ABMツールを契約すれば、狙うべき企業が自動で見つかるとは限りません。「ABMツール」として並ぶ製品には、企業データベース、Webの閲覧から関心を推定するインテントデータ、社名を指定して出す広告、MA・CRMのアカウント管理機能が混ざっていて、補う工程がまったく違います。
ABMツールは製品名から比べるのではなく、追う企業を選ぶ、関心の兆候を知る、接点を作る、記録して測るのどの工程が手作業で止まっているかで類型を決め、その類型の中で製品を比べます。止まっている工程がなければ、今使っているMA・CRMに項目を足すだけで足ります。
営業と追う企業の候補をすでに話し合っていて、ツールを入れるかどうかの判断を任されたなら、検討する類型は、リストの社数と、営業が自分で調べきれていない情報が何かで決まります。どの工程も今の手作業とMA・CRMで回っているなら、新しいツールを入れないという結論も同じ材料から出せます。
目次
ABMツールは補う工程で4つの類型に分かれる
ABMツールとは、狙う企業(アカウント)を単位にして、企業の選定、関心の兆候の把握、接点づくり、成果の記録を助けるツールの総称です。一つの製品がすべてを担うことは少なく、どの工程を補うかで4つの類型に分かれます。
ABMツールとMAツールの違い
MAツールは、フォームに入力した人やメールを受け取った人を、個人のメールアドレス単位で管理します。自社と一度も接点がない企業は、MAの中には存在しません。ABMツールの多くは、接点のない企業の情報まで持ち込み、個人の行動を会社単位に束ねて見せる点がMAと違います。
違いが表に出るのは、営業会議で「リストの30社のうち、何社と話せているか」と聞かれた場面です。MAのリード一覧からは、担当者を会社ごとに集計し直さないと答えられません。会社単位で集計する仕組みがあれば、接点のある社数とない社数がその場で出ます。CRMとMAの役割の分け方から確かめたい場合は、CRMとMAの違いと、どちらを先に入れるかの判断を読んでから比較に進むと、どの類型が既存のツールと重なるかが見えます。
ABMの手法と、ツールが担う範囲
ABMの手法は、追う企業のリストを作る、リストの企業の関心の兆候を見る、広告・メール・営業の個別連絡・少人数のイベントで接点を作る、成果を会社単位で数える、の流れで組み立てます。4つの類型は、この流れの一部分ずつを補います。
Tier1の企業に向けて作る個別の提案資料や、決裁者を招く少人数の会合は、どの類型のツールでも代わりになりません。ツールが減らせるのは、企業を探す手間、関心の兆候に気づくまでの時間、社名単位で広告を出す手間、会社単位で数え直す手間の4つです。
4つの類型の比較表と、類型ごとに分かること・分からないこと
類型ごとの違いは、使うデータの出どころと、自社とまだ接点のない企業まで扱えるかに出ます。単独でABMの全工程をまかなえる類型はありません。
| 類型 | 補う工程 | 使うデータ | 接点のない企業 | 向く状況 | 単独では足りない部分 |
|---|---|---|---|---|---|
| 企業データベース・リスト作成型 | 追う企業を選ぶ、既存データの名寄せ | 提供元が集めた企業情報(業種、規模、拠点、求人、ニュースなど) | 扱える | 社名リストを条件から作りたい、名刺やリードの会社名がそろっていない | 関心の兆候と、接点を作る手段は別に用意する |
| インテントデータ・訪問企業把握型 | 関心の兆候を知る | 自社サイトや外部サイトの閲覧を、IPアドレスなどで企業に結びつけたデータ | 外部サイトの閲覧を使う製品なら扱える | リストの中から、いま動いている企業を先に当たりたい | 閲覧した個人は分からない。会社名に結びつかない訪問がある |
| アカウントベース広告型 | 接点を作る | 広告媒体の会員データと、自社がアップロードする会社リスト | 扱える | 担当者の連絡先がない企業に、社名を指定して広告を出したい | リストが小さいと配信条件を満たさない。商談の記録は別 |
| MA・CRMのABM機能 | 記録して測る(一部は兆候の把握) | 自社の会社・コンタクト・商談の記録 | 基本は自社データの中だけ(外部データを追加できる製品もある) | リストと接点を会社単位で数えたい | 自社にない企業の情報は別に取得する |
企業データベース・リスト作成型は、拠点と名寄せの粒度で差が出る
企業データベース型は、業種・従業員数・所在地・求人の出し方などの条件で企業を絞り込み、社名リストを作る製品です。多くは、CRMに入っている会社名に法人番号や業種を付け足し、表記ゆれをそろえる名寄せの機能も持っています。
選ぶときに差が出るのは、本社だけでなく事業所や子会社を分けて持てるかです。工場単位や支社単位で導入が決まる商材を売っている会社なら、本社の情報しか返ってこないデータベースでは、営業が当たるべき拠点が分かりません。自社のCRMの会社名がそろっていない段階なら、日本語の企業名で名寄せがつまずく箇所を先に確かめておくと、ツールの名寄せ機能に何を任せるかを決めやすくなります。
インテントデータ・訪問企業把握型は、会社名にならない訪問がある前提で使う
このタイプは、自社サイトへの訪問をIPアドレスから企業に結びつけるものと、提供元が持つ外部サイトのネットワークでの閲覧から、特定のテーマを調べている企業を推定するものの2種類に分かれます。どちらも分かるのは会社単位で、誰が見たかまでは分かりません。
在宅勤務やモバイル回線からの閲覧は、会社名として判定されないか、別の場所として表示されることがあります。自社サイトの訪問企業を見る機能は、MAやCRMに含まれている場合が多く、HubSpotで訪問企業を把握する機能と、営業が連絡する条件のように既存ツールで試せるなら、外部のインテントデータを検討するのはその後で間に合います。
アカウントベース広告型は、リストの大きさで使えるかが決まる
社名のリストをアップロードして、その企業に勤める人に広告を出す仕組みです。LinkedIn広告のキャンペーンマネージャーでは、会社リストは最大30万社(20MB)までアップロードでき、広告セットで使うには一致した会員が300以上必要と公式ヘルプに書かれています(2026年9月時点・公式で要確認)。オーディエンスの生成には最大48時間かかることがあります。
Tier1が数十社しかない会社では、リストの企業に勤める会員が300に届かず、配信できない場合があります。広告型が役に立つのは、Tier2・Tier3まで含めて数百社以上の企業に、社名を指定して認知を作りたい段階です。日本でLinkedInを使うかどうかは、LinkedIn広告を出すべきかの判断で、狙う業種の担当者がLinkedInを使っているかを先に見ます。
MA・CRMのABM機能は、新しい企業を探すより数え方をそろえるのに使う
MA・CRMのABM機能は、会社レコードにターゲットかどうかとTierを持たせ、会社単位で接点や商談を集計するものです。HubSpotのターゲットアカウントの画面は、Marketing HubまたはSales HubのProfessional以上で使えると公式ヘルプに書かれています(2026年9月時点・公式で要確認)。画面上の設定手順はHubSpotでターゲットアカウントとティアを指定する手順に沿って進められます。
専用の画面がないプランや製品でも、会社レコードに「Tier」「選定理由」の項目を作れば、会社単位で数えることはできます。自社のデータの中で数え方をそろえる工程は、多くの会社で今あるMA・CRMで足ります。
公式サイトで機能と試し方を確認できた製品(2026年9月時点)
公式サイトで機能、料金の公開状況、試し方を確認できた製品は次の6つです。どれも類型の具体例で、順位や優劣を示すものではありません。契約条件は変わるため、検討時に公式サイトで確かめてください。
| 製品 | 類型 | 公式サイトで確認できた主な機能 | 料金の公開状況 | 公式サイトで案内されている試し方 |
|---|---|---|---|---|
| Musubu | 企業データベース・リスト作成型 | 企業検索、求人・ニュースなどからのニーズ検索、企業ランク、ターゲット企業のTier付けとダッシュボード(ABM機能)、名寄せ・企業情報の付与 | 公開。6か月プランは月額200,000円、12か月プランは月額160,000円(税別、初期費用なし)。Salesforce連携は月額50,000円(税別)の追加オプション | 30日間の無料トライアル |
| SalesNow | 企業データベース・リスト作成型 | 1,600万件超の法人・組織データの検索、営業リスト作成、企業データの自動付与・名寄せ、Salesforce・HubSpot・kintoneとの連携 | 個別見積もり。初期費用と月額(年間契約)で構成 | 5日間の無料トライアル |
| ユーソナー | 企業データベース型(名寄せ、インテントデータによる属性付与も持つ) | 1250万拠点の法人データベースLBC、名寄せ・クレンジング、Web行動履歴由来のインテントデータによる属性付与、オウンドメディアへのアクセス企業の把握、Salesforce・HubSpot・Marketo・kintoneなどとの連携 | 公式サイトに料金の掲載なし(資料請求・デモで案内) | オンラインデモの申込み |
| Sales Marker | インテントデータ型 | インテントデータ、企業・部署・人物データ、インテントシグナル、パーソナライズメッセージ、自動アプローチ、名寄せ、Salesforce連携 | スタンダード・プロフェッショナル・エンタープライズの3プラン。料金はデモで案内 | 無料デモ |
| HubSpot(Marketing Hub・Sales Hub) | MA・CRMのABM機能 | ターゲットアカウントの画面と会社単位のレポート(Professional以上)。外部サイトの閲覧から企業を推定するリサーチインテント(Starter以上で会社をCRMに追加でき、新しい企業の追加にはクレジットが必要) | プランごとに公式サイトに掲載 | 無料ツールあり(ターゲットアカウントの画面は対象外) |
| LinkedIn広告 | アカウントベース広告型 | 会社リスト(最大30万社・20MB)をアップロードして配信対象にする。広告セットで使うには一致した会員300以上が必要 | 広告の出稿費用として支払う | 自社の広告アカウントで設定 |
料金を公式サイトに載せている製品は少なく、多くは初期費用と年間契約の月額を個別に見積もる形です。企業データベース型では、月額とは別に、CSVでの出力や企業情報の付与を件数で数える仕組みを持つ製品があります。Musubuは、出力と付与を1件ごとにクレジットで数え、6か月プランで120,000クレジット、12か月プランで240,000クレジットが含まれると公式サイトに書かれています。既存のCRMのデータに企業情報を一括で付与する予定なら、月額だけでなく、付与したい件数が含まれる範囲に収まるかで比べます。
無料トライアルの期間は製品ごとに違い、5日間の製品もあります。試用を申し込む前に、自社の既存顧客とTier1候補の社名リストを用意しておかないと、画面を触るだけで期間が終わります。
自社の状況別に、どの類型から検討するか
検討する類型は、追う企業のリストがどこまでできているかと、営業がいまどの工程で手を止めているかで決まります。止まっていない工程のツールは、まだ要りません。
| 自社の状況 | 先に検討する類型 | まだ検討しなくてよい類型 |
|---|---|---|
| 追う企業の条件がまだ文になっていない | どの類型でもなく、条件を決める作業 | すべて |
| 条件は決まったが、当てはまる企業の社名リストがない | 企業データベース・リスト作成型 | インテントデータ型、広告型 |
| 社名リストはあるが、既存のリードや名刺と会社単位で突き合わせられない | MA・CRMでの名寄せ、または企業データベース型の名寄せ機能 | 広告型 |
| リストの企業がサイトに来ているか分からない | MA・CRMの訪問企業の機能。足りなければインテントデータ型 | 広告型 |
| リストの企業の担当者に接点がなく、営業が電話や手紙で当たる | 部署・人物情報を持つ企業データベース型、インテントデータ型 | 広告型(Tier1だけなら) |
| Tier2・Tier3が数百社以上あり、社名を知ってもらうところから始める | アカウントベース広告型 | 人物情報まで持つデータベース |
| 対象が数十社で、営業が各社の状況を把握している | 新しいツールは不要。MA・CRMに項目を足す | すべて |
たとえば、営業3名で製造業向けの設備保守サービスを売っていて、受注企業の条件は「従業員300名以上で、国内に工場を複数持つ会社」と決まっているとします。この会社で止まっているのは社名リストを作る工程なので、先に比べるのは拠点単位で工場を持てる企業データベースです。インテントデータや広告は、リストができて営業が当たり始め、次に「どこから当たるか」で迷うようになってから検討します。
逆に、SaaSを売っていて問い合わせの多くが自社サイト経由の会社なら、リストの企業がサイトに来ているかを知るだけで、営業の連絡の順番を決められます。この場合、今のMA・CRMの訪問企業の機能を先に使い、会社名に結びつかない訪問が多すぎて判断できないと分かってから、外部のインテントデータを比べます。営業が電話や手紙で新規の企業に当たる体制を作るかどうか自体を決めていないなら、アウトバウンドをやるべきかの判断とリスト設計を先に済ませます。
今のMA・CRMで足りる条件と、足りなくなる兆候
追う企業の社数を営業が一覧で見渡せ、選定の材料が自社の受注データと営業の知識で足りるなら、今のMA・CRMに項目を足すだけで始められます。ABMツールの検討は、手作業が追いつかなくなった工程が見えてからで間に合います。
今のMA・CRMで足りる条件
次の条件がすべて当てはまるなら、新しいツールを契約しなくても、ABMの運用は始められます。
- 追う企業の社名リストを、自社の受注・失注の記録と営業の知識から作れる
- 会社レコードに「Tier」「選定理由」「担当営業」の項目を足し、既存のリードとWebサイトのドメインで紐づけられる
- 関心の兆候は、自社サイトの訪問、資料請求、セミナーへの参加で足りる
- 接点づくりは、メール、営業の個別連絡、少人数のイベントで足りる
- リストの社数、接点のある社数、商談になった社数を会社単位で数えるレポートを作れる
HubSpotを使っている会社では、Starterから上位プランに上げるか、外部のツールを足すかで迷う場面があります。比べる材料は、ターゲットアカウントの専用画面と会社単位のレポートがなければ運用が止まるのか、会社レコードの項目とリストだけで足りるのかです。項目だけで足りるなら、プランも外部ツールも変えずに始められます。
既存のMA・CRMで始めると、どの工程で手作業が追いつかなくなるかが運用の中で分かります。ツールの比較は、その工程が分かってから始めたほうが、類型を一度で選べます。
足りなくなったと判断する兆候
足りなくなったと判断できるのは、次のような場面が繰り返し起きたときです。営業が毎週、リストの企業のニュースや求人を手で調べる時間を取られている。同じ会社が表記違いで複数の会社レコードに分かれ、接点のある社数が正しく数えられない。リストの企業の担当者に一人も接点がなく、営業が電話をかける相手の部署さえ分からない。どの場面が起きているかで、比べる類型が決まります。
営業にとっては、ツールが増えるより、見る画面が一つで済むほうが動きやすくなります。新しいツールを入れる場合も、ツールの画面で完結させず、判断に使う情報をCRMの会社レコードに戻す前提で選びます。
導入前に、ターゲット企業の定義と営業との分担を決める
ABMツールは、入れた条件に合う企業と兆候を返すだけです。条件の文と、ツールが出した情報を誰がいつ受け取って動くかが決まっていないと、契約しても画面を見る人がいなくなります。
ターゲット企業の定義を、ツールの検索条件に置き換えられる形で書く
「成長している中堅企業」のような定義は、企業データベースの検索条件になりません。業種、従業員数、拠点の数、求人を出している職種、使っている製品など、データベースの項目で表せる条件に書き換えます。「海外拠点の立ち上げを検討している」のようにデータベースの項目で表せない条件は、営業のヒアリングで確かめる項目として分けておきます。
除外する条件も同じ形で書きます。既存顧客、競合、代理店経由でしか買わない業種などを外す条件がないと、ツールが返すリストに営業が当たらない企業が混ざり、最初の週で信頼を失います。条件の元になる理想の顧客像がまだ固まっていないなら、ICPを受注データから実務で使える形にする手順から始めます。
ツールが出す情報の受け手と、動く条件を営業と決める
インテントデータや訪問企業の通知は、受け取る人と、受け取ったあとに何をするかが決まっていないと読まれなくなります。導入前に営業と決めるのは、どの兆候を誰に通知するか、通知を受けたら何営業日以内に何をするか、週に何件までなら対応できるか、の3点です。
対象企業そのものやTierごとの施策について営業と合意できていない段階なら、ツールの話はいったん止めて、営業と社名レベルで追う企業を確定させる進め方で合意を取るところから始めます。マーケティングと営業の間で、リードの渡し方をめぐる対立がすでに起きているなら、営業とマーケティングの対立が起きる理由と、どこから直すかを先に確かめます。
データの正をCRMに置き、ツールから戻す項目を絞る
企業データベース型をCRMと連携すると、業種や従業員数などの項目がツール側の値で上書きされることがあります。営業が手で直した値が消えると、営業はCRMの情報を信用しなくなります。連携を設定する前に、ツールから受け取る項目、CRMの値を優先する項目、どちらも持たない項目を一覧にして決めます。
試用とデモで確かめること
試用では画面の見やすさより、自社の既存顧客と追う企業のリストを入れて、何社が正しく返ってくるかを数えます。数えられる結果が出れば、製品同士を同じ条件で比べられます。
| 確かめること | やり方 | 対象の類型 |
|---|---|---|
| 自社の顧客が収録されているか | 受注済みの顧客とTier1候補の社名リストを入れ、一致した社数と、別の会社に誤って結びついた社数を数える | 企業データベース型 |
| 拠点・グループの粒度 | 事業所や子会社の単位で導入が決まった取引先を数社選び、拠点が分かれて表示されるかを見る | 企業データベース型 |
| 情報の新しさ | 最近、社名変更や移転があった取引先がどう表示されるかを見る | 企業データベース型 |
| 兆候の出方 | 試用期間中に、Tier1の企業のうち何社に兆候が出たか、営業がそれを見て連絡する理由になったかを確かめる | インテントデータ・訪問企業型 |
| 誤った判定 | 自社、取引先、競合からの閲覧がどう表示されるかを見る | インテントデータ・訪問企業型 |
| 配信できる規模 | 会社リストを入れて一致した会員数が、媒体の配信条件を満たすかを見る | アカウントベース広告型 |
| CRMとの連携 | 連携でどの項目が上書きされるか、重複した会社レコードが増えないかを、テスト用の範囲で確かめる | すべて |
| 出力と付与の上限 | CSVの出力件数や付与の件数が、どの単位で数えられ、月額に何件含まれるかを確かめる | 企業データベース型 |
受注済みの顧客を使う理由は、答えが分かっている企業で精度を確かめられるからです。たとえば既存顧客を数十社入れて、半分近くが別の会社や本社以外の拠点に結びつくなら、そのデータベースで作る新規リストにも同じ程度のずれがあると見込めます。インテントデータ型は、試用期間が短いと兆候が出る企業が少なく、判断できないことがあります。デモの段階で、自社のTier1候補を渡して過去の兆候を見せてもらえるかを聞いておきます。
契約前に確かめること
契約書で確かめるのは、最低契約期間、利用者の数え方、解約後に付与済みのデータや出力したリストを使い続けられるか、の3点です。提供元の事情でサービスが終わることもあります。たとえば、旧FORCASの流れをくむ「スピーダ 顧客企業分析」「スピーダ 顧客企業データハブ」は、2027年3月31日で提供を終了すると2026年8月の公式のお知らせで告知されています。付与したデータがCRMに残る形で使えるなら、ツールを替えても手元の資産は失われません。
解約後に付与済みのデータや出力したリストをどこまで使えるかは、製品ごとの利用規約と契約書で決まります。CRMの会社レコードに付与した業種や従業員数を解約後も使えるかは、申込前に条文で確かめてください。
部署や人物の情報を持つ製品を使う場合は、その情報をどこまでCRMに取り込み、誰が閲覧できるかを、社内の個人情報の取り扱いの規程と照らして法務に確認しておきます。
ABMツールを入れないほうがよい場合
追う企業の条件が決まっていない、営業がリストの企業に動けない、対象が営業の頭に入る社数に収まる、のいずれかに当てはまるなら、ツールを入れても使われません。先に運用を作ります。
追う企業の条件が決まっていない会社がデータベースを契約すると、条件を変えながら何度もリストを出し直し、営業に渡るリストは毎月違うものになります。営業は同じ企業を追い続けられず、ABMの前提である「決めた企業に時間をかける」状態になりません。
営業が問い合わせへの対応で手一杯の会社も、ツールの前に体制を見直します。インテントデータで「いま動いている企業」が分かっても、連絡する人がいなければ、兆候は一覧に溜まっていくだけです。
対象が数十社で、営業が各社の担当者や状況を把握しているなら、ツールが返す情報の多くは営業がすでに知っていることです。その規模なら、CRMの会社レコードとスプレッドシートで管理し、社数が増えて手作業が追いつかなくなってから比較を始めます。
ツールの年額が、リストの企業から見込める受注の粗利を上回る場合も、入れない判断になります。1社あたりの取引額が小さい商材なら、ABMより多くの企業に広く届ける施策のほうが合います。自社の状況でどの類型から検討するか迷う場合は、追う企業のリストと今のMA・CRMの設定を見ながら、ツールが要るかを判断する相談も受け付けています。
まとめ
ABMツールは、追う企業を選ぶ、関心の兆候を知る、接点を作る、記録して測るのどの工程で手作業が止まっているかで類型を決め、その類型の中で製品を比べます。
企業データベース型は社名リストと名寄せ、インテントデータ・訪問企業把握型は関心の兆候、アカウントベース広告型は社名を指定した広告、MA・CRMのABM機能は会社単位の記録と集計を補います。どの工程も今の手作業とMA・CRMで回っているなら、新しいツールは要りません。
次にやることは、追う企業の条件を、データベースの項目で表せる文に書き直すことと、既存顧客の社名リストを用意することです。この2つがあれば、試用期間に何社が正しく返ってくるかを数えられ、どの製品でも同じ条件で比べられます。条件がまだ文にならないなら、ツールの比較はその後に回します。
ABMツール選定の相談
追う企業のリストと今のMA・CRMを見て、ABMツールが要るかと検討する類型を決めます
「比較サイトの製品がどれも同じに見える」「営業と追う企業は決めたが、どの工程にツールが要るのか分からない」「デモを受けたが、試用で何を確かめればよいか決められない」。Ampelは外部CMOとして、ターゲット企業の条件、営業の体制、今のMA・CRMの設定を伺い、ツールを入れるかどうかの判断、類型と候補製品の絞り込み、試用で数える項目の設計までを担当者の方と一緒に決めます。
よくある質問
- ABMツールとは何ですか?
- ABMツールとは、狙う企業を単位にして、企業の選定、関心の兆候の把握、接点づくり、成果の記録を助けるツールの総称です。実際には、企業データベース・リスト作成型、インテントデータ・訪問企業把握型、アカウントベース広告型、MA・CRMのABM機能の4類型に分かれ、補う工程が違います。
- ABMツールとMAツールの違いは何ですか?
- MAツールは、フォームに入力した人などを個人のメールアドレス単位で管理し、自社と接点のない企業の情報は持ちません。ABMツールの多くは、接点のない企業の情報まで持ち込み、個人の行動を会社単位に束ねて見せます。MAツールにもターゲット企業を会社単位で管理する機能を持つ製品があり、その範囲で足りる会社も多くあります。
- 無料で使えるABMツールはありますか?
- 専用のABMツールは有料契約が中心で、公式サイトで無料トライアルやデモを案内している製品があります(2026年9月時点で、Musubuは30日間、SalesNowは5日間の無料トライアル)。HubSpotの無料ツールでも会社レコードに項目を作ってTierを管理できますが、ターゲットアカウントの専用画面はProfessional以上のプランです。
- ABMツールの料金はどのくらいかかりますか?
- 料金を公開している製品は少なく、多くは初期費用と年間契約の月額を個別に見積もります。公開している例では、Musubuが6か月プランで月額200,000円、12か月プランで月額160,000円(税別、2026年9月時点)です。見積もりを比べるときは、月額に加えて、利用者の数え方、出力や企業情報の付与の件数の上限、CRM連携のオプション費用を並べます。
- ABMの手法にはどんなものがあり、ツールは何を担いますか?
- ABMの手法は、追う企業のリスト作成、関心の兆候の把握、広告・メール・営業の個別連絡・少人数イベントでの接点づくり、会社単位の計測の流れで組み立てます。ツールが担うのは、企業を探す、兆候に気づく、社名を指定して広告を出す、会社単位で数える作業で、選定理由の合意や個別の提案は人が担います。