リードの質の評価指標|「質が低い」を営業と数字で合意するBtoBの測り方

マーケティングはリードの目標件数を達成しているのに、営業からは「最近のリードは質が低い」と言われる。どこが低いのかを聞いても「話にならない会社が多い」「温度感が低い」と返ってくるだけで、何を直せばよいのかが分からない。月次の会議はそのたびに気まずい空気で終わります。

リードの質の議論は、感覚でやると営業とマーケの対立になり、定義を数字にした瞬間に協業になります。質という言葉の中身を、どの指標で、どの時点のデータで、どの母数で見るのかまで決めてしまえば、責め合う材料だった「質」が、双方で動かせる数字に変わります。

営業から「質が低い」と言われ続けているリード獲得の責任者にとって、MQLの条件や配点を変えるかどうかを左右するのは、質をどの指標で、どの時点のデータで、どの母数で見るかを営業と一つに決められるかです。そこが揃えば、件数を減らしてでも質を上げる局面なのかどうかも、同じ数字を前に話し合えます。

目次

「リードの質が低い」が対立で終わる理由

営業とマーケが同じ「質」という言葉で別のものを指しているため、議論がかみ合いません。まず言葉のずれを認めるところから始めます。

営業が「質が低い」と言うとき、その中身はたいてい次のどれかです。狙っていない業種や規模の会社が多い。資料をダウンロードしただけで検討していない。担当者に決裁権がない。商談にはなったが、予算がなく先に進まない。受注しても金額が小さい。これらはすべて「質が低い」とひとまとめにされますが、原因もやることもまったく違います。

一方でマーケ側は、質を「MQLの条件を満たしているかどうか」で見ていることが多いはずです。条件を満たしたリードを渡しているのだから、質は担保しているという認識です。営業は結果から見て質を語り、マーケは入口の条件から見て質を語っている。この状態で話し合っても、互いに相手が現場を分かっていないと感じるだけです。

もう一つの原因は、印象に残るリードの偏りです。営業の記憶には、時間を取られたのに何も進まなかった数件が強く残ります。うまく商談になったリードは「普通の案件」として記憶に残りません。感覚で質を語ると、全体の傾向ではなく目立った数件が議論の材料になります。

数字で定義するというのは、この「質」を分解して、どの段階の何を指しているのかを指標として名前をつけることです。「ICP適合率が先月より下がっている」「適合しているのに商談化率が落ちている」と言えれば、前者は獲得施策の問題、後者は引き渡し後の問題と切り分けられます。対立していた話が、どこを直すかという共同作業に変わります。

「質が低い」を一つの評価として扱わず、属性の不一致・検討の不在・商談後に進まない・金額が小さいのどれなのかに分解します。分解した瞬間に、誰が何を直すかが決まります。

特定の営業だけが「質が低い」と言う場合は、リードの質より先に、その人に小規模や情報収集目的のリードが偏って配られていないかを確かめます。担当者ごとのリードの偏りは、件数ではなく件数の中身で見ます。

リードの質を測る5つの指標と、それぞれが見ていないもの

質を測る指標は、早く分かるものほど売上との距離が遠く、売上に近いものほど分かるのが遅くなります。1つで決めず、見ていないものを補い合う組み合わせで使います。

リードの質を表す指標として実務で使えるのは、ICP適合率、営業の受け入れ率、商談化率、商談後の進行率、受注単価の5つです。どれも単独で「質」を言い切れる指標ではありません。選ぶときは、各指標が何を見ていて何を見ていないかを、次の表で確かめます。

指標計算の仕方見ているもの見ていないもの
ICP適合率ICP条件を満たすリード数÷獲得リード数狙った企業・役職から来ているか検討時期、課題の有無、営業の対応
営業の受け入れ率営業が追うと判断した数÷引き渡した数営業が接触する価値を認めたか営業側の基準のぶれ、繁忙による見送り
商談化率商談になった数÷対象リード数課題と検討が実際にあったか受注できるか、取引の大きさ
商談後の進行率提案・見積段階に進んだ商談数÷商談数検討が前に進む案件だったか金額、判明までの時間の長さ
受注単価受注金額の合計÷受注件数事業にとってどれだけ大きい取引か件数、回収までの期間、少数による揺れ

ICP適合率:最も早く分かるが、買う気は見ていない

獲得したリードのうち、あらかじめ決めたICPの条件(業種、従業員規模、部署や役職など)を満たす割合です。フォームの入力値や企業データから、獲得した時点ですぐに計算できます。広告のターゲティングやコンテンツのテーマがずれていないかを最も早く検知できる指標です。

見ていないのは、その会社にいま課題や検討があるかどうかです。条件にぴったり合う会社の担当者でも、情報収集の初期段階かもしれません。また、入力項目が少ないフォームでは判定できないリードが増えます。判定不能を「不適合」に含めると率が不当に下がるので、適合・不適合・判定不能の3つに分けて数えてください。適合・不適合の線引きで営業と意見が割れるなら、BtoBのICP設定方法に沿ってICP自体を決め直します。

営業の受け入れ率:営業の判断を数字に残す

マーケから引き渡したリードのうち、営業やインサイドセールスが「追う」と判断した割合です。営業の実感に最も近く、引き渡しから1〜2週間で分かります。「質が低い」という感覚を、そのまま数字に置き換えた指標です。

弱点は、営業側の基準に左右されることです。担当者によって受け入れの厳しさが違い、繁忙期には手が回らないという理由で見送りが増えます。受け入れ率だけを見ると、営業の忙しさまでリードの質のせいになります。受け入れなかったときは理由を選択式で残してもらい、「業種が対象外」「連絡がつかない」「時期が先」のように、どの種類の不一致なのかを必ずセットで見ます。

商談化率:質の中心に置く指標

対象リードのうち、合意した定義での商談に至った割合です。課題と検討が実在したかを、営業が実際に会話した結果で判定するため、5つの中で「質」の実感と売上の両方に最も近いバランスの取れた指標です。多くの会社では、質の主指標はここに置くのが現実的です。

ただし、商談の定義がゆるいと簡単に数字が上がります。「一度話を聞いてもらえた」を商談に数えれば商談化率は高くなりますが、受注には近づいていません。また、受注できる案件かどうか、どれくらいの規模の取引かは見ていません。商談化率が低いと分かったら、BtoB商談化率を上げる7つの施策から、下がっている段階に当たるものを選びます。

商談後の進行率:商談の中身を確かめる

商談になった案件のうち、提案や見積など次の段階まで進んだ割合です。商談化率がゆるい定義で膨らんでいないか、つまり「会えたが検討は実在しなかった」案件がどれくらい混ざっているかを確かめられます。チャネルによって、商談化率は高いのに進行率が極端に低いということが起きます。

見ていないのは取引の大きさで、判明までに時間がかかるのも弱点です。商談サイクルが数か月ある商材では、今月獲得したリードの進行率が分かるのは数か月後になります。進行の段階を営業担当ごとにそろえておかないと、この数字は比較に使えません。段階の定義は、パイプラインカバレッジを計算するときの段階と同じものを営業全員で使います。

受注単価:件数が少ないうちは主指標にしない

受注した案件の平均金額です。同じ受注でも、年間数十万円の取引と数千万円の取引では事業への影響がまったく違います。価格帯の広い商材では、件数ベースの指標だけでは質を見誤ります。

一方で、受注は件数が少ないので、1件の大型案件で平均が大きく動きます。チャネル別に比べるなら平均ではなく中央値を使い、件数を必ず併記してください。受注件数が月に数件の規模なら、受注単価は四半期や半期でまとめて見る補助指標にとどめます。

上ほど早く分かり、下ほど売上に近い 獲得した時点 ICP適合率 狙った企業・役職から来ているか 引き渡しから1〜2週間 営業の受け入れ率 営業が追う価値があると認めたか 引き渡しから1〜2か月 商談化率(主指標) 課題と検討が実際にあったか 商談化から数か月 商談後の進行率 提案や見積まで進む検討だったか 受注した時点 受注単価 事業にとってどれだけ大きい取引か 早い指標で気づき、遅い指標で答え合わせをする
図1:質を測る5つの指標と判明までの時間(期間は商材の商談サイクルによって変わります)

最初に決める組み合わせ

5つを全部そろえる必要はありません。最初は「主指標1つ+早く分かる指標1つ」で始めます。多くのBtoB企業では、主指標を商談化率、早期の警報をICP適合率にするのが扱いやすい組み合わせです。商談化率は分かるまでに1〜2か月(実務上の目安)かかるので、その間にずれを検知する役をICP適合率に持たせます。

商談サイクルが長く、商談化率すら数か月待たないと分からない商材では、受け入れ率を早期指標に加えます。反対に、価格帯が広く大型案件が売上を左右する商材では、四半期単位で受注単価を加えます。KPI全体の中でこれらの指標をどこに置くかは、BtoBマーケのKPI設計ガイドの段階別の整理とあわせて考えてください。

リード数と質のトレードオフを見える形にする

数と質は別々に議論せず、掛け算の結果である商談数と、費用で割った商談単価で一つの表に並べます。そうすると、どちらを取るべきかが数字で決まります。

「リードは多いが質が低い施策」と「リードは少ないが質が高い施策」のどちらが良いかは、感覚では決まりません。答えを出すには、リード数と商談化率を掛けた商談数、そしてそれを費用で割った商談単価まで計算して並べます。次の表は説明のための仮の数字です。

施策費用リード数リード単価商談化率商談数商談単価
施策A80万円160件5,000円3%4.8件約16.7万円
施策B60万円60件10,000円12%7.2件約8.3万円
施策C90万円120件7,500円10%12件7.5万円

リード単価だけを見ると施策Aが最も優秀です。ところが商談単価で見ると、施策Aは他の倍以上かかっています。リード数の目標だけを追っていると、施策Aに予算を寄せる判断をしてしまいます。営業が「質が低い」と言っていたのは、まさにこの施策Aから来るリードだった、ということが表一枚で説明できます。

リード数と商談化率の関係は、図にすると比べやすくなります。横軸をリード数、縦軸を商談化率にとると、商談数が同じになる組み合わせは右下がりの曲線になります。施策を点として置くと、どの施策が同じ商談数の線より上にあるか、下にあるかが一目で分かります。

リード数×商談化率=商談数 商談化率 0% 5% 10% 15% 0 100 200 リード数(件) 商談6件 商談12件 A B C A:160件×3%=商談4.8件(数は多いが商談は最少) B:60件×12%=商談7.2件(数は少ないが質が高い) C:120件×10%=商談12件(数と質の両方を満たす)
図2:同じ商談数になる線に施策を置いて比べる(数値は説明用の仮定)

図で見ると、施策の改善の方向が2つあると分かります。施策Aを線の上に持っていくには、リード数をさらに増やすか、商談化率を上げるかのどちらかです。リード数を増やす余地がもう小さいなら、ターゲティングを絞ってリード数を減らしてでも商談化率を上げたほうが、線をまたげる可能性が高い。数と質のどちらが大事かという抽象的な議論が、この施策はどちらに動かすかという具体的な判断に置き換わります。

営業の対応工数も、ここで一緒に見ておきます。施策Aの160件に全件対応すると、商談4.8件のために155件分の接触が発生します。商談単価には営業の時間が含まれていないので、営業の人数が限られている会社ほど、表の数字以上に施策Aのコストは高くなります。広告チャネルでこの考え方を指標設計に落とす方法はBtoB広告のKPI設計で詳しく書いています。

数と質は「どちらを優先するか」ではなく、掛け算の結果である商談数と、費用で割った商談単価で比べます。リード単価の順位と商談単価の順位が入れ替わる施策が、質の議論の本当の対象です。

チャネル別・施策別に質を比べるときは母数を先に見る

件数が少ないチャネルの率は、1件で大きく動きます。率を並べる前に分母を確かめ、獲得した月でそろえて比べます。

月次の定例でチャネル別の商談化率を一覧にすると、たとえば「ウェビナー経由は25%、広告経由は8%」のような差が並びます。ところが分母を見ると、ウェビナー経由は8件中2件、広告経由は150件中12件だったりします。8件中2件の25%は、1件ずれるだけで12.5%にも37.5%にもなる数字です。この差を根拠に予算を動かすのは危険です。

分母が小さい率は並べず、件数で見る

実務上の目安として、分母が30件に届かない率は他のチャネルと並べて比べないようにしています。30件なら1件の違いで率が約3%、10件なら10%動くためです。統計的な厳密さを求めるための線ではなく、会議で1件の偶然に振り回されないための線引きです。

分母が小さいチャネルは、次のどれかで扱います。1つ目は、期間を伸ばして3か月や半年分をまとめること。2つ目は、似た性質のチャネルを束ねること(個別のウェビナーではなく「ウェビナー全体」で見るなど)。3つ目は、率ではなく「8件中2件」と件数のまま書くことです。どの方法でも、表には必ず分母を併記します。率だけの表は、小さいチャネルの偶然を大きな差に見せてしまいます。

商談化率は獲得した月でそろえる

よくある集計の誤りが、「今月発生した商談数÷今月獲得したリード数」で商談化率を出すことです。今月の商談の多くは先月以前に獲得したリードから生まれているので、分子と分母が別の集団になっています。リード獲得を急に増やした月は率が下がり、減らした月は率が上がって見えます。

質を比べるときは、リードを獲得した月で集団を作り、その集団のうち何件が商談になったかを追いかけます。4月に獲得した100件のうち、6月末時点で何件が商談になったか、という数え方です。こうすると、施策を変えた月の前後で質がどう変わったかを正しく比べられます。

判定が済んでいないリードを分けて数える

獲得月でそろえると、直近の月ほど「まだ営業が接触中で結論が出ていないリード」が多く残ります。これを商談にならなかった側に数えると、直近の月の商談化率は必ず低く出ます。「先月から急に質が落ちた」という議論は、この未判定分が原因のことがあります。

各月の集団を、商談になった、商談にならないと判定した、未判定、の3つに分けて表示してください。実務上の目安として、未判定が2割を超えている月は、率の比較から外すか、参考値として扱います。どのリードを「商談にならない」と判定するかの基準は、営業と合意して決めます。

未判定のリードが多い直近の月の率を見て、チャネルの停止や予算削減を決めないでください。数か月後に判定が進むと率が戻り、止めた施策が実は良かったと分かることがあります。

質の比較を費用と突き合わせると、施策ごとに投資が回収できているかまで判断できます。粗利で計算する方法は施策別のROIの計算例で示しています。

リスティング広告のリードは、キャンペーン単位より検索語句単位で商談の有無を並べると、質の低い流入の出どころが分かります。月次の振り返りでは、検索語句ごとに商談の有無を突き合わせ、商談ゼロの語句から除外を検討します。

質の定義を営業と合意するプロセス

質の定義は、マーケが作って営業に通知するものではなく、過去の受注と却下の実データを両者で見て決めるものです。誰が、どのデータで、どの頻度で決めるかまで先に合意します。

営業との合意で決めるのは、どの指標を質の評価に使い、どの数字を合格とするかの合意です。MQLやSQLの判定条件がまだ決まっていなければ、合意の場の前にMQL・SQLの定義と設計方法に沿って条件を決めておきます。

誰が決めるか

最終的に合意するのは、マーケの責任者と営業の責任者の2人です。現場の担当者同士で決めると、目標設定や予算配分に反映されず、合意が形だけになります。インサイドセールスがいる会社では、受け入れと却下の記録を担う担当者が実務の窓口になります。経営者は合意の場に毎回いる必要はありませんが、リード数が減る判断をするときには必ず入ってもらいます。

どのデータで決めるか

使うデータは3つです。1つ目は、過去6か月から1年分の受注案件を、獲得した時点までさかのぼったデータです。受注したリードは獲得時にどんな業種・規模・役職で、どの経路から来ていたか。これが「質が高い」の実例になります。2つ目は、営業が受け入れなかったリードの却下理由です。3つ目は、商談になったが先に進まなかった案件の失注理由です。失注理由の分類がまだなければ、BtoBの失注分析のやり方に沿って選択肢を作ってから集め始めます。

営業の意見は、アンケートで「質をどう感じるか」を聞くのではなく、却下理由や失注理由の選択肢として記録に残してもらいます。感想は変わりますが、1件ごとの理由は集計できます。営業の主観を捨てるのではなく、集計できる形に変えるということです。

何を決めるか

合意の中身は、次の4点を文章にして残します。質の主指標と早期指標をどれにするか。それぞれの計算の仕方(分母に何を含め、未判定をどう扱うか)。合格ラインの数字(例として「ICP適合率は6割以上、獲得月集団の商談化率は過去半年の平均を下回らない」など、自社の過去の実績を基準にした線)。そして、見直す時期です。

合格ラインは、業界の目安ではなく自社の過去の数字から決めてください。商談の定義も商材の単価も会社ごとに違うので、他社の商談化率と比べても判断の材料になりません。過去の自社の値を基準にして、そこから上がったか下がったかで議論します。

どの頻度で見直すか

定義を作った直後の3か月は、毎月の定例で「定義どおりに記録できているか」を確認します。指標の中身が安定したら、見直しは四半期に1回で十分です。定義を毎月変えると過去との比較ができなくなるので、変えるのは四半期の見直しのときだけ、と決めておきます。合同の定例そのものがない会社は、マーケ・セールス連携の仕組み作りから始めて、確認の場を先に作ります。

営業との間で質の定義が決まらず、会議のたびに同じ議論を繰り返している場合は、過去データの棚卸しから一緒に進めることもできます。質の定義づくりの相談はこちらからお寄せください。

質を上げると数が減る局面での判断

質を上げる施策は、ほぼ確実にリード数を減らします。目標は商談数に置き、リード数は下限の制約として扱うのが基本です。ただし数を優先すべき時期もあります。

ターゲティングを絞る、フォームの項目を増やす、無料特典の訴求をやめる。質を上げる施策の多くは、リード数を減らします。リード数を目標にしている組織では、このとき担当者が「目標未達」になります。質を上げる判断が現場から出てこないのは、目標の置き方がそれを罰しているからです。

目標は商談数に置き、リード数は下限にする

マーケの主目標は、合意した定義での商談数に置きます。そのうえで、リード数とICP適合率には「これを下回ったら原因を確認する」という下限を設けます。リード数を目標から外すと、今度は将来の商談の元になる母集団が細る心配が出てくるので、完全に無視はしません。主目標と、崩してはいけない下限を分けるという設計です。

数を優先したほうがよい場合

一方で、質より数を取るべき時期もあります。ICPがまだ検証できておらず、どの業種や規模が受注につながるのかを幅広く試して学ぶ段階。商談までの期間が長く、いまはナーチャリングの対象となる母集団を作る段階。営業に余力があり、機会の不足のほうが問題になっている段階。この3つに当てはまるなら、質で絞り込むのは早すぎます。質の指標は記録しつつ、目標はリード数に置いたままでかまいません。

経営への説明の仕方

経営に説明するときは、3つの数字を一緒に出します。たとえば「リード数は前期より3割程度減る見込みです。商談数は維持します。商談単価は下がります」。リード数の減少だけが報告されると、経営には後退に見えます。減るもの、維持するもの、良くなるものをセットで示し、あわせて「何か月後のどの数字で判断するか」を約束してください。

判断の時期は、商談化率が判明するまでの時間から決めます。施策を変えてから獲得月集団の商談化率が出そろうまで2〜3か月かかる商材なら、「3か月後の商談数で評価し、維持できていなければ元に戻す」と先に合意しておきます。成果が見える前に数だけが先に減る期間があることを、始める前に共有しておくのが一番の防御策です。

質の指標を運用に組み込む頻度と場

質の指標は、見る頻度によって使ってよい指標が変わります。週次は件数と理由、月次は獲得月集団の率、四半期は進行率と受注単価と定義そのものを見ます。

質の定義を作っても、見る場が決まっていなければ数か月で使われなくなります。一方で、毎週すべての指標を見ると、母数の小さい率に振り回されます。どの会議でどの指標を見るかを、次のように分けておきます。

場見る指標見方決めること
週次の定例ICP適合率、受け入れ・却下の件数と理由率より件数。理由の偏りを見るターゲティングや引き渡しの即時修正
月次の定例獲得月集団の商談化率、チャネル別の商談数と商談単価分母と未判定を併記して比べるチャネル間の予算の寄せ方
四半期の見直し商談後の進行率、受注単価、合格ラインの妥当性半年分をまとめて傾向を見る質の定義と目標の見直し

週次:件数と却下理由だけを見る

週次で見るのは、ICP適合率と、営業が受け入れなかったリードの件数と理由です。週単位の商談化率は母数が小さすぎて判断に使えないので、率の議論はしません。「今週は対象外の業種からの却下が5件あり、すべて同じ広告から来ていた」のように、理由の偏りから具体的な修正を決めます。

月次:獲得月集団で質を比べる

月次では、獲得月でそろえた商談化率を、チャネル別に分母と未判定の件数つきで見ます。前のセクションで作った商談数と商談単価の表もここで更新し、予算をどのチャネルに寄せるかを決めます。営業の責任者にはこの会議に出てもらい、却下理由の集計を営業側から説明してもらうと、質の議論が報告ではなく共同の判断になります。定例会議全体の組み立て方はマーケティング定例会議の進め方で詳しく書いています。

四半期:定義と合格ラインを見直す

四半期では、判明までに時間のかかる商談後の進行率と受注単価を、半年分ほどまとめて見ます。商談化率は高いのに進行率が低いチャネルがあれば、商談の定義がゆるい可能性を疑います。そのうえで、合格ラインの数字が現状に合っているか、主指標を変える必要があるかを判断します。定義を変えるのはこの場だけです。

週次・月次・四半期の見方をそろえ、質の数字をどの会議で誰が説明するかまで設計したい場合は、運用設計の相談もお受けしています。

HubSpotで数字を取る場合は、MQL件数とMQLからSQLへの転換率を出す設定を先に入れておき、見送りの内訳もリードステータス別に数えられるようにしておきます。

やらない判断と向かない場合

スコアの点数を質と呼ぶこと、営業の主観アンケートだけで質を決めることはやりません。また、リードが少ない段階では指標を作るより1件ずつ見るほうが早い場合があります。

スコアの点数そのものを質と呼ばない

リードスコアは、そのリードが商談になりそうかを事前に予測する仕組みです。質そのものではなく、質を予測する道具です。「スコア80点以上のリードが先月より増えたので質が上がった」という報告は、予測が当たっているかを確かめないまま、予測値を結果として扱っています。配点を変えれば、リードが何も変わらなくても高得点のリードは増えます。

スコアは、スコアの帯ごとの商談化率を見て「高い帯ほど本当に商談になっているか」を検証する対象として扱います。帯による差がなければ、配点を見直す合図です。HubSpotでスコアを組む場合は、HubSpotリードスコアリング設定方法に沿って配点を作り、帯ごとの商談化率を四半期ごとに確かめます。

営業の主観アンケートだけで決めない

「引き渡したリードの質を5段階で評価してください」というアンケートは、手軽ですが質の定義には使えません。評価は担当者ごとの基準で変わり、直近に印象の悪い案件があった人ほど低くつけます。また、何が悪かったのかが残らないので、改善策につながりません。営業の判断は、1件ごとの却下理由や失注理由として記録に残し、件数で集計する形にしてください。

指標づくりが向かない場合

月に獲得するリードが数件から十数件の段階では、質の指標を作っても、どの率も母数が小さすぎて比べられません。この規模なら、月に1回、営業とマーケが全件を1件ずつ見て「なぜ商談になった、ならなかった」を話すほうが、ずっと多くを学べます。指標は、件数が増えて全件を見られなくなってから作れば十分です。

また、商談の定義や段階が営業担当ごとにばらばらな状態では、商談化率も進行率も比較できません。その場合は、質の指標より先に、営業側の段階の定義をそろえるところから始めてください。

まとめ

リードの質は感覚ではなく、分解した指標と合意した計算の仕方で語ります。そうすることで、営業とマーケの対立が、同じ数字を動かす協業に変わります。

「リードの質が低い」という言葉には、属性の不一致、検討の不在、商談後に進まない、金額が小さい、という別々の問題が混ざっています。これをICP適合率、営業の受け入れ率、商談化率、商談後の進行率、受注単価に分解し、それぞれが見ていないものを補い合う組み合わせで使います。最初は、主指標の商談化率と、早く分かるICP適合率の2つで十分です。

数と質のトレードオフは、商談数と商談単価に換算して一つの表で比べます。チャネルを比べるときは、分母が小さい率を並べず、獲得した月で集団をそろえ、未判定のリードを分けて数えます。定義は過去の受注と却下の実データをもとに、マーケと営業の責任者が合意し、四半期ごとに見直します。

質を上げれば数は減るので、目標は商談数に置き、リード数は下限として扱います。ただし、ICPを検証中の段階やリードが少ない段階では、質で絞り込むより数を取り、1件ずつ見るほうが合理的です。自社がいまどの段階にいるかを見極めることが、質の指標を機能させる前提になります。

リードの質の評価設計をご相談ください

「質が低い」を、営業と合意できる数字に置き換えます

Ampelは、BtoB企業のマーケティングと営業の間で、リードの質を測る指標の選定、過去の受注・却下データの棚卸し、獲得月でそろえた集計の仕組み、定例での見方までを一貫して支援しています。リードの目標は達成しているのに営業の評価が低い、どのチャネルに予算を寄せるべきか決められないといった状態から、次の一手を一緒に決めていきます。

よくある質問

リードの質はどの指標で測るのが一番よいですか。
1つで決めるなら商談化率が最もバランスの取れた指標です。課題と検討が実在したかを営業の実際の会話で判定するため、質の実感と売上の両方に近いからです。ただし分かるまでに1〜2か月かかるので、獲得した時点で分かるICP適合率を早期指標として組み合わせるのが実務的です。価格帯の広い商材では、四半期単位で受注単価も加えます。
営業に「リードの質が低い」と言われたら、最初に何をすればよいですか。
質が低いと感じた具体的なリードを数件挙げてもらい、それが属性の不一致なのか、検討がなかったのか、商談後に進まなかったのかを分類します。そのうえで、直近3か月分の引き渡しリードについて、営業が受け入れなかった件数と理由を集計してください。感想ではなく理由の件数が見えると、獲得施策の問題か、引き渡し後の問題かが切り分けられます。
質を上げるためにMQLの数が減ってもよいのですか。
商談数が維持できるなら、MQLの数が減ってもかまいません。マーケの目標をMQL数ではなく合意した定義の商談数に置き、MQL数には下限だけを設けるのが基本です。ただし、ICPがまだ検証できていない段階や、ナーチャリングの母集団を作る段階では、数を優先したほうがよい場合があります。数が減る判断をするときは、何か月後のどの数字で評価するかを経営と先に合意してください。
商談化率の目安は何%くらいですか。
他社と比べられる目安はほとんど役に立ちません。何を商談と数えるか、どの時点のリードを分母にするか、商材の単価や検討期間が会社ごとに違うためです。質の評価では、自社の過去半年から1年の値を基準にして、そこから上がったか下がったかで判断してください。チャネル別に比べるときは、分母が30件に届かない率は並べず、件数で見るのが安全です。
リードスコアが高いのに商談にならないのはなぜですか。
スコアの配点が、実際に商談になったリードの特徴と合っていない可能性があります。スコアの帯ごとに、獲得月でそろえた商談化率を集計してください。高い帯と中くらいの帯で商談化率に差がなければ、配点が行動の量に偏っているか、属性の条件が甘いかのどちらかです。スコアは質そのものではなく質の予測なので、定期的に結果と照らし合わせて検証する必要があります。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。