資料請求や問い合わせのあとに電話をかけているのに、商談に上がってくる件数が担当者によって倍近く違う。ベテランの電話は商談になり、それ以外は「資料をご覧になりましたか」で終わっている。スクリプトはあるはずなのに、聞いてみると誰も同じ順番で聞いていない。インサイドセールスを置いた会社で、半年ほど経つとよく起きる状態です。
トークスクリプトは新人に読ませる台本ではなく、商談化に必要な情報を聞き漏らさないためのチェックリストとして設計するものです。話す言葉を固定するのではなく、聞く順番と、答えによってどこへ分岐するかを固定します。そう捉え直すと、担当者の話し方に依存せずに結果を揃えられ、しかも直すべき箇所が数字で見えるようになります。
この記事は、問い合わせや資料請求のあとに行う初回接触の電話を対象に、冒頭30秒で何を伝えるか、ヒアリング項目の優先順位をどう決めるか、断られたときの分岐、電話の終わり方、CRMに残す項目、商談録画と失注理由からスクリプトを直す運用までを扱います。対象読者は、インサイドセールスを立ち上げたばかりのマーケ責任者や、少人数で電話も商談も回している中小企業の意思決定者です。架電までの速さや当番体制の作り方は別記事に譲り、ここでは会話の中身に絞ります。
目次
トークスクリプトは台本ではなく、聞き漏らしをなくすチェックリスト
スクリプトの役割は話し方を揃えることではなく、電話を切ったあとに必ず埋まっているべき情報を揃えることです。
トークスクリプトというと、最初の挨拶から締めの一言まで書かれた原稿を思い浮かべる人が多いと思います。新人が読み上げれば最低限の会話が成立する、という意味では役に立ちますが、この作り方には限界があります。読み上げていることは相手に伝わりますし、原稿にない答えが返ってきた瞬間に止まります。そして何より、ベテランは原稿を見ないので、原稿を直しても結果が変わりません。
私が設計するときは、スクリプトを「この電話を切ったときに埋まっているべき項目の一覧と、その項目を埋めるための聞く順番」として作ります。話す言葉は担当者の言い方に任せ、何を聞くか、どの順で聞くか、こう答えられたらどこへ進むか、だけを決めます。こうすると新人もベテランも同じ設計に乗ることになり、商談化した電話としなかった電話の差を、どの項目が埋まっていたかで比べられるようになります。
この違いは、改善のしやすさに直結します。原稿型のスクリプトは「言い回しが悪かったのでは」という議論にしかなりませんが、チェックリスト型なら「予算の話を聞く前に切られている」「担当者かどうかを最後まで確認していない」というように、直す箇所が特定できます。インサイドセールスの設置判断や最初の3ヶ月の動かし方はインサイドセールスの立ち上げ方で扱っていますが、そこで置いた担当者が最初に手にするべき道具が、このチェックリストです。
スクリプトの品質は「読みやすいか」ではなく「切ったあとに何が分かっているか」で測ります。項目が埋まっていれば、言い回しは担当者ごとに違って構いません。
作る前に決めること:この電話のゴールと商談化条件
聞く項目はゴールから逆算して決めるものなので、ゴールが曖昧なままスクリプトを書き始めると項目が増え続けます。
初回架電のゴールは、多くの会社で「アポを取ること」になっています。ただ、アポを目的にすると、相手が断りにくい雰囲気を作って日程だけ押さえる電話が増え、営業側から「話を聞いたら全然違った」という声が返ってきます。私はゴールを「商談に上げるか上げないかを判断できる材料を集めること」に置きます。結果として商談に上がる件数は減ることもありますが、営業が商談後に失注理由を書く手間と、マーケと営業の信頼関係を守るコストを考えると、こちらのほうが安くつきます。
ゴールをそう置くと、次に決めるべきは「商談に上げる条件」です。ここは営業と一緒に決めるしかありません。営業に「どんなリードなら会いたいか」を聞くと、たいてい「予算があって決裁者で今すぐの案件」と返ってきますが、それは理想であって条件ではありません。実際に受注した案件を10件ほど並べて、初回接触の時点で何が分かっていたかを振り返ると、条件はもっと少なくて済むことが分かります。たとえば「具体的な困りごとが一つ語れる」「導入の時期に目安がある」の2つが揃えば商談化率が明らかに高い、という形です。
この条件は、マーケティング側で定義しているMQLやSQLの基準と揃えておく必要があります。定義の作り方そのものはMQL・SQLの定義と設計方法で整理していますが、スクリプトの側から見ると、SQLの条件がそのままヒアリングの必須項目になります。ここが揃っていないと、インサイドセールスが「良い」と判断したリードを営業が受け取らない、という事態が起きます。
もう一つ、対象外の条件も同時に決めておきます。従業員規模や業種、既存顧客かどうかなど、どれだけ話が盛り上がっても商談に上げない条件です。これがないと、断りにくい担当者ほど対象外のリードを商談に流してしまいます。ICPとして定義した「理想の顧客」の裏返しが、ここでの対象外条件です。
冒頭30秒で伝えるのは3つだけ
冒頭で伝えるのは、誰か、なぜ今かけたか、何分ほしいか、の3つです。商品説明を冒頭に置いた瞬間に電話は営業電話になります。
名乗りと、かけた理由を相手の行動で言う
問い合わせや資料請求のあとの電話には、突然かける電話にはない大きな利点があります。相手が先に行動しているので、かけた理由を相手の行動で説明できることです。「先ほど資料をダウンロードいただいたので」「昨日お問い合わせいただいた件で」と言えば、相手は自分が何をしたかを思い出し、電話を受ける理由ができます。ここで会社の説明や商品の紹介を始めると、その利点を自分で捨てることになります。
フォームで取得した情報は、この冒頭で使い切るつもりで設計します。相手が選んだ資料の名前、問い合わせ内容に書かれていた一文、選択した課題の項目。それを冒頭に一言入れるだけで、「たくさんかけているうちの一本」ではない電話になります。逆に言えば、フォームの項目は、初回架電の冒頭で使えるかどうかで取捨選択したほうがよいということです。
時間の許可を取る
名乗りと理由を伝えたら、「3分ほどお時間よろしいでしょうか」と許可を取ります。単なる礼儀ではなく、ここで相手が「はい」と言うことで、その後の質問に答える態勢ができます。所要時間は正直に言います。3分と言って15分話す電話が続くと、次にかけたときに出てもらえなくなります。
許可が取れなかったときの分岐を冒頭に組み込む
「今は忙しい」と言われたときに、粘るか引くかを担当者の判断に任せると、粘る人と引く人で結果がばらつきます。私は「その場では引き、再度かける日時だけを取る」に固定しています。「承知しました。明日の午前か午後、どちらがご都合よろしいでしょうか」と聞いて、日時が取れれば十分な成果です。日時が取れなければ、翌営業日の同じ時間帯にかけ直すというルールにしておきます。冒頭の分岐をここまで決めておくと、担当者は迷わなくなります。
ヒアリング項目の優先順位はBANTからではなく商談化条件から逆算する
BANTは項目の候補として使えますが、4つを均等に聞こうとすると初回の電話では時間が足りません。優先順位は自社の商談化条件で決めます。
ヒアリング項目を設計するとき、BANT(予算・決裁権・必要性・時期)を並べて「全部聞く」としている会社が多くあります。フレームワークとしては妥当ですが、初回の3分から5分の電話で予算と決裁権を正面から聞くのは現実的ではありません。答えてもらえないだけでなく、相手に「値踏みされている」という印象を残します。まして、BANTが全部揃うリードは初回の時点ではほとんど存在せず、揃うまで待つと商談の機会を逃します。
そこで、前のセクションで決めた商談化条件を優先度1に置き、それ以外の項目は「聞けたら聞く」の優先度2、「営業が商談で聞けばよい」の優先度3に振り分けます。優先度1は聞けなければ商談に上げられない項目、優先度2は商談の質を上げる項目、優先度3は初回では聞かない項目です。この振り分けを表にして、担当者が電話中に見られるようにしておきます。
| 優先度 | 項目の例 | 聞き方の例 | 聞けなかったときの扱い |
|---|---|---|---|
| 1 | 具体的な困りごと(必要性) | 「今回お調べになった背景を伺ってもよろしいですか」 | 商談に上げない。再架電かナーチャリングへ |
| 1 | 検討の時期(時期) | 「いつ頃までに何かしらの形にしたい、という目安はありますか」 | 商談に上げない。時期の目安が出るまで追う |
| 2 | 検討に関わる人(決裁権) | 「ご検討はどなたと進めていらっしゃいますか」 | 不明のまま商談へ。営業に申し送る |
| 2 | 比較している選択肢 | 「他に何かご覧になっているものはありますか」 | 不明のまま商談へ |
| 3 | 予算の枠(予算) | 初回では聞かない | 商談で営業が確認する |
| 3 | 現行の運用や使っているツール | 話の流れで出たら記録する | 商談で営業が確認する |
優先度1の項目は、質問の形にも注意します。「課題はありますか」と聞くと「特にないです」で終わります。「今回お調べになった背景」のように、相手がすでに取った行動の理由を聞く形にすると、答えが具体的になります。時期についても「導入予定はありますか」ではなく「目安はありますか」と聞くほうが、「来期の予算で」「まだ決まっていないが半年以内には」といった答えを引き出せます。
予算を優先度3に置くことに抵抗がある営業担当者もいますが、初回接触で予算を聞いて正確な答えが返ってくる場面はほとんどありません。商談で提案の内容とセットで聞いたほうが、答えの精度も上がります。この優先順位は会社ごとに違ってよく、たとえば単価が高く決裁者の同席が必須の商材なら、決裁権を優先度1に上げるべきです。大事なのは、自社の商談化率のデータから決めることです。商談化率をマーケ起点で見直す手順はBtoB商談化率を上げる7つの施策で整理しています。
ヒアリング項目を増やすと、電話は長くなり、記録の空欄も増えます。初回の電話で聞く項目は優先度1と2を合わせて5つ以内に抑えないと、担当者は記録を諦めます。
断られたとき・答えが返ってこないときの分岐を先に決める
断り文句への切り返しを暗記させるより、断られたときにどこへ進むかを設計しておくほうが結果は安定します。
断られたときの対応を「切り返しトーク集」として用意する会社は多いのですが、切り返しは相手を説得しようとする行為なので、使えば使うほど相手の警戒が強まります。私は切り返しの言葉ではなく、断りの種類ごとに「引く・聞き直す・進む」のどれを選ぶかを決めておきます。以下の図は、初回架電の流れと分岐をまとめたものです。
「資料だけで十分です」と言われたら
最も多い断りです。ここで「少しだけお時間を」と粘ると、以後の電話に出てもらえなくなります。私はこの断りを「聞き直す」に分類しています。「承知しました。資料の中で特にご覧になりたい部分はどのあたりでしたか」と一つだけ聞き、その答えを記録して引きます。答えが具体的なら、それは優先度1の「困りごと」が埋まったことになるので、後日の再架電の理由になります。答えが曖昧なら、ナーチャリングに戻します。
「今は検討していない」と言われたら
資料請求をしたのに検討していない、というのは矛盾のようですが、実際には「情報収集の段階で、まだ社内で話題になっていない」という意味です。これは「引く」に分類します。ただし引く前に、「差し支えなければ、どのくらい先に話が出そうか」だけ聞きます。「来期に」「半年後に」という答えが取れれば、その時期の少し前に再度かけるという次のアクションになります。答えがなければ、ナーチャリングに戻します。
「担当者ではない」と言われたら
フォームを入力した人が検討の当事者ではないことは珍しくありません。これは「進む」に分類します。「では、この件はどなたがご担当でしょうか」と聞き、名前が出れば取り次ぎをお願いするか、その人に直接かけてよいかを確認します。ここで確認せずに「では資料をお渡しください」で終わると、そのリードは永遠に商談になりません。
分岐をこのように決めると、担当者が電話中に判断することは「相手の言葉がどの断りに当たるか」だけになります。判断が減ると、話し方に余裕が出て、結果として粘らない電話のほうが再架電に出てもらえる率が上がります。
電話の終わり方:次のアクションを4つに絞る
電話の出口は「商談設定・再架電・ナーチャリング戻し・対象外」の4つだけにし、どれにも当てはまらない終わり方をなくします。
初回架電の失敗で最も多いのは、断られることではなく、次のアクションが決まらないまま電話が終わることです。「では、また改めてご連絡します」で切ると、そのリードは担当者の頭の中にだけ残り、数日後には忘れられます。出口を4つに限定し、電話の最後に必ずどれかを選ぶルールにします。
商談設定は、その場で日程まで決めます。「営業から改めて連絡します」は避け、営業の予定を見られる状態でその場で候補を出します。営業のカレンダーを開いた状態で電話をかける、という運用上の小さな決めごとが、商談化率に効きます。営業とインサイドセールスの役割分担が曖昧だと、ここで「誰が日程を決めるか」が毎回問題になります。分担の決め方はインサイドセールスとマーケティングの連携で扱っています。
再架電は、日時を相手と決めた上で切ります。「来週またご連絡します」ではなく「来週火曜の午後にお電話してもよろしいですか」まで詰めます。相手が決めた日時なら、次の電話には出てもらえる可能性が高くなります。ナーチャリング戻しは、時期が遠い、または困りごとが曖昧なリードをMAのシナリオに戻す出口です。ここで「いつ再び電話の対象にするか」の条件を決めておかないと、戻したリードは戻したままになります。戻したあとにメールでどう温めるかはBtoBリードナーチャリングのシナリオ設計を参照してください。
対象外は、最初に決めた対象外条件に当たるリードです。競合、学生、既存顧客の別部門など、理由を記録した上で架電リストから外します。対象外を出口として明示しておくと、担当者が「一応また電話しておくか」と迷わなくなり、架電の総量が減っても商談数は変わらないことが多いです。
ここまでの設計を自社の商談化条件に合わせて組み直したい場合は、初回架電の設計を外部の視点で整理することも検討してください。
電話で獲得したアポイントの先にある初回商談も、相手の事前理解の量によって進め方が変わります。対面・オンラインでの設計は事前に調べてくる顧客との初回商談を参照してください。
記録する項目とCRMへの残し方
記録はメモ欄に文章で残すのではなく、選択肢で埋められる項目にしておかないと、後から集計できません。
スクリプトをチェックリストとして機能させる要は、記録です。電話のあとにCRMのメモ欄に「資料は見た。来期検討。担当は上司。」と書く運用では、担当者ごとに書き方が違い、1ヶ月経つと何も集計できません。ヒアリングの優先度1と2の項目、電話の出口、断りの種類は、あらかじめ選択肢を用意した項目にしておきます。
| 記録する項目 | 項目の型 | 誰が使うか |
|---|---|---|
| 接続できたか(接続/不在/番号違い) | 選択式 | インサイドセールスの接続率を見る人 |
| 電話の出口(商談設定/再架電/ナーチャリング戻し/対象外) | 選択式 | 商談化率を見る人、営業 |
| 断りの種類(資料で十分/時期未定/担当者でない/その他) | 選択式 | スクリプトを改善する人 |
| 困りごと(優先度1) | 自由記述(1〜2文) | 営業(商談前に読む) |
| 検討時期(優先度1) | 選択式(3ヶ月以内/半年以内/来期/未定) | 再架電の時期を決める人 |
| 検討に関わる人(優先度2) | 自由記述 | 営業 |
| 次のアクションの日付 | 日付 | 担当者本人(タスク化) |
選択式にする理由は、集計のためだけではありません。選択肢があると、担当者は電話中に「この項目を埋めるには何を聞けばよいか」を意識するようになります。記録の項目そのものがヒアリングのチェックリストになる、という構造です。逆に、自由記述の項目が多いと、埋めることが面倒になり、聞かなくなります。
次のアクションの日付は、記録した瞬間に担当者のタスクとして起票される形にします。再架電の日時を相手と決めても、それがタスクにならなければ忘れます。CRMを使っているなら、出口が「再架電」のときに自動でタスクを作る設定は、最初に入れておくべき自動化です。HubSpotの場合、この種の設定はHubSpot Sales Hubの使い方で扱っている範囲で組めます。
記録の項目は、営業が商談の前に読む前提で設計します。営業が「インサイドセールスの記録は見ても役に立たない」と言い始めたら、それは記録の項目が営業の準備に使える形になっていないということです。営業に「商談前の5分で何を知りたいか」を聞いて、その項目を優先度1に置き直すのが早道です。
スクリプトは商談録画と失注理由から直す
スクリプトの改善材料は架電の中にはあまりなく、その先の商談の中にあります。
スクリプトを作って終わりにする会社と、改善し続ける会社の差は、改善の材料をどこから取っているかにあります。架電の録音を聞き直す運用は、聞く側の負担が大きく、たいてい続きません。私が推奨するのは、商談の録画と失注理由を月に一度見て、「初回架電で何を聞けていれば、この商談はもっと良くなったか、あるいは商談にすべきではなかったか」を逆算する方法です。
週次で見る数字は3つ
週次で見るのは、接続率、商談化率、断りの内訳の3つです。接続率はスクリプトではなく架電のタイミングの問題なので、ここが低ければ直すのはスクリプトではありません。商談化率が下がっていて、断りの内訳で「資料で十分」が増えているなら、冒頭30秒に問題があります。「時期未定」が増えているなら、優先度1の時期の聞き方に問題があるか、そもそも流入しているリードの温度が変わっています。断りの種類を選択式で記録しているからこそ、この切り分けができます。
月次で商談録画と失注理由を見る
月に一度、商談化した案件のうち失注したもの、そして営業から「これは商談にすべきではなかった」と言われたものを並べ、初回架電の記録と突き合わせます。すると、たとえば「困りごとの記述が『効率化したい』のように抽象的な案件は、ほぼ失注している」といったパターンが出てきます。これが分かれば、優先度1の質問に「具体的にどの業務で、どのくらいの時間がかかっているか」を一つ足す、という改善になります。商談録画から営業の型やコンテンツのネタを取る方法は商談録画の活かし方で扱っていますが、同じ録画がスクリプトの改善材料にもなります。
改善の単位は「質問1つ」
スクリプトを直すときは、一度に1箇所だけ変えます。冒頭の言い回しと質問の順番と出口の条件を同時に変えると、翌月に数字が動いても何が効いたのか分かりません。質問を1つ足す、1つ削る、順番を1つ入れ替える、のいずれかを月に一度行い、翌月の商談化率と断りの内訳で確認します。地味ですが、半年続けると、自社のリードに合ったスクリプトが自然にできあがります。
スクリプトの改善会議で「言い回し」の話が始まったら、議題を「どの項目が埋まっていなかったか」に戻します。言い回しは担当者の個性で、項目はチームの設計です。
スクリプトを作らないほうがいい場合、作っても効かない場合
架電の対象が月に数十件に満たない段階では、スクリプトより先に直すべきものがあります。
ここまで設計の手順を書いてきましたが、スクリプトを整備しても効かない状況があります。一つは、そもそも架電の対象が少ない場合です。月に問い合わせが10件程度なら、スクリプトを作って改善する前に、その10件に対して営業が直接電話したほうが早いです。分岐や記録を整備する価値が出るのは、担当者が電話の内容を思い出せなくなる量、目安として月に数十件を超えてからです。インサイドセールスが機能しない理由の多くは、スクリプトではなく対象数の不足にあります。
もう一つは、商談化条件が営業と合意できていない場合です。営業が「とにかく全部よこせ」という状態でスクリプトを作ると、ヒアリング項目の優先度が決まらず、結果としてアポ取り台本になります。この場合はスクリプトより先に、営業と商談化条件を1枚に落とす作業が必要です。
また、この記事の設計は問い合わせや資料請求のあとの電話、つまり相手が先に行動している場面を前提にしています。接点のない相手に新規で電話をかけるアウトバウンドでは、冒頭30秒の作り方も分岐も別物になります。役割としてはSDRとBDRの違いに当たる話で、SDRとは・BDRとはで整理しています。アウトバウンド用のスクリプトをこの記事の型で作ると、冒頭で切られる率が上がるだけです。
最後に、スクリプトは会話の中身の設計であって、電話をかけるまでの速さや、誰が当番で対応するかという体制の設計は別の問題です。問い合わせから一次接触までの時間と受け皿の作り方は問い合わせ対応スピードの初動設計で扱っています。スクリプトが良くても、かけるのが3日後なら相手は他社と話を進めています。順番としては、初動の体制を先に決め、その上で会話の中身を設計してください。
なお、スクリプトを外部に丸ごと作ってもらうと、自社の商談化条件が反映されないまま一般的なアポ取り台本が納品されがちです。条件の決定と記録項目の設計だけは、社内の営業を巻き込んで行ってください。
まとめ
インサイドセールスのトークスクリプトは、新人に読ませる原稿ではなく、電話を切ったあとに必ず埋まっているべき情報の一覧と、それを埋めるための聞く順番と分岐の設計です。作る前に、この電話のゴールを「商談に上げるかを判断できる材料を集めること」に置き、営業と一緒に商談化条件と対象外条件を決めます。
冒頭30秒で伝えるのは、名乗り、相手の行動を理由にした架電理由、時間の許可の3つだけです。ヒアリング項目はBANTを均等に聞くのではなく、商談化条件を優先度1に置き、5つ以内に抑えます。断りは切り返すのではなく、種類ごとに引く・聞き直す・進むを決めておき、電話の出口は商談設定・再架電・ナーチャリング戻し・対象外の4つに限定します。
記録は選択式の項目でCRMに残し、週次で接続率・商談化率・断りの内訳を見て、月次で商談録画と失注理由から質問を1つずつ直します。この循環が回り始めれば、スクリプトは担当者の話し方に依存しない、チームの資産になります。架電対象が少ない段階や、営業と商談化条件が合意できていない段階では、スクリプトより先に直すべきものがあることも覚えておいてください。初回架電の設計から記録項目、改善の運用までを一緒に整理したい方はこちらからご相談ください。
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初回架電のスクリプトと記録項目、営業と合意できる形で設計しませんか
担当者によって商談化率がばらつく、営業がインサイドセールスの記録を見ない、スクリプトを作ったが直し方が分からない。こうした状態は、商談化条件の合意とヒアリング項目の優先順位、CRMの記録設計をセットで見直すと解けることが多くあります。BtoBの実務で手を動かしてきた視点で、現状のスクリプトと記録項目を一緒に整理します。
よくある質問
- インサイドセールスのトークスクリプトは、どのくらいの長さで作るべきですか。
- 読み上げる原稿として作るなら長さは問題になりますが、チェックリストとして作るなら1枚に収まります。冒頭で伝える3点、優先度1と2のヒアリング項目5つ以内、断りの種類ごとの分岐、電話の出口4つ、記録項目。これだけを1枚にまとめ、担当者が電話中に見られる状態にしておくのが実務的です。長い原稿は読まれず、改善もされません。
- 初回架電でBANTはすべて聞くべきですか。
- 初回の3分から5分の電話ですべてを正面から聞くのは現実的ではありません。特に予算は、提案内容とセットでないと正確な答えが返ってこないため、商談で営業が聞くほうが精度が上がります。BANTは項目の候補として使い、自社の商談化条件に直結する項目だけを優先度1に置いてください。商材によっては決裁権が優先度1に上がることもあり、優先順位は自社の商談化率のデータで決めます。
- 電話で断られたときの切り返しトークは用意しなくてよいのですか。
- 切り返しは相手を説得しようとする行為なので、使うほど相手の警戒が強まり、次の電話に出てもらえなくなります。代わりに、断りの種類ごとに「引く・聞き直す・進む」のどれを選ぶかを決めておきます。たとえば「資料だけで十分」には一つだけ聞いて引く、「担当者ではない」には担当者の名前を聞いて進む、という形です。粘らない電話のほうが、再架電に出てもらえる率は上がります。
- スクリプトの改善は誰がどの頻度で行うべきですか。
- インサイドセールスの責任者が、週次で接続率・商談化率・断りの内訳を見て、月次で商談録画と失注理由を営業と一緒に振り返るのが標準的な運用です。直すのは月に1箇所、質問を1つ足す・削る・順番を変えるのいずれかに絞り、翌月の数字で効果を確認します。複数箇所を同時に変えると、何が効いたか分からなくなります。
- アウトバウンドの新規架電にも同じスクリプトを使えますか。
- 使えません。この記事の設計は、問い合わせや資料請求のあとに相手が先に行動している場面を前提にしています。接点のない相手への新規架電では、冒頭で相手の行動を理由にできないため、冒頭30秒の作り方も分岐も別物になります。アウトバウンドを行う場合は、対象リストの設計と合わせて別にスクリプトを作ってください。