HubSpotにユーザーを追加するとき、権限の画面で迷い、ひとまず全員をスーパー管理者にして運用を始める。導入直後は誰でも何でも触れるほうが作業が進むからです。ところが半年ほどたつと、誰がプロパティを増やしたのか、誰が顧客リストを書き出したのか、辞めた担当者のアカウントがまだ生きているのか、誰も答えられなくなります。
権限は細かく制限するほど安全になるわけではありません。最初に決めるのは「誰がデータを社外に持ち出せるか」と「誰が戻せない変更をできるか」の2つで、閲覧範囲やツールごとの細かな権限は、その後で役割の型に当てはめれば足ります。
スーパー管理者が何人もいるアカウントを引き継いだ段階では、社外にデータを持ち出せる人と、戻せない変更をできる人を見比べると、どこから手を付けるかが見えてきます。その2つを役割で説明できるなら、閲覧範囲の細かな設定は急いで作り込まなくてかまいません。
目次
- 1 HubSpotの権限は「シート」「権限」「範囲」の3段で決まる
- 2 スーパー管理者は2名に絞り、日常の作業は個別の権限で渡す
- 3 レコードの閲覧・編集範囲は「全て/チーム/自分」と未割り当ての扱いで決める
- 4 エクスポートと削除の権限は、持つ理由を説明できる人に限る
- 5 役割別の権限設計の型:マーケ・営業・インサイドセールス・経営・代理店
- 6 権限セットはEnterprise、チームとプリセットはProfessionalから使える
- 7 退職・異動・契約終了のアカウントは「付け替え、無効化、削除」の順で閉じる
- 8 四半期に1回、権限を棚卸しする
- 9 権限設計でよく起きる失敗と、作り込まないほうがよい場合
- 10 まとめ
- 11 よくある質問
HubSpotの権限は「シート」「権限」「範囲」の3段で決まる
HubSpotの権限設定とは、ユーザーごとに使えるツールと、見る・作る・編集する・削除する・書き出すことのできるデータの範囲を決めることです。使えるツールの上限をシートが決め、その中でできる操作を権限が決め、操作がどのレコードに及ぶかを「全て/チーム/自分」の範囲が決めます。
設定はすべて、設定アイコン(歯車)から開く「ユーザーとチーム」で行います。ユーザーを追加する画面で、シート、権限、チームを順に選ぶ流れです。新しいユーザーを作って権限をカスタマイズするには、スーパー管理者権限が必要です。
3段のうち混同されやすいのがシートと権限です。シートは契約しているHubのどの機能まで使えるかを決める枠で、権限はその枠の中で個別にオン・オフするスイッチです。公式ヘルプには、ユーザーのシートを変更しても権限は自動では変わらないと書かれています。たとえばSalesシートをコアシートに変えると、シーケンスなどSales Hubの機能は、権限がオンのままでも使えなくなります。費用を見直してシートを入れ替えた月に、営業から「急に機能が消えた」と問い合わせが来るのはこのためです。
| シート | できること | 割り当てる相手の例 |
|---|---|---|
| 表示のみのシート | レコード、ダッシュボード、レポートの閲覧とレポートの絞り込み。レコードの編集、レポートの保存、メールの記録はできず、スーパー管理者にもできない | 数字を見るだけの経営層、閲覧だけ必要な他部署 |
| コアシート | 契約しているサブスクリプションのコア機能。Sales Hub・Service HubのStarterでは、コアシートで各Hubの機能を使える | マーケティング担当、Starterで使う営業担当 |
| Salesシート/Serviceシート | Sales Hub・Service HubのProfessional、Enterpriseに含まれる機能すべて | シーケンスや見積もりを使う営業、問い合わせ対応を担うCS |
| パートナーシート | 対象となるHubSpot Solutions Partnerの従業員が、顧客アカウントの機能にアクセスするためのシート | 認定パートナーの支援担当者 |
| 開発者シート | 開発者プラットフォームへのアクセスのみ。他のシートやスーパー管理者権限とは組み合わせられない | 連携やアプリを開発する技術者 |
表示のみのシートは、Starter以上のプランであれば数の制限なく割り当てられ、追加の費用もかからないと公式ヘルプに記載されています。経営層や他部署に「見るだけ」のアカウントを配るときは、有料シートを割り当てずにこのシートで足ります。
スーパー管理者は2名に絞り、日常の作業は個別の権限で渡す
スーパー管理者は、アカウント内のほぼすべてのツールと設定を操作でき、他のユーザーをスーパー管理者にできる唯一の立場です。付けるのは2名にとどめ、それ以外の人には作業に必要な権限だけを渡します。
公式ヘルプが挙げるスーパー管理者の特徴は次のとおりです。スーパー管理者権限のセットは変更できません。別のユーザーをスーパー管理者にできるのはスーパー管理者だけです。特定のチームやユーザーに限定した資産も表示できます。有料プランでは、スーパー管理者にもコア、Sales、Serviceのいずれかのシートが必要で、表示のみのシートの人はスーパー管理者になれません。
すべての権限をオンにしたユーザーとスーパー管理者は同じではありません。権限パネルに並んでいない機能は、スーパー管理者でないと操作できない場合があります。公式ヘルプも、スーパー管理者権限が必要な作業が出たときは、そのユーザーをスーパー管理者にするのではなく、既存のスーパー管理者に作業してもらうよう勧めています。
2名にする理由は運用の側にあります。1名だけだと、その人の退職や長期休暇のあいだ、ユーザーの追加も権限の変更もできません。3名以上になると、誰がいつ設定を変えたのかを当事者に聞いて確かめることが難しくなります。2名の組み合わせは、契約と請求に責任を持つ人(経営者または管理部門)と、HubSpotの運用に責任を持つ人にします。初期設定の段階でユーザーと権限を決める手順でも、同じ2名の構成を前提にしています。
数字を見るだけの経営者には、スーパー管理者を付ける必要はありません。表示のみのシートでダッシュボードとレポートを見られます。請求の確認が必要なら、スーパー管理者が表示のみのシートのユーザーに請求管理者の権限を付与できます。
外部の支援会社の担当者も、スーパー管理者にしないのが原則です。HubSpot Solutions Partnerの従業員であれば「パートナー管理者」という別の権限があり、スーパー管理者に近い操作ができる一方で、他のスーパー管理者の追加・削除や請求の管理はできません。認定パートナーでない支援会社には、通常のユーザーとして契約範囲の権限だけを渡します。
レコードの閲覧・編集範囲は「全て/チーム/自分」と未割り当ての扱いで決める
コンタクト、会社、取引などの権限は、表示・編集・削除・マージのそれぞれに「全て」「チーム」「自分(担当)」の範囲を選び、担当者のいないレコードを含めるかを「未割り当て」のチェックで決めます。範囲を「自分」にするなら、担当が付く前のレコードを誰が見るかを同時に決めます。
権限の画面の「CRM」タブでオブジェクトを開くと、次の項目が並びます。オブジェクトはコンタクト、会社、取引、リード、チケット、タスク、コール、ミーティング、カスタムオブジェクトなどで、それぞれ別々に設定できます。
| 項目 | 選べる範囲 | 設定するときに確認すること |
|---|---|---|
| 表示 | 全て/チーム/自分(+未割り当て) | 「自分」にすると、一覧画面、セグメント、レポートにも自分が担当のレコードしか出ない |
| 編集 | 全て/チーム/自分/なし(+未割り当て) | 編集できる人は、レコード上のアクティビティーも削除できる |
| 作成 | オン/オフ | インポートによる作成も含む。フォーム送信やワークフロー、連携で作られるレコードには適用されない |
| 削除 | 全て/チーム/自分/なし(+未割り当て) | 一覧画面からの一括削除には、別に「一括削除」の権限が要る |
| マージ | 全て/チーム/自分/なし(+未割り当て) | 重複の統合を誰に任せるかで決める |
| コミュニケーション | 全て/チーム/自分/なし(+未割り当て) | CRMからのEメール、コール、ミーティングの記録。マーケティングEメールには適用されない |
「自分」の範囲が何を指すかは、担当者のプロパティーで決まります。既定の担当者プロパティーのほか、HubSpotユーザー型のカスタムプロパティーに入っている人にもアクセス権が付きます。「チーム」の範囲では、所属チームの誰かが担当しているレコードに届きます。チームを作れるのはProfessional以上のため、Starterでは「全て」か「自分」のどちらかで設計することになります。
範囲を決めるときに困るのが、担当が移るレコードです。インサイドセールスの担当者を「表示:自分」にすると、商談化して取引とコンタクトの担当をフィールドセールスに付け替えた時点で、そのレコードはインサイドセールスの画面から消えます。自分が渡した商談の進み具合を追えなくなり、差し戻しや失注後の再アプローチの判断が遅れます。インサイドセールスは表示を「全て」か「チーム」にし、編集だけを「自分」と「未割り当て」に絞る組み合わせにします。
「表示」権限と「表示のみのシート」は別物です。表示権限だけを持つユーザーでも、そのレコードにメモやタスクを作れます。一方、表示のみのシートのユーザーはメモも記録も追加できません。
エクスポートと削除の権限は、持つ理由を説明できる人に限る
事故につながるのは、データを社外に持ち出す権限と、戻せない変更をする権限です。エクスポート、一括削除、コンタクトの完全な削除、プロパティー設定の編集は、名前を挙げて理由を説明できる人数に絞ります。
該当する権限と、権限の画面での置き場所は次のとおりです。多くは「CRMツール」と「アカウント」のタブにあり、オブジェクトごとの権限とは別のスイッチになっています。
| 権限 | 画面の場所 | できること | 持たせる相手の目安 |
|---|---|---|---|
| エクスポート | CRM>CRMツール | CRMレコードとレポートの書き出し | 分析やデータ移行を担当する1〜2名 |
| 一括削除 | CRM>CRMツール | 一覧画面、セグメント、ボードからの複数レコードの削除 | データ整備の責任者 |
| インポート | CRM>CRMツール | CRMレコードの一括作成・更新 | データ整備の責任者、マーケティングの運用者 |
| コンタクトを完全に削除 | アカウント>設定アクセス | コンタクトの完全な削除 | スーパー管理者に限る |
| プロパティー設定を編集 | アカウント>設定アクセス | プロパティーの作成・編集。パイプラインとステージの作成・編集も含む | 運用の責任者 |
| アプリマーケットプレイスアクセス | アカウント>設定アクセス | マーケットプレイスや外部サイトからのアプリのインストール | スーパー管理者に限る |
| ユーザーを追加して編集 | アカウント>ユーザーとアカウントアクセス | ユーザーの追加、無効化、削除。自分が持っていない権限は付与できない | 運用の責任者、情報システム担当 |
エクスポートは全プランで記録が残ります。設定の「データ管理」にある「インポートとエクスポート」で、スーパー管理者はアカウント全体のエクスポートの一覧を、エクスポート権限を持つユーザーは自分の履歴を確認できます。スーパー管理者は、設定した件数を超えるエクスポートが行われたときに通知を受ける「大規模なエクスポートの通知しきい値」も設定できます。しきい値は通知を受けるスーパー管理者ごとの設定なので、2名とも入れておきます。
Enterpriseでは、エクスポートに承認を必須にできます。設定の「承認」から、承認が必要になるレコード件数を決め、承認者を指定します。センシティブデータを含むエクスポートは、件数にかかわらず承認が必要になります。スーパー管理者は既定で承認なしにエクスポートでき、他のユーザーの申請も承認できます。
プロパティー設定の編集権限を広く配ると、プロパティーが部署ごとに作られて同じ情報が複数の項目に分かれます。作成できる人を絞ったうえで、プロパティーを作る前の判断基準と棚卸しのルールを運用の責任者が持つ形にします。
一括削除の権限を外しても、個々のレコードからの削除は止まりません。オブジェクトごとの「削除」の範囲を「なし」または「自分」に絞っておかないと、一件ずつなら誰でも消せる状態が残ります。
Enterpriseにはプロパティー単位で表示・編集を制限する機能もありますが、公式ヘルプは、APIやレコードの手動作成では制限されたプロパティーにも値を入れられるため、セキュリティー対策としては勧めないと書いています。持ち出されては困る情報は、項目の制限ではなく、オブジェクトやエクスポートの権限で守ります。自社のアカウントでどの権限を誰が持っているかを一度に洗い出したいときは、権限の現状の確認からご相談いただけます。
役割別の権限設計の型:マーケ・営業・インサイドセールス・経営・代理店
権限は人ごとに作らず、役割ごとの型を決めて当てはめます。次の型から始め、型に収まらない人が出たときだけ例外を作り、例外には理由と見直す日付を書き添えます。
| 役割 | シート | レコードの範囲 | 付ける権限 | 付けない権限 |
|---|---|---|---|---|
| マーケティング担当 | コア | コンタクト・会社は表示も編集も全て。取引は表示のみ全て | マーケティングアクセス、Eメールの編集・公開、セグメント、フォーム、ワークフロー、インポート | 一括削除、コンタクトの完全な削除、ユーザーの追加 |
| 営業担当 | Sales(Starterはコア) | 取引・会社・コンタクトは編集が自分。表示はチームまたは全て | コミュニケーション(自分)、個人用メールへのアクセス | エクスポート、一括削除、プロパティー設定の編集 |
| 営業マネージャー | Sales(Starterはコア) | チームの範囲で表示・編集 | レポートの作成、チームのレコードの担当変更 | コンタクトの完全な削除 |
| インサイドセールス | コアまたはSales | コンタクト・リードの表示は全て、編集は自分と未割り当て。取引は表示のみ | コミュニケーション、ワークフローへの登録 | エクスポート、一括削除 |
| 経営層 | 表示のみ | 全て(表示のみ) | レポートとダッシュボードの閲覧 | 編集系の権限すべて |
| 外部の支援会社 | パートナーシート(認定パートナーの場合)またはコア | 契約で担当する範囲 | 契約の業務に必要なツールの編集・公開 | スーパー管理者、エクスポート、ユーザーの追加、アプリのインストール |
マーケティング担当に付けるツールの権限は、表示・編集・公開の3段で分かれています。マーケティングEメールの「編集」は作成とテスト送信までで、コンタクトへの送信とワークフローでの利用には「公開」が要ります。ワークフローも「表示」「編集」「公開」「登録」「削除」に分かれています。新人には編集までを渡し、公開は確認できる人に残すと、送信前に一度誰かが見る流れになります。マーケティングメールの送信前に決めることやワークフローの命名と承認のルールを決めてから、公開の権限を配る順番にします。
経営層に表示のみのシートを渡すなら、見る場所も一緒に用意します。何も用意しないと、ログインしても一覧画面を眺めて終わります。経営会議で使う指標から逆算したダッシュボードを1枚作り、ログイン後のホーム画面に設定しておきます。
ユーザーを追加する画面の「アクセス権を設定する方法を選択」では、「テンプレートを選択」から既存ユーザーの権限か役割別のテンプレートを起点にできます。型ごとに見本となるユーザーを1人決めておき、同じ役割の人を追加するときはその人の権限をコピーすれば、プランにかかわらず型をそろえられます。
レコードの閲覧範囲を広げると、そのレコードに営業が記録したメールも見えるようになります。営業が記録したメールが誰に見えるかを確かめたうえで、マーケティング担当の閲覧範囲を決めます。
権限セットはEnterprise、チームとプリセットはProfessionalから使える
役割の型をHubSpot上に保存して使い回せる「権限セット」はEnterpriseだけの機能です。StarterとProfessionalでは、型を社内の表で管理し、見本ユーザーの権限をコピーして運用します。
権限まわりの機能は、プランによって使えるものが変わります。公式ヘルプで確認できたプラン条件を並べます。
| 機能 | 使えるプラン | 用途 |
|---|---|---|
| ユーザーごとの権限設定、権限の履歴 | 全プラン | 個別の権限の付与と、誰がいつ権限を持ったかの確認 |
| エクスポートのログと大規模エクスポートの通知 | 全プラン | 書き出しの記録と通知 |
| 監査ログ | Starter以上(Enterpriseで絞り込める種類が増える) | ログインやセキュリティー関連の操作の確認 |
| 操作がないユーザーの自動無効化 | Starter以上 | 90日を超えてログインのないユーザーを毎月無効化 |
| チーム | Professional以上 | 「チーム」の範囲での閲覧・編集、チーム別レポート |
| プリセット | Professional以上 | ホーム画面や言語などの既定値をユーザーやチームにまとめて設定 |
| ユーザー同士の権限の比較 | Professional以上 | 同じ役割の人の権限の差分を確認 |
| 権限セット、権限セット同士の比較 | Enterprise | 役割の型を保存し、複数ユーザーにまとめて割り当て |
| ネストされたチーム | Enterprise | 親チームが下位チームの担当レコードを見られる階層 |
| エクスポートの承認 | Enterprise | 一定件数を超える書き出しを承認制にする |
| プロパティーの表示・編集の制限 | Enterprise | 特定のユーザーやチームだけが値を見る・編集する |
権限セットは最大100件まで作れます。ユーザーに割り当てるとそのユーザーの個別の権限は上書きされ、セットを編集すると割り当て済みの全員に反映されます。役割の型を1か所で直せるのが利点ですが、1つの変更が全員に及ぶことも意味します。公式ヘルプには、HubSpotが権限セットに新しい権限を追加した場合、その権限は既定でオンになるとも書かれています。機能追加のたびに、意図しない権限が型に入り込む可能性があるということです。
権限セットのためだけにEnterpriseへ上げる判断はしません。ユーザーが十数人までなら、役割ごとの型をスプレッドシートにまとめ、見本ユーザーからのコピーで運用しても手間はかかりません。プランの違いを他の機能と合わせて比べるなら、StarterとProfessionalの違いと選び方から検討します。
退職・異動・契約終了のアカウントは「付け替え、無効化、削除」の順で閉じる
使わなくなったユーザーは、担当レコードと自動化の付け替えを済ませてから無効化し、戻す見込みがないと確定してから削除します。削除したユーザーは復元できないため、無効化と削除の間に確認の期間を置きます。
無効化と削除は別の操作です。無効化したユーザーはログインできなくなりますが、ユーザーのプロファイルと関連データはレポートや予測のために残り、あとで元の状態のまま再び有効にできます。削除は無効化したユーザーにしかできず、削除するとプロファイルがアカウントから消えます。担当していたレコードの担当者欄には「無効化/削除された(メールアドレス)」と表示されるだけになります。
2の手順を飛ばすと、無効化したあとも問い合わせが届き続けます。無効化したユーザーは「レコードを担当者にローテーション」のワークフローアクションではスキップされますが、グループやラウンドロビンの日程調整ページに残っていると、そのユーザーとのミーティングが予約され続けます。予約したコンタクトには招待が届き、本人には通知が届かないという状態です。
3の手順は請求にも関わります。有料シートから表示のみのシートへの変更は、ユーザーが有効なうちにしかできません。シートの割り当てを外しても請求は続くため、未割り当てになったシートを削除する手続きを別に行います。削除は次の請求期間から反映されます。
削除の前には、そのユーザーが作った資産も確認します。作成したワークフローやフォーム、レポートは削除後も残りますが、そのユーザーの日程調整ページは消えます。そのユーザーが非公開アプリを作っていた場合、削除するかスーパー管理者の権限を外すと、アプリを使った関連付けの処理がエラーで止まります。連携を作った担当者が辞めるときは、情報システム担当と一緒に確認してください。HubSpotの外にある資料や判断の経緯は、退職のときに慌てない引き継ぎの設計として普段から残しておきます。
外部の支援会社のアカウントも同じ順番で閉じます。支援を始める時点で、付与する権限と契約終了日、終了時にアカウントを閉じる担当者を決め、業務委託の契約で決める範囲と解約の条件と一緒に書面に残します。支援会社に何を任せ、社内に何を残すかの分担はHubSpot運用代行に頼める業務と社内分担を基準にし、任せる業務に合わせて権限を渡します。
Starter以上には、90日を超えてログインのないユーザーを毎月自動で無効化する設定があり、公式ヘルプでは既定でオンと説明されています。設定の「セキュリティー」の「権限」タブで、無効化の予定者と除外するユーザーを確認できます。月に一度しかログインしない経営層を除外しておかないと、本人が気づかないうちにアカウントが止まります。
四半期に1回、権限を棚卸しする
権限は、人の入れ替わりと機能の追加で少しずつずれていきます。四半期に1回、スーパー管理者の人数、危険な権限の保有者、使われていないアカウントの3つを確認し、ずれを戻します。
棚卸しは運用の責任者が行い、結果を契約・請求の責任者と共有します。確認する項目と、見る画面は次のとおりです。
| 確認すること | 見る画面 | ずれていたときの対応 |
|---|---|---|
| スーパー管理者が2名に収まっているか | ユーザーとチーム>ユーザー | 役割に合う型の権限に戻す |
| エクスポート・一括削除・プロパティー設定の保有者 | ユーザーとチーム(Professional以上は権限の比較) | 理由を説明できない人から外す |
| 最近ログインしていないユーザー | ユーザーとチーム>シート(最終アクティブ日) | 不要なら閉じる手順に回し、有料シートを外す |
| 誰がいつ権限を持ったか | ユーザーの「アクション」>ユーザー権限履歴を表示 | 説明のつかない変更を確認する。過去90日分を書き出せる |
| 大量のエクスポートがなかったか | データ管理>インポートとエクスポート | 件数とユーザーを確認し、用途を本人に聞く |
| ログインとセキュリティー関連の操作 | アカウント管理>監査ログ | 見覚えのないログインや設定変更を確認する。一覧で見られるのは過去30日分 |
監査ログの一覧で見られるのは過去30日分のため、四半期ごとの棚卸しでは、その月の確認と合わせて前回以降の気になる操作を書き出しておきます。Enterpriseでは監査ログから、削除後90日以内のレコードを復元することもできます。
同じ棚卸しの場で、プロパティーやワークフローの整理も済ませると、権限と設定のずれを一度に確認できます。重複コンタクトや使われていないプロパティーの整理はHubSpotのデータ整備の手順に沿って進めます。
権限設計でよく起きる失敗と、作り込まないほうがよい場合
権限の失敗の多くは、付けすぎと、付け方の仕様の誤解から起きます。一方で、少人数のアカウントで権限を細かく作り込むと、作業のたびに権限不足で止まり、結局スーパー管理者に戻すことになります。
支援の現場でよく見る失敗は次の5つです。
- 全員をスーパー管理者にする:誰が設定を変えたのかを当事者に聞いても分からず、退職者のアカウントも気づかれないまま残る
- 営業担当の範囲を「自分」だけにする:未割り当てのチェックを入れないと、担当が決まる前の新規リードが営業の画面に出ない
- 一括削除だけを外して安心する:オブジェクトごとの「削除」の範囲が「全て」のままだと、一件ずつの削除は止まらない
- シートの変更で権限も変わると思い込む:シートを下げても権限のスイッチはオンのまま残るため、シートと権限を別々に見直さないと不要な権限が残り続ける
- 権限を変えた直後に「反映されない」と判断する:反映には最大5分かかり、ユーザーは一度ログアウトしてログインし直す必要がある
権限の相談でHubSpotのサポートに頼ろうとする会社もありますが、公式ヘルプには、サポートはユーザー権限を変更できないと書かれています。権限を直せるのは社内のスーパー管理者か、「ユーザーを追加して編集」の権限を持つ人だけです。この2種類の権限を持つ人が社内にいない状態は作らないでください。
作り込まないほうがよいのは、ユーザーが5人前後で、全員が複数の役割を兼ねているアカウントです。この規模では、スーパー管理者を2名に絞り、エクスポートと一括削除とコンタクトの完全な削除を運用の責任者だけに残せば十分です。閲覧範囲は全員「全て」のままにして、チームや範囲の設計は営業が複数チームに分かれた時点で始めます。
権限の設計は、役割の型を1枚の表にまとめるところまでで止め、画面の設定はその表に合わせて入れます。表があれば、人が増えたときも棚卸しのときも、表と画面の差分を見るだけで済みます。
役割の型づくりから、エクスポートの承認やチームの設計まで一度に見直したい場合は、現在のユーザー一覧をもとにご相談ください。
まとめ
HubSpotの権限は、シートで使える機能の上限を決め、権限で操作を決め、範囲で届くレコードを決めます。最初に手を付けるのは閲覧範囲の細かな設計ではなく、スーパー管理者を2名に絞ることと、エクスポート・一括削除・コンタクトの完全な削除・プロパティー設定の編集を持つ人を減らすことです。
次にやることは3つです。役割ごとの型を表にまとめて見本ユーザーを決めること、退職と契約終了のときの閉じる順番を手順書にすること、四半期ごとの棚卸しの日付を運用の定例に入れることです。権限セットやエクスポートの承認はEnterpriseの機能なので、StarterとProfessionalでは表とコピーで同じ運用を回します。
HubSpotの権限設計のご相談
スーパー管理者とエクスポート権限の整理から、役割別の型づくりまで一緒に決めます
現在のユーザー一覧をもとに、危険な権限を持つ人、使われていないアカウント、役割に合わない閲覧範囲を洗い出し、マーケティング・営業・インサイドセールス・経営層・支援会社ごとの権限の型と棚卸しの手順を整えます。プランの見直しが必要かどうかの判断からご相談いただけます。
よくある質問
- HubSpotで閲覧だけできるユーザーを作るにはどうすればよいですか。
- ユーザーを追加するときに「表示のみのシート」を割り当てます。表示のみのシートのユーザーは、レコード、ダッシュボード、レポートを閲覧でき、レポートの絞り込みもできますが、レコードの編集やレポートの保存、メールの記録はできません。Starter以上のプランでは、このシートは数の制限なく割り当てられます。
- スーパー管理者は何人にすべきですか。
- 2名を目安にします。1名だと、その人が不在のあいだユーザーの追加や権限の変更ができず、3名以上だと誰が設定を変えたのかを追いにくくなります。契約と請求に責任を持つ人と、運用に責任を持つ人の2名にし、他のユーザーには必要な権限だけを個別に付けます。
- 権限セットはStarterやProfessionalでも使えますか。
- 使えません。権限セットの作成と保存はEnterpriseの機能です。StarterとProfessionalでは、役割ごとの権限の型を社内の表で管理し、ユーザーを追加するときに見本となる既存ユーザーの権限をテンプレートとして使います。Professional以上なら、ユーザー同士の権限の比較で差分を確認できます。
- 特定のユーザーにだけエクスポートを禁止できますか。
- できます。ユーザーの権限の「CRMツール」にある「エクスポート」のスイッチをオフにします。オフにすると、CRMレコードとレポートを書き出せなくなります。Enterpriseでは、一定件数を超えるエクスポートを承認制にすることもできます。
- 退職者のアカウントは無効化と削除のどちらにすべきですか。
- まず無効化し、引き継ぎに問題がないと確認してから削除します。無効化ならログインできなくなっても履歴や担当の表示が残り、必要になれば再び有効にできます。削除したユーザーは復元できないため、担当レコードの付け替えと、ワークフローや日程調整ページからの除外を先に済ませてください。