスト・AEO)の順に並べています。

営業機能

取引パイプラインの設計から始め、メール・ミーティング・見積書で営業の記録をHubSpotに残し、売上予測で着地を読む流れです。既存顧客の問い合わせはチケットで扱います。

データ・レポート・連携

プロパティとデータ整備が土台で、その上にレポート・アトリビューション・流入元の分析が乗ります。Salesforceなど他のツールとつなぐ場合は連携の記事から読みます。

運用体制・外注

社内で持つ範囲と外部に頼む範囲を決める記事です。導入済みで使いこなせていない場合の立て直しもここにあります。

まとめ

HubSpotを使いこなせるかどうかは、機能をいくつ覚えたかではなく、目的設計から計測改善までを順番どおりに運用へ乗せたかで決まります。

次にやることは、改善したい数値を1つ決め、その数値に関わるプロパティと既存データの状態を確認することです。自動化が必要になる時期が見えたら、Professionalへの移行と、社内で担う作業・外に出す作業の分担を同時に決めてください。

設定や運用、体制づくりで手が止まっている場合は、Ampelが外部CMOとして、戦略設計からHubSpotの実装まで支援します。

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いまどの段にいるかを確かめ、次に開くHubSpotの機能を絞ります

改善したい数値と契約中のプランをうかがい、目的設計・データ整備・獲得・育成・計測のどの段にいるか、次に使い始める機能と社内に残す作業をお伝えします。Ampelは外部CMOとして、HubSpotの導入と運用をマーケティングと営業の業務に合わせて設計し、構築から定着まで支援しています。

よくある質問(FAQ)

HubSpotは無料プランだけでもBtoBマーケティングに使えますか?
無料プランでも、コンタクト管理・フォーム・基本的なメール配信・ディール管理などは利用できます。ただし、ワークフローによる自動化や高度なレポート、リードスコアリングなどは有料プランが必要です。まず無料プランで基本的な運用フローを確立し、必要な機能が明確になった段階で有料プランへ移行する進め方が、費用対効果の観点で合理的です。
HubSpotを導入してから成果が出るまで、どのくらいかかりますか?
活用範囲によって大きく異なります。実務上の目安として、コンタクト管理・フォーム・メール配信程度であれば1〜2ヶ月で基本運用に乗せられ、ナーチャリングやスコアリングを含む活用で成果を計測できるまでは3〜6ヶ月程度かかります。期間は初期設定の完成度と運用体制の整備の速さで変わります。
HubSpotとSalesforceは併用できますか?
併用は可能です。よくあるのは、商談・顧客管理をSalesforceで、マーケティング活動(リード管理・ナーチャリング・メール配信)をHubSpotで担う分業構成です。HubSpot公式のSalesforce連携は、Marketing Hub・Sales Hubなどいずれかの製品のProfessionalまたはEnterpriseが必要です。どちらを主系にするかは、商談プロセスの複雑さや営業チームの規模によって異なります。連携設定でコンタクト・ディールのデータフローを正確に設計することが前提になります。
HubSpotの設定や運用は外注できますか?
外注は可能です。HubSpotの公認パートナー、MAの設定・運用を専門とするフリーランスのコンサルタント、BtoBマーケティング支援会社などに委託するケースがあります。委託範囲は「初期設定のみ」から「継続的な運用全般」まで選べます。社内で週に何時間をHubSpotに使えるかを先に見積もり、足りない分を委託範囲にしてください。
HubSpotの活用を改善するには、まず何から手をつければよいですか?
最初に取り組むべきは現状のデータ品質の確認です。コンタクトの重複数、必須プロパティの空白率、有効なワークフローの稼働状況などを点検します。データが信頼できない状態のまま施策を進めても、分析と改善のサイクルが機能しません。データ品質の修正を最優先にしたうえで、目的・KPIの再定義に進む順序が現実的です。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。