オウンドメディアを立ち上げ、最初の3ヶ月で数十本の記事を公開した。しかし半年が経つ頃には更新が月に数本になり、1年後には止まっている。BtoBのオウンドメディアで最も多い終わり方がこの形です。
記事の質が低かったわけでも、テーマ選定を誤ったわけでもありません。問題は、成果が出る前に供給が止まることです。検索からの評価が積み上がるのは、実務上の目安で半年から1年先なのに、その手前で息切れするため、蓄積した記事が評価される時期に更新が止まった状態になります。
立ち上げ前の会社と更新が止まりかけている会社のどちらでも、続くかどうかを分けるのは初期の本数ではなく、成果が出るまでの期間を社内で共有できているかと、息切れしない供給の仕組みがあるかです。記事から商談への導線がないまま本数だけを積んでいる場合は、更新をいったん緩めて導線を先に整えたほうが、蓄積が無駄になりません。
目次
オウンドメディアが止まる構造
オウンドメディアは、立ち上げ直後に通常業務と両立できない量を出し、その反動で担当者が息切れして止まります。止まる時期が、検索評価の動き始める半年後と重なるのが問題です。
立ち上げ時は社内の期待も高く、担当者の熱量もあります。外注も使って一気に本数を作る。しかしこの時期に投下した工数は、通常業務と並行して続けられる水準を超えています。数ヶ月で息切れし、更新が止まります。
前半集中型は本数だけを見れば優れています。問題は7ヶ月目以降です。月次報告でマーケ責任者がSearch Consoleを開き、伸び始めた記事を見つけても、加筆や内部リンクの追加に回せる体制が残っていません。担当者の熱量も社内の期待も冷めており、再開のきっかけがなくなります。
定常型は本数で劣りますが、評価が見え始めた時期にまだ動いています。伸びている記事を強化する、反応のないテーマを止める、といった判断を実行できる状態が続きます。
成果が出るまでの期間を先に共有する
実務上の目安として半年から1年かかることを、始める前に経営と合意しておきます。合意がないと途中で止められます。
オウンドメディアが社内で止められる理由の多くは、成果が出ないことではなく、いつ出るかを共有していなかったことです。3ヶ月目の経営会議で問い合わせ件数だけを見た役員が、「効果がない施策」と判断します。
時期ごとに見るべき指標を先に決めておきます。最初から問い合わせ件数で評価すると、必ず途中で止まります。
| 時期 | 見る指標 | この時期に見ないもの |
|---|---|---|
| 1〜3ヶ月 | 公開本数が計画通りか | 順位・流入・問い合わせ |
| 4〜6ヶ月 | 検索表示回数と平均順位の帯 | 問い合わせ件数 |
| 7〜12ヶ月 | 順位が上がってきた記事の本数 | — |
| 12ヶ月以降 | 記事経由の問い合わせと商談 | — |
4〜6ヶ月目に見るのは順位そのものではなく、順位の分布です。個別の記事が何位かは変動が大きく、判断材料になりません。「30位以下だった記事群が20位台に入ってきたか」という帯の移動を見ます。
表の期間は、新しく立ち上げたドメインの場合の目安です。既に運用歴があり評価が蓄積されているサイトに記事を足す場合は、もっと早く動きます。どちらの場合も、公開前に効果測定の仕組みを整え、表示回数と問い合わせを記事単位で追える状態にしておきます。
本数ではなく、途切れないことを指標にする
続けられる本数は、担当者の空き工数から逆算して決めます。理想の本数から決めません。
ペース設計の順序は次のとおりです。
- 担当者が記事に使える時間を確認する:週に何時間かを実数で出します。通常業務がある場合、実務上は週8時間以上を確保できることは稀です
- 1本あたりの所要時間を測る:構成・執筆・図表・入稿を含めて実測します。5,000字程度で6〜10時間が目安です
- 割り算する:週8時間で1本8時間なら、週1本が上限です
- そこから2割引く:割り込み業務や休暇を見込みます。週1本なら月3本で計画します
空き工数から逆算した本数は、多くの企業で想定より少なくなります。それで構いません。月3本を12ヶ月続ければ36本になり、評価が動き始める時期にまだ手が動いている状態を保てます。
止まった月があるかどうかを最重要の指標にしてください。本数が計画を下回っても、ゼロの月を作らないほうが結果的に積み上がります。
文字数の水準も見直す余地があります。1本8,000字を守ろうとして本数が出せないなら、5,000字前後に下げて本数を確保するほうが、この局面では合理的です。Googleも、好ましい文字数は設けていないと明言しています(Google検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」)。検索意図を満たしていれば、字数そのものは評価の条件ではありません。
外部リソースを使って本数を確保する判断もあります。外部リソースを使うなら、マーケティングの内製化の段階に合わせて、社内に残す工程と外に出す工程を決めます。
ネタが尽きない仕組みを作る
企画会議で捻り出すのではなく、社内に流れている情報から自動的に溜まる形にします。
ペースが守れなくなる直接の原因は、書くテーマが決まらないことです。企画から始めると1本あたりの所要時間が倍になります。ネタの供給源を仕組みにします。
図2の1(商談で繰り返し聞かれる質問)と2(失注の理由)は、営業から取ります。月1回15分のヒアリングを定例にすれば、テーマのストックが切れません。営業にとっても、繰り返し説明している論点が記事になれば商談で使えるため、協力は得られます。
図2の3(既存記事の検索クエリ)は、運用が半年を過ぎてから使える方法です。既存記事に表示はあるのに順位が低いクエリは、需要が実証されていて競合も強くない可能性があります。そうしたクエリは、SEOコンテンツ戦略の仕分けに沿って、新規記事にするか既存記事の加筆にするかを決めます。
図2の4(社内の実務フォーマット)は最も早く書けます。自社で実際に使っている設計シートやチェックリストは、そのまま記事にでき、ダウンロード資料にも転用できます。資料に転用するときはホワイトペーパーの形に整え、記事の末尾からダウンロードできるようにします。
導入事例の取材で得た内容も、導入事例の作り方に沿ってまとめれば、記事と資料の両方に展開できます。
内製と外注をどう切り分けるか
テーマ決定と一次情報は社内に残し、執筆と編集は外に出せます。
すべてを内製しようとすると本数が出ず、すべてを外注すると当たり障りのない記事が並びます。工程で分けます。
| 工程 | 内製 | 外注 |
|---|---|---|
| テーマ決定 | 必須 | 不可 |
| 構成案の作成 | 望ましい | 可能 |
| 一次情報の提供 | 必須 | 不可 |
| 執筆 | 不要 | 任せてよい |
| 図表の作成 | 不要 | 任せてよい |
| 公開作業 | 不要 | 任せてよい |
一次情報の提供は外注できません。実務での判断基準、失敗した事例、数字の目安。これらは社内にしかなく、外部ライターが書ける範囲を超えます。ここを渡さないまま外注すると、どこにでもある記事になります。
現実的な形は、社内の担当者が構成案と一次情報をまとめ、執筆と図表を外に出す分担です。この分担であれば、実務上の目安として担当者1人でも月4〜8本を維持できます。外注先を探す前に、採用と外注のどちらにするかを月の本数と予算から決めておきます。
記事から商談への導線を先に作る
資料ダウンロード・問い合わせ導線・ダウンロード後のフォローの3点は、記事が10本の時点で型を決めておきます。流入が増えてから作ると、最初の数ヶ月の機会を取りこぼします。
記事が読まれるようになってからCTAや資料を用意する企業が多いのですが、順序としては逆です。流入が少ない時期こそ、導線の型を試して修正する余裕があります。
用意するのは3点です。記事内から遷移できるダウンロード資料、記事末尾の問い合わせ導線、そして資料ダウンロード後のフォロー。この3つが繋がっていれば、流入が増えたときにそのまま商談に変わります。
記事の本数が増えてから導線を後付けすると、担当者が過去記事を1本ずつ開いてCTAを差し込む作業が発生します。10本の時点で型を決めておけば、以降は書きながら組み込めます。
記事から問い合わせまでの導線は、リード獲得施策のうち自社が使っている資料請求やウェビナーにつなぎ、記事ごとの役割はコンテンツマーケ戦略の中で決めます。誰に向けて書くかが定まっていない場合は、ICPの設定を先に済ませてください。
立ち上げの体制やペース設計について相談したい場合は、確保できる工数と社内の期待値を前提にご相談いただけます。
導線を作り込む過程で、記事以外のページや問い合わせまでの流れにも手を入れる必要が見えてくることがあります。記事以外のページまで手を入れるなら、サイト全体を作り直すときの設計手順に沿って、目的と評価指標から決め直します。
HubSpotを使っている場合は、HubSpotのブログやフォームで記事の閲覧履歴をCRMに残す設定を記事10本の時点で済ませておくと、どの記事を読んでから問い合わせたかを営業が確認できます。
記事の効果測定と、やめる判断
公開6ヶ月以降の記事を「上位」「表示はあるが順位が低い」「表示がほとんどない」の3つに分け、手を入れるのは前の2つだけにします。1年続けて表示が積み上がらなければ、テーマ選定を見直します。
目安として記事が30本を超えたあたりから、どの記事が問い合わせにつながっているのかを把握できなくなります。全体のアクセス数だけを見ていると、個別の記事に対する判断ができません。見る単位を決めます。
記事は3つに分かれる
公開から6ヶ月以上経った記事は、目安として検索での位置がおおむね定まります。この時点で3つに分類します。
| 状態 | やること | 優先度 |
|---|---|---|
| 表示が多く、順位も上位 | 内部リンクを集め、CTAを見直す | 高 |
| 表示はあるが順位が低い | 加筆・構成の見直しで押し上げる | 高 |
| 表示がほとんどない | 触らない。放置してよい | 低 |
表示がほとんどない記事には手をかけません。表示回数がほぼゼロの記事は、検索需要がないか、競合が強すぎるかのどちらかです。加筆しても状況は変わりません。この記事群に工数を使うくらいなら、2つ目の押し上げに回してください。
削除・統合の判断
表示のない記事を削除すべきかという問いには、原則として削除不要と答えます。検索流入がなくても、内部リンクの受け皿として機能していれば意味があります。
削除や統合が必要になる例外は2つあります。1つは、同じテーマの記事が複数あって互いに食い合っている場合。この場合は統合して1本にまとめ、残りは転送します。もう1つは、情報が明確に古くなって誤りを含んでいる場合。これは修正するか、非公開にします。
統合する際は、残す側と消す側を実績で決めます。文字数、被リンク数、表示回数、順位を比べて、優位な側を残してください。転送の設定を忘れると、それまでの評価が失われます。
いつ見直すか
毎週見る必要はありません。新規記事の公開が続いている間は、月に1回、順位帯の分布だけを確認すれば足ります。個別記事の判断は四半期に1回のペースで行います。
見るタイミングを決めておかないと、思い出したときにまとめて着手することになり、負荷が偏ります。月初に30分と決めておくのが現実的です。
やめる判断もある
1年続けて、表示回数がまったく積み上がらない場合は、テーマ選定そのものが自社の顧客と合っていない可能性があります。この場合は本数を増やしても状況は変わりません。
確認するのは、記事のテーマが実際の商談で話題になっているかです。営業が「その話は商談で出たことがない」と言うテーマばかりを書いているのであれば、検索需要があっても自社の顧客層とはずれています。テーマの供給源を営業ヒアリングに切り替えてください。
やめる判断と同じくらい、直す判断にも基準が要ります。直す記事は、リライト対象の選び方と強度の決め方の基準でSearch Consoleから選びます。
執筆を外注するときの発注設計
構成と一次情報を渡さないと、どこにでもある記事が返ってきます。
本数を確保するために執筆を外注する場合、発注の仕方で成果物の質が決まります。テーマだけを渡して「書いてください」と依頼すると、検索上位の記事を要約したような内容が返ってきます。
渡すもの
- 構成案:H2レベルの見出しと、各セクションで書く内容の要点。ここは社内で決めます
- 一次情報:実務での判断基準、失敗した事例、数字の目安。外部ライターが持っていない情報です
- トーンの指定:既存記事を2〜3本読んでもらうのが最も早く伝わります
- 禁止事項:他社記事の引き写し、根拠のない断定、過度な自社宣伝
一次情報の提供が最も手間がかかりますが、ここを省くと外注する意味が薄れます。30分の口頭説明を録音して渡すだけでも、記事の具体性は大きく変わります。
初回は必ず自分で直す
1本目の納品物は、そのまま公開せず自分で手を入れてください。どこを直したかが、次回の発注時に伝えるべき内容になります。多くの場合、3本目あたりから修正量が減っていきます。
修正のたびに指摘するのではなく、頻出する修正を仕様としてまとめて渡すほうが早く改善します。文末表現、見出しの粒度、数字の書き方といった形式面は、一度ルール化すれば以降は発生しません。
単価だけで選ばない
執筆単価の幅は大きく、安い発注先を選ぶと修正工数が膨らみます。修正にかかる自社の時間まで含めて考えると、単価が高くても手戻りの少ない相手のほうが総コストは低くなります。判断は3本発注してみないと分かりません。
担当者が1人のときのリスク
オウンドメディアの運用が特定の1人に依存している状態は、その人が異動や退職をした瞬間に止まります。
完全な分散は難しくても、次の3点は共有しておいてください。テーマの一覧と選定の基準、公開までの手順、外注先とのやり取りの窓口。この3つが1人の頭の中にしかない状態を避けます。
記事の執筆自体は属人化しても構いません。書く人が変われば文体も変わりますが、それは大きな問題ではありません。止まる原因になるのは、書く手前の判断が引き継げないことです。
制作にAIを使う場合、任せてよい工程と任せてはいけない工程があります。一次情報と構成の判断は社内に残し、どの工程をAIに任せるかはマーケ業務の生成AI活用の基準で決めます。外注先がAIを使っている場合も、同じ基準で使った工程を申告してもらいます。
上がってきた構成案をどこまで差し戻すかで迷う場合は、構成案を判断する基準をチェックリストとして使ってください。
執筆だけでなく構成や入稿まで代行会社に任せる場合は、代行会社に発注する前に決める権利・修正回数・成果の定義を契約前に書き込み、納品物にキーワードリストと構成案を含めます。
まとめ
BtoBオウンドメディアの成否は、担当者の空き工数から決めたペースで、ゼロの月を作らずに1年続けられるかで決まります。判断の要点は次の8つです。
- 前半集中型は本数が出ても、評価が動き始める7ヶ月目に体制が残っていない
- 成果が出るまでの期間と時期別の指標を、始める前に経営と合意しておく
- 1〜3ヶ月は公開本数だけを見る。順位や問い合わせで評価しない
- ペースは担当者の空き工数から逆算する。理想の本数から決めない
- 止まった月を作らないことを最重要指標にする。本数は下回ってよい
- ネタは営業ヒアリング・失注理由・既存クエリ・社内フォーマットの4つから供給する
- テーマ決定と一次情報は内製。執筆と図表は外注できる
- 商談への導線は記事が10本の時点で型を決めておく
本数が多いことより、判断できる状態が続いていることのほうが価値があります。評価が動き始めたときに手が動く体制が残っているかどうかで、1年後の結果は変わります。
運用体制のご相談
続けられるペースの設計からご相談いただけます
「立ち上げたが更新が止まっている」「本数は出しているが成果が見えない」といった状態を、確保できる工数と社内の期待値から具体化します。これから立ち上げる段階でも問題ありません。
よくある質問
- 記事は月に何本公開すべきですか。
- 理想の本数から決めないでください。担当者が記事に使える週あたりの時間を実数で出し、1本あたりの所要時間で割り、そこから2割引いた数が計画値です。実務上の目安では、多くの企業で月3〜8本になります。この数字が想定より少なくても、ゼロの月を作らないほうが結果的に積み上がります。
- 成果が出るまでどのくらいかかりますか。
- 新規に立ち上げたドメインの場合、検索からの流入が動き始めるのに半年、記事経由の問い合わせが数えられるようになるまで1年程度を見てください。この期間を始める前に経営と合意しておかないと、3ヶ月目に「効果がない」と判断されて止められます。
- 1記事あたりの文字数はどれくらい必要ですか。
- 検索意図を満たしていれば字数そのものは条件ではありません。8,000字を守ろうとして本数が出せないのであれば、5,000字前後に下げて本数を確保するほうが合理的です。ただし薄い記事を量産する意味ではなく、必要な内容を過不足なく書いた結果としての字数です。
- 記事のネタが続きません。
- 企画会議で捻り出そうとしているのが原因です。営業に月1回15分、商談で繰り返し聞かれる質問と失注の理由を聞いてください。それだけで数本分のテーマが出ます。加えて、社内で使っている設計シートやチェックリストは最も早く記事にできます。
- 執筆を外注してもよいですか。
- 執筆と図表作成、公開作業は外注できます。ただしテーマ決定と一次情報の提供は社内に残してください。実務での判断基準や失敗事例は社内にしかなく、これを渡さないまま外注すると、どこにでもある記事が並ぶことになります。