サイトの問い合わせは月に数件なのに、アクセス解析を見ると毎日それなりの訪問がある。料金ページを何度も見ている会社があるなら、フォームを送ってくる前に知りたい。
HubSpotには訪問企業を知る機能がありますが、どれもIPアドレスから会社を推定する仕組みで、見えるのは「どの会社のネットワークから来たか」までです。訪問企業の機能は営業の連絡先リストを増やす道具ではなく、すでに狙っている会社や接点のある相手に、いつ何を送るかを決める材料として使う機能です。誰がその画面を見て、どの条件で連絡するかを決めないまま営業に渡すと、閲覧を理由にした電話が増え、相手に警戒されて終わります。
HubSpotのトラッキングコードはすでに入っていて、問い合わせ前の動きを営業に活かしたいと考えている会社なら、使うかどうかは、自社の見込み客が会社のネットワークからサイトを見ているかと、訪問を見て動く担当者とルールを置けるかで判断できます。訪問の多くが回線事業者として表示される業種や、動く人がいない体制では、使わないほうが営業の時間を守れる場合もあります。
目次
フォーム送信前の訪問から会社を知る機能は3つある
HubSpotで匿名の訪問から会社を知る機能は、全プランで使える「ウェブサイト訪問ツール」、条件に合う訪問企業を絞り込んでCRMに追加できる「購入者の興味関心(バイヤーインテント)」、既存のコンタクトや会社の再訪問を知らせる「リード再訪問通知」の3つです。最初に決めるのは、名前の分からない会社を見つけたいのか、すでに接点のある相手の動きを知りたいのかです。
HubSpotの訪問企業の機能とは、サイトに設置したトラッキングコードが取得したIPアドレスを、HubSpotが持つ企業のIPアドレスのデータと照合し、訪問を会社単位で表示する機能のことです。個人の名前や連絡先が分かるわけではありません。個人まで分かるのは、フォームの送信やメールのクリックなどで、すでにコンタクトとして登録されている人の訪問だけです。
検索すると「Breeze Intelligence」の機能として紹介している記事も出てきますが、現在の公式ヘルプ(日本語)での機能名は「購入者の興味関心」で、英語版では「Buyer intent」です。社内で話すときは、管理画面に表示される現在の名前に揃えておくと、ヘルプを検索するときに迷いません。
3つの機能の違いを、公式ヘルプで確認できた範囲で次の表にまとめます。
| 機能 | 分かること | 使えるプラン | クレジット | 向く使い方 |
|---|---|---|---|---|
| ウェブサイト訪問ツール | 訪問した会社名、所在地、訪問数など | すべての製品とプラン | ヘルプに記載なし | 自社サイトにどんな会社が来ているかの傾向を見る |
| 購入者の興味関心(訪問者) | 設定した高意向ページの条件を満たした会社、訪問数、ユニーク訪問者数、最終訪問、よく見られたページ | 各製品のStarter・Professional・Enterprise(Revenue HubはProfessional以上) | 1ビューで20社を超える表示、会社の追加と追跡で必要 | 狙う会社の条件に合う訪問企業を絞り込み、CRMに入れる |
| 購入者の興味関心(リサーチ) | 自社サイトの外で、選んだトピックを調べている会社 | 同上 | 会社の追加で必要 | まだ自社サイトに来ていない会社の検討の兆しを見る |
| リード再訪問通知 | 既存のコンタクト・会社がサイトに戻ってきたこと | すべての製品とプラン(メール通知はMarketing Hub Professional以上) | ヘルプに記載なし | 担当者が自分の見込み客の再訪問を知る |
表のうち、名前の分からない会社を見つける用途は上の3行で、すでに接点のある相手を追う用途はリード再訪問通知です。営業が「知らない会社が料金ページを見ている」ことを知りたいのか、「先月資料を送ったあの会社が戻ってきた」ことを知りたいのかで、使う画面が変わります。後者のほうが連絡の根拠がはっきりしていて、営業の時間を使う価値が高いことが多いため、導入の順番としては再訪問通知から始めても構いません。
IPアドレスで会社を推定する仕組みと、会社名にならない訪問
訪問企業の機能は、会社が自前で持つIPアドレスから来た訪問しか会社名にできません。回線事業者やモバイル回線を経由した訪問は会社を特定できず、VPNや在宅勤務では別の会社や場所として表示されることもあるため、表示された会社名は「推定」として扱います。
公式ヘルプによると、トラッキングコードはページビューごとにIPアドレスを検出し、HubSpotが保有する企業のIPアドレスのデータと照合して、その会社の公開情報を表示します。照合の結果は大きく3通りに分かれます。
ウェブサイト訪問ツールには、初期状態で「インターネットサービスプロバイダー」が「false」と等しいというフィルターがかかっています。公式ヘルプには、小規模な会社や個人は自前のIPアドレスを持たないことがあり、その場合は回線事業者の名前で表示されると書かれています。モバイル回線からの訪問は会社を特定できず、会社のIPアドレスから接続したスマートフォンの訪問だけが照合の対象になります。VPNや別の場所にあるサーバーを経由した訪問は、所在地がずれて表示されることがあるともヘルプは説明しています。
在宅勤務が多い会社の担当者が自宅の回線からサイトを見た場合、その訪問は会社名になりません。反対に、社内ネットワークを経由する設定のVPNで接続していれば会社名で出ることもあります。どちらになるかは相手の会社のネットワーク構成で決まり、自社からは分かりません。日本企業がどの程度の割合で会社名として判定されるかについて、公式ヘルプに数字は示されておらず、相手の業種や規模によっても変わるため、一般的な割合を自社に当てはめて期待値を置くことはできません。
精度を確かめるには、自社のデータで試すのが確実です。導入後の最初の数週間で、次の3つを確認します。
- 既存顧客の担当者がログインや問い合わせのために訪問した日に、その会社名が表示されているか
- 社内の人が会社のネットワークから見た訪問が、自社名で表示されているか(社内アクセスを除外していない場合)
- 表示された会社のうち、業種や所在地から見て明らかに見込み客ではない会社(データセンター、大学、回線事業者の関連会社など)がどれくらい混ざっているか
既存顧客の訪問がほとんど会社名にならないなら、狙っている見込み客の訪問も同じ程度にしか見えていないと考えます。その場合、訪問企業の画面に出てこない会社を「サイトに来ていない会社」と読むのは誤りです。社内アクセスの除外設定は、HubSpot初期設定のトラッキングコードの設置と社内アクセスの除外の手順で済ませてから数字を見始めると、自社の社員の訪問が上位に並ぶことを防げます。
自社サイトに来る前の会社まで見たい場合は、自社サイトの外の閲覧から企業の関心を推定するインテントデータの仕組みと精度の限界を確かめてから検討します。
購入者の興味関心は、高意向ページの条件を先に決めてから使う
購入者の興味関心では、どのページを何回、何人が見たら「興味あり」とみなすかを最大10個の条件で設定し、狙う会社の条件(ターゲット市場)と組み合わせて訪問企業を絞り込みます。会社の追加と追跡にはクレジットを使うため、条件を決める前に自動追加を有効にしません。
訪問者の興味関心の条件で設定できること
公式ヘルプで確認できる設定項目は次のとおりです。ページパスは「等しい」「等しくない」「含む」「含まない」「始まる」から演算子を選び、ドメインやサブドメインを指定して入力します。そのうえで、同じ会社からの最小訪問数と、同じ会社からの最小ユニーク訪問者数を指定できます。期間は過去90日以内でしか設定できず、IPアドレスから判定した国でも絞り込めます。条件は最大10個まで作れ、除外条件は別に設定します。
BtoBのサービスサイトで条件を作るなら、購入の検討が進んだ人しか見ないページを選び、誰でも見るページを外します。例として、次のような組み立て方があります。
| 条件の例 | ページパス | 訪問数・人数の目安(例) | 理由 |
|---|---|---|---|
| 料金を確かめている | /price を含む | 2回以上 | 比較の段階に入った会社が見るページで、1回の閲覧は迷い込みも混ざる |
| 社内で回覧されている | /case または /service で始まる | 2人以上 | 同じ会社から複数人が見ていれば、担当者が上司や他部署に共有した可能性がある |
| 導入の手順を調べている | /flow や /faq を含む | 2回以上 | 導入後の進め方を気にするのは、候補を絞った後の行動であることが多い |
| 除外:採用・IR | /recruit、/ir を含む | — | 応募者や投資家の訪問が見込み客の条件に混ざる |
| 除外:ブログのみ | /academy で始まる | — | 記事を1本読んだだけの会社が大量に入る |
表の数字は条件の組み立て方を示す例で、自社のサイトの訪問数によって変えます。月の訪問が少ないサイトで「3人以上」のような条件を置くと、該当する会社がほとんど出てきません。最初は緩めに設定し、2〜3週間分の該当企業を営業と一緒に見て、「この会社なら連絡したい」と言える会社が上位に来るまで条件を締めていきます。
リサーチの興味関心は、トピックが英語で日本企業の見え方が分からない
リサーチのタブは、自社サイトの外で特定のトピックを調べている会社を表示します。公式ヘルプによると、データの元はHubSpotのトラッキングコードを設置し、インテントデータへのアクセスに同意した20万以上のサイトで、トピックは常に英語です。日本語のサイトがこのネットワークにどれだけ含まれているかはヘルプに書かれておらず、日本企業を相手にする商材でどれだけ該当企業が出てくるかは、実際に設定して確かめるまで分かりません。国内の中小企業だけを相手にしている会社は、訪問者のタブから使い始め、リサーチは結果を見てから判断します。
クレジットを使う操作と、使わない操作
日本語の公式ヘルプでは、1ビューあたり20社を超える会社を表示するにはHubSpotクレジットが必要とされています。新しい会社の追加と、その会社のインテントシグナルの追跡はクレジットを消費し、追跡は1社あたり10クレジットで、同じ請求期間内に追加と追跡を行った場合は追跡の1回分だけが請求されると説明されています。セグメントでの絞り込みや会社の除外といった分析機能は、クレジットの付与が前提ですが、使っても消費はしません。
保存済みビューに自動追加を設定すると、ビューに新しく入った会社が自動でCRMに追加されます。ヘルプによると、自動追加の対象は有効にした後にビューへ入った会社だけで、追加された会社のレコードソースには「Buyer-Intent」が入ります。月ごとに「新しい会社の追加」と「インテントシグナルの追跡」の上限を別々に設定でき、上限に達すると処理が止まります。
条件が緩いビューで自動追加を有効にすると、見込み客ではない会社がCRMに入り続け、クレジットと会社レコードの両方が増えます。自動追加は、手動で数週間運用して、ビューに入る会社の大半を営業が「連絡してよい」と判断できるようになってから有効にします。
クレジットは購入者の興味関心だけでなく、AIのエージェントやデータ補完とも同じ枠を使います。プランごとの付与量や使い切ったときの扱い、機能ごとに上限をかける考え方はHubSpotのAI機能とクレジットの上限の決め方と同じ基準で決め、購入者の興味関心に月にいくら使ってよいかを先に社内で決めておきます。
再訪問通知は、コンタクト単位の通知が残り、訪問企業のビュー通知は日次メールに変わった
既存のコンタクトや会社がサイトに戻ってきたことを知らせるリード再訪問通知は、各ユーザーが自分の通知設定で有効にします。ウェブサイト訪問ツールの保存済みビューに付いていた再訪問通知は2026年4月1日に終了し、公式ヘルプでは日次メールへの切り替えが案内されています。
リード再訪問通知の設定と、通知されない条件
リード再訪問通知は、設定の「通知」にある「ウェブサイト訪問」の項目で設定します。通知の対象は「表示できるコンタクト」か「自分が担当するコンタクト」から選び、受け取り方は日次のメールか、アクティビティフィードのリアルタイム通知を選べます。会社についても同じように、追跡する会社を選んで通知を受け取れます。公式ヘルプでは、メール通知を受け取るにはMarketing Hub ProfessionalまたはEnterpriseのアカウントのユーザーである必要があるとされています。
ヘルプには、メール通知が送られない条件も書かれています。初めてサイトを訪問したコンタクト、過去24時間以内に作成されたコンタクト、過去24時間に同じコンタクトの通知をすでに受け取っている場合、ライフサイクルステージが顧客のコンタクトの再訪問です。既存顧客の再訪問を知りたい場合、この通知では拾えないため、ワークフローやカスタマーサクセス側の仕組みで別に組みます。
リード再訪問通知の設定は個人ごとで、管理者がほかのユーザーの設定を変えることはできません。営業全員に通知を受け取ってほしい場合は、導入時の説明会で各自に設定してもらい、設定したかどうかを確認するところまでを導入作業に含めます。
「表示できるコンタクト」を選ぶと、他人の見込み客の通知まで届く
通知の対象を「表示できるコンタクト」にすると、閲覧権限のあるコンタクト全員の再訪問が届きます。営業が5人いて全員が全コンタクトを閲覧できる会社では、同じ会社の再訪問通知が5人に届き、誰が動くのかが曖昧になります。担当者が決まっているコンタクトは「自分が担当するコンタクト」を選び、担当者のいないコンタクトの再訪問はインサイドセールスの当番1人が見る、と分けておくと、同じ相手に2人が連絡する事故を防げます。担当者の決め方はリードの割り当てルールで決めた軸をそのまま使い、再訪問通知のために別のルールを作りません。
ウェブサイト訪問ツールでは、日次メールでビューを受け取る
ウェブサイト訪問ツールでは、保存済みビューごとに「このビューの会社がサイトを訪問したことについての日次サマリーEメール」を受け取れます。公式ヘルプによると、このツールの再訪問通知は2026年4月1日に終了し、有効にしていた場合も動いていません。以前の設定のまま通知を待っている担当者がいれば、日次メールに設定し直してもらいます。
営業が連絡するかどうかは、誰が見て、どの条件で動くかを先に決める
訪問企業の情報を見るのはインサイドセールスかマーケの担当者1人に絞り、「狙う会社の条件に合うか」「接点のあるコンタクトがいるか」「高意向ページの条件を満たしたか」の順に判断してから営業に渡します。どの経路でも、閲覧履歴を知っていることは相手に伝えません。
訪問企業の画面を営業全員に開放すると、目についた会社に営業がそれぞれ電話をかけ始めます。料金ページを1回見ただけの会社に「弊社のサイトをご覧いただいたようで」と電話すれば、相手は監視されていたと感じ、比較の候補から外されることもあります。画面を見る人と、連絡してよい条件を決めてから使い始めます。
画面を見る人と、見る頻度
訪問企業の保存済みビューを見る人は、インサイドセールスの担当者かマーケの担当者のどちらか1人に決めます。営業の人数が少なく専任のインサイドセールスがいない会社では、マーケ担当者が週に1回ビューを確認し、条件を満たした会社を営業会議で共有する形で足ります。日次メールを受け取る人も同じ人にし、営業全員に日次メールを配ることはしません。
見る頻度は、営業が動ける頻度に合わせます。毎日ビューを見ても、営業が連絡できるのが週に数社なら、確認は週1回で十分です。問い合わせの初動と違い、訪問企業への連絡は数時間の遅れで結果が大きく変わるものではありません。問い合わせが来たときの初動の速さを優先し、訪問企業の確認はその後に回します。問い合わせ対応の時間目標は問い合わせ対応スピードの3層の目標で決めたとおりに守り、訪問企業の確認がそれを圧迫しないようにします。
連絡してよい条件と、連絡のしかた
図2の3つの問いに沿って、動き方を次のように分けます。
| 状況 | 誰が動くか | やること | やらないこと |
|---|---|---|---|
| 接点のあるコンタクトが料金ページや事例に戻ってきた | そのコンタクトの担当営業 | 前回のやり取りの続きとして、検討に使える資料や事例を送る | 「サイトをご覧になっていましたね」と書く |
| 狙う会社の条件に合い、高意向ページの条件を満たした会社で、コンタクトがいない | インサイドセールス(専任がいなければマーケ担当者) | ターゲットリストに入れ、役職や部署を調べてから通常のアウトバウンドの手順で接触する | 代表番号に訪問を理由にして電話する |
| 狙う会社の条件に合うが、訪問は記事を数本読んだだけ | マーケ担当者 | 会社をリストに残し、広告の配信対象や次の施策の案内先の候補にする | 営業に渡す |
| 狙う会社の条件に合わない | 誰も動かない | 記録だけ残す | CRMに追加する |
コンタクトがいない会社への接触で最初に電話を選ばない理由は、訪問した人が誰なのか分からないからです。代表番号にかけても、サイトを見ていた担当者にたどり着く手がかりがありません。訪問したページから相手の関心を推測し、その関心に合う部署の役職者に、事例や資料を添えたメールや手紙を送るほうが、相手にとって連絡の理由が分かります。リストの作り方と初回に送る内容はBtoBのアウトバウンドのリスト設計と接触時に送るものと同じ手順を使い、訪問企業だけに別の手順を作りません。
訪問の事実は、連絡するかどうかと、何を送るかを決めるために社内で使う情報です。相手に伝える連絡の理由は、訪問ではなく、相手の業種や課題に合う事例や資料の中身にします。
ワークフローとスコアに入れるのは、接点のあるコンタクトの行動だけ
既存のコンタクトについては、料金ページの閲覧をリードスコアの加点に入れたり、ワークフローで担当営業にタスクを作ったりできます。購入者の興味関心でも、条件を満たした会社をワークフローに登録する設定があります。ただし、匿名の会社が条件を満たしたたびに営業のタスクが作られる設計にすると、営業のタスク一覧が訪問企業で埋まり、問い合わせやMQLの対応が後回しになります。タスクを自動で作るのは既存コンタクトの再訪問までにとどめ、匿名の会社は担当者が週次で見て人の判断を挟みます。閲覧を加点に入れるときの配点と減衰はHubSpotリードスコアリングの配点と減衰の考え方に合わせ、訪問をきっかけに動くワークフローも、ほかのワークフローと同じ命名と棚卸しの対象に入れます。
自社の営業体制で、訪問企業の情報を誰が見てどこまで営業に渡すかを決めかねている場合は、いまの問い合わせ対応と営業の人数に合わせて、連絡の条件を一緒に決めます。
Cookie同意と個人情報の扱いで、導入前に決めておくこと
HubSpotのCookieバナーで分析Cookieを拒否した訪問者のデータは収集されないため、同意を求める設定のサイトでは、訪問企業に表示される会社は同意した訪問者の分だけになります。法令上の判断は自社の法務に確認し、社内では「閲覧履歴を相手に伝えない」「画面を見られる人を絞る」の2点を運用ルールとして決めます。
公式ヘルプでは、トラッキングコードが収集するデータとしてIPアドレスが挙げられ、HubSpotがどの会社がサイトに来ているかを判別するために使うと説明されています。購入者の興味関心のヘルプには、データ保護関連の法規を守るためにCookie同意バナーの設置が必要になる場合がある、という記載があります。トラッキングコードは同意の状態を確認してからデータを集めるため、訪問者が分析Cookieやすべてのクッキーを拒否した場合、その訪問は訪問企業の集計に入りません。
もう1つ、トラッキングコードの設定の「高度なトラッキング」には「インテントデータへのアクセス」のスイッチがあります。ヘルプによると、オフにすると、自社サイトのトラッキングコードで集めたデータを、HubSpotが購入者の興味関心を含む製品の改善に使わなくなります。自社サイトの訪問者のデータを他社向けのリサーチの材料に使われたくない場合は、法務と相談のうえでこの設定を決めます。
個人情報保護法やプライバシーポリシーの記載がどこまで必要かは、HubSpotのヘルプも自社の法務に確認するよう案内しています。法務の確認とは別に、導入前に社内で決めておくのは次の3つです。
- プライバシーポリシーに、アクセス情報を会社の特定や営業活動に使うことをどう書くか(法務が確認する)
- 購入者の興味関心の権限を誰に付けるか。ヘルプでは、ビューの作成・編集には購入者の興味関心の権限、会社の追加にはデータエンリッチメントの権限が必要とされている
- 営業のメールや電話で、閲覧したページや日時を口にしないこと
権限は、画面を見る担当者と管理者だけに付け、営業全員には付けません。役割ごとの権限の分け方はHubSpotの役割別の権限設計の棚卸しの中で、購入者の興味関心とデータエンリッチメントの2つを確認項目に加えます。
ABMで狙う会社のリストがあるなら、訪問は優先順位の材料として使う
狙う会社のリストをすでに作っている会社では、訪問企業の情報はリストに新しい会社を足すためではなく、リストの中のどの会社から連絡するかを決める材料として使います。リストがない段階で訪問企業から逆にリストを作ると、たまたま大企業の社員が見た記事の訪問に引きずられます。
購入者の興味関心には、業種、所在地、従業員数などで狙う会社を定義する「ターゲット市場」を設定し、訪問の条件と組み合わせる仕組みがあります。ABMで作った狙う会社のリストと条件を揃えておけば、「リストの中で今月料金ページを見た会社」を毎週確認できます。営業と合意したリストの優先順位を、訪問の有無で入れ替える運用です。
リストそのものの作り方や、営業とリストを合意する進め方はABMの始め方と最初の90日の手順が先にあり、訪問企業の機能はその後に足すものです。狙う会社の条件がまだ決まっていない場合は、BtoBのICPの設定手順で既存顧客の共通点から条件を作り、その条件をターゲット市場の設定に写します。条件がないまま訪問企業の一覧を見ると、社員数の多い会社ほど訪問が多く出るため、見込みの高さではなく会社の規模で並んだ一覧になります。
訪問の情報だけでは狙う会社の動きが追えない場合は、企業データベース型やインテントデータ型のABMツールとの使い分けを見て、どの工程を外部のツールで補うかを決めます。
訪問企業の機能を使わないほうがよい場合
見込み客の多くが自前のIPアドレスを持たない小規模事業者の場合、サイトの訪問そのものが少ない場合、訪問を見て動く担当者を置けない場合は、訪問企業の機能を使っても営業の成果につながりにくく、問い合わせの初動やコンテンツに時間を使うほうが商談が増えます。
次のどれかに当てはまるなら、使わない、または使い始めを遅らせる判断が妥当です。
- 狙っている顧客が個人事業主や従業員数の少ない会社で、訪問の多くが回線事業者として表示される
- サイトの訪問が少なく、高意向ページの条件を満たす会社が月に数社しか出てこない
- 訪問企業を見て判断する担当者がおらず、画面を営業全員に開放するしかない
- 営業が訪問を理由に代表番号へ電話する運用を止められない
- 問い合わせへの一次対応が遅れていて、先に直すべき初動がある
- クレジットをAIのエージェントやデータ補完に使う予定があり、購入者の興味関心に割く余裕がない
1つ目に当てはまる会社は、ウェブサイト訪問ツールを開いても、表示される会社がデータセンターや大企業の関連会社に偏ります。この場合、匿名の訪問から会社を探すより、資料ダウンロードやウェビナーの申込でコンタクトになってもらう導線を増やし、コンタクトになった後の再訪問通知を使うほうが、営業が連絡する根拠を持てます。サイトに来た人に広告で再接触する方法はBtoBのリターゲティング広告の設計で、コンタクトになる前の段階の配信として組めます。
5つ目に当てはまる会社は、訪問企業の機能を入れる前に問い合わせ対応を直します。問い合わせは相手が名乗って連絡してきた状態で、匿名の訪問より商談につながる確度が高いからです。問い合わせへの返信に1日以上かかっている体制で訪問企業への連絡を始めると、確度の高い問い合わせを待たせたまま、確度の低い会社に時間を使うことになります。
反対に、訪問企業の機能を使う価値が大きいのは、狙う会社がある程度決まった中堅以上の企業で、相手の会社のネットワークからサイトを見られることが多く、インサイドセールスの担当者が週次でリストを見て動ける会社です。この条件がそろっていれば、訪問を材料に連絡の順番を変えるだけで、営業が当てずっぽうに連絡していた時間が減ります。
まとめ
HubSpotの訪問企業の機能は、IPアドレスから会社を推定する仕組みで、見える訪問に限りがあることを前提に、狙う会社と接点のある相手への連絡の順番を決める材料として使います。
判断の結論は4つです。名前の分からない会社を見つけるならウェブサイト訪問ツールか購入者の興味関心、接点のある相手の動きを知るならリード再訪問通知を使い、営業が動く根拠がはっきりしている再訪問通知から始めても構いません。購入者の興味関心は、高意向ページの条件とターゲット市場を決め、数週間手動で運用してから自動追加を有効にします。訪問企業の画面を見る人は1人に絞り、狙う会社の条件、コンタクトの有無、高意向ページの条件の順に判断して、閲覧履歴を相手に伝えない連絡のしかたを決めます。見込み客の多くが会社名として表示されない業種や、動く人がいない体制では使いません。
次にやることは、既存顧客の訪問がウェブサイト訪問ツールに会社名で表示されているかを確認し、自社の見込み客がどの程度見えるかを確かめることです。あわせて、営業の各自がリード再訪問通知を「自分が担当するコンタクト」で設定しているかを確認します。訪問企業の情報を営業のどの活動につなげるかを決めきれないときは、いまのHubSpotの設定と営業体制を見たうえで、条件と連絡のルールを一緒に決めます。
無料相談
問い合わせ前の訪問を、営業が使える情報にします
「訪問企業の画面を開いたが、どの会社に連絡すればよいか分からない」「営業が訪問を理由に電話してしまい、相手に警戒された」「購入者の興味関心の条件とクレジットの上限を決められない」。Ampelは外部CMOとして、サイトの訪問状況、狙う会社の条件、営業とインサイドセールスの体制を確認し、訪問企業の条件設定と、誰がどの条件で連絡するかのルールを担当者の方と一緒に決めます。
よくある質問
- HubSpotの無料プランでも訪問企業は分かりますか
- ウェブサイト訪問ツールは、公式ヘルプで「すべての製品とプラン」で使えるとされており、無料プランでも訪問した会社名や所在地を確認できます。条件を設定して訪問企業を絞り込み、CRMに追加する購入者の興味関心は、各製品のStarter以上が対象で、20社を超える表示や会社の追加にはHubSpotクレジットが必要です。
- HubSpotで訪問企業の担当者の名前や連絡先まで分かりますか
- 分かりません。訪問企業の機能はIPアドレスから会社を推定するもので、個人が分かるのはフォームの送信などですでにコンタクトとして登録されている人の訪問だけです。匿名の会社に連絡する場合は、部署や役職を自分で調べてから接触します。
- 訪問企業として表示される会社はどれくらい正確ですか
- 会社が自前で持つIPアドレスから来た訪問は会社名になりますが、回線事業者やモバイル回線からの訪問は特定できず、VPNや在宅勤務では別の会社や場所として出ることがあります。日本企業の判定精度について公式の数字はないため、既存顧客の訪問が会社名で表示されるかを自社のデータで確かめてから使います。
- HubSpotのリード再訪問通知はなくなったのですか
- コンタクトや会社の再訪問を知らせるリード再訪問通知は、設定の「通知」から各ユーザーが設定できます。2026年4月1日に終了したのはウェブサイト訪問ツールの保存済みビューに付いていた再訪問通知で、公式ヘルプでは日次メールの通知に切り替えるよう案内されています。
- Cookieの同意を得ていない訪問者も訪問企業に表示されますか
- HubSpotのCookieバナーで分析Cookieやすべてのクッキーを拒否した訪問者のデータは収集されないと、公式ヘルプに書かれています。同意を求める設定のサイトでは、表示される訪問企業は同意した訪問者の分に限られます。