スタートアップのマーケティングは何から始めるか|BtoBのPMF判定・ICP・最初の90日

スタートアップのマーケティング、何から始める?優先順位と実践ステップを解説

BtoBスタートアップのマーケティングは、広告やSNSを回すことより先に、自社のプロダクトを買う相手と、その相手に届く経路を探し当てる仕事です。「そろそろマーケティングを始めなければ」と考えた経営者や1人目のマーケ担当者の前には、広告、SNS、記事、展示会、メルマガと候補が一度に並びます。少ない予算と人数で候補を全部少しずつ試すと、どの施策も成果を判定できる量に届かず、半年後に「やってはいるが商談が増えない」状態が残ります。

スタートアップのマーケティングで最初に決めるのは、使うチャネルではありません。自社がPMFの前か後かを判定し、売れている顧客から「誰に売るか」を1つに絞ってから、チャネルを1〜2本だけ選ぶという順番です。順番を逆にすると、施策の結果を解釈する基準がないまま予算を使い切ります。

広告・SNS・記事・展示会のどれから手をつけるかで迷っているスタートアップの場合、答えを出す手がかりはチャネルの比較表ではなく、自社がPMFの前にいるのか後にいるのかという判定です。受注した顧客ごとに買った理由を説明できないうちは、まだチャネルを選ぶ段階に来ていないと考えたほうが、予算を使い切らずに済みます。

自社がPMFの前か後か、最初のチャネルをどれにするかを自社の数字で決めたいときは、受注した顧客の一覧をもとに、フェーズの判定とICPの仮説を一緒に作る相談ができます。

目次

スタートアップのマーケティングは、売れる相手と経路を探す仕事から始まる

スタートアップのマーケティングは、既存の勝ちパターンを効率化する仕事ではなく、売れる相手と届け方を見つけて再現できる形にする仕事です。事業が安定した会社のやり方をそのまま持ち込むと、判断の前提が合いません。

スタートアップのマーケティングとは、少ない予算と少ない受注データで、自社のプロダクトが売れる相手と届け方を見つけ、同じ結果を繰り返し出せる形にする活動のことです。事業が安定したBtoB企業との違いは、手元にある情報の量と、マーケティングに求められる役割にあります。

観点 事業が安定したBtoB企業 BtoBスタートアップ
使えるデータ 受注・流入のデータが年単位で蓄積されている 受注が数件〜数十件で、数字が毎月大きく振れる
誰に売るか 既存顧客の延長で決まっている 仮説の段階で、四半期ごとに変わりうる
マーケの役割 既存チャネルの獲得単価を下げる 売れる相手と経路を見つける
予算の決め方 売上に対する比率で組める 調達資金と月々の支出から逆算する
担い手 マーケ部門・専任担当者がいる 創業者か1人目の担当者が兼務している

違いが最もはっきり出るのは、施策の評価です。受注8社のSaaS企業のCEOが月30万円の検索広告を2か月回し、問い合わせが3件だったとします。安定した会社なら獲得単価を過去平均と比べて判断できますが、比べる過去の数字がありません。スタートアップの施策は「数字が良かったか」より「誰から問い合わせが来て、何と言っていたか」を学ぶために回し、その学びを次の施策の条件にします。

BtoBスタートアップのマーケティングが扱う範囲は、広告や記事の制作だけではありません。誰に売るかの決定、商談までの経路の設計、営業との引き渡しのルール、数字の測り方までを含みます。制作物を増やす前に、これらの前提を決める作業が先に来ます。

自社のフェーズを先に判定する:PMF前と後でやることは逆になる

PMF前のマーケティングは「誰がなぜ買うか」を集める調査で、PMF後は売れる経路を仕組みにする作業です。同じスタートアップでも、フェーズを取り違えると投資の向きが逆になります。

シード期の会社が投資家から「認知を取るべきだ」と言われ、PMF前に広告と展示会へ予算を寄せるケースがあります。売れる理由が説明できない段階で接点を増やしても、問い合わせの中身がばらつき、何が当たったのか判断できません。逆に、似た業種から受注が続いているのに創業者の個別営業だけで回し続けると、営業時間が上限になって成長が止まります。まず自社がどの段階にいるかを次の表で判定してください。

フェーズ 状態の目安 マーケの最初の仕事 まだやらないこと
PMF前(シード) 受注が数件。なぜ買われたかを説明できない 創業者が顧客と話し、誰がどんな言葉で買うかを集める チャネルの多面展開、MAツール導入、認知広告
PMF直後(アーリー) 似た顧客からの受注が続き始めた 受注パターンを書き出し、問い合わせの受け皿と1本目のチャネルを作る 認知施策への予算集中、ブランド指標の導入
シリーズA前後 営業が複数名になり、月の商談目標がある MQLの定義を営業と合意し、計測の仕組みと担当者を置く 担当者の頭の中だけで回る運用の放置
シリーズB以降 1本目のチャネルの伸びが鈍り始めた 2本目以降のチャネルを足し、機能ごとに担当を分ける 1本のチャネルへの依存、計測なしの拡大

表の「状態の目安」は資金調達のラウンド名より優先してください。シリーズAを調達していても、受注の理由を説明できなければPMF前の仕事から始めます。判定に迷ったら、PMF後のマーケティング戦略の判定チェックで到達を確かめ、到達していればチャネルを広げる順番もそこで決めます。

マーケティングを始める前に答える「前提の3問」

施策を選ぶ前に、誰の何の痛みを解くのか、受注した顧客に共通点はあるか、商談にどれくらいかかるかの3問に答えます。答えが仮説でも、書き出してあれば施策の結果を解釈できます。

スタートアップのマーケ立ち上げで最も多い失敗は、「誰に何を届けるか」が決まる前に施策を実行することです。施策を先に決めると、その施策を続ける理由を後から作る判断が起きます。創業者と営業責任者が1時間かけて、次の3問への答えを1枚の文書に書き出してください。

Q1:プロダクトが解決するのは、誰の、どんな業務上の痛みか

「中小企業の営業マネージャーが、週次の進捗確認に毎回2時間かけている」のように、職種・業務・痛みの粒度まで書けているかを確認します。「営業の効率化」のような書き方で止まっている場合、広告文も記事のテーマも決められません。

Q2:受注できた顧客に、共通する属性や行動はあるか

受注が数件でも答えられます。業種・従業員規模・決裁者の役職・導入の決め手を横に並べると、共通点が2つか3つ見えてきます。共通点が見えない場合は、PMF前の段階にいる可能性が高いと判断してください。

Q3:初回の接点から受注まで、どれくらいかかるか

受注までの期間が2週間なのか6か月なのかで、マーケティングが担う範囲とチャネルが変わります。期間が短い商材は問い合わせを直接取りにいく施策と相性がよく、期間が長い商材は検討中の見込み顧客と接点を保つ仕組みが先に要ります。

3問の答えは仮説のままで構いません。書き出した仮説があれば、施策の結果を「当たった」「外れた」で読めるため、次の四半期に何を直すかが決まります。

ICPは受注した顧客から逆算して1つに絞る

ICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客像)は、最初に集中する企業像を1つに絞るために作ります。受注実績から逆算し、四半期ごとに見直します。

事業が安定した会社は複数の顧客層へ並行して営業できますが、スタートアップにはその予算も人数もありません。最初に集中する顧客像を1つ決めると、広告の配信条件、記事のテーマ、営業リストの抽出条件が同じ基準で揃います。受注顧客から共通条件を抜き出すときは、ICP設定の手順に沿って、業種・規模に加えて導入を決めた人の役職まで書き出します。

ICPに含める項目

ICPは個人の人物像より、企業・組織の属性を先に決めます。最低限、次の5項目を埋めてください。

  • 業種(例:SaaS、製造業、小売)
  • 従業員規模または売上規模
  • 意思決定に関わる役職(決裁者と、社内で導入を推す人の区別)
  • 現在使っているツールや競合サービス
  • 導入を止めやすい要因(予算・社内承認・セキュリティ規定など)
ICPを決める3つの属性 業種・規模 業界・従業員数・売上規模 意思決定の構造 決裁者・推進者・関与する役職 使っているツール 既存のSaaS・競合製品の利用状況 ICP(理想的な顧客像) 最初に集中する顧客像を1つ決める
図1:ICPは業種・規模、意思決定の構造、使っているツールの3つを組み合わせて1つに絞る

受注実績がある場合とない場合で、作り方を変える

受注実績がある会社は、成約した案件の共通属性を並べるところから始めます。継続率が高い顧客と、紹介をくれた顧客の属性を優先してください。受注実績がゼロの会社は、「導入すれば最も価値が出る」と創業者が確信できる企業像を仮説として書き、初期ユーザーや試験導入先へのヒアリングで補強します。

ICPは一度決めて固定するものではありません。四半期に1回、直近の受注と失注を並べ、外れていた属性を削ります。企業像が決まった後に、その企業の中の誰に何を伝えるかを決める段階でBtoBペルソナの設定方法に進みます。

ファネルは3層で始め、最初は商談化率を主指標に置く

初期のファネルは認知・育成・商談の3層で足ります。KPIはリード数より商談化率を主指標にし、受注目標から逆算して必要な数を決めます。

BtoBマーケティングでは、認知から商談・受注までの流れをファネルとして区切ると、どの段階で見込み顧客が止まっているかを特定できます。スタートアップ初期に細かい段階を設計しても、各段階の件数が少なすぎて比較できません。3層から始め、件数が増えてから分けてください。件数が増えて段階を分けるときは、BtoBファネル設計のやり方に沿って区切りを足します。

3層ファネルと各層のKPI

  • 認知・流入(TOF):ターゲット企業からのサイト訪問数、オーガニック流入数
  • 興味・育成(MOF):資料ダウンロード数、ウェビナー参加数、メールのクリック数
  • 商談・検討(BOF):問い合わせ数、MQL数、商談化率

KPIを決めるときは、マーケティングが単独で責任を持つ指標と、営業と共同で追う指標を分けます。MQL(Marketing Qualified Lead)までをマーケの責任範囲、商談化以降を営業との共同範囲とする線引きが、初期の会社では揉めにくい形です。線引きを営業と合意するときは、MQLとSQLの定義の案を1枚にして持ち込みます。

受注目標から必要な数を逆算する

例として、四半期の新規受注目標が6件、商談から受注への転換率が25%の会社なら、必要な商談は24件です。問い合わせから商談への転換率が40%なら、四半期に60件、月20件の問い合わせが要ります。転換率は自社の直近の数字を使い、数字がなければ仮置きして1か月後に置き換えてください。逆算した数字は、KPIツリーの形に並べて、月次の会議で実績と比べます。

初期はリード数より商談化率を見る

スタートアップ初期は、リード数を増やすより、営業が「会いたい」と判断するリードが何件来たかを見てください。数を追い始めると、ICPから外れた問い合わせで営業の予定が埋まり、本来の見込み顧客への対応が遅れます。最初の3か月は、週1回の営業との打ち合わせで商談化率と、商談にならなかったリードの理由を確認する運用で十分です。

チャネルは最初の1〜2本に絞る:向く条件と向かない条件

チャネルは「ICPがどこで情報を集め、どう買うか」から逆算して1〜2本に絞ります。最初の1本が商談を生むと確認できるまで、次の1本は足しません。

「どのチャネルが良いか」に一般的な答えはありません。問うべきは、ICPが課題に気づいたときにどこで情報を集め、誰に相談するかです。ICPが先に決まっているから、チャネルが後から決まります。次の表は、BtoBスタートアップが初期に選ぶことの多いチャネルを、向く条件と向かない条件で整理したものです。期間は実務上の目安で、商材と市場によって前後します。

チャネル 向く条件 向かない条件 商談が出始めるまでの目安
創業者の直接営業・紹介 PMF前。対象企業が数百社程度の狭い市場 創業者が営業に週10時間以上割けない すぐ
アウトバウンド(メール・電話・手紙) ICPの企業リストを作れる。単価が高い ICPが絞れていない。訴求が定まっていない 1〜2か月
SEO・オウンドメディア ICPが課題を自分で検索する 新しい分野で、課題を表す言葉が検索されていない 4〜6か月以上
ウェビナー・共催セミナー 業界の課題が明確で、話せる知見がある 集客に使える連絡先リストも共催先もない 1〜3か月
検索広告 解決策が検索されている。訴求を検証済み 訴求が固まっていない。検索する人がいない 1〜2か月
SNS・創業者の発信 創業者が業界で継続して発信できる 3か月以内に商談が必要 6か月以上

表の条件に当てはまらないチャネルは、他社が成果を出していても今期は選びません。候補に残ったのがアウトバウンドならアウトバウンド営業の判断基準で対象企業数と単価を確かめ、SEOならBtoB SEOをやるべき会社とやらない会社の条件に照らしてから着手します。施策の選択肢を一覧で比べたい場合はBtoBリード獲得施策一覧が判断材料になります。

チャネルより先に、問い合わせの受け皿を作る

どのチャネルを選んでも、流入した見込み顧客が着地するページが弱ければ商談になりません。サービス説明、料金の考え方、導入事例、問い合わせフォームの4つが揃っているかを先に確認してください。広告を始めた翌月に「問い合わせが来ない」と気づき、原因がフォームの入力項目の多さだった、という順番の失敗は珍しくありません。

1本目のチャネルは、3か月続けて商談が何件出たかで評価します。3か月で商談が1件も出なければ、チャネルではなくICPか訴求を疑ってください。

広告を最初の1本に選ばない理由

検索広告やディスプレイ広告を最初に選ぶスタートアップは多いものの、初期に成果が出にくい理由は2つあります。ICPと訴求が固まっていない段階では、配信対象も広告文も絞れません。受注までの期間が長い商材では、広告の成果を受注で判定できるまでに数か月かかります。広告は「訴求が検証済みで、同じ結果を量で増やしたい段階」で使ってください。訴求の検証が済んだら、Google広告の始め方に沿って開始予算を決めます。自社のICPでどのチャネルから着手すべきか迷う場合は、チャネル選定の無料相談もご利用ください。

コンテンツは受注に近い問いから作る

初期のコンテンツは、ICPが比較検討の段階で調べる問いと、商談で毎回聞かれる質問から作ります。認知を広げる記事は、受注に近い記事が揃ってから足します。

コンテンツを作る目的は2つです。検索や紹介経由でICPに見つけてもらうことと、サイトを訪れた見込み顧客が「この会社に相談してよい」と判断する材料を渡すことです。2つを同時に満たすのは、ICPが実際に抱えている業務課題に具体的に答えるコンテンツです。テーマを選ぶ前に、BtoBコンテンツマーケ戦略の立て方に沿ってICPの業務課題を一覧にします。

テーマの優先順位を決める3つの基準

  1. ICPが実際に検索しているか:Googleサーチコンソールやキーワード調査ツールで検索の有無を確認する
  2. 自社が他社より具体的に答えられるか:開発の背景や導入時の支援で得た知見は、競合が書けない内容になる
  3. 商談に近い検索意図か:「〇〇とは」より「〇〇 比較」「〇〇 導入 費用」のほうが検討段階に近い

最初に作るコンテンツの種類

営業責任者に「商談で毎回聞かれる質問を10個出してほしい」と頼むと、最初の記事テーマの候補がそろいます。初期は次の3種類を優先してください。

  • 課題の整理記事:ICPが抱える業務課題と、解決の選択肢を示す。検索流入と育成を兼ねる
  • 比較・選び方の記事:「〇〇ツール 比較」「〇〇 選び方」に答える。比較検討中の見込み顧客が読む。商談で競合名が出るようになったら競合比較コンテンツを作る
  • 導入事例:導入前の課題、導入の経緯、変わった数字を載せる。商談の後半で稟議の材料になる。掲載の承諾は導入事例の作り方に沿って、匿名の案も添えて依頼する

予算と体制:誰が担い、月いくらまで使うか

予算は売上比率ではなく、調達資金と月々の支出から「マーケに使える月額」を先に決めます。体制は、判断する人を社内に1人置き、実行を外部で補う形から始めます。

BtoBのマーケティング予算を売上の一定割合で決める考え方がありますが、売上が小さいスタートアップでは比率で計算すると施策が組めない額になります。調達資金と毎月の支出から、マーケティングに割ける月額と期間を先に決め、その範囲で施策を選んでください。例として、月50万円を6か月使えると決めた会社なら、1本目のチャネルに30万円、受け皿の改善とツールに20万円、といった配分から始められます。2本目のチャネルを足すかどうかは、マーケ予算の配分を3か月ごとに見直すときに決めます。

体制は、PMF前なら創業者がマーケティングの判断を担い、記事制作や広告の設定など手を動かす作業を業務委託や副業人材に任せる形が現実的です。委託先に作業を渡す前に、予算の増減やICPの変更のように創業者が持つ判断と任せる作業を、経営者がマーケティングに関わる範囲に沿って書き分けておきます。担当者がまだいない会社は、マーケティング担当がいない会社の最初の30日の手順で、委託先に渡す作業を洗い出します。

ICPも成果の測り方も決まっていない段階で1人目のマーケターを採用すると、入社後の3か月が現状調査に消えます。採用は、外部の力を借りて最初のチャネルの型ができてから検討してください。

1人目の募集を出す前に、一人目を採用するか外注するかの条件と自社の状況を照らし合わせ、採用するならマーケ組織の型とレポートラインも決めてから面接を始めます。

やらないことを決める:優先順位が逆転する3つのパターン

スタートアップのマーケティングは、やることより先に、今期やらないことを決めると予算が分散しません。経験のある担当者でも、次の3パターンで順番を逆にしがちです。

施策の方向は合っていても、着手の順番が逆になって成果が出ないケースは、立ち上げの現場で繰り返し見かけます。図2は、フェーズの判定から最初の90日までの着手の順番を1枚に並べたものです。

スタートアップのマーケ着手順 1 前提の3問に答える 2 ICPを1つに絞る 3 ファネル3層とKPIを決める 4 チャネルを1〜2本に絞る 5 実行し、90日で検証する 検証の結果でICPを見直し、2に戻る
図2:スタートアップのマーケティングの着手順。誰に届けるかを先に決め、施策の実行は最後に置く

パターン1:ブランドの見た目を整えすぎる

ロゴ、サイトデザイン、トーンの整備に3か月かけ、問い合わせを取りにいく施策の着手が遅れるケースです。初期のサイトは、見込み顧客が「まともな会社だ」と判断できる水準で足ります。デザインの完成度より、誰のどの課題を解くのかがトップページで読み取れるかを優先してください。

パターン2:測れない施策に予算を使う

展示会、プレスリリース、交通広告など、商談への影響を測りにくい施策を「認知のため」という理由で続けるパターンです。スタートアップの初期は、施策の結果を測って次の判断に使う回数が成果を分けます。測れない施策を入れると、その四半期の学びが残りません。やるなら「名刺を何枚集め、そのうち何件を商談にするか」まで決めてから出ます。

パターン3:マーケと営業が分かれて動く

マーケが渡したリードを営業が「質が低い」と言い、マーケは「渡しているのに営業が追わない」と言う状態です。MQLの定義と商談化の基準をマーケと営業が一緒に決め、週1回、同じ数字を見る場を置くと、認識のずれは早い段階で表に出ます。週1回の場を置くときは、マーケ・セールス連携の仕組みに沿って、差し戻しの理由を記録する欄を先に作ります。

最初の90日でやること:設計・実行・検証の3段階

最初の90日は、成果を出し切る期間ではなく、施策を実行して測り、次の判断に使う流れを1周させる期間です。30日ずつ設計・実行・検証に分けます。

90日の計画は、開始前に経営陣と「90日後に何ができていれば続けるか」を合意してから始めてください。たとえば「商談化したリードが月3件以上」「ICPに合う企業からの問い合わせが全体の半分以上」のように、続ける条件と見直す条件を数字で決めておくと、90日後の判断で揉めません。

1〜30日目:設計

  • 既存顧客と商談中の案件を並べ、ICPの仮説を作る
  • 競合3〜5社のサイト、記事、訴求を調べる
  • ファネル3層とMQLの基準を仮に決める
  • Googleアナリティクスとサーチコンソールを設定し、問い合わせを計測できる状態にする
  • 営業チームと、リードの渡し方と対応期限を決める

31〜60日目:実行

  • ICP向けの課題整理記事や事例を2〜4本公開する
  • 選んだチャネルで最初の施策を実行する(ウェビナー1回、アウトバウンド100社、広告の小規模テストのいずれか)
  • 問い合わせフォームと、受付後の自動返信メールを整える
  • CRMにリードを集約し始める。HubSpotを使うならスタートアップ向けの設定例を見て、最初に使う機能を絞る

61〜90日目:検証

  • ファネル各層の件数と転換率を集計する
  • 商談にならなかったリードの理由を営業から集める
  • ICPの仮説を受注・失注と照らし合わせ、外れた属性を削る
  • 次の四半期に続けるチャネル、止めるチャネル、足すチャネルを決める

90日で仕組みが完成している必要はありません。90日目に「何をやり、何が分かり、次に何を変えるか」を1枚で説明できれば、次の四半期の計画はその1枚から作れます。

まとめ

スタートアップのマーケティングで最初に決めるのは、チャネルではなく、自社のフェーズと売れる相手です。PMF前なら創業者が顧客と話して買われる理由を集め、PMF後なら受注パターンを書き出して受け皿と1本目のチャネルを作ります。

次にやることは、今週中に「前提の3問」の答えを1枚に書き出し、受注した顧客を並べてICPの仮説を1つ決めることです。そのうえで、チャネル表の条件に当てはまる1〜2本を選び、90日後に続けるか見直すかの条件を経営陣と合意してから実行に移ってください。フェーズの判定やチャネルの選び方を自社の数字で確認したい場合は、下記のフォームから現状をお聞かせください。

無料相談

スタートアップのマーケ、最初の90日で何をやるかを一緒に決めませんか

受注した顧客のデータをもとに、フェーズの判定、ICPの仮説、最初に選ぶチャネルと90日後の判断条件まで整理します。まだ担当者がいない段階や、施策を始めたが商談が増えない段階からご相談いただけます。

よくある質問(FAQ)

スタートアップのマーケティングは何から始めればいいですか?
自社がPMFの前か後かを判定し、受注した顧客からICP(理想的な顧客像)を1つに絞るところから始めます。チャネルはICPの情報収集の仕方から逆算して1〜2本に絞り、90日後に続けるか見直すかの条件を先に決めてから実行します。
BtoBスタートアップのマーケティング予算はどう決めればいいですか?
売上比率ではなく、調達資金と毎月の支出からマーケティングに割ける月額と期間を先に決めます。売上が小さい段階では比率で計算すると施策が組めない額になるためです。決めた月額の中で、1本目のチャネルと問い合わせの受け皿の改善に配分します。
PMF前のスタートアップにマーケティングは必要ですか?
必要ですが、やることは広告や認知施策ではなく、創業者が顧客と話して「誰がどんな言葉で買うか」を集める作業です。PMF前にチャネルを増やしても、何が当たったかを判断する基準がないため、予算に見合う学びが残りません。
1人目のマーケ担当者はいつ採用すべきですか?
ICPの仮説があり、最初のチャネルで商談が出る型が見えてからが目安です。それ以前に採用すると、入社後の数か月が現状調査に使われます。型ができるまでは、創業者が判断を担い、実行を業務委託や副業人材に任せる形が現実的です。
スタートアップはいつから広告を始めるべきですか?
ICPと訴求が固まり、他のチャネルで商談につながる訴求を確認できてからです。訴求が検証されていない段階では配信対象も広告文も絞れず、受注までの期間が長い商材では成果の判定にも時間がかかります。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。