インサイドセールスが機能しない理由|リード不足とKPIの罠

インサイドセールスが機能しない理由|リード不足とKPIの罠

インサイドセールスを設置して半年が経つ。担当者は毎日架電しているし、アポイントの数も報告されている。しかし商談は増えず、受注につながった案件も見当たらない。営業からは「行っても手応えがない」という声が上がっている。

この状態で語られる原因は、KPI設計、トークスクリプト、ツールの不足、教育体制といったものです。いずれも要因ではありますが、順序が違います。多くの場合、最初に確認すべきは架電できる対象が足りているかどうかです。月に30件しかリードが入らない状態で専任を1名置けば、1週間で対象を使い切ります。その後は同じ相手に何度もかけることになり、成果は出ません。

この記事では、どこで止まっているかの切り分けから始め、4つの原因と立て直しの順序を扱います。既に設置していて成果が出ていない状態を想定しています。

どこで止まっているかを切り分ける

原因の場所によって、打つ手がまったく違います。

インサイドセールスが機能していないと感じたとき、まず数字を4つ並べてください。

1. 架電できる対象の数 今月かけられる相手は何件あるか ここが少なければ、他をいくら直しても 成果は動かない 2. つながった件数 担当者と話せた割合 低ければ、時間帯と手段を見直す 3. アポイントの件数 商談の約束が取れた数 低ければ、対象か話す内容がずれている 4. 商談として成立した件数 営業が行って、次につながった数 3は多いのに4が少ないなら、 アポの質が問題
図1:どこで止まっているかの切り分け

この4つのうち、どこが細いかで原因が特定できます。1が少ないのに2から4を改善しようとするのが、最もよくある間違いです。トークスクリプトを作り直しても、かける相手がいなければ意味がありません。

数字が取れていない場合は、まず記録から始めてください。1週間分でも実数が出れば、議論の対象が変わります。

原因1|架電できる対象が足りていない

最も多い原因です。組織の問題ではなく供給の問題です。

インサイドセールスの担当者が1名いれば、1日に30件から50件の架電ができます。月に換算すると600件から1,000件です。同じ相手には月に何度もかけられないため、実質的にはそれに近い数の対象が必要になります。

一方、月間の新規リードが30件しかない企業は珍しくありません。この状態で専任を置くと、数日で対象を使い切ります。その後は過去のリードを掘り返すことになりますが、それも数ヶ月で枯渇します。

結果として起きるのは、次のような状態です。

  • 同じ相手に何度も連絡する:関係が悪化し、その後の見込みも失います
  • 対象外の企業にもかけ始める:件数を確保するため、条件を緩めます
  • 担当者の手が空く:他の業務を兼務し、インサイドセールスが形骸化します

対処は2つしかありません。リードの供給を増やすか、インサイドセールスの規模を供給に合わせるかです。

供給を増やす場合、獲得施策の見直しが先になります。BtoBリード獲得施策一覧で施策の選択肢を、休眠リードの掘り起こし方法で既存データの活用を扱っています。過去に接点があった相手は、完全な新規より確度が高くなります。

規模を合わせる場合は、専任ではなく兼務に戻す判断になります。設置の是非を含めた基準はインサイドセールスの立ち上げ方で扱っています。撤退ではなく、供給が増えるまで待つという選択です。

リードが足りない状態で人を増やすと、状況は悪化します。1人が使い切っている対象を2人で分けることになり、1人あたりの件数はさらに減ります。増員の前に供給を確認してください。

原因2|アポイント数をKPIにしている

数を追うと確度が下がり、営業が行かなくなります。

インサイドセールスのKPIとして、アポイント数を設定している企業は多くあります。分かりやすく、日次で追える数字だからです。しかしこれが機能不全の原因になります。

アポイント数を目標にすると、達成する最も簡単な方法は基準を下げることです。「情報交換だけでも」「15分だけでも」と打診すれば、件数は増えます。ただしそうして取れたアポイントは、相手に検討の意思がありません。

営業が数回続けて手応えのない商談に行くと、次から優先度を下げます。訪問が遅れ、キャンセルが増え、最終的にはインサイドセールスからのアポイントが信用されなくなります。この段階に入ると、数字は達成されているのに成果はゼロという状態になります。

指標を変えてください。見るべきは次の3つです。

指標意味扱い
商談化した件数営業が行き、次の約束につながった数主指標にする
アポイント数約束が取れた数参考値。目標にしない
商談化率アポイントのうち商談になった割合質の監視に使う
接触件数担当者と話せた数活動量の確認のみ

主指標を商談化した件数にすると、行動が変わります。確度の低い相手を無理に約束に持ち込む理由がなくなり、代わりに「今は時期ではない」という判断を残すようになります。この判断が記録されると、次の接触のタイミングが分かります。

商談化率が5割を下回っているなら、アポイントの基準が緩すぎます。件数が半分になっても構わないので、基準を上げてください。営業の信頼が戻るまでは、量より質を優先します。

営業に引き渡す基準そのものの設計はMQL・SQLの定義と設計方法、商談化率の見方は商談化率の改善で扱っています。

原因3|渡した後の情報が戻ってこない

一方通行だと、いつまでも精度が上がりません。

インサイドセールスが営業にアポイントを渡した後、その商談がどうなったかが本人に伝わっていないことがあります。受注したのか、失注したのか、失注ならなぜか。この情報がないと、どういう相手を渡せばよいのかが学習できません。

結果として、担当者は自分の判断が正しかったのかを確認できないまま、同じやり方を続けます。半年経っても精度が上がらない原因の多くはここにあります。

必要なのは大がかりな仕組みではありません。次の2つで足ります。

  • 商談の結果を記録する場所を1つ決める:受注・失注・保留と、その理由を短く残します
  • 週に1回、営業と話す時間を作る:30分で構いません。渡した案件の状況と、どんな相手が良かったかを共有します

2番目が特に効きます。数字の共有ではなく、会話が必要です。「あの会社は担当者に決裁権がなかった」「あの業界は今どこも検討が止まっている」といった情報は、記録には残りにくいためです。

連携の設計はマーケティングとインサイドセールスの連携、営業との分担はマーケティングと営業の連携で扱っています。

原因4|1人で置いている

少人数で始めるのは正しいのですが、1人には固有の問題があります。

インサイドセールスは少人数で始めるほうがうまくいく、とよく言われます。小さく試して改善を回せるためで、これ自体は正しい考え方です。ただし1人と2人には、人数以上の差があります。

1人体制で起きることを挙げます。

  • 比較する対象がない:話し方や対象の選び方が良いのか悪いのか、判断する基準が社内にありません
  • 休むと止まる:体調不良や退職で、活動が完全に停止します
  • 相談相手がいない:断られ続ける仕事なので、1人だと精神的な負荷が大きくなります
  • 属人化する:やり方が言語化されないまま個人の中に溜まり、引き継げません

2人にできない場合は、営業の1人が週の一部だけ同じ業務を担当する形にしてください。フルタイムでなくても、比較対象と相談相手ができるだけで状況が変わります。

また、1人体制であっても記録は残してください。何を話したか、どんな反応だったかを短くでも書き残す運用にすると、後から見返せます。属人化を防ぐ最低限の手段です。

役割の分け方についてはSDRとBDRの違いで扱っています。人数が限られる段階では役割を分けず、1人が両方を担う形で構いません。

立て直しの順序

供給の確認から始めます。教育とツールは後です。

着手する順序を間違えると、費用と時間だけがかかります。

順序やること期間の目安
14つの数字を1週間分記録する1週間
2架電対象の残数を数える1日
3主指標をアポ数から商談化数に変える即日
4営業との週次の場を作る即日
5足りていない供給を埋める施策を決める1ヶ月
6トークや対象の絞り方を改善する継続
7ツールの導入を検討する必要になってから

1から4までは費用がかかりません。多くの企業が6や7から着手しますが、供給が足りていない状態でトークを磨いても数字は動きません。

2の結果によっては、インサイドセールスを一度縮小する判断もあり得ます。撤退ではなく、供給が整うまで規模を戻すという選択です。設置したものを維持することが目的ではありません。

自社のどこで止まっているかの切り分けを相談したい場合は、現在のリード数と体制を前提にご相談いただけます

営業出身者を置いたのに機能しない

インサイドセールスの担当に営業経験者を配置したものの、成果が出ないという相談があります。営業ができる人なら電話も得意だろう、という前提で配属されるケースです。

しかし必要な力が違います。営業は目の前の1社に時間をかけて深く理解し、提案を作ります。インサイドセールスは短い接触で多くの相手を見極め、進めるか見送るかを判断します。深さより、切り分けの速さが要ります。

営業出身者が陥りやすいのは、1件ずつ丁寧に対応しすぎることです。関心の薄い相手にも時間をかけ、結果として件数が伸びません。逆に、見込みのない相手を早く見送る判断ができる人のほうが向いています。

配属の際は、経験ではなく「見送る判断ができるか」を基準にしてください。そのうえで、見送った相手をどう記録し、いつ再接触するかの運用を用意します。見送りが失敗として扱われる評価制度だと、この判断はできません。

メールと電話の使い分けができていない

架電だけで接触しようとすると、つながらない相手に時間を使い続けることになります。担当者の在席率は下がっており、電話だけで完結する前提は現実に合わなくなっています。

先にメールを送り、反応があった相手に電話する順序にしてください。反応とは返信だけでなく、開封やリンクの閲覧も含みます。この情報が取れる状態にしておくと、かける相手の優先順位がつきます。

また、電話がつながらなかった相手に何も残さないのは機会損失です。不在だった場合もメールを1通送り、誰から何の用件だったかを伝えてください。次にかけたときの反応が変わります。

経営が現場任せにしている

インサイドセールスの設置は、営業のやり方を変える判断です。誰がどの段階を担当し、どの数字で評価されるかが変わります。この変更は現場だけでは決められません。

設置を指示したあと運用を現場に任せきりにすると、営業側の協力が得られないまま担当者だけが孤立します。特に、営業の目標にインサイドセールス経由の商談が含まれていない場合、優先されないのは当然の結果です。

確認すべきは2点です。営業の評価に、渡された商談への対応が含まれているか。そして、インサイドセールスの成果が誰の目標として扱われているか。どちらも「誰の目標でもない」状態になっていると、半年後には形だけが残ります。

成果が出るまでの期間を共有していない

立ち上げから成果が見えるまでには時間がかかります。最初の1〜2ヶ月は対象の整理と話す内容の調整に充てられ、商談が安定して出るのは3ヶ月目以降になることが多くなります。

この想定を経営と共有していないと、2ヶ月目の数字が悪い時点で判断が下されます。開始前に、いつの時点で何を見て判断するかを決めておいてください。1ヶ月目は活動量、2ヶ月目は接触率とアポの質、3ヶ月目から商談化数、という段階を置くと議論が噛み合います。

まとめ

インサイドセールスが機能しない原因と対処を整理します。

  • まず4つの数字(対象数・接触数・アポ数・商談化数)を並べ、どこが細いかを特定する
  • 最も多い原因は架電対象の不足。専任1名は月600件以上の対象を必要とする
  • 月30件のリードで専任を置くと、数日で対象を使い切る
  • リードが足りない状態で増員すると悪化する。供給を先に確認する
  • アポイント数をKPIにすると基準が下がり、営業が行かなくなる
  • 主指標は商談化した件数にする。アポ数は参考値にとどめる
  • 商談化率が5割を下回るなら、件数が半減しても基準を上げる
  • 渡した後の結果が戻らないと、いつまでも精度が上がらない。週30分の会話を作る
  • 1人体制には比較対象・相談相手・引き継ぎの問題がある。営業の兼務でもよいので2人にする
  • 立て直しは供給の確認から。教育とツールは後回しでよい

インサイドセールスは、置けば商談が増える仕組みではありません。十分な量のリードがあり、渡す基準が定まっていて、結果が返ってくる流れができて初めて機能します。うまくいっていない場合、原因は担当者の能力よりも設計にあることがほとんどです。

体制立て直しのご相談

どこで止まっているかの切り分けからご相談いただけます

「架電しているのに商談が増えない」「営業から信用されていない」といった状態を、月間のリード数と商談化率から具体化します。数字が揃っていない段階でも問題ありません。

よくある質問

架電しているのに商談が増えません。何から見直すべきですか。
まず架電できる対象が足りているかを確認してください。専任1名は1日30〜50件、月600〜1,000件の架電が可能なため、同程度の対象数が必要です。月間の新規リードが30件程度であれば、数日で使い切ります。トークスクリプトやツールの見直しは、供給が足りていることを確認してからです。
KPIはアポイント数でよいですか。
主指標にはしないでください。アポイント数を目標にすると「情報交換だけでも」と基準を下げて件数を作るようになり、確度の低いアポイントが増えます。営業が数回手応えのない商談に行くと優先度を下げ、最終的にインサイドセールスが信用されなくなります。主指標は商談化した件数にし、アポイント数は参考値として見てください。
リードが足りない場合、どうすればよいですか。
対処は2つです。リードの供給を増やすか、インサイドセールスの規模を供給に合わせるかです。供給を増やす場合は獲得施策の見直しが先で、過去に接点があった休眠リードの掘り起こしも有効です。規模を合わせる場合は専任から兼務に戻す判断になります。撤退ではなく、供給が整うまで待つという選択です。
人を増やせば成果は増えますか。
リードが足りていない状態で増員すると悪化します。1人が使い切っている対象を2人で分けることになり、1人あたりの件数がさらに減るためです。増員の前に、今月かけられる対象が何件あるかを数えてください。ただし人数の問題として、1人体制には比較対象がない・休むと止まる・属人化するといった固有の問題があります。
商談化率はどのくらいあればよいですか。
5割を下回っているなら、アポイントの基準が緩すぎます。件数が半分になっても構わないので基準を上げてください。営業の信頼が失われている状態では、量を出しても訪問されません。まず質を戻し、信頼が回復してから件数を増やす順序にしてください。
営業との連携は何をすればよいですか。
週に1回30分、渡した案件の状況を話す時間を作ってください。数字の共有ではなく会話が必要です。「担当者に決裁権がなかった」「あの業界は今検討が止まっている」といった情報は記録に残りにくく、会話でしか伝わりません。あわせて、商談の結果(受注・失注・保留と理由)を記録する場所を1つ決めてください。