オウンドメディアの記事は月何本?本数より先に決める制作体制

月4本と決めてオウンドメディアを始めたものの、3か月目に2本、4か月目にゼロ。担当者が怠けたわけではなく、他の業務が重なっただけです。よくある光景ですが、この止まり方には共通した原因があります。書く時間がなくなったのではなく、書く材料が先に尽きているのです。

本数を目標に置くと、材料が尽きたことに気づけません。制作体制で決めるべきは月に何本かではなく、1本が完成するまでの工程を誰が担い、その材料がどこから供給されるかです。本数は、それを決めた結果として後から出てきます。

この記事は、自社でオウンドメディアを回そうとしているBtoB企業のマーケ担当者・経営者に向けて、工程ごとの工数の見方、内製と外注の線引き、外注先の種類と費用の考え方、社内から一次情報を引き出す仕組み、品質チェックの項目、生成AIの使いどころを扱います。キーワード選定や記事単体の書き方は扱いません。

目次

本数を目標にすると、制作はむしろ止まる

月に何本という目標は進捗が見えるので置きたくなりますが、止まる原因の多くはこの目標の置き方そのものにあります。

本数目標は「材料が尽きたこと」を隠す

オウンドメディアが止まる直前には、必ず前兆があります。テーマ一覧の残りが少なくなり、書きたいことではなく書けそうなことを選び始める。この段階で手を打てば立て直せるのですが、本数目標があると気づけません。目標は「4本公開したか」しか見ていないので、材料の残量という指標が誰の視界にも入らないからです。

そして材料が尽きた月に、担当者は初めて「今月書くことがない」と気づきます。ここから慌ててテーマを探すことになりますが、テーマ探しは本来2〜3週間かけて社内から集める工程です。公開予定日の1週間前に始められる作業ではありません。結果、その月はゼロになり、一度ゼロになった月次目標は次の月にも復活しません。

埋めるための記事が混ざり始める

もう一つの副作用は、記事の中身が変わることです。本数を守るために、社外の情報を組み替えれば書けるテーマが選ばれるようになります。「BtoBマーケティングとは」「MAツールのメリット」のような、自社が書く必然性のないテーマです。

この種の記事は、書けてしまうところが厄介です。調べれば形になるので本数は守れる。しかし読んだ見込み客に何も残らないので、商談にはつながりません。半年後に「記事は24本あるのに問い合わせがゼロ」という状態になり、そこで初めてテーマ選定を疑うことになります。24本のうち商談に効いていたのは、営業の話を聞いて書いた3本だけだった、という結末をよく見ます。

先に決めるのは、工程と担当と供給源

では何を決めるか。順番は、①1本が完成するまでの工程を分解する、②工程ごとに誰がやるかを決める、③社内でしか出せない材料の供給源を仕組みにする、の3つです。この3つが埋まると、月に何本出せるかは計算で出ます。逆に、この3つが埋まっていない状態で本数だけ先に決めても、その数字に根拠がありません。

なお、決めた本数をどう配分し、ゼロの月を作らないかというペース設計そのものはBtoBオウンドメディアの運用体制で扱っています。この記事は、その1本を誰がどう作るかという中身の側に絞ります。

本数と品質のどちらに工数を割くかは段階で変わります。本数を増やすか既存記事を磨くかの判断を、既存記事の情報設計の側から整理しています。

記事1本の工数を、工程で分解する

「1本あたり何時間」で見積もると必ず外れます。時間が消えるのは執筆ではなく、その前後の工程だからです。

7つの工程と、実際に時間が消える場所

記事1本は、おおまかに7つの工程に分かれます。多くの人が「記事を書く」と言うとき、想像しているのは4番目だけです。ところが実際に工数を計ると、執筆に使う時間は全体の3〜4割程度で、残りはテーマ決定・一次情報の収集・チェックに消えています。

下の表は、5,000字前後のSEO記事1本を想定した工程と、社内の担当者が実務でかける時間の目安です。時間そのものは商材の複雑さで大きく変わるので、絶対値ではなく工程間の比率として見てください。

工程目安の時間主担当詰まりやすい点
テーマ決定30〜60分社内候補が尽きると1日以上かかる
一次情報の収集60〜90分社内相手の予定が空かず数日待つ
構成案の作成60〜90分社内結論を決めずに見出しだけ並べる
執筆3〜6時間社内または外注構成が甘いと途中で書き直す
図表・装飾30〜60分外注可凝り始めると青天井になる
事実チェック15〜30分社内チェックする人が捕まらない
入稿・公開30〜45分外注可導線の設定が毎回属人的になる

この表で見てほしいのは合計時間ではなく、社内の人間でなければ進まない工程が7つ中4つあるという事実です。執筆を外注しても、テーマ決定・一次情報・事実チェックは社内に残ります。つまり外注しても社内工数はゼロにならず、だいたい半分になる程度だと考えておくのが安全です。

工程 主担当 1 テーマ決定 顧客が実際に聞く質問から選ぶ 社内 2 一次情報の収集 営業・サポートから引き出す 社内 3 構成案の作成 各見出しの結論まで決める 社内寄り 4 執筆 構成と材料があれば外に出せる 外注可 5 図表・装飾 表と図を整える。凝りすぎ注意 外注可 6 事実チェック 商材の記述と数値を確認する 社内 7 入稿・公開 導線の設定まで手順を固定する 外注可
図1:記事1本の7工程と主担当。外注できるのは3工程で、社内工数はゼロにならない

兼務担当なら、月2本でも体制として成立する

マーケティング専任がおらず、営業や広報と兼務している担当者が1人。この条件でよく相談されるのが「月何本が妥当か」です。結論から言えば、上の工程をすべて自分で回すなら月2本が現実的な上限です。1本あたり7〜10時間かかるとして、月に15〜20時間。兼務で確保できる時間としては、これでもかなり頑張っているほうです。

問題は、月2本が少なすぎるかどうかです。少なくありません。ただし条件が2つあります。1つは、2本とも社内の一次情報が入った記事であること。調べれば書ける記事を月2本出しても効きません。もう1つは、12か月続く見込みがあること。月2本を1年続ければ24本で、テーマが絞れていれば十分に商談は生まれます。逆に、月4本を3か月で止めるより、月2本を12か月のほうが結果は良くなります。

この2条件を満たせないなら、本数を増やす前に条件のほうを直してください。一次情報が入らないなら供給源の設計から、続く見込みがないなら工程の分担から手をつけます。本数はどちらも解決しません。

月何本かは、確保できる時間から逆算して決まります。先に本数を決めて時間を後から探すと、探せなかった月がそのままゼロになります。

月2本すら回らないときにやること

月1本も出せない状態が2か月続いたら、公開を一度止める判断も検討してください。ただし止めるのは公開だけで、一次情報の収集は止めません。営業へのヒアリングと、そこで出た話のメモだけは続けます。3か月分溜まれば、まとめて書ける材料が5〜6本分になっているはずです。書けないから止まるのではなく、材料がないから止まるので、材料の蓄積さえ生きていれば再開できます。

内製と外注の線引きは「一次情報が要るか」で引く

分担で迷ったら、記事の難易度でも文字数でもなく、その記事に自社しか持っていない情報が必要かどうかで切ってください。

社内でしか書けない記事とは

社内でしか書けない記事とは、書き手が調べても手に入らない情報が骨格になっている記事です。具体的には、商談で実際に出た質問、導入時につまずいた箇所、他社と比較されたときに何を言われるか、失注の本当の理由、運用開始後に顧客がやめてしまう設定。どれもGoogleで検索しても出てきません。

この種の記事は、外注しても外注先が書けないのではなく、材料を渡さない限り書けません。そして材料を言語化して渡す作業は、自分で書くのとほぼ同じ工数がかかります。だから最初から社内で書いたほうが早い、という判断になります。導入事例のように顧客への確認が挟まる記事も同様で、BtoB導入事例の作り方で扱っているとおり、段取り自体が社内の仕事です。

調べれば書ける記事は、外に出してよい

一方、用語解説、制度や法改正の整理、他社も書いている手順の解説、比較記事の下地といったテーマは、丁寧に調べれば社外の書き手でも書けます。これらは検索需要があるので集客の入口としては必要ですが、自社が時間をかけて書く必然性は薄い。ここを外に出して、空いた時間を一次情報の記事に回すのが正しい配分です。

順序としては、まず自社しか書けない記事を数本作って型を固め、そのあとで周辺の解説記事を外注に広げます。逆順にすると、外注先に渡すトーンの見本がない状態で発注することになり、修正が膨らみます。

判定は3つの問いで足ります

迷ったときは次の3つを順に確認してください。1つ目、この記事の結論は自社の経験がないと書けないか。2つ目、間違ったことを書いたときに、それに気づけるのは社内の人間だけか。3つ目、この記事を読んだ人が問い合わせてきたら、営業がそのまま使える内容か。いずれかがYesなら社内で書く候補です。3つともNoなら、外に出して構いません。

内製と外注の比率をどう置くかという全体設計はマーケティング内製化の進め方にまとめています。記事制作だけを単独で判断するより、他の施策と合わせて考えたほうが配分は決めやすくなります。

自社の商材でどの記事が社内側に来るのか、線引きの当たりを付けたい段階であれば、現状の体制をもとに分担の初期設計をご相談ください

外注先の3タイプと、費用が動く要因

外注先は大きく3タイプに分かれ、任せられる工程の範囲が違います。費用の差は品質の差ではなく、含まれる工程の差であることがほとんどです。

3つのタイプと、任せられる範囲

発注先は、クラウドソーシング、フリーランスとの直接契約、編集プロダクションや制作会社の3つに整理できます。この3つは価格帯が違うと語られがちですが、実務上の違いは「ディレクションを誰がやるか」です。前者2つは発注側がディレクターを務める必要があり、3つ目は先方がその機能を持っています。

タイプ任せられる工程向いている使い方発注側に残る負荷
クラウドソーシング執筆のみ調べれば書ける記事を数で回す構成・指示・修正をすべて自社で
フリーランス直接契約構成+執筆、慣れれば編集も継続的に同じテーマ領域を任せる初期の育成期間と、休止時の代替
編集プロダクション・制作会社企画から公開まで一括社内に編集担当を置けない場合一次情報の提供と最終確認

どれが優れているという話ではなく、社内にディレクション工数があるかどうかで選びます。担当者が兼務で、構成案を毎回作る余裕がないなら、単価が上がってもディレクション込みのほうが総コストは下がります。反対に、社内に編集ができる人がいるなら、直接契約のほうが1本あたりは軽くなります。どこまでを任せるかという線引きの考え方はマーケティングの外注はどこまで任せられるかでも扱っています。

相場を1つの数字で持たない

記事制作の費用は、文字単価でも記事単価でも、幅が非常に広い領域です。同じ「1記事」でも、構成案を発注側が渡す前提の執筆のみと、企画・取材・図表・入稿まで含んだものでは、そもそも比較する対象が違います。相場をひとつの数字で覚えると、見積もりを比べたときに必ず判断を誤ります。

持つべきなのは数字ではなく、見積もりが動く要因のリストです。見積もりを取るときに次の項目を1つずつ確認すれば、金額の差がどこから来ているかが分かり、比較できる状態になります。

要因費用が上がる条件発注前に確認すること
含まれる工程企画・構成・図表・入稿まで含む見積もりに含まれる工程の一覧
専門性業界知識や有資格者の監修が要る誰が書き、誰が監修するか
取材の有無顧客や社内へのインタビューを行う取材の実施主体と回数
修正回数無制限に近い修正対応を含む何回まで無償か、超過時の扱い
納品後の権利著作権の譲渡や二次利用を含む資料化・転載時の可否
継続量単発発注で1本ずつ依頼する月あたりの本数で単価が動くか

特に見落とされるのが修正回数と権利です。単価が安く見えた発注先で修正が2回までだったために、3回目以降が追加費用になり、結局は高くついたという例は珍しくありません。契約書で範囲と成果の定義をどう書くかはマーケティング業務委託の契約にまとめています。

文字単価だけで発注先を比べると、修正にかかる自社の人件費が計算から抜け落ちます。比べるなら、1本を公開状態にするまでの総コストで比べてください。

書き手の探し方と、最初の3本で見るもの

書き手選びで差がつくのは、探し方より渡し方です。同じ書き手でも、渡す材料の質で成果物は大きく変わります。

探す前に、渡せるものを揃える

募集を出す前に用意するものが3つあります。構成案のサンプル、自社が書いた記事1〜2本、そして書いてほしくないことのリストです。3つ目が特に重要で、「一般論だけで終わらせない」「他社名を挙げて評価しない」「断定できない数値を使わない」といった禁止事項を先に渡しておくと、初回納品の手戻りが目に見えて減ります。

逆にこれを渡さずに「BtoBマーケの記事をお願いします」とだけ伝えると、どんなに実績のある書き手でも、一般的な解説記事が返ってきます。返ってきたものを見てから注文を付ける進め方は、書き手の力量ではなく発注側の準備不足が原因です。

探し方は3ルート

1つ目は、自社が読んで良いと思った記事の書き手に直接声をかける方法です。媒体によっては署名が入っているので辿れます。成功率は高くありませんが、当たれば最も精度が高い。2つ目は、既に付き合いのある制作会社や広告代理店に紹介してもらう方法。3つ目がクラウドソーシングやマッチングサービスです。母数は多いものの、選定の手間は自社が負います。

どのルートでも、いきなり継続契約にしないでください。まず3本を試し発注し、そこで判断します。フリーランスへの依頼全般の進め方はフリーランスマーケターへの依頼方法と考え方が共通します。

最初の3本で見る3点

試し発注で見るのは、文章のうまさではありません。見るのは次の3点です。

1点目、事実の扱い方。出典が確認できない数字を使っていないか、渡していない情報を推測で埋めていないか。ここが甘い書き手は、継続すると必ず事故を起こします。2点目、構成からの逸脱。渡した構成案の見出しの意図どおりに書けているか。書きやすい方向に流れて結論がずれていないか。3点目、質問の質。着手前に何を聞いてきたかを見ます。良い書き手は「この見出しの結論は何ですか」と聞いてきます。何も聞かずに納品してくる場合は、埋めてきた部分が推測になっている可能性が高い。

3本目で修正量が減っていれば継続、増えているか変わらなければ切り替えます。ここで情を挟むと、以後ずっと自社の編集工数が高止まりします。

外注しないほうがいい場合

次のどれかに当てはまるなら、外注はいったん見送ってください。社内に構成案を作れる人がいない、渡せる一次情報が溜まっていない、納品物を見て良し悪しを判断できる人がいない。この3つが欠けた状態での発注は、記事が増えるだけで商談は増えず、しかも修正工数だけが発生します。先にやるべきは発注ではなく、自社で3本書いて型を作ることです。

社内の誰から、何を引き出すか

続く制作体制の実体は、書く人がいることではなく、材料が自動的に集まる導線があることです。

引き出す相手は営業とカスタマーサポート

一次情報を最も多く持っているのは、顧客と直接話している人たちです。営業は検討段階の疑問と競合比較の材料を、カスタマーサポートは導入後のつまずきと運用の実態を持っています。マーケ担当が自分の頭の中から絞り出す必要はありません。

ここで注意したいのは、両者が持っている情報の性質が違うことです。営業からは「検討中の人が何に不安を感じるか」が出てきます。これは記事の入口、つまり検索されるテーマになります。サポートからは「導入した人が何でつまずくか」が出てきます。こちらは記事の深さ、つまり他社が書けない中身になります。両方揃って初めて、集客できて商談にもつながる記事になります。

「ネタください」では何も出てこない

営業に「何か記事のネタありませんか」と聞いても、たいてい「特にないですね」で終わります。相手は記事の材料が何かを知らないので、答えようがないのです。聞き方を変えます。

使いやすいのは次の質問です。「直近の商談で、答えに詰まった質問は何でしたか」「他社と比較されたとき、必ず出てくる論点は何ですか」「導入を決めた会社と、決めなかった会社の違いはどこでしたか」「送った資料のうち、反応が良かったものはどれですか」。どれも記事のテーマではなく、営業が答えられる形の質問になっている点が共通しています。答えをマーケ側でテーマに翻訳するのが担当者の仕事です。

失注理由の分類を運用しているなら、そこが最も濃い材料になります。BtoBの失注分析のやり方で分類の設計を扱っていますが、「価格」で片付けられていない粒度まで分解されていれば、そのまま記事のテーマ一覧として使えます。

単発のヒアリングではなく、仕組みにする

気をつけたいのは、これを毎回お願いベースでやらないことです。忙しい時期に真っ先に飛ぶのがこの時間で、飛んだ月から材料が止まります。仕組みにする方法は3つあります。

1つ目、既存の定例会議の議題に固定枠を作る。営業定例の最後の10分を「今月出た質問」に充てるだけで、月次の供給が確保できます。2つ目、商談録画や議事録から拾う。営業の時間を新たに取らずに済むので、最も摩擦が少ない方法です。商談録画の活かし方で扱っているとおり、録画は営業の型化とコンテンツの材料を同時に生みます。3つ目、問い合わせやサポートのログを月1回眺める。同じ質問が3回来ていれば、それは記事にする価値がある質問です。

材料の供給が仕組みになっているかは、担当者が1週間休んでも材料が溜まり続けるかで判定できます。止まるなら、それはまだ仕組みではありません。

誰から何を引き出す設計になっているかを整理したい場合は、営業・サポートを巻き込んだ材料供給の設計についてご相談ください

品質チェックは二段階に分ける

1人が全項目を見ようとすると、チェックは必ず形骸化します。見る人と見る観点を二段階に分けてください。

ゲート1|事実チェック

1段階目は、書かれている内容が事実として正しいかだけを見ます。見るのは、自社商材の機能や制約の記述、金額や期間などの数値、業界特有の用語の使い方、固有名詞。見る人は文章のプロである必要はなく、商材が分かる人であれば営業でも開発でも構いません。所要時間は15〜30分です。

この段階で文章の読みやすさに口を出さないルールにしておくのが肝心です。事実と文体を同時に見ると、指摘が混ざって差し戻しが増えます。「事実として違うところだけ指摘してください」と依頼の時点で範囲を切ってください。

ゲート2|編集チェック

2段階目は、記事として成立しているかを見ます。見るのは、見出しと中身が一致しているか、結論が先に書かれているか、既存記事と内容が重複していないか、読んだ人が次に取る行動の導線があるか、表記が揃っているか。ここはメディアを運用している担当者が見ます。

原稿(社内執筆または外注納品) ゲート1|事実チェック 見る:商材の記述・数値・用語・固有名詞 担当:商材が分かる社内の人(15〜30分) ゲート2|編集チェック 見る:構成・結論の位置・重複・導線・表記 担当:メディア運用の担当者(20〜40分) 公開
図2:チェックを事実と編集の二段階に分け、見る人と観点を固定する
段階見る項目担当目安の時間
ゲート1|事実商材の記述、数値、用語、固有名詞商材が分かる社内の人15〜30分
ゲート2|編集見出しと中身の一致、結論の位置メディア運用の担当者20〜40分
ゲート2|編集既存記事との重複、内部リンクメディア運用の担当者10分
ゲート2|編集読後の導線、表記ゆれメディア運用の担当者10分

全記事に全項目をやらない

チェックが重いと、記事が公開されずに滞留します。一次情報が入った記事はゲート1を必ず通し、調べれば書ける解説記事はゲート1を省いてゲート2だけにする、といった振り分けをしてください。すべての記事に同じ手続きを課すと、チェックする側が疲弊して結局は誰も見なくなります。

また、指摘は口頭ではなく文面で残し、同じ指摘が3回出たら発注時の指示書に追記します。これをやらないと、毎回同じ修正を繰り返すことになり、外注の意味が薄れていきます。

生成AIは、どの工程に使うか

生成AIは工程を減らす道具ではなく、特定の工程だけを速くする道具です。使う場所を間違えると、チェック工数が増えて逆に遅くなります。

使ってよい工程

相性が良いのは、材料が既に手元にあって、それを整える工程です。具体的には、営業ヒアリングの議事録を要約してテーマ候補に分解する、構成案の叩き台を作る、書き上げた原稿の表記ゆれと冗長な表現を洗い出す、想定される読者の質問を列挙してFAQの候補にする。いずれも、出力が間違っていても人間がすぐ気づける工程です。

特に効くのは議事録からのテーマ抽出です。録画や商談メモが溜まっているのに読み返す時間がない、という状況はよくあります。ここを機械に任せると、材料の供給が止まりにくくなります。

使わない工程

逆に任せてはいけないのが、一次情報そのものを作る工程と、事実を確定する工程です。「導入企業がつまずきやすい点を挙げて」と指示すれば、それらしい文章は返ってきます。しかしそれは自社の顧客が実際につまずいた点ではありません。この違いは読者には見えませんが、商談での説得力にはっきり差が出ます。

もう一つ、最終的な公開判断も人間が持ちます。事実チェックを機械に任せると、自社商材の仕様のように学習データに存在しない情報を検証できないまま通してしまいます。工程ごとの線引きの詳しい考え方はマーケ業務の生成AI活用で扱っているので、そちらを参照してください。

公開後の工数を、制作枠の中に先に確保する

制作体制を新規記事だけで組むと、1年後に改修の余力がゼロになります。枠は最初から分けておいてください。

新規と改修の比率を決めておく

記事は公開して終わりではなく、検索結果の変化や商材の更新に合わせて手を入れ続ける必要があります。ところが多くの体制は新規本数だけで組まれているため、改修の時間がどこにもありません。結果、古い記事が放置され、最初に書いた記事ほど内容が現状と合わなくなっていきます。

目安として、記事が20本を超えたあたりから制作枠の2割程度を改修に回します。月2本の体制なら、3か月に1本を改修に充てるイメージです。この枠を最初から予定に入れておかないと、新規が優先されて永久に着手されません。

棚卸しは四半期に一度で足りる

棚卸しの目的は、どの記事に手を入れるかを決めることだけです。全記事を精読する必要はなく、公開から6か月以上経った記事を対象に、表示回数と問い合わせへの寄与だけを見て、手を入れる・そのまま置く・触らないの3つに振り分けます。所要時間は記事数が50本程度なら1時間もかかりません。

ここでも「触らない」という判断を必ず作ってください。表示回数がほとんど伸びていない記事に手を入れても、多くの場合は伸びません。テーマ自体に需要がなかったのであって、書き方の問題ではないからです。その工数は新しいテーマに回すほうが期待値が高くなります。全体のコンテンツ設計との接続はBtoB SEOコンテンツ戦略の設計手順にまとめています。

制作枠の配分や、改修と新規のバランスを自社の状況で決めたい場合は、現在の記事本数と体制をもとに配分をご相談ください

まとめ

オウンドメディアの制作体制で最初に決めるべきは、月に何本かではありません。1本が完成するまでの7工程を分解し、それぞれを誰が担うかを決め、社内でしか出せない材料がどこから供給されるかを仕組みにする。本数はその結果として出てきます。

内製と外注の線引きは、一次情報が要るかどうかで引きます。自社の経験がないと結論が書けない記事は社内、調べれば書ける記事は外に出す。外注先は3タイプあり、選ぶ基準は価格ではなく、社内にディレクション工数があるかどうかです。費用は工程の含まれ方で動くので、相場をひとつの数字で持たず、変動要因のリストで比較してください。

材料は営業とカスタマーサポートから引き出しますが、「ネタください」では出てきません。相手が答えられる形の質問に翻訳し、定例の議題や商談録画から自動的に溜まる導線を作ります。品質チェックは事実と編集の二段階に分け、見る人と観点を固定する。生成AIは材料を整える工程に使い、材料そのものを作らせない。そして、公開後の改修枠を最初から制作枠の中に確保しておく。

兼務担当が月2本でも、この条件が揃っていれば体制として成立します。逆に、これらが揃わないまま月4本を掲げると、3か月でゼロになります。続くかどうかは本数ではなく、材料が枯れない仕組みがあるかで決まります。

外部CMOによる体制設計の相談

記事の本数ではなく、続く制作体制から一緒に決めます

誰が何を担い、材料をどこから引き出すか。自社の人員と時間の制約を前提に、月に何本が現実的かと、その分担を一緒に設計します。記事制作の代行ではなく、自社で回せる状態を作ることが目的です。

よくある質問

オウンドメディアの記事は月何本が目安ですか。
確保できる時間から逆算して決めるものなので、一律の目安はありません。工程をすべて社内で回す兼務担当が1人なら月2本、執筆を外注できるなら月4本前後が現実的な範囲です。重要なのは本数そのものより、その本数を12か月続けられるかと、社内の一次情報が入っているかの2点です。
記事作成を外注する費用の相場はいくらですか。
幅が非常に広く、ひとつの数字で持つと判断を誤ります。同じ「1記事」でも、執筆のみか、企画・構成・図表・入稿まで含むかで対象が違うためです。見積もりを比べるときは、含まれる工程、専門性、取材の有無、無償修正の回数、納品後の権利、継続量の6点を揃えてから比較してください。
社内で執筆が続きません。どこから直せばよいですか。
まず、止まっているのが執筆工程なのかを確かめてください。多くの場合、詰まっているのはテーマ決定と一次情報の収集で、執筆時間が足りないわけではありません。テーマ候補が10本以上ストックされている状態なら執筆の外注が効きます。ストックがないなら、先に営業へのヒアリングを定例化するほうが優先です。
記事の品質チェックでは何を見ればよいですか。
事実と編集の二段階に分けます。1段階目は商材の記述・数値・用語・固有名詞が正しいかだけを、商材が分かる社内の人が15〜30分で見ます。2段階目は見出しと中身の一致、結論の位置、既存記事との重複、読後の導線、表記ゆれをメディア担当が見ます。全記事に全項目を課すと形骸化するので、記事の種類で振り分けてください。
生成AIで記事制作をどこまで効率化できますか。
材料が既に手元にある工程は速くなります。議事録の要約、構成案の叩き台、表記ゆれの洗い出し、FAQ候補の列挙などです。一方、自社の顧客が実際につまずいた点のような一次情報そのものを作らせると、それらしいだけの記事になり商談につながりません。事実を確定する工程と公開判断は人間が持ちます。

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