HubSpotワークフロー設計の基本|BtoBマーケが押さえるべき構築手順と実務ポイント

HubSpotワークフロー設計の基本|BtoBマーケが押さえるべき構築手順と実務ポイント

HubSpotのワークフローは、設定画面を触れば誰でも1本作れます。ところが「とりあえず動いている」状態のまま数十本が積み上がり、誰も全体像を把握していない——BtoBの現場でよく見る光景です。トリガー条件が曖昧なワークフローは、意図しないセグメントへの配信やスコアの誤加算といった不具合を、静かに後工程へ流し込みます。

ワークフロー運用の成否を決めるのは、操作スキルではなく「何を自動化し、何を自動化しないか」を決める設計判断の質です。本記事は、作成手順という入口を押さえたうえで、目的定義・データ設計・フロー構築・テスト・棚卸しまでを一本の流れとして整理します。

対象は、HubSpotを導入済みで自動化を本格運用したいBtoBマーケティング担当者、および既存ワークフローの見直しを検討している方です。プラン別にできること・できないことの違いにも触れながら、実務で使える判断基準を提示します。

目次

HubSpotワークフローとは何か:BtoB文脈での位置づけ

HubSpotのワークフローは「条件を満たしたら定義済みのアクションを自動実行する仕組み」です。BtoBではリード育成・スコア連動・セールス通知という3つの用途が中心になります。

HubSpotのワークフロー(Workflows)とは、特定の条件(トリガー)が満たされたときに、あらかじめ定義したアクションを自動実行する機能です。メール送信・プロパティ更新・タスク作成・通知送信などを、シーケンスとして組み合わせて構築します。

BtoBの文脈では、主に以下の用途で活用されます。

  • リードナーチャリング:資料ダウンロード後のフォローアップメールシリーズを自動送信する
  • リードスコア連動:スコアが一定値を超えたコンタクトのステージを自動更新する
  • MQL判定とセールス通知:閾値到達時点で担当者へ通知し、CRMへの移管を促す
  • プロパティ管理:フォーム入力や行動履歴をもとに、コンタクトやディールの項目を自動更新する
  • インターナルアラート:価格ページ閲覧などの行動を検知し、担当SDRへSlackやメールで通知する

重要なのは、ワークフローがあくまで「定義されたルールの実行機構」だという点です。ルールの質がそのままアウトプットの質になるため、ツールの操作以前に「何を自動化すべきか」の判断が求められます。

プランによって使える自動化の範囲が違う

ワークフローを検討するうえで最初に確認すべきなのが、契約プランです。「無料版やStarterでは自動化が一切できない」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。単発処理に限定された簡易版の自動化は、下位プランでも提供されています。

種類できること向いている用途
シンプルなワークフロー単発のアクション実行(プロパティ更新、社内通知など)。分岐や複数ステップの遅延は組めないフォーム送信時の担当者通知、ステージの一括更新
ワークフロー(通常版)複数アクションのシーケンス、If/Then分岐、遅延、エンロール抑制、再登録制御ナーチャリングシリーズ、MQL判定、SLA監視

通常版のワークフローエディターは、Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Data Hub いずれかのProfessional以上で提供されるのが基本線です。一方、シンプルなワークフローは無料版やStarterでも利用できます。ただしHubSpotのプラン構成と機能の割り当ては改定が入るため、契約前には必ず公式の料金ページで最新の記載を確認してください。プラン選定の考え方はHubSpotの料金プラン比較、無料版と有料版の線引きはHubSpot無料版と有料版の違いで整理しています。

「ワークフローを使いたい」という理由だけで上位プランを契約すると、コンタクト単価や必要シート数を見落として想定外のコストになります。自動化したい業務を先に5本程度書き出し、そのうち何本が単発処理で足りるかを数えてから判断してください。

ワークフローは自動化の実行部分にあたる機能です。どのデータ設計とレポートの上にワークフローを載せるべきかは、HubSpotの運用設計を体系的にまとめた記事で全体像を確認してください。

設計前に決めるべき3つの前提条件

ワークフロー設計の失敗の多くは、構築段階ではなく準備段階の不備に起因します。目的・対象・評価指標の3点を言語化してから画面を開いてください。

① このワークフローで達成したいアウトカムを1文で定義する

「ナーチャリングする」ではなく、「資料ダウンロード後30日以内にMQL判定されるコンタクト数を月間XX件増やす」のように、測定可能な形で目的を記述します。この定義がなければ、後から効果を測る術がありません。

② 誰に対して実行するワークフローか(エンロールメント条件)

対象コンタクトの属性・行動・ライフサイクルステージを事前に整理します。条件の粒度が粗すぎると関係のないリードが巻き込まれ、細かすぎるとほぼ誰もエンロールされないワークフローが出来上がります。

③ 成功・失敗を判定するKPIを決める

ナーチャリング系であればコンバージョン率やMQL化率、通知系であれば担当者の対応率などを設定します。指標がないまま運用すると、改善サイクルを回せません。KPIの立て方はBtoBマーケティングのKPI設計で詳述しています。

ワークフロー設計前の3前提条件 ① アウトカム定義 測定可能な目標を1文で書く 曖昧な目的は効果測定できない 例:MQL化を月30件増やす ② 対象コンタクト定義 属性・行動・ステージで絞る 粗すぎても細かすぎても失敗 例:資料DL済かつ未商談 ③ KPI設定 成否を判定する指標を先に決める 指標なしでは改善が回らない 例:MQL化率・通知の対応率 3点を揃えてから構築に入り、手戻りを防ぐ
図1:ワークフロー設計前に定義すべき3つの前提条件。この3点の言語化が設計品質の土台になる。

ワークフローの作成手順:画面操作と3つの作成方法

HubSpotのワークフローは「自動化」メニューから作成し、トリガーとアクションを定義して公開します。作成方法はテンプレート・ゼロから・AI利用の3通りで、初回はテンプレートからの派生が最短です。

設計思想を固めたら、実際の構築に入ります。HubSpotのワークフローは、上部メニューの「自動化」から「ワークフロー」を選び、右上の作成ボタンから新規作成します。既存のワークフローがある場合は同じ画面に一覧表示されます。

作成の入口は3つあり、それぞれ向き不向きがあります。

  • テンプレートから作成:HubSpotが用意した定型パターンを選び、条件を自社仕様に書き換える方法です。初回構築や、汎用的な資料DLフォローを組む場合はこれが最短になります
  • ゼロから作成:コンタクト・会社・取引・チケットなど対象オブジェクトを選び、トリガーから自分で設計する方法です。自社独自のプロセスを反映する場合に使います
  • AIで作成:自動化したい内容を文章で指示すると、トリガーとアクションの草案が生成されます。土台作りには有効ですが、生成された条件をそのまま公開せず、必ず後述のQAを通してください

作成後の流れは共通で、①対象オブジェクトの選択、②登録トリガーの設定、③再登録・登録解除の設定、④アクションの追加、⑤テスト、⑥「確認と公開」でオンにする、という順序になります。

ここで見落とされやすいのが、公開時に表示される「現在トリガー条件を満たしている既存レコードを登録するか」という選択です。既存レコードを一括登録する設定でオンにすると、過去に条件を満たしていた全コンタクトが同時にエンロールされ、大量のメールが一斉送信される事故が起こります。初回公開時は原則オフにし、今後トリガーを満たすレコードのみを対象にしてください。あわせて、登録条件を満たす既存コンタクトの件数を公開前に確認します。想定より1桁多い場合は、条件設計かデータ側に問題があります。

なお、ワークフローが正しく動くかどうかは、コンタクトデータの整備状況に大きく左右されます。表記ゆれや重複が残ったままだと、条件に合致すべきコンタクトが漏れます。構築前のデータ整備についてはHubSpotのデータクレンジング、アカウント全体の初期設定はHubSpot初期設定チェックリストを参照してください。

ワークフロー設計の基本フロー:5ステップで構築する

実務レベルで機能させるには、トリガー・アクション・タイミング・抑制・QAの5点を順に設計します。どれか1つを飛ばすと、必ず後工程で不具合として表面化します。

STEP 1:トリガー条件の設計

トリガーはワークフローの起点です。HubSpotでは「コンタクトベース」「ディールベース」「チケットベース」「カンパニーベース」など複数のオブジェクトに対して設定できますが、BtoBの実務で最も多用するのはコンタクトベースです。

主なトリガー条件の例を挙げます。

  • 特定フォームの送信(資料ダウンロード、ウェビナー申込など)
  • 特定ページの閲覧(価格ページ・導入事例ページなど)
  • ライフサイクルステージの変更(リード→MQLなど)
  • プロパティ値の変更(業種・従業員数が特定条件に変わった場合など)
  • メールのクリックやフォームの再送信

注意点は「再登録(再エンロール)を許可するか」の判断です。許可しないと、同じコンタクトが2回目以降に条件を満たしてもアクションが走りません。逆に無制限に許可すると、同一コンタクトへの過剰な接触につながります。また、すべての条件が再登録に使えるわけではなく、コンタクトに紐づく取引側の情報などは再登録トリガーとして利用できないケースがあります。

STEP 2:アクションの設計

トリガーが発火した後に実行するアクションを順に定義します。代表的なアクションと用途を整理します。

アクション種別主な用途BtoBでの活用シーン
メール送信ナーチャリングメールの配信資料DL後のフォローアップシリーズ
プロパティ更新コンタクト情報の自動更新ライフサイクルステージの昇格
内部通知担当者へのアラート送信MQL判定時のSDR通知
タスク作成CRM上のタスク自動発行商談化アクションの促進
担当者のローテーションレコードの自動割り当て新規リードの営業担当アサイン
遅延(Wait)アクション間の時間調整メール間隔の制御
分岐(If/Then)条件別の処理分岐業種・スコア別の打ち分け
AIアクション要約・分類などの生成処理問い合わせ内容の自動要約

特に「分岐(If/Thenブランチ)」の活用は、BtoBのワークフロー設計における要です。同じトリガーでも、企業規模・業種・スコアに応じてアクションを分けることで、精度の高いナーチャリングが実現します。

なお、スコアの取り扱いには注意が必要です。かつては旧スコアプロパティをワークフロー内で加算・減算する設計が一般的でしたが、HubSpotは新しいリードスコアリング機能へ移行しており、旧スコアプロパティは2025年8月31日以降更新されなくなりました。新機能では「適合スコア(属性)」と「エンゲージメントスコア(行動)」が分離し、スコアの上限が設定され、減点による調整という考え方も変わっています。現在の設計では、ワークフローはスコアを操作する場所ではなく、スコアリング機能が算出した値をトリガーとして受け取る場所と捉えるのが正確です。詳細はHubSpotリードスコアリングの設定方法で解説しています。

STEP 3:タイミングと遅延の設計

BtoBでは、メールが業務時間中に届くことが望ましいケースが多くあります。営業時間内に送信するオプションや遅延(Delay)アクションを使い、送信タイミングを制御します。

ナーチャリングシーケンスでは、メール間隔が開封率とクリック率に影響します。間隔が短すぎると疲弊を招き、長すぎると文脈が途切れます。初回接触から3〜5日後に2通目を送る設計がよく採られますが、これは出発点にすぎません。自社の読者属性と配信実績をもとに最適値を探ってください。配信間隔の考え方はBtoBメールの配信頻度設計、シリーズ全体の組み立てはステップメールの設計手順で扱っています。

STEP 4:エンロール抑制とサプレッションの設計

意図しないコンタクトをワークフローから除外するための設定です。エンロール抑制リスト(Suppression list)に既存顧客・商談中の企業・配信停止リストなどを登録し、不適切なコミュニケーションを防ぎます。

特にBtoBでは、インサイドセールスが接触中のコンタクトにマーケティングメールが届くと、営業との信頼関係を損なうリスクがあります。マーケとセールスの接触ステータスを同期する仕組みを、設計段階で組み込んでおいてください。

STEP 5:テストとQA

本番稼働前に、以下を確認します。

  • テストコンタクトを使ったエンドツーエンドの動作確認
  • 各アクション間の遅延設定が意図通りに機能しているか
  • 分岐条件が正しく評価されているか(特にAND/ORの論理)
  • メールの差し込み変数が正常に展開されるか
  • 初回起動時にエンロールされるコンタクト数の予測

マーケティングメールを送るアクションは、対象がマーケティングコンタクトに設定されていないと空振りします。メールが送信されないという症状が出たときは、まずこのステータスを疑ってください。

自社だけでQA体制を組むのが難しい場合は、ワークフロー設計のレビューについてご相談ください

BtoBで頻出する4種類のワークフローパターン

BtoBで実装頻度が高いのは、資料DL後ナーチャリング・MQL判定・商談停滞検知・ウェビナーフォローの4パターンです。まずはこの型を押さえれば、自社ケースへの応用が利きます。

① 資料DL後ナーチャリングシーケンス

最もシンプルで導入されやすいパターンです。トリガーは特定フォームの送信。アクションとして、初日・3日後・7日後・14日後などにコンテンツメールを送るシリーズを構成します。各メールのCTAには次のコンテンツ(事例・比較記事・デモ申込など)への誘導を置き、行動をスコアに反映させます。シナリオ全体の設計はBtoBリードナーチャリングのシナリオ設計で扱っています。

② リードスコア連動型のMQL判定フロー

リードスコアが設定した閾値に達した時点でトリガーが起動し、ライフサイクルステージを「MQL」に更新、担当SDRへ内部通知を送る構成です。このワークフローはスコアリング設計と不可分なため、スコアカードの基準を先に固めてから構築してください。MQLの定義そのものはHubSpotでのMQL定義・設定方法、MQLとSQLの線引きはMQL・SQLの定義と設計方法を参照してください。

③ 商談停滞検知と再アプローチ通知

ディールプロパティを使い、一定期間(例:14日間)ステージが変わっていないディールを検知して、担当者にタスクと通知を発行するワークフローです。商談の停滞は日次では気づきにくいため、システム側で拾う価値が高い領域です。

④ ウェビナー後フォローアップフロー

参加者と不参加者を分岐させ、それぞれに異なるコンテンツを送るパターンです。参加者には登壇資料とアンケートのCTAを、不参加者(申込済み)には録画URLを送る構成が一般的です。参加者のエンゲージメントに応じてスコアが動き、MQL判定フローに接続されます。同じ構造は展示会後のフォローにも応用でき、詳細は展示会リードの活用方法で解説しています。

ウェビナー後フォローの分岐設計 トリガー ウェビナー申込フォーム送信 If/Then 分岐 参加ステータス = 参加済み? YES NO 参加者ルート ・登壇資料を送付 ・アンケートCTA ・視聴時間で加点 ・7日後に事例配信 ・商談打診へ接続 不参加ルート ・録画URLを送付 ・クリックで加点 ・未開封は再送1回 ・反応なしは  通常育成へ戻す リードスコアの再計算 エンゲージメント評価を更新 MQL判定フローへ接続
図2:ウェビナー後フォローの分岐構成例。参加・不参加でコンテンツを分けつつ、双方をスコアリングとMQL判定に合流させる。

設計でよくある失敗パターンと回避策

ワークフローの不具合は、設計時点の判断ミスが時間差で表面化したものです。頻出する4パターンと、それぞれの回避策を示します。

失敗① トリガー条件が広すぎる

「コンタクトが作成されたとき」「任意のフォームを送信したとき」といった広義のトリガーを使うと、意図しないコンタクトが大量にエンロールされます。結果として、関係のない相手にメールが届いたり、スコアが不自然に動いたりします。

回避策:エンロール条件に、業種・企業規模・ライフサイクルステージなどの絞り込みフィルターを必ず組み合わせます。ただし条件を重ねすぎると今度は誰も該当しなくなるため、公開前に対象件数を確認してから絞り込みの強度を調整してください。

失敗② 複数ワークフローが同一コンタクトに重複実行される

似た条件を持つワークフローが複数存在すると、同じコンタクトが複数のシーケンスに同時エンロールされ、短時間に大量のメールが届くケースがあります。

回避策:ワークフローの全体マップを管理し、エンロール条件の重複がないかを定期的に確認します。管理の具体的な手順は次章で扱います。

失敗③ スコアリング設計が実態とズレたまま放置される

初期設計のスコア基準をそのまま使い続けると、実態との乖離が生じます。たとえばトップページの閲覧に高い点を与えていても、それがMQL化と相関していないなら基準を見直す必要があります。

回避策:四半期ごとに、スコア上位コンタクトのMQL化率・商談化率を確認し、スコアカードの配点を調整するプロセスを業務に組み込みます。新しいリードスコアリングでは属性と行動が別々のスコアとして扱われるため、「属性は合っているが行動が伴わない」「行動は活発だが対象外の企業」といった状態を分けて評価できます。この2軸を混ぜずに見ることが、精度改善の近道です。

失敗④ ワークフロー内のメールが一括配信と競合する

同一コンタクトが、ワークフローからの自動メールと通常のリスト配信メールを同じ週に受け取るケースが起こります。これは疲弊を招くだけでなく、配信停止の直接的な引き金になります。

回避策:一括配信とワークフロー配信の送信スケジュールを1枚のカレンダーで管理し、接触が重ならないようにします。HubSpotのメール送信頻度制限(Frequency cap)機能も併用できます。

4つの失敗はいずれも「作った直後」ではなく、運用開始から数か月後に顕在化します。公開時点のQAだけでなく、四半期ごとの点検を前提に設計してください。

ワークフローの塩漬けを含め、HubSpot全体が使われなくなる構造はHubSpotを使いこなせない原因と対処法で扱っています。

ワークフロー資産の棚卸しと命名規則

ワークフローは増え続ける資産です。命名規則とオーナーを最初に決め、四半期ごとに「維持・統合・停止」を判定する運用に載せてください。

運用が1年を超えたHubSpotアカウントでは、稼働中のワークフローが数十本に達することが珍しくありません。問題は本数そのものではなく、「誰が・何のために作ったか分からないワークフローが動き続けている」状態です。担当者が変わった瞬間に、止めるべきかどうかの判断すらできなくなります。

命名規則を先に決める

作り始める前に命名の型を決めておくと、一覧画面での判別コストが劇的に下がります。実務では、以下のような要素をアンダースコアやハイフンで連結する形が扱いやすいです。

  • 用途区分:NUR(ナーチャリング)/NOTIF(通知)/DATA(プロパティ更新)/SLA(監視)など
  • 対象:対象セグメントやキャンペーン名(例:資料DL、ウェビナー202603)
  • トリガー:フォーム送信、スコア閾値、ステージ変更など起点が分かる語
  • 版:v1、v2。旧版を停止した後も履歴として残す場合の識別子

あわせて、説明欄に「目的」「オーナー」「関連するメール・リスト」を1行ずつ記載するルールを設けてください。命名規則は後から一括で適用しにくいため、本数が少ない段階で決めることが最大のコスト削減になります。

四半期ごとの棚卸し

棚卸しでは、全ワークフローを一覧に書き出し、目的・対象・最終更新日・直近90日のエンロール数を並べます。そのうえで、維持・統合・停止のいずれかを機械的に判定します。判定基準を人ごとの裁量に任せると棚卸しが進まないため、しきい値を先に決めておくことが重要です。

四半期棚卸しの判定フロー 稼働中の全ワークフローを一覧化 判定1:直近90日のエンロールは0件か かつ最終更新から3か月以上経過 該当 → 停止候補としてオーナーに確認 判定2:登録条件が他と重複しているか 同一コンタクトが複数に入っていないか 該当 → 1本に統合し、旧版は停止 残ったものは維持:KPIを再確認 目的・オーナー・関連メールを更新 判定基準を先に決めておくことが棚卸しの前提
図3:四半期棚卸しの判定フロー。停止・統合・維持を基準で機械的に振り分け、判断を属人化させない。

一人マーケター体制でこの運用まで回すのは負荷が高いため、棚卸しは四半期に半日を固定枠として押さえるのが現実的です。少人数体制での運用の組み立て方は一人マーケでのHubSpot運用で扱っています。手が回らない場合はHubSpot運用の外注という選択肢もあります。

マーケセールス連携を前提にしたワークフロー設計

BtoBのワークフローは、マーケティング内で完結させず、セールスへの引き渡しまでを含めて設計します。HubSpotはCRMが同一基盤にあるため、この接続をツール内で完結できます。

HubSpotはマーケティングとCRMが同一プラットフォーム上にあるため、コンタクトのライフサイクルステージとディールステージを連携させたワークフローを設計できます。この特性を活かすことが、他のMAツールとの実務上の差になります。組織側の連携設計はマーケティングとセールスの連携の仕組み作りで整理しています。

MQL→SQLのハンドオフ設計

MQL判定が下りた時点で、以下のアクションを自動実行するワークフローを設計します。

  • ライフサイクルステージを「MQL」に更新
  • 担当SDRへ、コンタクト情報と行動履歴サマリーを含む通知を送信
  • 期限付きのタスクを自動作成
  • Slackチャンネルへの通知(HubSpotとSlackの連携を利用)

ここで重要なのは、「MQLと判定された根拠」を通知に含めることです。どのページを閲覧し、どのコンテンツをダウンロードしたかが分からない通知は、優先度を判断できないまま放置されます。SDRとBDRで役割を分けている場合は、通知先の設計も変わります。役割分担はSDRとBDRの違いを参照してください。

SLA(サービスレベルアグリーメント)の自動モニタリング

MQLの引き渡し後、一定時間内(例:24時間以内)に担当者がアクションしなかった場合に、マネージャーへ自動でエスカレーション通知を送る仕組みをワークフローで実装できます。SLAをシステム側で担保することで、MQLの放置を構造的に防げます。営業側の運用設計はHubSpot Sales Hubの使い方で扱っています。

AI機能をワークフローに組み込むときの判断軸

HubSpotのAI機能はワークフローの構築と実行の両方に入り込んでいます。ただし現時点では、判断を伴う処理ではなく、下書き生成と分類・要約に用途を限定するのが安全です。

現在のHubSpotでは、AIがワークフローに関わる場面が大きく2つあります。1つは構築時の支援で、自動化したい内容を文章で指示すると、トリガーとアクションの草案が生成されます。もう1つは実行時のアクションで、テキストの要約や分類といった生成処理をフローの途中に挟み込めます。上位プランでは、自社契約の外部LLMをアクションとして呼び出せる仕組みも提供されています。

実務での判断軸はシンプルです。AIの出力が誤っていたときに、誰かが気づける設計になっているかを基準にしてください。問い合わせ内容を要約してSDRに渡す用途であれば、原文が併記されている限り誤りは検知されます。一方、AIの分類結果でライフサイクルステージを直接書き換えるような設計は、誤りが後工程に埋没するため推奨しません。

HubSpotのAI機能は名称・提供範囲・クレジット消費の条件が短いサイクルで変わります。設計に組み込む前に、契約プランでの提供状況を公式情報で確認してください。

なお、AI機能を導入しても、データが整っていなければ出力の質は上がりません。優先順位としては、プロパティの整備とスコアリング設計が先で、AI活用はその後に来ます。HubSpot全体の運用が回らないと感じている場合は、現状の設計を一度整理するところからご相談ください

HubSpotワークフロー設計の要点まとめ

ワークフローの成果を決めるのは設定スキルではなく、目的定義・条件設計・棚卸しという運用の型です。本記事の要点を整理します。

  • プランによって使える自動化の範囲が違う。単発処理なら下位プランのシンプルなワークフローで足りるケースがある
  • 構築前に、アウトカム・対象・KPIの3前提を言語化する
  • 作成はテンプレート・ゼロから・AIの3通り。初回公開時の既存レコード一括登録は原則オフにする
  • トリガー条件は絞り込みフィルターと組み合わせ、公開前に対象件数を確認する
  • スコアはワークフローで操作するものではなく、スコアリング機能の算出値をトリガーとして受け取る
  • エンロール抑制リストを整備し、商談中・既存顧客への不要な接触を防ぐ
  • 命名規則とオーナーを先に決め、四半期ごとに維持・統合・停止を判定する
  • MQL通知には判定根拠を含め、SLAの自動監視まで設計する
  • AIアクションは、誤りに気づける位置にだけ配置する

ワークフローは一度作って終わる資産ではありません。四半期ごとに設計を点検する前提で組み立てることが、長期的に機能させる唯一の方法です。

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稼働中のワークフローの棚卸しから、MQL判定・セールス通知までの設計見直しまで、BtoBマーケティングの実務に沿って支援します。現状のHubSpotアカウントを拝見したうえで、優先順位をご提案します。

よくある質問(FAQ)

HubSpotのワークフローは無料版やStarterプランでも使えますか?
分岐や遅延を含む通常のワークフローエディターは、各HubのProfessional以上で提供されるのが基本です。ただし無料版やStarterプランでも「シンプルなワークフロー」という簡易版が利用でき、フォーム送信時の社内通知やプロパティの自動更新といった単発処理は自動化できます。「Starterでは自動化が一切できない」という説明は正確ではありません。提供範囲は改定されることがあるため、契約前にHubSpotの公式サイトで最新の記載を確認してください。
ワークフローとシーケンス(Sequences)の違いは何ですか?
ワークフローはマーケティングオートメーション側の機能で、コンタクト・ディール・チケットなど複数オブジェクトを対象に自動化できます。一方シーケンスはSales Hub側の機能で、担当者による1対1のメール送信とタスクの自動化を目的としています。ナーチャリングやスコア連動にはワークフロー、商談化後の個別アプローチにはシーケンスという使い分けが基本です。
ワークフローを公開したのにメールが送信されません。何を確認すべきですか?
確認順序は、①対象コンタクトがマーケティングコンタクトに設定されているか、②登録トリガーの条件が厳しすぎて誰も該当していないか、③エンロール抑制リストで除外されていないか、④配信停止やバウンス状態になっていないか、の4点です。特に①と②は発生頻度が高く、登録条件を満たすコンタクト件数を画面で確認すれば切り分けができます。
ワークフローの数が増えすぎた場合、どう整理すればよいですか?
全ワークフローを一覧に書き出し、目的・対象・最終更新日・直近90日のエンロール数を並べます。3か月以上更新がなくエンロールもほぼ発生していないものは停止候補、登録条件が重複しているものは統合候補として扱います。判定基準を先に決めておくと、担当者の裁量に左右されずに棚卸しが進みます。
既存顧客にワークフローのメールが届かないようにするにはどうすればよいですか?
エンロール抑制リストに既存顧客のリストを設定します。あわせて、登録条件に「ライフサイクルステージが顧客ではない」という条件を加えると二重に制御できます。商談中のコンタクトについても、セールス側の接触ステータスを参照して除外する条件を組み込んでおくと、営業との衝突を防げます。