営業と「今期はこの企業群を狙う」と決めたものの、対象企業の一覧はスプレッドシートにしかなく、HubSpotではターゲット企業からの問い合わせも他の問い合わせと同じ通知で営業に届いている。Marketing HubのProfessionalを契約しているのに、ターゲットアカウントの画面は開いたことがない。
HubSpotでのABMは、会社レコードに「どの企業を、どの優先度で、なぜ狙うか」を入れ、コンタクトに購買での役割を入れるところから始まり、スコア・ワークフロー・広告はその値を読んで動くだけです。値が入っていないまま機能を広げても、ターゲットアカウントの画面は空欄と0件の表示が並ぶだけになります。
営業と狙う企業のリストをすでに合意していて、それをHubSpotに移そうとしている会社なら、どこまで設定するかは、契約中のプランと、狙う企業の数が営業の個別対応で追える範囲に収まるかで判断できます。専用の画面を使わず、会社のプロパティと一覧の絞り込みで足りる段階もあるため、ABMの機能を使わない判断も同じ材料で下せます。
目次
HubSpotのABM機能でできることと、使えるプラン
HubSpotのABM機能は、ターゲットアカウントの画面と、ターゲットアカウント・ティア・購入時の役割の3つの標準プロパティが中心で、Marketing HubかSales HubのProfessional以上で使えます。会社スコア、会社ワークフロー、LinkedIn広告のオーディエンスは、それぞれ別の条件で使えるかが決まります。
HubSpotのABM(アカウントベースドマーケティング)機能とは、狙う企業を会社レコード単位で指定し、その企業に属するコンタクトの役割、営業活動、取引、Webでの行動を1つの画面にまとめて見るための機能群です。ABMを自社でやるべきか、ターゲットの選び方や最初の90日の進め方は、ABMの始め方と、やるべきかの判断軸に沿って先に決めておき、HubSpotにはその決定を入れていきます。
契約前の確認で迷いやすいのは、「ABM」という1つの製品があるわけではなく、機能ごとに必要なプランが異なる点です。公式ヘルプで確認できる条件は次のとおりです。
| 機能 | 必要なプラン | ABMでの使い道 |
|---|---|---|
| ターゲットアカウントの画面、ABMの標準プロパティ(ターゲットアカウント・最適顧客プロファイルティア・購入時の役割) | Marketing HubまたはSales HubのProfessional・Enterprise | 対象企業の指定、ティア分け、購買委員会の確認 |
| ターゲットアカウントの調査タブ(案件創出エージェントによる調査) | Sales HubのProfessional・Enterprise | Tier1企業の事前調査 |
| 未登録の新規企業をターゲットアカウントとして追加 | 上記に加えてクレジットの消費 | CRMにまだない企業の発見 |
| 会社のスコア(エンゲージメント・適合・複合) | Marketing HubまたはSales HubのProfessional・Enterprise | 企業単位の動きの把握 |
| 会社を対象にしたワークフロー | Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Data Hub・Smart CRM・Revenue HubのいずれかのProfessional・Enterprise | 通知、タスク作成、ティアの自動付与 |
| LinkedInの会社セグメントオーディエンス | Marketing HubのStarter・Professional・Enterprise(LinkedIn広告アカウントの接続が前提) | ターゲットアカウントまたはティア単位の広告配信 |
無料ツールとStarterでは、ターゲットアカウントの画面とABMの標準プロパティは使えません。ただし、会社に自作のチェックボックスや選択肢のプロパティを作れば、対象企業の印を付けて会社の一覧を絞り込む運用まではできます。狙う企業が少ないうちはその運用で足り、ABMのためだけにプランを上げる必要はありません。
どの機能も、会社レコードとコンタクトの2か所に入れた値を読んで動きます。設定が進まない会社では、図の下段の機能から手を付けていることがよくあります。会社スコアやLinkedIn広告のオーディエンスを先に作っても、上段の「ターゲットアカウント」とティアが空なら対象企業は0社のままで、中段の購入時の役割が空なら「購入時の役割が入っていないターゲットアカウント」のレポートが全社を表示し続けます。入力の順番は、上段、中段、下段です。
画面を開く前に、ティアの定義と選定理由の置き場所を決める
営業と合意したターゲットリストの各項目を、HubSpotのどのプロパティに入れるかを先に対応づけます。標準プロパティで持てるものは標準を使い、自作するのは選定理由など標準にない項目だけにします。
ターゲットリストの列をそのままプロパティにすると、「担当営業」「ターゲット区分」のように、会社の所有者や標準のティアと同じ意味のプロパティが増えます。同じ意味の値が2か所にあると、営業はどちらを更新すればよいか分からなくなり、ターゲットアカウントの画面とスプレッドシートの社数が合わなくなります。リストの項目ごとに、置き場所を次のように決めます。
| ターゲットリストの項目 | HubSpotでの置き場所 | 入れる人 |
|---|---|---|
| 対象かどうか | 会社の標準プロパティ「ターゲットアカウント」(True/False) | マーケ |
| Tier1〜Tier3 | 会社の標準プロパティ「最適顧客プロファイルティア」 | マーケと営業の合意で決め、マーケが入力 |
| 担当営業 | 会社の所有者(標準) | 営業マネージャー |
| 名寄せの基準 | 会社ドメイン名(標準) | マーケ |
| 選定理由 | 自作の選択肢プロパティ(例:受注企業と同業種、基幹システムの更新時期、既存顧客の関連会社) | マーケ |
| 購買に関わる人と役割 | コンタクトの標準プロパティ「購入時の役割」 | 営業 |
選定理由を自由記述にすると、四半期のリスト見直しで「理由ごとに商談化した社数」を集計できません。受注企業の共通点として営業と合意した条件を選択肢にし、補足は会社のノートに書きます。選択肢の切り方と自作プロパティを増やさない基準は、プロパティの作成基準と棚卸しのルールに合わせます。
ティアの定義も、画面を開く前に文章で決めておきます。「Tier1=営業が1社ずつ提案を設計する企業」「Tier2=業界・課題ごとにまとめて接点を作る企業」のように、ティアごとに誰が何をするかで区切ると、ティアを変える基準が営業と揃います。ティアの条件として使う企業属性は、理想顧客プロファイル(ICP)の設定手順で決めた業種・規模・導入のきっかけから選びます。
ターゲットアカウントに指定できるのは、会社ドメイン名が入っている会社レコードだけです。名刺や展示会リストから作った会社にドメインがないまま残っていると、合意したリストの一部が登録できないため、指定作業の前にドメインの補完と重複の統合を済ませます。
同じ企業が表記ゆれで2つの会社レコードに分かれていると、購買委員会のコンタクトも2つに分かれて表示されます。重複をどこまで統合するかは、リードの名寄せと重複管理の手順で、ターゲット候補の企業から優先して片づけます。
ターゲットアカウントとティアを指定する手順
ターゲットアカウントは「営業」メニューのターゲットアカウントの画面から、既存の会社レコードを選んで指定します。数十社以上なら会社一覧の一括編集かインポートで入れ、ティアは同じ操作で一緒に入れます。
画面での指定は次の順で進めます。
- HubSpotで「営業」>「ターゲットアカウント」に移動します(メニューに見当たらない場合は「その他」から開きます)。
- 「ターゲットアカウントを選択」をクリックし、CRMにある会社から対象企業を選びます。
- 選んだ会社は「ターゲットアカウント」プロパティがTrueになり、管理タブの一覧に表示されます。
- 一覧で各社の「最適顧客プロファイルティア」と会社の所有者を確認し、空欄を埋めます。
合意したリストが数十社を超える場合は、1社ずつ選ぶより、会社の一覧で対象を絞り込んで一括編集するか、会社ドメイン名をキーにしたインポートで「ターゲットアカウント」と「最適顧客プロファイルティア」を同時に更新するほうが、入力漏れを確かめやすくなります。インポートのファイルはスプレッドシートのリストから作れるため、リストとHubSpotの値が一致しているかを突き合わせる作業も兼ねられます。
ターゲットから外すときは、会社レコードの「ターゲットアカウント」をFalseに戻します。四半期の見直しで入れ替えた企業は、外した理由も選定理由と同じプロパティの選択肢(例:「対象外:代理店経由でしか購入しない」)で残しておくと、翌期に同じ企業を候補に戻してしまう事態を防げます。
CRMにまだない企業をターゲットアカウントの画面から探して追加する機能もあります。ただしクレジットを消費するうえ、営業と合意していない企業がリストに混ざる原因にもなります。Tier1とTier2は合意済みの企業だけで始め、新規企業の発見は、既存のリストに入れる企業が足りなくなってから検討すれば間に合います。
ティアの自動付与は、Tier3の候補づけに限る
公式ヘルプには、年間売上高などの条件でティアの値を自動で入れる「定義された条件に基づいて会社プロパティーを更新」というワークフローのテンプレートが紹介されています。ただ、Tier1は営業が「この会社なら提案の筋が立つ」と判断して決めるもので、売上高や従業員数の条件だけでは決まりません。条件による自動付与は、業種と規模が合う企業にTier3の候補を付ける用途に限り、Tier1とTier2への昇格は営業との定例で人が決めます。
購買委員会を「購入時の役割」で記録する
購買に関わる人は、コンタクトの標準プロパティ「購入時の役割」に記録します。入力するのは商談で相手と話した営業で、マーケが役職名から推測して入れる運用にはしません。
「購入時の役割」は、そのコンタクトが購買の過程でどんな役割を担っているかを示すプロパティで、1人に複数の役割を付けられ、同じ役割を複数人に付けることもできます。標準の選択肢には「意思決定者」「予算管理者」「否定的な人」「インフルエンサー」「チャンピオン」などがあり、選択肢は追加できますが、標準の値は削除できません。
役割の選択肢を自社用に増やす前に、営業が商談後に迷わず選べるかを確かめます。「情報システム部門の承認者」のように自社の商談で毎回登場する役割があれば1つ足す程度にとどめ、細かく分けすぎないようにします。選択肢が多いと、営業は選ぶのをやめて空欄のまま残します。
入力のタイミングは、初回商談と、稟議の段取りを聞いた商談の直後が目安です。たとえばTier1の製造業の企業で、初回に会った部長が「最終的には工場長と経理部長が決める」と話した場合、営業は部長を「チャンピオン」、まだ会っていない工場長を「意思決定者」、経理部長を「予算管理者」として、会っていない2人もコンタクトを作って記録します。まだ接点のない意思決定者がHubSpot上で見えるようになり、マーケはその部門向けの資料や招待をTier1の施策として用意できます。
記録した役割は、ターゲットアカウントの詳細画面にある「購買委員会」タブで確認できます。このタブには会社に関連付いたコンタクトと、その会社とのアクティビティーに関わった自社のHubSpotユーザーが並び、購入時の役割で絞り込んだうえで、メールの作成、電話、ミーティングの予約、シーケンスへの登録に進めます。
ターゲットアカウントの画面で見る指標
ターゲットアカウントの画面は、対象企業を一覧で管理する管理タブと、レポートが並ぶ分析タブに分かれています。週次の定例では管理タブで個社を、月次では分析タブで全体の推移を見ます。
分析タブには、公式ヘルプによると次の内容のレポートが並びます。
- ターゲットアカウントでのアクティビティーの合計
- ターゲットアカウントへの営業活動の月別の推移
- ターゲットアカウントの進行中のパイプライン
- ターゲットアカウントの成約・失注した取引
- 業種別のターゲットアカウント
- 購入時の役割が1人も入っていないターゲットアカウント
- 営業担当者別のターゲットアカウントの集計
立ち上げから最初の数か月で見るのは、「購入時の役割が1人も入っていないターゲットアカウント」の件数です。Tier1なのにこの一覧に残っている企業は、接点がないか、接点はあるのに営業が記録していないかのどちらかで、定例ではこの一覧を上から確認し、どちらなのかを担当営業に聞きます。KPIとしての見方(接点のある企業の割合、1社あたりの接点人数、商談化した社数)は、ABMの始め方で合意した指標をそのまま使い、HubSpotのレポートはその値を毎回手で集計しないための手段として使います。
管理タブは、フィルターと表示する列を変えられる会社の一覧です。「Tier1かつ担当営業が自分」で保存しておくと、営業は週次の定例の前に自分の担当企業の直近のアクティビティーと取引を確認できます。個社の詳細画面では、サマリータブで関連するコンタクト・メール・電話・ミーティングの件数を、アクティビティータブで時系列の記録を見ます。
Webサイトを訪問した企業を会社単位で把握する機能もあり、ターゲット企業の社員がフォーム送信前にどのページを見ているかを知る材料になります。ただし訪問企業の特定には仕組み上の限界があるため、ABMの初期は、フォーム送信や商談など記録が確実な接点を先に揃えます。
会社単位のスコアは、ティアとは別の役割で作る
ティアは営業と合意した「狙う優先度」、会社のスコアは「いま動いている度合い」として分けて使います。ティアを入れている会社なら、会社スコアはエンゲージメントのスコアから作り、適合のスコアはティアと重ならない範囲に限ります。
HubSpotのリードスコアリングツール(「マーケティング」>「リードスコアリング」)では、コンタクトだけでなく会社にもエンゲージメント・適合・複合の3種類のスコアを作れます。会社のスコアはMarketing HubまたはSales HubのProfessional以上で作成でき、会社のエンゲージメントのスコアは、関連付いたコンタクトの行動を条件にして加点します。どのコンタクトの行動を含めるかは絞り込めるため、「購入時の役割が入っているコンタクトの行動だけを数える」といった設計もできます。
適合のスコアは業種や従業員数などのプロパティで加点するため、同じ条件でティアを決めている会社では、ティアとほぼ同じ並び順になり、見る数字が1つ増えるだけです。会社スコアを作るなら、次のように役割を分けます。
| 値 | 何を表すか | 変わるタイミング | 使い道 |
|---|---|---|---|
| 最適顧客プロファイルティア | 営業と合意した狙う優先度 | 四半期の見直し時 | 施策の手厚さを決める |
| 会社のエンゲージメントのスコア | 関連コンタクトのWeb閲覧・メール・フォーム送信などの動き | 行動のたびに増え、減衰の設定で下がる | Tier2・Tier3から動き始めた企業を拾う |
| コンタクトのスコア | 個人の関心と属性 | 行動のたび | MQL判定と営業への引き渡し |
会社のエンゲージメントのスコアが使われる場面は、Tier2・Tier3の企業で複数の社員が同時期に料金ページや導入事例を見始めたときです。個人のスコアはどれもMQLの基準に届かなくても、会社で合計すると一定の点数を超えるため、担当営業に確認を依頼するきっかけになります。減衰は1・3・6・12か月から選べるので、検討期間が長い商材では、半年前の閲覧で点数が高いまま残らないよう期間を設定します。配点とグループ上限の決め方、旧HubSpotスコアからの移行は、HubSpotリードスコアリングの設定手順の考え方をそのまま会社のスコアにも当てはめます。
会社を対象にしたワークフローとLinkedIn広告のオーディエンス
ABMでワークフローに任せるのは、ターゲット企業で何かが起きたときに担当営業へ知らせる処理と、ティアに応じて対応を分ける処理です。広告は、LinkedInの会社セグメントオーディエンスでターゲットアカウントかティアを同期します。
会社を対象にしたワークフローは、どのHubのProfessional以上でも作れます。ABMの初期に組むのは、次のようにターゲット企業での出来事を担当営業に届けるものです。
| 目的 | 対象と登録条件 | 主なアクション |
|---|---|---|
| Tier1企業からの問い合わせを即時に知らせる | コンタクト:フォーム送信があり、関連する会社のティアがTier1 | 会社の所有者に社内通知とタスク作成 |
| Tier1企業で新しい人物が登録されたことを知らせる | コンタクト:作成され、関連する会社がターゲットアカウント | 会社の所有者にタスク作成(役割の確認) |
| 動き始めたTier2・Tier3企業を拾う | 会社:エンゲージメントのスコアが基準を超えた | 会社の所有者にタスク作成、定例の確認リストに追加 |
| Tier3の候補を付ける | 会社:業種と従業員数が条件に合い、ティアが空欄 | ティアをTier3に更新 |
ターゲット企業からの問い合わせを通常のMQLと同じ担当者の決め方で割り当てると、会社の担当営業と別の営業が同じ企業に連絡してしまいます。ターゲットアカウントに関連するコンタクトは、ラウンドロビンより前の分岐で会社の所有者に割り当てる順番にし、その分岐の置き方はリードの割り当てルールの作り方に合わせます。トリガーの型、再登録、除外条件の決め方は、HubSpotワークフローの設計手順と同じです。
LinkedIn広告は会社セグメントで同期する
LinkedIn広告のアカウントをHubSpotに接続している場合、「マーケティング」>「広告」で「オーディエンスを作成」から「会社セグメント」を選び、ターゲットアカウントかティアを指定すると、その企業群をLinkedInのオーディエンスとして同期できます。公式ヘルプでは、この会社セグメントのオーディエンスはLinkedInだけが対象で、Marketing HubのStarter以上で作成できると案内されています。Meta広告やGoogle広告で使えるのはコンタクトのセグメントから作るオーディエンスで、会社単位では同期できません。
ターゲットアカウントのオーディエンスは、ティアごとに分けて作ると、Tier2には業界別の導入事例、Tier3には課題別の資料と、広告の内容をティアの施策に合わせられます。LinkedIn広告そのものを出すかどうかは、国内の対象企業の担当者がLinkedInを使っているかに左右されるため、日本市場でLinkedInが向く条件を確かめてから予算を割り当てます。
会社のセグメントもオーディエンスの件数に数えられるため、広告ツールのプラン別のオーディエンスの枠とマッチ率の限界を確認してから、ティアごとに分けるかどうかを決めます。
営業との分担と、アカウントごとの計画をHubSpotに残す範囲
マーケはティア・選定理由・スコア・広告を、営業は購入時の役割・アクティビティー・取引を更新します。アカウントごとの計画は、絞り込みに使う項目だけをHubSpotに持ち、提案の中身は会社のノートか別の文書に残します。
ABMの設定が数か月で止まる会社は、誰がどの値を更新するかを決めないまま始めています。ティアはマーケが入れたが購入時の役割は誰も入れず、分析タブのレポートが空のまま定例で使われなくなる、という流れです。更新の担当は次のように分けます。
| 担当 | 更新する値 | 更新のタイミング |
|---|---|---|
| マーケ | ターゲットアカウント、ティア、選定理由、会社スコアの設計、広告のオーディエンス | 四半期の見直しと、リストの入れ替え時 |
| 営業 | 購入時の役割、商談・電話の記録、取引の作成とステージ | 商談の直後 |
| 営業マネージャー | 会社の所有者、Tier1への昇格の承認 | 週次の定例 |
アカウントごとの計画(その企業で誰に会い、何を提案し、次に何をするか)を、すべてHubSpotのプロパティにすると項目が増え続けます。HubSpotに持つのは、一覧で絞り込みたい項目だけに限ります。たとえば「次のアクションの予定日」を日付プロパティで持てば、管理タブで予定日が過ぎたTier1企業を抽出できますが、提案の筋書きや相手の組織の事情は絞り込みに使わないため、会社のノートに書くか、Tier1の数社分だけ別の文書で管理します。
週次の定例では、管理タブで「Tier1で、次のアクションの予定日が過ぎている企業」「購入時の役割が入っていない企業」の2つの一覧を開き、営業から状況を聞きます。取引が発生した企業は、取引のステージで進み具合を追い、ターゲットアカウントの画面では進行中のパイプラインの合計だけを見ます。営業とマーケの間でリストの価値について意見が合わない場合は、ツールの設定より先に、営業とマーケティングの対立がどこから起きているかを確かめます。
合意したターゲットリストをHubSpotのどのプロパティとワークフローに落とすかで手が止まっている場合は、いまのリストとHubSpotの設定を見たうえで、入れる順番をご相談ください。
ABMの機能を使わないほうがよい段階
狙う企業が営業の個別対応で追える数に収まっている段階と、会社レコードのドメインや所有者が整っていない段階では、ABMの機能を使わず、会社のプロパティと一覧の絞り込みで運用します。
ABMの機能を使う価値が出るのは、対象企業が営業1人の頭の中では追いきれない数になり、Tier2・Tier3の企業の動きを仕組みで拾いたくなってからです。次のどれかに当てはまる間は、専用の画面を設定しても見る人がいません。
- 狙う企業がTier1の十数社だけで、担当営業が各社の状況を把握している
- 営業が1〜2人で、定例で社名を読み上げれば全社の状況を確認できる
- 会社ドメイン名の欠けや重複が多く、ターゲット企業のコンタクトが会社に関連付いていない
- 契約がStarterで、ABMのためだけにProfessionalへ上げる検討をしている
この段階では、会社に「ターゲット」のチェックボックスとティアの選択肢を自作するか、Professionalなら標準の「ターゲットアカウント」と「最適顧客プロファイルティア」だけを入れ、会社の一覧をティアで絞り込んだビューを営業と共有すれば足ります。スコアやワークフローは、Tier2以下の企業が増えて、動き始めた企業を人が見落とすようになってから加えます。プランの差で迷っている場合は、ABM以外の用途も含めてStarterとProfessionalの機能差で判断します。
ターゲットアカウントの画面から未登録の企業を大量に追加すると、営業と合意していない企業がTier未設定のまま一覧に並びます。一覧の件数が増えても、担当営業が決まっていない企業には誰も連絡しないため、追加は合意済みのリストの範囲にとどめます。
HubSpotの機能だけでは社名リストや関心の兆候が足りない場合は、HubSpotの外にあるABMツールの類型と試用で確かめることを確認し、足りない工程に合う類型だけを検討します。
まとめ
HubSpotでABMを実装する順番は、会社レコードへのターゲットとティアの指定、コンタクトへの購入時の役割の記録、画面とレポートの確認、スコア・ワークフロー・広告の追加です。
営業と合意したターゲットリストがあるなら、次にやることは、リストの各項目をHubSpotの標準プロパティと自作の選定理由に対応づけ、会社ドメイン名が欠けている候補企業を補完することです。そのうえでTier1から「ターゲットアカウント」とティアを入れ、営業に購入時の役割を商談の直後に入れてもらい、週次の定例で「購入時の役割が入っていないターゲットアカウント」を確認するところまでを先に動かします。
会社スコア、会社ワークフロー、LinkedIn広告のオーディエンスは、その値が入ってから加えます。狙う企業が営業の個別対応で追える数に収まっている間は、会社のプロパティと一覧の絞り込みだけで運用し、ABMの機能を使わない判断を続けて構いません。
無料相談
営業と決めたターゲットリストを、HubSpotで使える形にします
「対象企業は決めたがHubSpotに入っていない」「ターゲットアカウントの画面が空欄のまま」「会社スコアやワークフローをどこまで作るか決められない」。Ampelは外部CMOとして、いまのターゲットリストと会社データの状態、契約中のプランを確認し、入れるプロパティ、営業との更新の分担、後回しにする機能を担当者の方と一緒に決めます。
よくある質問
- HubSpotのABM機能は無料プランやStarterで使えますか?
- ターゲットアカウントの画面とABMの標準プロパティは、Marketing HubまたはSales HubのProfessional・Enterpriseが必要で、無料ツールとStarterでは使えません。無料ツールとStarterでも、会社に自作のチェックボックスやティアの選択肢を作り、会社の一覧を絞り込む運用はできます。
- ターゲットアカウントに登録できない会社があるのはなぜですか?
- 会社ドメイン名が入っていない会社レコードは、ターゲットアカウントとして選べないためです。名刺や展示会のリストから作った会社はドメインが空のことが多いので、ドメインを補完し、重複している会社を統合してから指定します。
- 最適顧客プロファイルティアはワークフローで自動設定すべきですか?
- 自動設定はTier3の候補づけに限り、Tier1とTier2は営業と合意して人が決めます。年間売上高や業種の条件だけでは、営業が提案の筋を立てられる企業かどうかは判断できないためです。
- 会社のスコアとコンタクトのリードスコアはどちらを使えばよいですか?
- 両方を役割を分けて使います。コンタクトのスコアはMQL判定と営業への引き渡しに、会社のエンゲージメントのスコアは複数の社員が同時期に動き始めたTier2・Tier3の企業を拾う用途に使い、ティアと同じ条件で加点する会社の適合スコアは作らなくても運用できます。
- HubSpotのターゲットアカウントをGoogle広告やMeta広告に同期できますか?
- 会社単位で同期できるのはLinkedIn広告だけです。Google広告とMeta広告では、ターゲットアカウントに関連するコンタクトのセグメントを作り、コンタクトのオーディエンスとして同期します。