HubSpotの初期設定は、アカウントの既定値とユーザー、トラッキングコード、ドメイン認証、プロパティとパイプライン、データのインポート、購読タイプ、フォームと通知、レポートとAIの設定を、契約後の4週間ほどで一巡させる作業です。設定画面には左のメニューだけで数十の項目が並び、どこから触っても動くため、タイムゾーンが米国時間のまま、送信ドメインが未認証のまま運用が始まり、数か月後にレポートの日付のずれやメールの不達として表に出ます。
初期設定は、画面の上から順に埋めていく作業ではありません。あとから直すと既存データの修正が必要になる設定を先に決め、DNSの反映待ちがあるドメイン認証は契約した週に依頼を出すという順番を守れば、社内の担当者だけでも4週間ほどで一巡できます。
契約したばかりで設定を社内で進めるなら、最初の週にやることは2つです。タイムゾーンと通貨を確定させることと、DNSを操作できる人にドメイン認証のレコード追加を依頼することです。プランや業種で変わる項目は、その後にプロパティを作る段階で決めれば間に合います。
目次
- 1 HubSpot初期設定は「あとから直しにくい順」に進める
- 2 HubSpotの設定(Settings)画面はどこにあり、何から開くか
- 3 アカウントの既定値・ユーザー・セキュリティで最初に決めること
- 4 トラッキングコードの設置と社内アクセスの除外
- 5 HubSpotのドメイン認証:Eメール送信ドメインを接続する手順
- 6 CRMの土台:会社の関連付け・ライフサイクルステージ・プロパティ・パイプライン
- 7 既存データのインポートと重複の整理
- 8 配信停止(オプトアウト)と購読タイプの設定
- 9 運用開始の前に作るフォーム・通知・個人メールの接続
- 10 レポート・権限の見直しとAI(Breeze)・クレジットの設定
- 11 業種によって初期設定で先に決めること(製造業・製薬・金融・保険・不動産・アパレル)
- 12 初期設定で失敗する条件と、最初の4週間でやらないこと
- 13 まとめ
- 14 よくある質問(FAQ)
HubSpot初期設定は「あとから直しにくい順」に進める
HubSpotの初期設定とは、契約したアカウントを自社の時間・通貨・ドメイン・顧客データの持ち方に合わせる作業のことです。順番は、変更したときに既存データの修正が必要になる設定から決めます。
HubSpotの設定項目は、直しにくさで3つに分かれます。1つ目は、タイムゾーン、会社の通貨、プロパティの型、パイプラインのステージ、インポート済みのデータです。変えると過去のレコードやレポートに手直しが入ります。2つ目は、ドメイン認証とトラッキングコードです。設定するまでの期間のデータが欠けたり、差出人の表示が崩れたりし、その期間は遡って直せません。3つ目は、フォーム、ワークフロー、ダッシュボードで、何度作り直しても既存データには影響しません。
通貨で例を挙げます。無料プランで会社の通貨を米ドルから日本円に変えた場合、HubSpotは既存の取引金額を自動では換算しません。営業部長が月次会議で取引金額のレポートを開いたときに桁の違う金額が混ざっていれば、担当者が1件ずつ金額を直すことになります。契約した日に通貨を決めていれば起きない作業です。
順番に迷ったら「この設定を来月変えたら、すでに入っているデータを直す必要があるか」で判断します。必要なら今週決め、不要なら運用しながら直します。
4週間という期間は、兼任のマーケティング担当者1名と、DNSを操作できる情報システム担当者または制作会社がいる前提での実務上の目安です。既存データが数万件ある場合や、別の基幹システムとの連携がある場合は、3週目のデータ投入だけで2週間以上かかります。
HubSpotの設定(Settings)画面はどこにあり、何から開くか
設定画面は、上部ナビゲーションにある設定アイコン(歯車)から開きます。初期設定で触る項目は十数か所で、画面の場所とプラン条件を先に一覧にしておくと、権限不足やプラン不足で作業が止まる場面が減ります。
英語表示の画面では「Settings」と表示されます。設定アイコンを押すと左のサイドバーに項目が並び、多くの項目はスーパー管理者か、該当する編集権限を持つユーザーだけが変更できます。管理者が情報システム担当者にDNSの作業を頼もうとして、該当する画面が見つからずに半日止まる、という場面は導入初週によく起きます。次の表を作業前に共有しておきます。
| 設定項目 | 画面の場所 | 条件・注意 |
|---|---|---|
| タイムゾーン・会社ドメイン | 設定>アカウントの既定値>「一般」タブ | 「アカウントアクセス」権限が必要 |
| 会社の通貨・複数通貨 | 設定>アカウントの既定値>「通貨」タブ | 複数通貨の追加はStarter以上 |
| ユーザーの追加・チーム | 設定>ユーザーとチーム | チームはProfessional以上 |
| 2要素認証の必須化 | 設定>セキュリティ>「ログイン」タブ | 有料プランは最初から必須 |
| トラッキングコード・IP除外 | 設定>トラッキング & アナリティクス>トラッキングコード | IP除外は「高度なトラッキング」タブ |
| Cookie同意バナー | 設定>プライバシーと同意>「Cookie」タブ | 全プランで利用可 |
| ドメイン認証(Eメール送信) | 設定>コンテンツ>ドメインとURL>「Eメール送信」タブ | 各HubのStarter以上 |
| 会社の自動作成と関連付け | 設定>データ管理>オブジェクト>会社 | 初期状態のオン・オフを確認する |
| ライフサイクルステージ | 設定>データ管理>オブジェクト>コンタクト>「ライフサイクルステージ」タブ | スーパー管理者のみ |
| 購読タイプ(配信カテゴリー) | 設定>マーケティング>Eメール>「サブスクリプションタイプ」タブ | Marketing Hub Starter以上 |
| 個人メールの接続 | 設定>全般>「Eメール」タブ | 各ユーザーが自分で接続する |
| AI機能のアクセス | 設定>AI>「AIアクセス」タブ | 生成AIツールは既定でオン |
| HubSpotクレジットの使用状況 | アカウント名>アカウントと請求>「利用状況と上限」タブ | 上限と通知先もここで確認 |
画面名と場所は、HubSpotの更新で変わることがあります。表の経路は2026年9月時点のHubSpotナレッジベース(日本語版)で確認したものです。見つからない項目は、設定画面の検索欄に項目名を入れて探してください。日本語画面では、同じ機能が「購読タイプ」「サブスクリプションタイプ」「配信カテゴリー」のように複数の名前で表示される場合があります。
アカウントの既定値・ユーザー・セキュリティで最初に決めること
契約した日に、タイムゾーン、会社の通貨、会社ドメインを確定させ、スーパー管理者を2名置きます。有料プランでは2要素認証が必須のため、ユーザーを招待する前に社内へ案内を出します。
タイムゾーン・通貨・会社ドメイン
- 設定>アカウントの既定値>「一般」タブで、タイムゾーンを東京(UTC+09:00)にする。メールの送信予約、ソーシャル投稿の予約、アナリティクスの日時はこの設定に従う
- 営業活動の記録やレコードのタイムライン、プロパティ履歴の時刻は、各ユーザーのパソコンのタイムゾーンで表示される。海外拠点のユーザーがいる場合は、時刻のずれを社内で共有しておく
- 「通貨」タブで会社の通貨を日本円(JPY)にする。海外の取引先と外貨で取引するなら、Starter以上で複数通貨を追加する
- 「一般」タブの会社ドメインに、自社のウェブサイトのドメインを入れる
ユーザーと権限
- スーパー管理者は2名にする。1名だけだと、その人の退職や長期休暇で設定変更も請求の確認もできなくなる。3名以上に増やすと、誰がいつ何を変えたか追えなくなる
- 設定>ユーザーとチームでユーザーを追加し、マーケティング、営業、閲覧のみ、のように役割ごとに権限を揃える
- チームを作って所有者やレポートを部署単位で分けられるのはProfessional以上。Starterでは、担当営業のプロパティで部署を判別する運用にする
- 退職者が出たときに、担当レコードを誰に付け替えてからユーザーを削除するかを手順書に書いておく
2要素認証とシングルサインオン
HubSpotのナレッジベースによると、Starter、Professional、Enterpriseのアカウントでは、ユーザー名とパスワードでログインする全ユーザーに2要素認証が必須で、無効にはできません。無料のアカウントでは、設定>セキュリティ>「ログイン」タブのスイッチで管理者が必須にでき、変更は24時間後に反映されます。
営業10名を月曜の朝に一斉招待すると、認証アプリの登録方法についての問い合わせが管理者に集中します。招待メールを送る前日に、認証アプリかパスキーを使うこと、SMSは推奨されていないことを社内チャットで流しておくと、初日の問い合わせが減ります。SAMLによるシングルサインオンはProfessionalとEnterpriseで使えるため、全社のIDを1か所で管理している会社は、ユーザー招待の前にSSOを設定するかを情報システム担当者と決めてください。
ユーザーを追加する前に、マーケティング・営業・経営層ごとの役割別のユーザー権限の型を決めておくと、エクスポートや一括削除を持つ人を最初から絞れます。
トラッキングコードの設置と社内アクセスの除外
トラッキングコードは、設置した日からしか訪問履歴を記録しません。サイトへの設置と社内IPアドレスの除外を同じ日に済ませ、流入経路の記録ルールもそのときに決めます。
- 設定>トラッキング & アナリティクス>トラッキングコードで埋め込みコードを取得し、サイトの全ページに設置する。WordPressならテーマのフッターかプラグイン、タグ管理ツールを使っているならそこから配信する
- 採用サイトやサービスサイトを別ドメインで運用しているなら、「高度なトラッキング」タブの「追加のサイトドメイン」に登録する
- 同じ「高度なトラッキング」タブで、社内のIPアドレスをアナリティクスから除外する。除外は追加した時点以降のトラフィックにだけ適用され、過去の履歴からは削除されない
- Cookieの同意バナーは、設定>プライバシーと同意>「Cookie」タブで作る。表示する国を選ばなければ、すべての訪問者に表示される
社内IPの除外を後回しにすると、導入直後の1〜2か月は、設定作業で自社サイトを何度も開く社員のアクセスがセッション数に混ざります。広告担当者が翌月から出稿を始める予定なら、その前月のうちに設置と除外を終えておかないと、広告の前後で比較する基準の数字が作れません。
コンタクトの最初の流入経路は「オリジナルソース」というプロパティに記録されます。広告やメールのリンクに付けるUTMパラメータの書き方がばらばらだと、同じ施策が別々の経路として集計されるため、命名ルールはトラッキングコードの設置と同時に決めてください。広告の出稿が始まる前に、UTMパラメータの命名規則を1枚の表にして共有します。
HubSpotのドメイン認証:Eメール送信ドメインを接続する手順
ドメイン認証は、設定>コンテンツ>ドメインとURLの「Eメール送信」タブから始め、HubSpotが生成するDKIM用のCNAMEレコード2件と、SPF用・DMARC用のTXTレコード各1件をDNSに追加します。DNSを操作できる人への依頼が必要なため、契約した週に着手します。
認証しないまま送ると何が起きるか
HubSpotのナレッジベースでは、DKIMの認証がないまま送信すると、差出人アドレスがHubSpotの管理するドメインに書き換えられると説明されています。たとえば「user@yourcompany.com」が「user=yourcompany.com@hs-domain.com」のような表示になり、受信者から見ると自社から届いたメールに見えません。バウンスや迷惑メール判定も起きやすくなり、Googleなどの受信側が大量送信者に求める要件(SPF・DKIM・DMARC)も満たせません。
認証を済ませたあとにテスト配信が迷惑メールフォルダに入る場合は、メールが届かない原因と到達率の確かめ方に沿って、受信側のどこで弾かれているかを切り分けます。
画面での手順
- 上部ナビゲーションの設定アイコンをクリックする
- 左のサイドバーで「コンテンツ」>「ドメインとURL」に進む
- 「Eメール送信」タブを開き、「送信ドメインを接続」をクリックする
- マーケティングメールの送信に使うメールアドレスを入力して「次へ」、ドメインを確認して「次へ」
- DNSプロバイダーにサインインして自動で追加するか、手動で設定するかを選ぶ
- 表示された各レコードの「コピー」を押し、DNSの管理画面に貼り付ける
- HubSpotの画面で状態が「未認証」「一部認証済み」から「認証済み」に変わったことを確認する
| 認証 | レコードの種類 | 件数 | 役割と注意 |
|---|---|---|---|
| DKIM | CNAME | 2 | 送信途中で改ざんされていないことを示す署名。差出人に自社ドメインを表示する条件になる |
| SPF | TXT | 1 | 自社ドメインのメールを送ってよいサーバーを宣言する。既存のSPFがあれば追記する |
| DMARC | TXT | 1 | SPFやDKIMの検証に失敗したメールの扱いを受信側に示す。ルートドメインにあればサブドメインにも継承される |
DNSを操作する人に渡す情報
DNSは、自社の情報システム担当者か、ドメインを預けている制作会社・ホスティング事業者が操作するのが一般的です。依頼には、送信に使うメールアドレス(info.example.co.jpのようなサブドメインを使うかどうか)、HubSpotの画面からコピーしたレコード、既存のSPFレコードの有無、反映までの時間の4点を書きます。ナレッジベースでは、DNSの変更は通常10〜70分で反映され、最大48時間かかる場合があるとされています。
サブドメインで送る場合は、マーケティングメールの差出人アドレスのドメインと一致している必要があります。通常業務のメールと同じドメインで送るか、配信用のサブドメインを分けるかは、守りたい評判の範囲で決まります。HubSpotでランディングページやブログを公開する場合は、同じ「ドメインとURL」の画面から公開用のドメインも接続します。
既存のSPFレコードがあるドメインでは、HubSpot用のTXTレコードを新しく1件足すのではなく、既存のレコードにHubSpotのincludeを追記します。SPFレコードが2件あると認証に失敗し、「v=spf1」と「-all」も1件の中に1回ずつしか書けません。
情報システム担当者にレコードの一覧だけを送って「これを入れてください」と頼むと、既存のSPFを上書きして、社内の通常業務のメールが届かなくなる事故が起きます。DNSの担当者が社内にいない、既存のSPFに何が書かれているか読めない、といった状態であれば、ドメイン認証の進め方を相談してから着手してください。
CRMの土台:会社の関連付け・ライフサイクルステージ・プロパティ・パイプライン
データを入れる前に、コンタクトと会社をどう紐づけるか、ライフサイクルステージを何段階で使うか、どのプロパティとパイプラインで運用を始めるかを決めます。データが入ったあとで変えると、既存レコードの一括修正が必要になります。
会社の自動作成と関連付け
HubSpotは、コンタクトのメールアドレスのドメインと会社のドメインを照合し、会社を自動で作成・関連付けできます。設定は設定>データ管理>オブジェクト>会社にあり、フリーメールのコンタクトはウェブサイトURLのプロパティで照合を試み、URLが空なら関連付けません。グループ会社が同じドメインを使っている企業が顧客に多い場合、別々の会社が1社にまとまってしまうため、該当するドメインを除外リスト(最大1,000件)に入れるか、自動関連付けを使わない判断をします。
ライフサイクルステージ
ライフサイクルステージは、設定>データ管理>オブジェクト>コンタクトの「ライフサイクルステージ」タブで編集でき、変更できるのはスーパー管理者です。既定のステージをそのまま使うか、名前と順序を自社に合わせるかを、営業リーダーとマーケティング担当者が同じ場で決めます。同じ場で、どの時点で営業に渡すかというMQLの定義も決めておくと、ステージの区切りと食い違いません。
プロパティとパイプライン
初期設定で決めるのは、最初の3か月で実際に使うプロパティとパイプラインだけです。リードソース、担当営業、業種、従業員規模のように、レポートや配信の条件に使う項目から作り、自由記述より選択式にします。プロパティの型は作成後に変えにくく、内部名は作成後に変更できない前提で決めてください。項目を足す前にプロパティを作る基準を決め、取引ステージはパイプラインの区切り方に沿って営業と合意してから作ります。
営業リーダーとの打ち合わせは1時間で足ります。ホワイトボードに現在の商談の流れを書き出し、各ステージで「何が起きたら次に進めるか」を1行ずつ書けたら、そのままパイプラインのステージ名と説明欄に入れます。書けないステージは、まだ作りません。
既存データのインポートと重複の整理
インポートは、プロパティとパイプラインを確定させた後に、10〜20件のテストから始めます。インポートで作成したコンタクトは既定でマーケティング対象外になるため、配信する相手だけを明示的にマーケティングコンタクトにします。
インポート前の整形
- 元データの列名と、HubSpotのプロパティの対応表を作る
- 氏名が1列にまとまっていれば「姓」「名」に分ける
- 会社名の表記ゆれ(株式会社の位置、全角と半角)を揃える
- メールアドレスの重複行を消す。HubSpotはコンタクトをメールアドレスで、会社をドメインで重複判定する
- CSVで文字化けする場合はExcel形式で取り込む
テストと本番
- 10〜20件で取り込み、プロパティへの反映を画面で確認してから本番に進む
- 件数が多ければ分割し、各回の結果を確認してから次を取り込む
- インポートの画面で、マーケティングコンタクトとして設定するかを明示的に選ぶ。マーケティングコンタクトの数は契約の課金に直結する
- 展示会リスト、旧CRMなどの取り込み元をリードソースのプロパティに入れ、後から経路別に集計できるようにする
展示会3回分の名刺データ2,000件を、整形せずに一度に取り込む場面を考えます。同じ人が表記違いで3回登録され、稼働中のワークフローの登録条件に合った全員に自動返信が送られ、全件がマーケティングコンタクトとして課金対象になる、という3つの問題が同時に起きます。インポートを実行する前に、稼働中のワークフローの登録条件を確認してください。
インポート後の重複とマージ
重複候補は、データ管理>データ品質の「重複を管理」から確認でき、手動でのマージはすべてのプランで行えます。マージは取り消せないため、どちらの値を残すか(新しい値を優先するか、旧CRMの値を優先するか)を先に決めてから実行します。重複が数百件を超えるなら、名寄せのルールを決めてからマージに手を付けます。旧ツールから移ってきた場合は、乗り換えの手順のうちデータ移行の工程と合わせて進めます。
初回のインポートが終わった後に名刺管理やSFAとつなぐなら、外部ツールとの連携を始める前に決めることとして、項目ごとにどちらを正のデータにするかを先に決めます。
配信停止(オプトアウト)と購読タイプの設定
マーケティングメールの1通目を送る前に、購読タイプを作り、配信停止の導線と、どのコンタクトをマーケティングコンタクトにするかを決めます。オプトアウトは購読タイプの単位で記録されるため、配信を始めてから分け直すと、過去の配信停止の扱いが曖昧になります。
購読タイプは、設定>マーケティング>Eメール>「サブスクリプションタイプ」タブの「配信カテゴリーを作成」から作ります。Marketing HubのStarter以上で使える機能です。受信者が止めたい単位で分け、BtoBでは「セミナー・イベントのご案内」「サービスのお知らせ」「ニュースレター」の2〜4種類で足りることがほとんどです。
営業担当者が顧客から「セミナーの案内は止めてほしいが、契約中サービスのお知らせは受け取りたい」と言われる場面は、配信を始めて数か月で必ず出てきます。購読タイプが1種類しかないと、その顧客は全部の配信を止めるしかなく、契約中の顧客へのお知らせも届かなくなります。
- すべてのマーケティングメールに配信停止リンクが入ることを、テスト送信で確認する
- 配信設定の管理ページと配信停止後のページを、自社のロゴと文言に揃える
- HubSpotのフォームから作られたコンタクトは既定でマーケティング対象、インポートやメール連携で作られたコンタクトは既定で対象外になる。この既定を変えるかを決める
購読タイプが決まったら、1通目を送る前に配信対象の組み方と送信後に見る数字を決めておきます。
運用開始の前に作るフォーム・通知・個人メールの接続
初期設定の段階で作る自動化は、フォーム送信後の自動返信と、営業への通知の2つに絞ります。営業担当者は、各自で個人の受信トレイとカレンダーを接続します。
フォーム
- 問い合わせ、資料請求、セミナー申し込みのように用途別にフォームを作る
- フォームの項目は、先に決めたプロパティと一致させる。フォームのためにプロパティを新しく作らない
- 必須項目は、営業が次の連絡をするのに必要なものだけにする
- 送信後の表示(サンクスメッセージか、別ページへの移動か)を決める
最初のワークフロー
最初に作るのは、フォームごとの自動返信メールと、問い合わせがあったときに担当営業へ送る通知だけです。リードスコアリングやMQLの自動割り当ては、1〜2か月分の行動データがたまってから、実際に商談になったリードの傾向を見て作ります。テスト用のコンタクトで動作を確かめ、ワークフロー名は「[MA]資料請求_自動返信」のように先頭に用途を付けて統一します。ワークフローが5本を超えてきたらワークフローの設計ルールを決め、データがたまった段階でスコアリングの点数を付け始めます。
個人メールとカレンダー
個人の受信トレイは、各ユーザーが設定>全般>「Eメール」タブの「メールアカウントを接続」から接続します。Gmail(Google Workspace)、Outlook(Microsoft 365)、Exchange、IMAPに対応しており、チームで共用しているアドレスは個人用として接続できません。営業チームの立ち上げでは、接続の作業を朝会の10分で全員一緒に行うと、接続漏れが残りません。受信トレイがつながったら、営業側はSales Hubのシーケンスやミーティング予約の設定に進みます。
フォームを自社サイトに置く場合は、HubSpotフォームを作成して自社サイトに埋め込む手順に沿って、トラッキングコードとサイトドメインの登録を済ませてから埋め込みコードを貼ります。
レポート・権限の見直しとAI(Breeze)・クレジットの設定
4週目に、立場ごとのダッシュボードを1枚ずつ作り、AI機能のアクセス範囲とHubSpotクレジットの上限・通知先を確認します。追加クレジットの超過時の請求方法は購入した時期で既定が違うため、契約の担当者が画面で確かめます。
ダッシュボード
- マーケティング担当者向け:セッション数、フォーム送信数、MQL数、メールの配信停止数
- 営業マネージャー向け:ステージ別の取引件数と金額、ステージの滞留日数
- 経営層向け:月次の商談化数と受注金額。必要になってから作る
各ダッシュボードの閲覧・編集の権限を、見る人に合わせて設定します。ダッシュボードに何を載せるか迷ったら、会議で使う数字から逆算してレポートの指標を選びます。
AI機能のアクセス設定
AI機能の設定は、設定>AIの「AIアクセス」タブにあります。ナレッジベースによると、「ユーザーに生成AIツールと機能へのアクセス権を付与」と「ユーザーにBreezeアシスタントへのアクセス権を付与」のスイッチは、どちらも既定でオンです。CRMのデータや通話・メールの内容をAIに参照させるかも同じ画面で選べるため、顧客情報の扱いについて社内規程がある会社は、ユーザーを招待する前にどこまでオンにするかを決めてください。
HubSpotクレジットの上限と通知
クレジットの使用状況は、右上のアカウント名>アカウントと請求>「利用状況と上限」タブの「HubSpotクレジット」で、月間の割り当て量と機能別の内訳を確認できます。使用量が75%、85%、90%に達したときと上限を超えたときに、請求先の担当者とスーパー管理者へ通知が届きます。
契約に含まれるクレジットだけを使っている場合、使い切ると使用量ベースの機能は次のリセット日か追加購入まで止まります。追加クレジットを購入している場合、上限を超えたときに上位の容量へ自動で切り替えるか、使った分だけ従量で請求するかは設定で選べます。既定がどちらになっているかは、契約内容とアカウントの設定画面で確認してください。
追加クレジットを購入したアカウントで月間の上限を決めずに使用量ベースのAI機能を複数のユーザーに開放すると、超過分がそのまま請求されます。開放する前に、上限の金額と通知の受け取り先を決めてください。
プランごとのAI機能とクレジットの付与量は更新が多いため、契約前後の比較はHubSpotの料金プラン比較とあわせて、設定する時点のナレッジベースで確認してください。
業種によって初期設定で先に決めること(製造業・製薬・金融・保険・不動産・アパレル)
設定画面の項目は業種によって変わりませんが、先に決めるべき項目が変わります。取引に代理店が入るか、配信の同意をどう記録するか、商品や物件をどのオブジェクトで持つかで、関連付け・購読タイプ・権限を決める順番が入れ替わります。
| 業種 | 先に決めること | 理由 |
|---|---|---|
| 製造業 | 代理店・商社・エンドユーザーの会社をどう関連付けるか、取引に複数の会社を紐づけるルール | 1件の案件に複数の会社が関わる。1取引に1社で始めると、代理店経由の売上を後から追えない |
| 製薬・医療機器 | 配信してよい相手を判定するプロパティと、購読タイプごとの同意の記録方法 | 届けてよい情報が相手の職種や所属で分かれることが多く、配信条件をプロパティで判定できないと運用で守れない |
| 金融・保険 | ユーザーごとに閲覧できるレコードの範囲と、ログイン方式(2要素認証・SSO) | 閲覧者を限る顧客情報を扱い、アクセス範囲が社内規程で決まっていることが多い |
| 不動産 | 物件を取引で代用するか、カスタムオブジェクト(Enterpriseのみ)で持つか | 1つの物件に複数の問い合わせと取引が紐づくため、後から持ち方を変えると関連付けを作り直すことになる |
| アパレル | マーケティングコンタクトにする範囲と、ECや店舗のデータとの連携方法 | 個人の購入者を扱うとコンタクト数が増えやすく、マーケティングコンタクトの数が費用に直結する |
製造業のマーケティング担当者が、代理店経由で届いた問い合わせをエンドユーザーの会社だけに紐づけて登録すると、半年後に代理店別の商談数を出そうとしたときに、どの代理店から来た案件かが記録に残っていません。取引に代理店とエンドユーザーの両方の会社を関連付けるルールを、最初のインポートの前に決めておきます。物件や製品のように標準オブジェクトに収まらないデータがある場合は、運用が回り始めてからカスタムオブジェクトの設計を検討します。
業界の規制や社内規程が関わる判断は、法務・コンプライアンス部門の確認を優先してください。HubSpotの初期設定で決めるのは、確認した規程を、どのプロパティ・購読タイプ・権限で表すかまでです。
初期設定で失敗する条件と、最初の4週間でやらないこと
初期設定の失敗は、設定の漏れより、決めた内容が記録されていないことから起きます。命名規則、ステージの定義、テスト用コンタクトの扱いを文書に残し、複雑な自動化とカスタムオブジェクトは運用が回り始めてから判断します。
繰り返し起きる失敗
プロパティの乱立は、作成できる人を限定していないアカウントで起きます。「会社名」「企業名」「法人名」のように同じ情報を指すプロパティが部署ごとに作られ、値が3か所に分かれます。作成できる権限を管理者に限り、作る前に既存のプロパティを検索するルールで防げます。
ドメイン認証の後回しは、「まず送ってみてから」という判断で起きます。認証前の配信は差出人の表示が崩れ、最初の数回の開封率やクリック率が、認証後の数字と比べられないデータとして残ります。
テスト用のコンタクトの扱いは、見落とされやすい失敗です。設定作業中に作ったテスト用のアドレスがマーケティングコンタクトとして数えられ、契約数の上限に近づきます。テスト用のアドレスは非マーケティングにし、配信の除外リストに常に入れておきます。
ステージの定義が担当者ごとに違う状態も、運用を始めてから気づきます。「提案済み」に進める条件が営業ごとに違えば、ステージ別の件数は比べられません。各ステージの説明欄に進める条件を書き、社内の手順書と同じ文言にします。
最初の4週間でやらないこと
- 分岐が多いワークフロー:動かない原因が特定できなくなる。自動返信と通知で1か月動かしてから足す
- リードスコアリングの本格運用:行動データがない段階の点数は、根拠のない数字になる
- カスタムオブジェクト:Enterprise限定で、標準の会社・取引で表せないことが運用で確かめられてから作る
- 過去の全データの一括インポート:直近2〜3年の、連絡してよい相手から入れる
- 全員へのスーパー管理者権限:誰が設定を変えたか追えなくなる
ただし、既存のCRMから数万件を移す、基幹システムと連携する、複数の事業部が別々のパイプラインを持つといった条件が重なると、社内の担当者だけで4週間に収めるのは難しくなります。その規模で外部に頼む範囲を検討する場合は、HubSpot設定代行の費用相場と依頼先の選び方が判断材料になります。外部に頼むかどうかにかかわらず、着手前に導入が失敗する理由と自社の状況を照らし合わせておくと、どこで止まりやすいかが見えます。
まとめ
初期設定の順番は、画面の並びではなく、変えたときに既存データを直す必要があるかで決めます。ドメイン認証だけは直しにくさと関係なく、DNSの反映待ちがあるため初週に依頼を出します。
1週目にアカウントの既定値・管理者・トラッキングコードを確定させてドメイン認証を依頼し、2週目にデータの持ち方を決め、3週目にデータを入れ、4週目にフォーム・通知・ダッシュボード・AIの設定を済ませて使い始めます。自動化やスコアリングは、この4週間では作り込みません。
次にやることは3つです。設定画面の一覧表を社内で共有し、DNSを操作できる担当者を特定し、営業リーダーと1時間の打ち合わせでパイプラインのステージと出口条件を決めてください。設定した内容を第三者に確認してほしい場合は、初期設定のレビューを相談できます。
無料相談受付中
自分で進めたHubSpotの初期設定、この順番で合っていますか
ドメイン認証のDNSレコード、会社の関連付け、プロパティとパイプライン、購読タイプの分け方まで、設定済みの画面を見ながら直すべき箇所を確認します。設定作業の途中でも、決めきれない項目が1つあるだけでもご相談ください。
よくある質問(FAQ)
- HubSpotの初期設定にはどのくらいの期間がかかりますか?
- 兼任の担当者1名で進める場合、基本設定からデータ投入・フォームと通知の作成までで4週間が実務上の目安です。既存データが数万件ある場合や、他のシステムとの連携がある場合は、データ移行だけで2週間以上を追加で見込みます。担当者が1名しかいないスタートアップなら、少人数での優先順位の付け方に沿って、フォームと通知から先に動かします。
- HubSpotのドメイン認証をしないとどうなりますか?
- 差出人アドレスがHubSpotの管理するドメインに書き換えられ、自社から届いたメールに見えなくなります。DKIMの認証がないメールはバウンスや迷惑メール判定も起きやすくなるため、設定>コンテンツ>ドメインとURLの「Eメール送信」タブから、DKIM(CNAME 2件)、SPF(TXT 1件)、DMARC(TXT 1件)を追加してください。
- 無料版(HubSpot Free)でも初期設定の項目は同じですか?
- タイムゾーン・通貨・トラッキングコード・コンタクトと会社の設定は無料版でも同じように行いますが、購読タイプ、複数通貨、チームなどは有料プランの機能です。無料版から始める場合でも、プロパティとパイプラインは有料版に移ったあとも使い続ける前提で決めてください。有料への切り替えを検討する時期が来たら、無料版と有料版の違いで、使いたい機能がどのプランに入っているかを確かめます。
- HubSpotの初期設定は自分でできますか?
- 1つの事業部で、既存データが数千件以内、他システムとの連携がない条件であれば、ここで示した順番で社内の担当者が進められます。DNSを操作できる人が社内にいない、複数の事業部のパイプラインを統合する、といった条件がある場合は、その部分だけ外部の支援を使う判断もあります。
- Breeze(AI機能)は初期設定の段階で使い始めるべきですか?
- クレジットを消費しないアシスタント機能は初期段階から使って問題ありません。クレジットを消費する機能は、CRMのデータが整い、月間の上限と通知先を設定してから開放してください。生成AIツールのアクセスは既定でオンのため、顧客情報の扱いに社内規程がある会社は、ユーザーを招待する前に設定>AIで範囲を決めます。