BtoB SEOのキーワード選定のやり方|検索ボリュームではなく商談で選ぶ手順

キーワードプランナーで候補を並べ、月間検索ボリュームが100以上のものだけを残し、競合性が低い順に記事にしていく。手順としては教科書どおりです。半年後、記事は20本になり、セッションも右肩上がりのグラフになりました。それでも問い合わせは1件も増えていない。BtoBのオウンドメディアでこの状態に行き着く会社は珍しくありません。原因は記事の書き方ではなく、その手前の選び方にあります。

BtoBのキーワード選定で最初に外すべき基準は、検索ボリュームです。月間10件しか検索されない語でも、その10人が導入を検討している担当者なら商談になります。逆に月間1万件の一般語で来る1万人が学生と同業者なら、商談は1件も生まれません。持つべき軸は「そのキーワードで来た人が商談になるか」の一点だけです。

この記事では、BtoB企業のマーケティング責任者や、担当者が1〜2名の会社の経営者に向けて、自社で回すことを前提にキーワード候補を起こし、仕分け、優先順位をつけるまでの実務手順を書きます。記事の中身の作り方や公開後の効果測定は別の話なので扱わず、選定という工程だけに絞ります。

目次

BtoBのキーワード選定が検索ボリュームで外れる理由

BtoBの市場は母数が小さく、検索ボリュームは需要の大きさをほとんど表しません。数字が大きい語ほど、自社の客ではない人が集まります。

検索ボリュームという数字は、もともと検索広告の在庫量を見積もるために用意されたものです。「この語に広告を出したら、月に何回表示されるか」を知るための指標であって、「この語で来た人が買うか」は何も語っていません。BtoCの物販のように、検索する人の大半が買い手であるなら、ボリュームは需要の代理指標として機能します。BtoBではこの前提が成り立ちません。

母数が小さい市場では、ボリュームは需要を表さない

自社の商材を本当に必要とする人が、日本国内に何人いるかを一度数えてみてください。従業員300名以上の製造業で、生産管理を担当している人。多店舗展開している小売業で、シフト作成を担当している人。こうした条件で切ると、対象者は多くても数千人から数万人です。その全員が毎月何かを検索するわけではないので、本当に効くキーワードの検索数が月間10〜50に収まるのは、異常ではなく正常な姿です。

ここで「ボリューム100以上」というフィルタをかけると、候補はほぼ全滅します。生き残るのは、対象者の条件が外れた広い語だけです。結果として手元に残るのは「BtoBマーケティングとは」「業務効率化 方法」といった、誰でも書けて誰の課題も解いていない一般語ばかりになります。フィルタが機能していないのではなく、フィルタが自社の客を選択的に除外しているのです。

数字が大きい語ほど、来る人が自社の客ではない

検索ボリュームが大きいということは、その語を打つ人の幅が広いということです。「勤怠管理」で検索する人の中には、ツールを探している総務担当もいれば、自分の残業時間を気にしている従業員も、就職活動中の学生も、同じ商材を売っている競合の担当者もいます。この語で上位に立つと、流入は増え、直帰率は上がり、問い合わせは増えません。

一方で「勤怠管理 シフト制 締め日 変更」のような語を打つ人は、すでに運用で困っている担当者に限られます。母数は小さくても、来た人の状況が特定できます。BtoBのキーワード選定では、後者の積み上げが商談に変わります。

選定の軸は「その語で来た人が商談になるか」

やることは、判断の順番を入れ替えるだけです。ボリュームで候補を絞ってから商談につながるかを考えるのではなく、先に「この語を打つのはどういう状況の人か、その人には自社に問い合わせる理由があるか」を書き出し、そのあとで検索されているかを確認します。順番が逆になるだけで、残る候補はまるで変わります。

どういう会社の誰が客なのかが社内で言語化できていないと、この判断そのものができません。候補を見て「この語で来た人は客か」と問うたときに全員が違う答えを出す場合は、先にBtoBマーケティングでのICP設定方法を整理してから戻ってきたほうが、以降の工程が短く済みます。

検索ボリュームは候補を絞るための基準ではなく、選び終えた候補が実際に検索されているかを確認するための、後工程の数字です。

キーワード候補は社内にある|4つの一次情報から起こす

ツールを開く前にやることがあります。見込み客が実際に口にした言葉を、すでに社内に溜まっている記録から集める工程です。

1 社内の一次情報を集める 商談の質問・失注理由・既存顧客の 検索語・問い合わせの自由記述 2 検索語に翻訳する 社内語を外し、質問1つを 課題・手段・比較の3形に展開 3 検討段階で仕分ける 課題認識前/課題認識/ 比較検討/指名の4つに分類 4 2軸で優先順位をつける 商談への距離×勝てる見込み 検索ボリュームは軸に入れない
図1:キーワード選定の4工程。ツールを使うのは工程2の最後、候補が検索されているかを確かめる場面だけ。

候補の質は、この工程で9割決まります。ツールから始めた候補リストと、社内の記録から起こした候補リストは、並べてみると別物です。前者は「一般的に検索されている語」、後者は「自社の客が困ったときに打つ語」になります。集める先は4つあります。

情報源1:商談で実際に聞かれた質問

直近3か月の商談の録画または議事録から、相手が質問した文をそのまま書き出します。要約しないことが要点です。「費用感を知りたがっていた」ではなく、「初期費用と月額って別ですか、初期費用は何にかかるんですか」と、口にした語順のまま拾います。この語順が、検索窓に打たれる日本語にいちばん近いからです。

30件も集めれば、同じ趣旨の質問が3回以上出てくる塊がいくつか見えます。その塊が最初の候補です。1回しか出ていない質問は、いったん脇に置きます。録画が残っていて誰も見返していない状態なら、商談録画の活かし方の手順で棚卸しの回し方を決めておくと、この作業が毎四半期の定常業務になります。

情報源2:失注理由

失注理由は、検討の途中で相手が抱えていた不安が言語化されたものです。「稟議が通らなかった」なら、その担当者は社内を説得する材料を探していたことになります。「他社に決まった」なら、比較の軸のどこかで負けています。どちらも、検討中の人が検索する言葉に直結します。

ただし、失注理由が「価格」「時期」の2語だけで埋まっている場合、この情報源は使えません。分類が粗すぎて、何を探していた人なのかが復元できないからです。その状態なら、まずBtoBの失注分析のやり方で記録の粒度を直すほうが先です。キーワード選定は、その副産物として自然に出てきます。

情報源3:既存顧客が導入前に検索していた言葉

最も精度が高いのがこれです。やることは単純で、既存顧客に「導入を検討し始めたころ、何と検索しましたか」と聞くだけです。四半期に3社でも十分な量になります。オンボーディングの最後や定例の締めに1問足す形にしておくと、聞き忘れません。

返ってくる答えは、こちらが想定していた語とほとんど一致しません。商材のカテゴリー名で検索していると思っていたのに、実際には症状をそのまま打っていた、というのが典型です。この差分が、そのまま候補の中で最も価値の高い部分になります。

情報源4:問い合わせフォームとサポートに届いた言い回し

問い合わせフォームの自由記述欄と、サポートに届く質問には、検索語そのものに近い日本語が残っています。特に自由記述は、本人が誰にも整えられていない状態で書いた文なので、社内の用語に汚染されていません。過去1年分をまとめて読み、名詞と動詞の組み合わせを抜き出します。

情報源集め方出てくる語の性質目安の件数
商談で聞かれた質問録画・議事録から発言のまま書き出す比較検討段階の具体的な不安30件
失注理由失注案件の理由欄を読み直す意思決定の障害になった論点20件
既存顧客の検索語導入後の面談で1問だけ聞く課題認識の初期に打たれた語3社/四半期
問い合わせの自由記述過去1年分をまとめて読む整えられていない生の言い回し50件

4つすべてを揃えてから始める必要はありません。1つ目だけでも、ツール起点の候補リストとは質が変わります。逆に、この工程を飛ばしてツールだけで候補を作った場合、あとの工程をどれだけ丁寧にやっても、選ばれるのは一般語のままです。

社内の言葉を検索語に翻訳する

集めた質問文は、そのままでは検索語になりません。社内語を外し、検索窓に打たれる形に直す工程が要ります。

社内語のままでは誰も検索していない

自社で「配車最適化基盤」と呼んでいるものが、市場では「配車システム」と呼ばれている。このズレは頻繁に起きます。社内で長く使われている呼び方ほど、外では通じません。検索されているのは市場側の語のほうです。

判別の方法は単純で、その語を検索窓に打ってサジェストが出るかどうかを見ます。サジェストが1つも出ないなら、その言い方は市場に存在していません。自社の造語やサービス名を含む語は、指名検索として別枠に置き、候補の中心には据えません。指名検索は認知が増えれば後から自然に伸びる領域で、いま人手をかけて増やすものではないからです。

1つの質問を3つの形に展開する

集めた質問1つにつき、3つの言い方を作ります。課題の言い方、手段の言い方、比較の言い方です。同じ人でも、検討のどこにいるかで打つ語が変わるからです。

  • 課題の言い方:症状や状態をそのまま打つ形(例:「請求書処理 時間がかかる」)
  • 手段の言い方:解決の方向を探す形(例:「請求書処理 効率化 方法」)
  • 比較の言い方:手段が決まったあとに選ぶ形(例:「請求書 システム 比較 中小企業」)

この3つは同じ人物の時間軸上の3点であって、別々の人ではありません。だから3つとも自社の客につながります。1つの質問から3つ作ると、30件の質問が90件の候補になります。多すぎるように見えますが、次の仕分けと優先順位づけで大半が落ちるので問題ありません。誰がどの段階で何を探すのかを社内で共有しておきたい場合は、BtoBペルソナの設定方法で人物像を先に固めておくと、この展開が速くなります。

存在の確認だけをツールでやる

ここで初めてツールを開きます。目的は候補を絞ることではなく、その語が実際に検索されているかを確かめることです。数字がゼロと表示されても、サジェストに出るなら書く価値はあります。ツールの数値は一定量以下を丸めて表示する仕様なので、ゼロは「検索されていない」ではなく「測れていない」を意味することが多いからです。

この段階で落とすのは、サジェストにも関連検索にも出ず、打っても検索結果が自社の想定とまったく違う世界を返す語だけです。それ以外は残します。

翻訳した言葉を見出しにどう置くかで、答えの位置の伝わり方が変わります。見出しを読者の問いの形にする使い分けを別記事で扱っています。

検討段階で4つに仕分ける

候補が集まったら、検討のどの段階の人が打つ語かで4つに分けます。分けないまま書くと、本数の割に商談が増えません。

仕分けの基準は、その語を打った時点で本人が何を決め終えているかです。課題に気づいているか、解決の手段を決めているか、選ぶ相手を絞っているか。この3つの問いに順に答えると、4つのどれかに落ちます。

段階本人が決め終えていること検索の言い回し商談までの距離最初に置く本数
課題認識前何も。症状だけを感じている症状をそのまま打つ遠い0〜2本
課題認識解くべき課題があること解決の方向を探す3〜5本
比較検討解決の手段の種類条件を足して絞り込む近い5〜8本
指名候補の社名・サービス名固有名詞を打つ最も近い1〜3本

最初に書くのは比較検討段階

上流の課題認識前から順に埋めたくなりますが、順番は逆です。最初の10本は比較検討段階から埋めます。理由は2つあります。

ひとつは、商談に近いので少ない流入で成果が確認できることです。月間50件の流入で問い合わせが1件出れば、その語は当たりだと判断できます。上流の語は月間3,000件の流入があっても問い合わせがゼロということが普通に起きるので、当たり外れの判定に半年かかります。社内で継続の承認を取り続ける必要があるなら、判定が早いほうから手をつけるべきです。

もうひとつは、比較検討段階の語こそ自社が最もよく知っている領域だからです。商談で毎週答えている内容がそのまま書けます。上流の啓蒙的な話は、書ける人が世の中に大勢いるので、後発が競っても勝ち目が薄くなります。

課題認識前を後回しにする理由と、ゼロにしない理由

課題認識前の語は、検索ボリュームが大きく、書きやすく、そして商談になりません。ここから始めた会社が「記事は増えたのに問い合わせが増えない」と言うのは、順番の問題です。

ただしゼロにはしません。1〜2本は置きます。理由は、そこに来た人を比較検討段階の記事へ送る受け皿になるからです。ただし受け皿としてどう機能させるかは選定より後の設計の話なので、選定の時点では「上流に1〜2本、置き場所を確保しておく」とだけ決めておけば足ります。段階のつながりを社内で共有したいなら、BtoBカスタマージャーニーマップの作り方で粒度の決め方を先に見ておくと議論が早く終わります。

この4分類は、社内で議論を始めると際限なく細かくなります。候補1件あたり10秒で決められない粒度にした時点で、運用に載らなくなります。

優先順位は2軸で決める

順位づけに使う軸は、商談への距離と、勝てる見込みの2つだけです。検索ボリュームは軸に入れません。

商談への距離を3段階で採点する

候補ごとに、その語で来た人に自社へ問い合わせる理由があるかを3段階で付けます。3は「いま手段を選んでいる人」、2は「課題は認識しているが手段が未定の人」、1は「症状しか感じていない人」です。迷う語は2に置きます。この採点は担当者ひとりで15分もあれば終わります。会議で合議しないでください。合議すると全部が2になります。

勝てる見込みは検索結果の顔ぶれで見る

ドメインパワーのような数値は見ません。実際にその語で検索して、上位10件の顔ぶれを目で見ます。確認するのは3点です。

  • 上位が比較・ランキング形式のメディアや大手ポータルで埋まっているか
  • 上位の記事が、その語を打った人の知りたいことに実際に答えているか
  • 自社が持っていて上位のどこにも載っていない情報があるか

1つ目に該当し、2つ目も満たされているなら、その語は当面勝てません。逆に3つ目に該当するなら、検索数が小さくても取れます。実際に導入を回した会社しか書けない内容、運用開始後にどこで詰まるかといった情報は、外から取材して書かれた記事には載っていないからです。上位の顔ぶれを継続して見る仕組みが要るなら、BtoB競合調査のやり方で見る対象と頻度を決めておくと、毎回ゼロから調べずに済みます。

後回し 勝てるが遠い 最優先 近くて勝てる 書かない 遠くて勝てない 迂回する 近いが勝てない 高い 低い 勝てる見込み 遠い 近い 商談への距離
図2:優先順位の2軸。右上から着手し、右下は語を変えて迂回する。左下は候補から外す。

着手順は右上から

商談への距離が近く、勝てる見込みもある右上から書きます。次に手をつけるのは右下、つまり商談には近いが正面からは勝てない語で、これは次のセクションの迂回で扱います。左上は勝てるけれど商談に遠い語なので、右上が尽きてから着手します。左下は書きません。

実務では、右上に入る候補は思ったより少なくなります。10〜20件見つかれば、半年分の制作対象としては十分です。逆に右上が50件も出てきた場合は、採点が甘いので基準を見直してください。

この工程で本当に効いてくるのは、書く語を決めることより、書かない語を確定させることです。判断を保留にしたままリストに残すと、翌四半期にまったく同じ議論をやり直すことになります。左下に落ちた語は、その場で削除してください。

ここまでの採点を自社の受注データと突き合わせて詰めたい場合は、現在の商談内容をもとにした選定の壁打ちもお受けしています。

競合が強すぎる語の避け方と迂回のしかた

勝てない語は避けます。避けたうえで、同じ検討段階の人に別の入口から届く語に置き換えるのが迂回です。

撤退を決める3つのサイン

  • 上位10件のうち7件以上が、比較・ランキング形式のメディアや大手ポータルで占められている
  • 上位が専業の事業者で、その内容に相当する情報を自社が持っていない
  • 検索結果の上部が広告と生成AIによる回答で埋まり、通常の検索結果まで画面をスクロールしないと届かない

3つのうち2つ以上に当てはまるなら、その語は候補から外します。「体制が整ったら書く」と保留にすると、リストが膨らむだけで判断が先送りされます。3つ目のサインが出ている語については、検索結果の見え方そのものが変わってきているので、通常の検索結果を前提とした発想から切り替える必要があります。この論点はBtoBのLLMO対策のやり方で扱っています。

迂回1:条件を足して読者を狭める

「勤怠管理システム 比較」では勝てなくても、「勤怠管理システム 比較 シフト制 小売」なら上位の顔ぶれが変わります。足せる条件は、業種、企業規模、いま使っているシステム、社内の体制の4方向です。狭めるほど検索数は減りますが、来る人は自社の客に近づきます。BtoBのキーワード選定では、これが基本の手筋になります。

迂回2:比較の軸をずらす

上位のメディアが並べている軸は、たいてい価格、機能の数、導入社数です。この軸で勝負すると、情報量の多いほうが勝ちます。だから軸を変えます。運用を始めてからどこで詰まるか、既存のシステムとつなぐときに何が起きるか、社内で誰が反対して何を言うか。使ったことがある人にしか書けない軸を選びます。

この軸のずらし方は、比較・ランキング形式のメディアそのものとどう付き合うかという別の論点にもつながりますが、選定の段階では「正面から同じ軸で並ばない」とだけ決めておけば十分です。

迂回3:時点をずらす

「選び方」で勝てないなら、その前後を取ります。前は「いまのやり方の限界をどう判断するか」、後ろは「導入したあと最初の3か月で何が起きるか」です。特に導入後の語は、書いている会社が少ないうえに、検討中の人も先回りして読みます。商談で「導入したあと大変じゃないですか」と聞かれた経験があるなら、そこに候補が眠っています。

無料ツールでどこまでできるか

選定という工程は、無料のツールだけで最後まで通せます。有料が必要になるのは選定ではなく運用の段階です。

使うものこの工程での用途限界
検索広告のキーワードプランナー候補が検索されているかの確認と関連語の取得広告出稿がないと数値が範囲表示になる
検索窓のサジェスト・関連検索実際に打たれている語尾や組み合わせの確認件数がわからず、網羅もできない
サーチコンソールすでに流入している語と表示回数の把握公開済みの記事がないと何も出ない
サジェスト一括取得の無料ツール候補の広がりをまとめて確認する1日あたりの取得回数に上限がある
検索結果そのもの勝てる見込みの判定と上位の顔ぶれの確認手作業なので語数が増えると回らない

有料に移る境目

有料ツールが要るようになるのは、次のどれかに当たったときです。候補が数百件を超えて手作業の管理が破綻した、公開記事が50本を超えて順位の変動を継続的に見る必要が出た、競合が獲得している語を面で把握したい。選定を始めたばかりの段階では、どれにも当てはまりません。

逆に言えば、無料の範囲で候補が作れないとしたら、それはツールの不足ではなく一次情報の不足です。商談の記録が残っていない、失注理由が2語で埋まっている、既存顧客に聞いていない。ツールを契約してもこの3つは埋まりません。

ツールの契約を検討する前に、直近3か月の商談で聞かれた質問を30件書き出せるかを確認してください。書き出せないなら、支出より先に記録の運用を直す番です。

キーワード選定でやりがちな失敗

失敗の型は限られています。ほとんどが、順番の誤りか、判断を先送りにする運用に由来します。

  • 検索ボリュームでフィルタしてから考える:最も多い型です。フィルタが自社の客を選択的に落とします。ボリュームは最後に見ます。
  • 候補をツールだけで作る:一般語しか出てきません。社内の一次情報を1つでも通してから、ツールで補完します。
  • 分類を細かくしすぎる:段階を7つに割ったり、点数を100点満点にしたりすると、運用に載らずに1回で終わります。
  • 勝てない語をリストに残し続ける:保留の語が溜まると、四半期ごとに同じ議論を繰り返すことになります。外すか、迂回先に置き換えるかを毎回決めます。
  • 同じ意図の語を別々の記事に割り当てる:語が違っても検索結果の顔ぶれがほぼ同じなら、それは同じ意図です。1本にまとめないと、自社の記事同士で評価が割れます。
  • 選定を一度きりの作業にする:商談で聞かれる質問は半年で入れ替わります。選定は四半期ごとに更新される台帳であって、初期設計の成果物ではありません。

最後の1つは特に見落とされます。市場の状況や競合の動きが変われば、去年は勝てなかった語がいまは取れることもあります。逆もあります。

選定結果は1枚に落として四半期で見直す

管理する列は6つに絞ります。増やすほど更新されなくなり、更新されない台帳は存在しないのと同じです。

用意する列は、キーワード、出どころ、検討段階、商談への距離(3〜1)、勝てる見込み(○△×)、状態(未着手・執筆中・公開済み)の6つです。ボリュームの列は作りません。作ると必ずその列で並べ替えたくなるからです。

出どころの列を残す理由は、半年後に「なぜこの語を選んだのか」を説明できるようにするためです。担当者が替わったとき、この列がないと台帳はただの単語リストになります。「2026年3月の商談3件で質問された」と書いてあれば、次の担当者も判断を引き継げます。

見直しは四半期に1回で十分です。やることは3つだけで、その期の商談で新しく出た質問を候補に足す、公開したのに問い合わせが1件も生まれていない語の扱いを決める、上位の顔ぶれが変わった語の見込みを付け直す。所要時間は2時間程度です。この定期作業を止めないための体制の作り方はBtoBオウンドメディアの運用体制で扱っています。

なお、選定した語を全体のコンテンツ計画の中でどう位置づけるかは、選定の外側の話になります。自社サイト全体としてどこを取りにいくかから考え直したい場合は、BtoB SEOコンテンツ戦略の設計手順BtoBコンテンツマーケ戦略の立て方を先に通したほうが、選定の位置づけがはっきりします。

自社の商談内容と受注データを見ながら、どの語から着手するかを一緒に決めたい場合は、無料相談で現状を整理するところから始められます。

まとめ

BtoBのキーワード選定は、検索されている語を探す作業ではなく、自社の客が困ったときに打つ語を社内の記録から復元する作業です。

手順は4つです。商談で聞かれた質問、失注理由、既存顧客が導入前に検索した言葉、問い合わせの自由記述から候補を起こす。社内語を外して検索語に翻訳し、1つの質問を課題・手段・比較の3形に展開する。検討段階で4つに仕分け、比較検討段階から着手する。商談への距離と勝てる見込みの2軸で優先順位を決める。ツールを開くのは、候補が検索されているかを確かめる場面だけです。

勝てない語は避けます。避けたうえで、条件を足して読者を狭める、比較の軸をずらす、時点をずらす、のいずれかで迂回します。正面から同じ土俵に上がらない判断が、限られた制作リソースを守ります。

最後に、この選定は一度で終わりません。商談で聞かれる質問は半年で入れ替わり、上位の顔ぶれも動きます。6列の台帳を1枚だけ作り、四半期に2時間かけて更新する。この運用が続いていれば、記事が増えるにつれて問い合わせも一緒に増える構造になります。増えないなら、記事の書き方ではなく選定の段階に戻って、商談への距離の採点をやり直してください。

無料相談

どの語から書くべきかを、商談の中身から一緒に決めます

「候補は出したが優先順位がつけられない」「上位が比較メディアばかりで手が出ない」「無料ツールの数字をどう読めばいいか分からない」といった詰まりは、商材と受注データを見ないと解けません。Ampelは外部CMOとして、自社で回せる形の選定手順を一緒に組み立て、最初に着手する語まで絞り込みます。現在の商談内容と公開済み記事の状況をうかがったうえで、着手順を整理してお返しします。

よくある質問

検索ボリュームがゼロと表示されるキーワードでも書く価値はありますか
あります。ツールの数値は一定量以下を丸めて表示する仕様なので、ゼロは「検索されていない」ではなく「測れていない」を意味することが多いからです。判断はサジェストに出るかどうかで行ってください。サジェストに出る語は、誰かが実際に打っています。BtoBでは月間10件の検索から商談が生まれることが普通にあるので、数字の小ささを理由に外すと候補が尽きます。
キーワードは最初に何本くらい用意すればいいですか
着手対象として10〜20本あれば半年は動けます。候補の母集団は90件程度あって構いませんが、そのうち実際に書くのは1〜2割です。最初から100本の計画表を作ると、四半期ごとの見直しで作り直すことになります。まずは比較検討段階から5〜8本、指名に1〜3本、上流に1〜2本という配分で組んでみてください。
キーワード選定を生成AIに任せてもいいですか
候補の展開と分類の下書きには使えます。1つの質問から課題・手段・比較の3形を作る作業や、集めた候補を4段階に仮に振り分ける作業は、生成AIのほうが速く終わります。一方で、一次情報を集める工程と、商談への距離を採点する工程は任せられません。どちらも自社の受注データを見た人間の判断が要る部分です。任せる工程と任せない工程は、この2点で線を引いてください。
競合が同じキーワードを狙っていることが分かったらどうしますか
上位の顔ぶれを見て、正面から勝てるかを判断します。すでに競合が上位にいて、その内容に相当する情報を自社が持っていないなら避けます。避けたうえで、条件を足して読者を狭める、比較の軸を変える、検討の時点を前後にずらす、のいずれかで迂回します。同じ語を同じ切り口で追いかけるのは、後発にとって最も分の悪い戦い方です。
選んだキーワードが正しかったかは、いつどう判断しますか
比較検討段階の語なら、公開から3か月で判定できます。見るのは順位ではなく、その記事を経由した問い合わせや資料請求が1件でも出たかどうかです。流入があるのに問い合わせがゼロなら、語の選定ではなく検索意図とのズレを疑います。流入自体がないなら、公開から半年待ってから語ごと入れ替えるかを決めます。上流の語は判定に半年から1年かかるので、同じ基準で早期に切らないでください。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。