商談の見極め基準の作り方|BANTをそのまま聞いても答えが返らない理由と、代わりに確かめる事実

初回商談では手応えがあったのに、2回目の日程が決まらないまま1か月が過ぎる。提案書を作り込んで持っていったら「社内で検討します」と言われ、その後の連絡が途絶える。営業会議のパイプラインには、担当者が「まだ可能性はある」と言う商談が並び、どれに時間を使うべきかを誰も決められない。商談の見極めを個人の感覚に任せている会社では、提案書を作る時間の多くが、最初から決まる見込みの薄い商談に使われています。

見極めの基準を作るときに、BANTの4項目をそのまま質問にする必要はありません。日本のBtoBでは「予算はいくらですか」「決裁者はどなたですか」と聞いても答えが返らないことが多いため、前回の導入がどう決まったか、稟議がどう流れるか、ほかに何と比べているか、時期の根拠は何かという事実を確かめ、その結果で商談を「追う」「寝かせる」「手放す」に分けます。

初回商談のあと、どの商談を追うかを営業担当者がそれぞれの感覚で決めているなら、基準を作るかどうかは、営業一人が同時に持てる商談の数と、手放した商談をマーケティングに戻す流れがあるかで判断できます。商談が少ない時期や新しい市場を試している時期は、基準を緩めて広く追うほうが合う場合もあります。

商談の見極めは「受注できるか」ではなく「いま時間を使うか」を決める作業

商談の見極め(クオリフィケーション)とは、商談化したあとの案件について、営業がいま時間を使って提案まで進めるかどうかを、事前に決めた基準で判定することです。判定の結果は「追う」「寝かせる」「手放す」の3つに分けます。

見極めを「この商談は受注できるか」の予想だと考えると、営業は判断を先送りにします。受注できるかどうかは提案してみないと分からない、と言えてしまうからです。判定の対象を「来週の提案書作成にこの商談の時間を使うか」に置き換えると、営業担当者もマネージャーも答えを出せます。答えが「使わない」でも、商談が消えるわけではありません。寝かせる商談には再接触の日付を付け、手放す商談には理由を残してマーケティングに戻します。

見極めの位置づけは、リードの段階の判定とは別のものです。問い合わせや資料請求の段階で「営業に渡すかどうか」を決めるのがMQL・SQLの定義で、インサイドセールスが電話で商談化の条件を確かめる手順はインサイドセールスのトークスクリプトで決めます。商談の見極めはその後、営業が初回商談で相手と会ってから提案に入るまでの間に行う判定です。

段階判定する人判定する問い主な材料
リード(MQL)マーケティング営業やインサイドセールスに渡すか属性、行動履歴、スコア
商談化(SQL)インサイドセールス営業の初回商談を設定するか電話で確かめた課題と検討状況
商談の見極め営業とマネージャー提案に営業の時間を使うか初回商談で確かめた事実
失注分析営業とマーケティング負けた理由から何を直すか失注理由と失注したステージ

たとえば営業が3名で、それぞれが常時10件前後の商談を持っている会社を考えます。月曜の営業会議で、マネージャーが「今週提案書を作る商談はどれか」と聞いたとき、担当者が相手の発言をもとに理由を説明できる商談と、「感触は悪くなかった」としか言えない商談が混ざっています。見極めの基準は、後者を前者と同じ扱いにしないための取り決めです。

BANTの4項目を日本のBtoBでそのまま聞くと答えが返ってこない理由

BANTは項目の選び方としては今も使えますが、4項目をそのまま質問にすると日本のBtoBでは答えが返ってきません。予算は案件が決まってから確保されることが多く、決裁者は初回商談に出てこないためです。

BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字を取った、商談の確度を判断するための確認項目の組み合わせです。4つが確認できた商談は受注に近い、という考え方で、営業研修やSFAの入力項目にもよく使われています。

問題は、4項目を初回商談でそのまま質問にしたときです。日本の中堅・中小企業を相手にすると、次のような返答になることが多くあります。

BANTの項目そのまま聞いたときの返答答えが返らない理由
Budget(予算)「まだ決まっていません」「見積もりを見てから考えます」新しい取り組みの予算は、提案と見積もりが出てから稟議で確保する会社が多い。年度予算に枠があっても、担当者は金額を知らないか、言わない
Authority(決裁権)「最終的には上が決めます」「社内で相談します」決裁は部長・役員・経営会議などの合議で、決裁者本人は初回商談に出ない。担当者に「決裁者は誰か」と聞くと、自分が決められないことを認めさせる質問になる
Need(必要性)「課題は感じています」「情報収集の段階です」課題は話してくれるが、放置した場合に誰がどれだけ困るかまでは話さない。必要性の強さが分からない
Timeframe(導入時期)「なるべく早く」「年度内には」時期を答えることはできても、その時期に決めなければならない理由がない。根拠のない時期はそのまま延びる

BANTの4項目が示している「お金を出す仕組みがあるか」「決める人と手順が分かっているか」「困っている度合い」「急ぐ理由」という観点自体は正しいものです。変えるべきは聞き方で、相手が答えられない質問(金額や決裁者の名前)を、相手が答えられる事実の質問に置き換えます。担当者は予算の金額を知らなくても、前回システムを入れたときにどう決まったかは知っています。

初回商談でBANTを一問ずつ聞くと、もう1つ困ることが起きます。相手は「値踏みされている」と感じ、課題の話が浅くなります。営業担当者が「予算は未定、決裁者は不明、時期は年度内」とCRMに入力しても、その情報から次に何をすべきかは分かりません。

予算と決裁者の代わりに確かめる4つの事実

確かめるのは、前回の導入の決め方、稟議の流れ、比較中の選択肢、導入したい時期の根拠の4つです。どれも担当者が自分の知っていることとして答えられ、答えがそのまま次の行動を決めます。

前回の導入の決め方

予算の金額の代わりに、似た規模の外部サービスやシステムを前回どう導入したかを聞きます。「前にツールや外部の会社を入れたときは、どなたが言い出して、どういう順番で決まりましたか」という聞き方です。担当者は自分が関わった過去の出来事なら具体的に話せます。

答えから分かるのは、お金が出る道筋です。「現場の部長が必要だと言って、その年度の部門予算から出した」なら、部門の裁量で決まる商談です。「毎年秋に翌年度の予算を申請して、通ったものだけ4月から始めた」なら、提案の時期によっては翌年度まで決まりません。前回の導入が「なかった」という答えも情報で、社内に外部サービスを入れる手順そのものがない会社では、提案の前に手順を一緒に作る必要があります。

稟議の流れ

決裁者の名前の代わりに、稟議がどう流れるかを聞きます。「このくらいの金額だと、社内ではどなたの承認が要りますか」「稟議書は誰が書いて、何人のハンコが要りますか」と聞くと、担当者は決裁者を名指しせずに社内の手順を説明できます。

稟議の流れが分かると、誰に何を渡せばよいかが決まります。情報システム部門の確認が途中に入るならセキュリティの資料を先に用意し、経理の確認が入るなら費用の内訳を分けた見積もりを出します。担当者が「稟議書は自分が書く」と言えば、その人が社内で説明するための資料が要ります。流れを聞いても担当者が答えられない場合、その人は社内で案件を進める立場にない可能性が高く、誰なら進められるかを次に聞きます。

比較中の選択肢(何もしないことを含む)

必要性の強さは、相手がほかに何と比べているかで分かります。「ほかにも検討されているサービスや、社内で対応する案も含めて、どんな選択肢がありますか」と聞き、選択肢に「今のまま何もしない」が入っているかを確かめます。

比較先が同業のサービスなら、相手は導入すること自体は決めていて、どれにするかを選んでいる段階です。比較先が「社内で人を採用する」「今のExcelで続ける」なら、導入するかどうかをまだ決めていません。後者の商談で他社との違いを説明する提案書を作っても、相手が知りたいのは「やらなかった場合にどれだけ困るか」なので、提案がかみ合いません。

導入したい時期の根拠

時期はそのまま聞いてかまいませんが、答えに続けて「その時期にしたい理由は何ですか」と根拠を聞きます。根拠には強いものと弱いものがあります。

根拠の種類相手の発言の例時期の確かさ
外部の期限「今のシステムの契約が3月で切れる」「法改正の施行日に間に合わせたい」高い。期限を過ぎると相手が困る
社内の予定「4月に新しい部署ができる」「来期の事業計画に入っている」中程度。予定が変わると一緒に動く
担当者の希望「できれば早めに」「年度内に何か進めたい」低い。そのまま延びることが多い

BANTの項目と4つの事実の対応は次のとおりです。

BANTの観点代わりに確かめる事実聞き方の例答えで決まる次の行動
Budget前回の導入の決め方「前に外部のサービスを入れたときは、どういう順番で決まりましたか」今期の部門予算で進めるか、次の予算申請に合わせるか
Authority稟議の流れ「このくらいの金額だと、どなたの承認が要りますか」誰向けの資料を用意するか、誰との面談を依頼するか
Need比較中の選択肢「社内で対応する案も含めて、どんな選択肢がありますか」他社との違いを示すか、やらない場合の損失を示すか
Timeframe時期の根拠「その時期にしたい理由は何ですか」いま提案するか、根拠が生まれる時期まで寝かせるか

4つの事実はどれも、相手が知っている過去や社内の手順を聞く質問です。相手に「決めていないこと」を答えさせないので、初回商談でも答えが返ってきます。

追う・寝かせる・手放すを分ける基準を作る

基準は「手放す条件」「寝かせる条件」「追う条件」の順に作ります。手放す条件は自社で解決できるかと対象企業に合うかの2つに絞り、残りは時期の根拠と稟議の流れが確かめられたかで分けます。

判定の順番を図にすると次のようになります。3つの問いに順に答えるだけで、どの商談をどう扱うかが決まります。

初回商談を終えた 自社で解決できる課題か 対象企業の条件に合うか いいえ 手放す 理由を残して戻す はい 相手が自社の事情で 時期の根拠を話したか いいえ 寝かせる 再接触の日付を付ける はい 稟議の流れと比較中の 選択肢を確かめたか いいえ 追う 次回の議題で確かめる はい 追う 提案書の作成に進む
図1:初回商談のあとに商談を3つに分ける判定の順番

手放す条件は2つに絞る

手放す条件は、自社の商品やサービスで相手の課題を解決できないことと、相手が自社の対象とする企業の条件(業種、規模、利用環境など)から外れていることの2つにします。対象企業の条件はICP(理想顧客像)として決めたものをそのまま使います。

「予算が小さい」「決裁者に会えていない」を手放す条件に入れないのは、初回商談の時点では確かめようがないからです。確かめようのない条件で手放すと、営業担当者の印象で判定しているのと変わりません。

寝かせるのは、時期の根拠が相手の側にない商談

課題も対象企業の条件も合っているのに、時期の根拠が「担当者の希望」しかない商談は寝かせます。寝かせる商談には、相手の事情が動きそうな日付(次の予算申請の時期、今の契約の更新月、新しい部署の立ち上げ時期など)を再接触日として付けます。日付を付けずに寝かせた商談は、誰も再接触しないまま忘れられます。

「寝かせる」は「提案書を作らない」という意味で、連絡を絶つ意味ではありません。相手が比較のための情報を集めている段階なら、事例や料金の目安を送り、相手の事情が動いたときに最初に思い出してもらえる状態を保ちます。年単位で接点を保つ場合は、検討期間が長いリード向けのナーチャリングの配信に移したほうが営業の負担が減ります。

追う商談にも「次回で確かめること」を付ける

時期の根拠があっても、稟議の流れや比較中の選択肢が分からないまま提案書を作ると、提案の場で「社内で検討します」と言われて止まります。追うと判定した商談のうち、4つの事実のどれかが欠けているものは、次の商談の議題に「稟議の流れを確認する」「比較している選択肢を聞く」と書き込みます。4つがそろった商談だけを提案書の作成に進めます。

判定は初回商談の直後と、提案書を作り始める前の2回行います。初回商談の翌日までに担当者が判定を入力し、週1回の営業会議でマネージャーが「寝かせる」「手放す」と判定された商談を確認する、という運用にすると、判定が担当者一人の判断で終わりません。

見極めの確認事項を初回商談で聞く順番と、答えが返らないときの扱い

初回商談では、課題、比較中の選択肢、時期の根拠、稟議の流れの順に聞きます。答えが返らなかった項目は無理に聞き出さず、次の商談の議題に回し、答えが返らなかったこと自体を判定の材料にします。

聞く順番は、相手が答えやすいものから答えにくいものへ並べます。課題の話は相手が商談に来た理由なので最初に聞けます。課題を聞いたあとに「その課題に対して、ほかにどんな方法を考えていますか」と比較中の選択肢へつなげ、「いつごろまでに解決したいですか」「その時期の理由は」と時期へ進みます。稟議の流れは最後に、「もし進めるとしたら、社内ではどんな手順になりますか」と仮定の形で聞くと、相手は構えずに答えます。

営業のほうから先に自社側の進め方を示すと、相手も社内の手順を話しやすくなります。「ほかのお客様では、担当の方が社内説明用の資料を作って、部長会で承認を取る流れが多いのですが、御社ではいかがですか」と例を出すと、相手は違いを話すだけで済みます。

初回商談の資料は、この4つを聞く時間を残す長さにします。会社紹介と製品説明で60分の大半を使うと、確認事項を聞く時間がなくなります。資料の組み立ては商談の進行台本として作る営業資料の考え方で、説明する部分と聞く部分の順番を決めておきます。相手がすでに製品を下調べしてきている場合は、下調べを済ませてくる顧客との初回商談のように説明を削り、確認事項に時間を回せます。

答えが返らなかったときの扱いは、項目ごとに決めておきます。

答えが返らなかった項目考えられる状況次の商談でやること
前回の導入の決め方担当者が入社して間もない、外部サービスの導入経験がない会社社内で導入経験のある人を紹介してもらう
稟議の流れ担当者が情報収集を任されただけで、案件を進める立場にない上長が同席する商談を依頼する
比較中の選択肢比較を始めていない、または競合名を言いたくない「社内で対応する場合」との比較から話す
時期の根拠時期を決める出来事がまだない寝かせる判定にして、再接触日を相手と決める

商談録画を残している会社なら、判定が外れた商談の録画を月に数件見直すと、どの質問で答えが返らなかったか、どの言い回しなら答えが返ったかが分かります。録画を営業の型に落とし込む手順は、商談録画の活かし方の考え方をそのまま使えます。

BANT・MEDDIC・CHAMPはどう違い、自社はどれを使うか

枠組みの違いは、確認する項目の数と、どこまで相手の社内の決め方に踏み込むかです。どれかを丸ごと採用するより、自社の過去の受注で実際に決め手になった事実を項目にするほうが判定が当たります。

BANT、MEDDIC、CHAMPは、いずれも商談の確度を判断するための確認項目の組み合わせです。違いを表にすると次のとおりです。

枠組み確認する項目向く商談日本のBtoBで使うときの注意
BANT予算、決裁権、必要性、導入時期関係者が少なく、単価が比較的小さい商談予算と決裁権は事実の質問に置き換える
MEDDIC成果の指標(Metrics)、予算を持つ決裁者(Economic Buyer)、選定基準(Decision Criteria)、決定までの手順(Decision Process)、課題(Identify Pain)、社内の推進者(Champion)関係者が多く、検討期間が長い高単価の商談項目が多く、少人数の営業では入力が続かない。社内の推進者と決定手順の2項目だけでも取り入れる価値がある
CHAMP課題(Challenges)、決裁権(Authority)、予算(Money)、優先度(Prioritization)課題の深さで商談の質が決まる商材優先度は「比較中の選択肢」で確かめると答えが返る
自社の見極め項目過去の受注・失注から選んだ4〜6項目どの商談でも最初は仮の項目で始め、判定が外れた商談を見て直す

MEDDICとBANTの大きな違いは、MEDDICが「誰が社内で案件を進めるか(Champion)」と「どんな手順で決まるか(Decision Process)」を独立した項目にしている点です。日本の稟議による合議の意思決定では、決裁者一人を特定するより、稟議書を書いて社内を説明して回る人がいるかどうかのほうが結果を左右します。「稟議の流れ」を確かめる質問は、MEDDICのこの2項目を日本の商談で聞ける形にしたものです。

自社の見極め項目を作るときは、直近の受注と失注をそれぞれ数件ずつ並べ、受注した商談で初回商談の時点に分かっていた事実を書き出します。受注にはあって失注にはなかった事実が、自社の見極め項目の候補です。失注の理由の分類そのものは失注分析の分類と運用で作っておくと、候補を探しやすくなります。

枠組みの名前を社内で覚えることに時間を使う必要はありません。営業会議で「BANTは埋まったか」と聞くより、「稟議の流れは分かったか」「時期の根拠は何か」と聞くほうが、担当者は具体的な答えを返します。

見極めの結果をCRMに残し、手放した商談をマーケティングに戻す

判定の結果は、取引のステージを進めるときの必須項目として残し、手放した商談は理由コードを付けてマーケティングに戻します。寝かせる商談をパイプラインに残し続けると、売上の見通しが実態より大きく見えます。

4つの事実は、CRMの取引レコードに選択式の項目として持たせ、ステージを「提案」に進めるときに入力しないと進められない形にします。「稟議の流れ:確認済み/未確認」「時期の根拠:外部の期限/社内の予定/担当者の希望/不明」のように選択肢を決めておくと、営業会議で一覧にして確認できます。どのステージの出口で何を必須にするかは、取引パイプラインのステージ設計と合わせて決めます。

寝かせると判定した商談を、進行中の商談としてパイプラインに残すかどうかは、先に決めておきます。残すと、受注予定日だけが毎月後ろへずれる商談がパイプラインの金額を膨らませ、パイプラインカバレッジの計算が実態と合わなくなります。寝かせる商談は、いったん「時期尚早」の理由で閉じ、再接触日を付けてマーケティングの管理下に戻すほうが、パイプラインの数字を信用できる状態に保てます。

手放した商談と寝かせた商談をマーケティングに戻すときの理由コードや、再び営業に渡す条件は、営業から差し戻されたリードの戻し先のルールと同じ仕組みに乗せます。見極めの基準だけを作って戻し先を作らないと、営業担当者は商談を手放すと二度と戻ってこないと考え、見込みの薄い商談を抱え続けます。

見極めの項目をCRMに入れる段階で、自社の営業の進め方に合う項目の選び方を相談したい場合は、現在の商談の進め方とCRMの項目を一緒に確認する相談もお受けしています。

見極めで確かめた稟議の流れや導入時期の根拠は、着地見込みの判断にもそのまま使えます。見極めの事実を予測カテゴリーの条件に使う方法に沿って、「ほぼ確定」に入れる条件を同じ事実で決めます。

見極めを厳しくしすぎないほうがよい場合

商談の数が少ない時期、新しい市場や商材を試している時期、営業の手が空いている時期は、基準を緩めて広く追います。厳しい基準で手放した商談の中に受注できたものがあっても、その損失は数字に表れないためです。

見極めの基準は、営業の時間が足りないときに時間の使い道を決めるためのものです。営業一人あたりの商談が少なく、提案書を作る時間に余裕がある時期に同じ基準を当てはめると、提案すれば決まったかもしれない商談まで手放すことになります。手放した商談が受注できたかどうかは誰にも分からないので、基準が厳しすぎても気づけません。

基準を緩めたほうがよいのは、次のような場合です。

状況緩める理由緩め方
商談の数が少ない時期(立ち上げ期、繁忙期明け)営業の時間が余っており、手放す理由がない手放す条件だけを残し、寝かせる判定を使わない
新しい市場・業種・商材を試しているどんな相手が受注に至るかが分かっておらず、基準の根拠がない判定はせず、4つの事実の記録だけを続ける
単価が小さく、提案の手間も小さい商材見極めにかける時間のほうが提案より長くなる見積もりを早く出し、相手の反応で判定する
営業が基準を理由に商談を断るようになった基準が、追わない理由を探す道具になっている手放した商談をマネージャーが週1回確認する

新しい市場を試している時期に判定をしなくても、4つの事実の記録は続けます。数か月分の記録がたまると、どの事実がそろった商談が受注に至ったかが見え、その市場向けの基準を作る材料になります。

反対に、たとえば営業一人が同時に20件以上の商談を抱えていて、提案書の作成が週をまたいで遅れている会社では、基準を作らないことの損失のほうが大きくなります。見込みの薄い商談の提案書作成に時間を取られ、時期の根拠がはっきりした商談への対応が遅れるためです。

まとめ

商談の見極めは、受注できるかを当てる作業ではなく、いまこの商談に営業の時間を使うかを決める作業です。BANTの観点はそのまま使えますが、予算の金額と決裁者の名前を聞く代わりに、前回の導入の決め方、稟議の流れ、比較中の選択肢、時期の根拠という、相手が答えられる事実を確かめます。

基準は手放す条件を2つに絞り、時期の根拠がない商談は日付を付けて寝かせ、4つの事実がそろった商談だけを提案に進めます。取り組む順番は、直近の受注と失注を数件ずつ並べて受注した商談にだけあった事実を書き出すこと、その事実を初回商談の確認事項とCRMの必須項目にすること、手放した商談の戻し先を決めることです。商談の数が少ない時期や新しい市場を試している時期は、判定をせずに記録だけを続けます。

自社の商談データから見極めの項目を作り、CRMと営業会議の運用まで整えたい場合は、ご相談ください。

無料相談

どの商談に提案の時間を使うか、基準を一緒に作ります

「提案書を作っても社内検討のまま止まる」「パイプラインの商談の半分が動いていない」「見極めが営業ごとにばらばら」。こうした状態は、初回商談で確かめる事実と、追う・寝かせる・手放すの判定の基準を決めることで変えられます。Ampelは外部CMOとして、直近の受注と失注の商談を一緒に見直し、見極めの項目、CRMの必須項目、手放した商談をマーケティングに戻す流れまでを営業の方と設計します。

よくある質問

BANTとは何の略ですか
BANTは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字です。商談の確度を判断するために確認する項目の組み合わせで、4つがそろった商談ほど受注に近いと考えます。日本のBtoBでは予算と決裁権をそのまま聞いても答えが返らないことが多いため、前回の導入の決め方や稟議の流れを聞く形に置き換えて使います。
初回商談で予算を直接聞いてもよいですか
聞いてもかまいませんが、答えが返ることは期待しないほうが現実的です。新しい取り組みの予算は、見積もりを見てから稟議で確保する会社が多く、担当者も金額を知らないことがあります。「前に外部のサービスを入れたときは、どの予算から出しましたか」と過去の事実を聞くと、お金が出る道筋が分かります。
MEDDICとBANTの違いは何ですか
MEDDICはBANTより項目が多く、社内で案件を進める推進者(Champion)と決定までの手順(Decision Process)を独立して確かめる点が違います。BANTは関係者が少ない商談、MEDDICは関係者が多く検討期間が長い高単価の商談に向きます。日本の稟議による意思決定では、MEDDICの推進者と決定手順の2項目を取り入れるだけでも判定が当たりやすくなります。
決裁者に会えないまま商談を進めてもよいですか
稟議の流れと、稟議書を書いて社内を説明する人が分かっていれば進めてかまいません。決裁者本人に会えるかどうかより、担当者が社内で案件を進められる立場にあるかのほうが結果を左右します。担当者が稟議の流れを答えられない場合は、上長が同席する商談を依頼してから提案に進みます。
見極めの項目はいくつがよいですか
初回商談で確かめる項目は4〜6個が目安です。項目が多いと商談が質問攻めになり、CRMへの入力も続きません。自社の過去の受注で決め手になった事実から選び、判定が外れた商談を見て入れ替えます。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。