インバウンドで来るリードが月に十数件しかない。このままでは営業の稼働が埋まらないし、商談数も増えない。こうした状況でアウトバウンドの検討が始まります。自分から接触しにいけば、待っているより早く商談が作れるという発想です。
ただしアウトバウンドは、始めれば成果が出る施策ではありません。商材と単価によっては、投じた工数が回収できないまま終わります。しかもこの領域の情報は営業代行会社やツールベンダーが発信しているものが大半で、当然ながら「やるべき」という結論に着地します。まず自社が向いているかを確認する必要があります。
この記事では、着手すべきかの判断基準、手法ごとの特性と使い分け、成果を左右するリスト設計、フォーム送信をどう扱うかの線引き、そしてインバウンドとの接続までを扱います。営業リソースが限られた企業を想定しています。
目次
アウトバウンドをやるべきかの判断
単価と対象企業数で決まります。低単価で対象が広い商材は、工数が回収できません。
アウトバウンドは接触1件あたりのコストが高い施策です。リストを作り、文面を作り、送り、返信に対応する。この一連の工数を、獲得できる利益で割り戻して判断します。
| 自社の状況 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 受注単価が年間100万円以上 | 向く | 1件の受注で工数を回収できる |
| 対象企業が数百社に絞れる | 向く | 1社ずつ丁寧に当たる価値がある |
| 検索されないカテゴリの商材 | 向く | インバウンドでは接点が作れない |
| 受注単価が年間数十万円以下 | 向かない | 接触コストが利益を超えやすい |
| 対象が数万社と広い | 向かない | 絞り込めないと精度が上がらない |
| 検索需要があり広告で取れている | 要検討 | 広告の増額のほうが読みやすい |
4行目と5行目の組み合わせが最も危険です。単価が低く対象が広い商材でアウトバウンドを始めると、数を打つしかなくなり、質が下がり、返信率も落ちます。この状態は担当者の消耗も大きく、数ヶ月で立ち消えになります。
逆に、対象が数百社に絞れて単価が高い商材であれば、1社ずつ調べて個別の文面を作る価値があります。この形であればアウトバウンドは十分に機能します。
なお、インサイドセールスを置くかどうかの判断とは別の話です。月間リードが30件未満でインサイドセールスを置くべきでない状況でも、アウトバウンドで接点を作る選択はあり得ます。設置の判断基準はインサイドセールスの立ち上げ方で扱っています。
他の獲得手段との比較で判断したい場合は、BtoBリード獲得施策一覧で施策ごとの特性を整理しています。
すでにインサイドセールスを置いていて成果が出ていない場合は、対象の枯渇が原因のことがあります。診断はインサイドセールスが機能しない理由で扱っています。
手法の特性と使い分け
到達率・工数・相手の負担が異なります。1つに絞らず組み合わせます。
アウトバウンドの手段は複数あり、それぞれ性格が違います。
最初に選ぶべきは個別メールです。相手の都合で読めるため負担が小さく、やり取りの記録も残ります。担当者のメールアドレスが分かる場合は、まずここから試してください。
ただし個別メールが機能するのは、1通ずつ内容を変えて書く場合に限られます。同じ文面を一斉に送った時点で、反応率は大きく落ちます。名前を差し込むだけの機械的な差し替えでは、受け取る側にはすぐ分かります。
テレアポは工数が大きい一方、代表電話しか分からない場合には有効な手段です。担当部署につないでもらえるかが勝負になるため、誰に何の用件かを最初の10秒で伝える必要があります。
手紙は単価が高いものの、開封率は圧倒的に高くなります。対象が数十社に絞り込める場合、経営層に直接届ける手段として検討する価値があります。
リストの質が成果の8割を決める
文面の巧拙より、誰に送るかで結果が決まります。
アウトバウンドの改善というと、件名や本文の書き方に注目が集まります。しかし実際には、リストの精度のほうが結果を大きく左右します。対象外の企業にどれだけ良い文面を送っても返信は来ません。
リストを作る順序
- 既存顧客の共通点を洗い出す:業種、従業員規模、事業モデル、担当部署。受注できている企業の特徴が、そのまま対象条件になります
- 条件で企業を絞る:企業データベースや業界団体の会員リスト、展示会の出展社一覧などから、条件に合う企業を抽出します
- 1社ずつ確認する:サイトを見て、本当に対象かを判断します。この工程を省くと、リストの精度が上がりません
- 接触する相手を特定する:企業ではなく人を特定します。役職名だけでも分かれば、文面の宛先が変わります
3番目の1社ずつ確認する工程が、最も省略されやすく、最も効きます。100社に機械的に送るより、20社を調べて送るほうが返信数は多くなります。
1社あたり5分調べる時間を確保してください。何をしている会社で、今どんな状況にあり、なぜ自社の商材が関係するのか。この3点が言えないなら、その企業はリストから外します。
既存顧客の共通点を条件に落とし込む作業は、ICPの定義そのものです。まだ整理できていない場合はICPの設定方法を先に済ませてください。ここが曖昧なままリストを作ると、精度が上がりません。
リストを買うべきか
企業リストの販売サービスがあり、条件で絞った一覧をすぐ入手できます。時間の節約にはなりますが、そのまま使うと精度は上がりません。購入したリストも、1社ずつの確認は必要です。
むしろ有効なのは、無料で手に入る情報源です。展示会の出展社一覧、業界メディアの掲載企業、自社の休眠リード。特に最後は見落とされがちですが、過去に接点があった企業へのアプローチは、完全な新規より確度が高くなります。掘り起こしの手順は休眠リードの掘り起こし方法で扱っています。
作ったリストと既存データが重複していると、同じ相手に別経路から連絡することになります。照合の手順はリードの名寄せと重複管理で扱っています。
問い合わせフォームへの送信をどう扱うか
単価は安く到達もしますが、相手の業務を妨げる面があります。使うなら線を引いてください。
問い合わせフォームに営業文を送る手法は、単価の安さと決裁者への到達率で推奨されることがあります。実際に商談につながる例もあります。ただしこの手法には、他のアウトバウンドにはない性質があります。
問い合わせフォームは、顧客や取引先からの連絡を受けるための窓口です。そこに営業が届くと、対応する担当者の業務が増えます。受け取る側から見れば、自分たちが用意した連絡手段を営業目的で使われている状態です。「営業目的のご連絡はお断りします」とフォームに明記している企業も少なくありません。
フォームに営業お断りの記載がある企業には送らないでください。明示された意思を無視した接触は、商談につながらないだけでなく、企業としての評価を下げます。送信前に必ず確認する工程を、運用に組み込んでください。
そのうえで使うのであれば、次の線を守ってください。
- 自社の名前で送る:送信者を偽らない。誰から来た連絡かが明確であること
- 営業であることを最初に書く:問い合わせを装わない。冒頭で目的を明示します
- 1社ずつ内容を変える:定型文の一斉送信は、迷惑行為との境目が曖昧になります
- 断られたら再送しない:一度断られた企業はリストから外します
これらを守ると送信できる件数は大きく減ります。それが本来の姿です。数を打つことを前提にした運用は、この手法とは相性が悪いと考えてください。
とくに自社がマーケティングや営業の支援を提供している場合、フォーム営業の使い方はそのまま自社の姿勢として見られます。受け手の立場に立った運用ができないのであれば、他の手段を選ぶほうが安全です。
接触時に何を送るか
売り込まず、相手の状況に関係する情報を1つ渡します。
初回の接触で商談を打診しても、ほぼ返信は来ません。相手にとっては見知らぬ企業からの連絡です。最初に渡すのは、営業の提案ではなく相手にとって有益な情報にします。
文面に含めるのは次の4点です。
- なぜあなたに連絡したのか:ここが最重要です。「同業の企業を支援しているため」「先日の展示会で貴社のブースを拝見して」など、具体的な理由を1文で書きます
- 想定される課題:断定せず、「〜という課題を伺うことが多い」という形にします
- 渡せるもの:資料、事例、簡易的な診断など。読むだけで価値があるものにします
- 相手が取るべき次の行動:1つに絞ります。返信でも資料ダウンロードでも構いませんが、複数の選択肢を並べません
渡すものとして事例が使えると、返信率が変わります。同業種・同規模の企業の事例であれば、相手は自分ごととして読めます。事例の作り方はBtoB導入事例の作り方で扱っています。
返信がない場合の追いかけは、2回までを目安にします。1週間後と3週間後に、それぞれ違う切り口の情報を送る形です。それでも反応がなければ、そのタイミングではないと判断してリストの別枠に移します。3回以上の追跡は、印象を悪くする側に傾きます。
インバウンドとの接続と計測
アウトバウンドで接触した相手が、後日インバウンドで戻ってくることがあります。これを取りこぼさない設計にします。
アウトバウンドの成果を「返信率」と「そこから発生した商談数」だけで測ると、実際の貢献を過小評価します。接触した時点では検討時期でなかった相手が、数ヶ月後に自社サイトから問い合わせてくることがあるためです。
このとき、その問い合わせはインバウンドとして記録されます。アウトバウンドの接触があったから名前を覚えていた、という経路が見えなくなります。
防ぐには、アウトバウンドで接触した企業をCRM上で記録し、後日の問い合わせと突き合わせられる状態にしてください。企業名で照合できれば十分です。この記録があると、アウトバウンドの評価が変わります。
見るべき指標
- 接触数ではなく、返信数:送った件数は成果ではありません
- 返信のうち、前向きな返信の割合:断りの返信も返信には含まれるため、分けて数えます
- 接触企業からの後日の問い合わせ:3ヶ月から6ヶ月の遅れで発生します
- 1商談あたりの工数:他チャネルと比較して、継続の判断材料にします
計測の土台が整っていない場合、まずはそこから着手してください。設計の考え方はBtoBマーケの効果測定、営業への引き渡し基準はMQL・SQLの定義と設計方法で扱っています。
アウトバウンドの設計や、他チャネルとの配分について相談したい場合は、商材と体制を前提にご相談いただけます。
担当者が消耗しない運用にする
アウトバウンドが続かない理由の多くは、成果より先に担当者が疲弊することです。返信が来ない状態が数週間続くと、送る手が止まります。これは意志の問題ではなく、設計の問題として扱ってください。
対処は3つあります。1つ目は、1日の目標を件数ではなく時間で決めることです。「1日20件送る」ではなく「1日60分アウトバウンドに使う」とすると、丁寧に調べる余地が残ります。
2つ目は、返信以外の成果も記録することです。断りの返信でも、理由が分かればリストの精度は上がります。「今は不要だが半年後に検討」という返信は、次の接触先として価値のある情報です。何も残らなかった日はない、という状態を作ります。
3つ目は、1人で回さないことです。リスト作成、文面作成、送信、返信対応を1人が全部やると負荷が偏ります。リスト作成だけを別の担当が持つだけでも、続けやすさは変わります。
成果が出るまでの期間も先に共有しておいてください。最初の1〜2ヶ月は返信率の水準を掴む期間で、商談が出ないのが普通です。この想定を経営と共有しておかないと、成果が出る前に打ち切られます。
まとめ
BtoBのアウトバウンドで押さえるべき点を整理します。
- 受注単価が年間数十万円以下で対象が数万社に広がる商材は、工数が回収できない
- 対象が数百社に絞れて単価が高い場合は、1社ずつ丁寧に当たる価値がある
- 最初に選ぶのは個別メール。ただし1通ずつ内容を変えることが前提
- 文面の巧拙よりリストの精度が結果を決める。1社5分の確認を省略しない
- 問い合わせフォームへの送信は、営業お断りの記載がある企業には送らない
- 使う場合も、自社名で送り、営業だと明示し、断られたら再送しない
- 初回は売り込まず、相手に関係する情報を1つ渡す。追跡は2回まで
- 接触企業を記録し、後日のインバウンド問い合わせと突き合わせる
アウトバウンドは数を打つ施策と見なされがちですが、実際に成果が出るのは絞り込んだ相手に丁寧に当たる形です。100件送って0件返るより、20件送って2件返るほうが、事業としても現場の消耗としても健全です。
獲得設計のご相談
やるべきかの判断から、リスト設計までご相談いただけます
「インバウンドだけでは足りない」「アウトバウンドを始めたが返信が来ない」といった状態を、商材の単価と対象企業数から具体化します。まだ検討段階でも問題ありません。
よくある質問
- アウトバウンドはどんな商材に向いていますか。
- 受注単価が年間100万円以上で、対象企業を数百社に絞り込める商材が向いています。1件の受注で接触にかけた工数を回収できるためです。逆に単価が年間数十万円以下で対象が数万社に広がる商材は、数を打つしかなくなり質が下がるため向きません。検索されないカテゴリの商材も、インバウンドで接点が作れないため候補になります。
- どの手法から始めるべきですか。
- 担当者のメールアドレスが分かる場合は個別メールからです。相手の都合で読めるため負担が小さく、記録も残ります。ただし1通ずつ内容を変えることが前提で、同じ文面の一斉送信にした時点で反応率は大きく落ちます。代表電話しか分からない場合はテレアポ、対象が数十社に絞れる場合は手紙も有効です。
- 問い合わせフォームへの営業送信は避けるべきですか。
- 「営業目的のご連絡はお断りします」と記載がある企業には送らないでください。明示された意思を無視した接触は、商談につながらないだけでなく企業としての評価を下げます。使う場合も、自社名で送る、冒頭で営業だと明示する、1社ずつ内容を変える、断られたら再送しない、という線を守ってください。これらを守ると件数は大きく減りますが、それが本来の姿です。
- 返信が来ない場合、何回まで追いかけてよいですか。
- 2回までを目安にしてください。1週間後と3週間後に、それぞれ違う切り口の情報を送る形です。それでも反応がなければ、そのタイミングではないと判断してリストの別枠に移します。3回以上の追跡は、印象を悪くする側に傾きます。
- アウトバウンドの成果はどう測ればよいですか。
- 送った件数ではなく、返信数と、そのうち前向きな返信の割合を見てください。加えて重要なのが、接触した企業からの後日の問い合わせです。接触時点では検討時期でなかった相手が、3ヶ月から6ヶ月後に自社サイトから問い合わせてくることがあります。接触企業をCRMに記録しておけば、この経路を取りこぼさずに評価できます。