BtoBの広告代理店を探し始めると、比較サイトには「BtoBに強い」と名乗る会社が何十社も並び、届いた提案書もどれも似た構成に見えます。価格と実績件数で決めて契約し、半年たっても商談につながるリードは増えていない。
BtoBの代理店選びで差が出るのは提案書の出来ではありません。代理店が広告の管理画面の外、つまり商談化と受注までの数字を自分の仕事として扱うかどうかで、半年後の結果が分かれます。そのため、依頼先のタイプを決め、評価軸をそろえ、面談と契約書で同じことを確かめる順番で進めます。
広告代理店を初めて選ぶ場合は、依頼先のタイプと、広告経由のリードを件数で評価するか商談数で評価するかが決まっていれば、候補を比べる土台ができます。いまの代理店に不満がある場合も、同じ評価軸の採点表で現行の代理店を採点すれば替えるべきかどうかが見え、点数によっては契約を続けるほうが合うこともあります。
目次
広告代理店かマーケティング支援会社か:依頼先は4タイプに分かれる
「BtoBマーケティングの代理店」と呼ばれる会社は、業務範囲で4タイプに分かれます。課題が広告の中にあるなら広告代理店、リードが商談にならない原因が広告の外にあるならマーケティング支援会社を選びます。
BtoB広告代理店とは、企業向けの商材を扱う会社の広告出稿を、媒体選定・配信設定・クリエイティブ・効果検証まで代行する会社のことです。検索すると「BtoBマーケティング代理店」という呼び方も出てきますが、実際には広告運用を中心にする会社と、MAの設計やコンテンツ制作まで含めて支援する会社が同じ呼び方で並んでいます。問い合わせの前に、どのタイプに頼むのかを先に決めておくと、比較する相手が絞れます。
| タイプ | 主な業務範囲 | 向く会社 | 向かない会社 |
|---|---|---|---|
| 総合広告代理店 | マス広告・イベント・PRを含む大型の出稿と企画 | テレビや交通広告も使う認知施策を年単位で計画している会社 | 月の広告費が数十万円規模で、細かい運用改善を求める会社 |
| ネット広告代理店 | 検索・ディスプレイ・SNS広告の運用代行 | 媒体の運用を任せたい会社で、商談データを自社で管理できる会社 | 商談化や受注まで一緒に追ってほしい会社 |
| BtoB特化の広告運用会社 | BtoB向けの広告運用、LP改善、CRMと連携した効果測定 | 広告経由のリードを商談化率で評価したい会社 | 広告以外の施策(MA・コンテンツ)の設計も任せたい会社 |
| BtoBマーケティング支援会社 | 戦略設計、MA・CRMの構築、コンテンツ、広告の一部 | リードは来るが商談にならず、原因が広告の外にある会社 | 媒体の運用量を増やしたいだけの会社 |
判断の材料は、今いちばん困っている数字がどこにあるかです。たとえば、月30件の問い合わせのうち営業が商談にしたのが2件という状態なら、広告の設定より先にリードの受け渡しとナーチャリングの設計を疑います。この場合に広告代理店を替えても、商談数は増えません。広告以外の工程まで外に出すなら、マーケティング業務の委託範囲を工程ごとに決めてから依頼先を探します。
代理店に頼まないほうがよい段階もあります。広告経由のリードが商談になったかをCRMで追えず、営業からの結果が返ってこない状態では、どの代理店もクリック単価とCV数でしか改善できません。その段階なら、代理店探しより先に計測の土台を整えます。計測が整ったあと社内に運用担当を置けるなら、広告運用の内製と外注の判断基準で、自社運用のほうが安く済まないかを先に比べます。
BtoBの広告代理店は「商談まで見るか」で差がつく
BtoBの広告は、獲得したリードが商談と受注に進んだかで評価します。管理画面の数字だけで改善を回す代理店に任せると、CPAは下がっても営業が使えないリードが積み上がります。
媒体内の数字だけで評価しない
BtoBでは、リードの件数より、そのリードが商談になり受注に至ったかが事業の評価軸です。CPAを下げる運用は、資料ダウンロードのような軽いCVを増やす方向に進みがちで、営業から「質が低い」と言われる原因になります。提案の段階で、代理店が商談化率や受注額に触れるかを見てください。代理店に渡す目標は、BtoB広告のKPI設計で商談化率と受注額まで決めてから提示します。
検討期間が長く、決裁者が別にいる
BtoBの購買は、検討開始から契約まで数か月から1年以上かかることがあり、広告で接触した担当者と決裁者が別人であることも普通です。短期のCPAだけで予算を配分すると、指名検索やウェビナー集客のように受注まで時間のかかる施策が真っ先に削られます。代理店が四半期より長い期間で予算配分を提案できるかを確認します。
商談・受注データを返せる基盤があるか
広告経由のリードが商談化したかを代理店が知るには、MAやCRMに流入元を記録し、商談ステージまで追える状態が必要です。面談でUTMの設計やオフラインコンバージョンの送信が話題に出る代理店は、BtoBの運用で受注データを扱った経験があります。HubSpotを使っている会社は、面談の前にHubSpotとGoogle広告の連携がどこまで設定済みかを確認しておくと、代理店の回答を具体的に比べられます。
候補を比べる6つの評価軸と採点表
候補の代理店は、同じ6つの軸で採点して比べます。軸ごとの重みは自社の課題で変え、総合点の高さだけで決めません。
1. BtoBの支援実績が自社に近いか
「BtoB実績あり」の中身は会社によって違います。見るのは業界、商材の単価、検討期間の近さです。月額数万円のSaaSと、年間数千万円の業務システムでは、使う媒体もCVの置き方も変わります。匿名でよいので、近い案件のCPL、商談化率、受注への貢献額を数字で出してもらえるかを確かめてください。
2. 媒体の幅と使い分けの説明
1つの媒体しか運用しない代理店は、得意な媒体に提案を寄せます。BtoBでは検索広告、ディスプレイ、Meta広告、LinkedIn、業界メディアを組み合わせる場面があり、媒体ごとの役割を説明できるかで経験が分かります。提案された媒体の配分が妥当かは、BtoB広告の予算配分とチャネル戦略と照らし、媒体ごとの役割が説明されているかで判断します。
3. 運用前の設計にどこまで関わるか
配信作業だけを請け負う代理店と、ターゲット設定、訴求の設計、LPの改善まで関わる代理店では、同じ予算でも結果が変わります。初回ヒアリングで、代理店の担当者が自社の顧客像や競合との違いをどれだけ質問してくるかを記録しておくと、比較の材料になります。
4. レポートと定例の中身
月次レポートが数字の一覧で終わっている代理店は、運用の判断を自分の言葉で説明できていません。事前にレポートのサンプルをもらい、「なぜこの数字になったか」「来月何を変えるか」が書かれているかを確認します。定例の頻度と、チャットでの即時のやり取りがあるかも確認項目です。
5. CRM・MAとの連携の経験
広告経由のリードが商談になったかを追えなければ、CPAの改善は管理画面の中の数字合わせで終わります。UTMの設計、CRMへのコンバージョン値の連携、オフラインコンバージョンの送信を実際に組んだことがあるかを聞いてください。回答が曖昧なら、Google広告のオフラインコンバージョン設定の手順を示し、どの工程まで対応できるかを聞き直します。
6. 運用担当者の経験と継続性
営業窓口と運用担当が別の代理店では、契約前の話と運用開始後のやり取りが食い違うことがあります。実際に運用を担当する人と契約前に会えるか、その人の経験年数と担当案件数を確認します。担当者が半年ごとに変わる代理店では、自社の商材の理解が積み上がりません。
6つの軸は、次の採点表で候補を横に並べて使います。3点と1点の基準を先に決めておくと、面談の印象に引きずられずに比べられます。
| 評価軸 | 確認の方法 | 3点の基準 | 1点の基準 |
|---|---|---|---|
| 支援実績の近さ | 近い案件の数字を依頼する | 単価・検討期間が近い案件の商談化率を出せる | 社数や業界名だけで数字が出ない |
| 媒体の幅 | 媒体ごとの役割を質問する | 媒体ごとに狙う検討段階を説明できる | 1つの媒体の提案しか出ない |
| 設計への関与 | 初回ヒアリングの質問を記録する | 顧客像・競合・LPについて質問してくる | 予算と媒体の確認だけで終わる |
| レポートの中身 | サンプルを受け取る | 数字の理由と翌月の変更が書かれている | 数字の一覧だけ |
| CRM・MA連携 | 過去の構成を質問する | オフラインコンバージョンを組んだ経験がある | 管理画面のCVだけで評価する |
| 担当者の継続性 | 運用担当者と面談する | 契約前に運用担当者と会え、交代時の手順がある | 運用担当者に契約前に会えない |
重みは自社の課題で決めます。リードの質に不満があるならCRM・MA連携と支援実績の近さの配点を2倍にし、社内に広告の担当者がいないならレポートの中身と担当者の継続性を重くします。
初回面談で必ず聞く質問リスト
面談では、答えに数字や固有の手順が出てくるかを見ます。「ヒアリング後に提案します」で終わる質問が多い代理店は、BtoBの設計経験が浅いと判断します。
実績と専門性を確かめる質問
- 自社と業界・単価・検討期間が近い支援実績を、数字とともに教えてください
- その案件で、当初の目標と結果の差は何でしたか。原因をどう分析しましたか
- うまくいかなかった案件はありますか。何が原因で、次に何を変えましたか
3つ目の質問に具体的に答えられない代理店は、自社の運用を振り返る仕組みを持っていない可能性があります。失敗の原因を、媒体の変更やクリエイティブの判断のような具体的な行動で説明できるかを聞き取ってください。
設計の力量を測る質問
- 当社の商材と顧客を聞いたうえで、最初の90日で何にいくら配分しますか
- ターゲットをどう分け、それぞれにどんな訴求をしますか
- 展示会やウェビナーなど、広告以外の施策とはどう連動させますか
金額や割合、施策名で答えが返ってくるかを判定の基準にします。初回の面談で完全な答えは求めませんが、仮の数字を置いて考える姿勢があるかで差が出ます。
運用とレポートの実態を確かめる質問
- 定例ミーティングの頻度と、その場で決めることを教えてください
- 月次レポートのサンプルを見せてください。誰が作成していますか
- 入札や予算配分の変更は、どこまで代理店側の判断で行いますか
体制と継続性を確かめる質問
- 実際に運用を担当する方の経験年数と、現在の担当案件数を教えてください
- 担当者が交代するとき、引き継ぎはどう行いますか
- 運用担当者と直接やり取りできますか
計測とデータ連携の理解を測る質問
- 商談化や受注まで追うために、CRMやMAとどう連携しますか
- UTMの命名やCRMへのコンバージョン値の連携は、過去にどう組みましたか
- オフラインコンバージョンや拡張コンバージョンを設定した経験はありますか
計測の質問にその場で答えられる代理店は、管理画面の外の数字まで運用の対象にしています。答えが「御社のシステム担当と相談します」だけで終わる場合は、採点表のCRM・MA連携を1点にします。
契約前に確認する条件チェックリスト
契約書では、手数料の金額より、範囲・期間・アカウントの所有権を先に確認します。後から揉める項目の多くは、契約前に書面にしていなかった項目です。
手数料に含まれる業務の範囲
手数料には、広告費の一定割合を払う型、月額固定の型、初期費用と運用費を分ける型があります。確認するのは「何が含まれ、何が別料金か」です。バナーやLPの制作、レポート作成、定例、急ぎの対応が手数料の範囲内かを書面で示してもらってください。見積もりが相場から外れていないかは、BtoB広告運用代行の費用相場、検索広告だけを任せる場合はリスティング広告代行のBtoB費用相場の金額と照らして確かめます。
最低契約期間と解約条件
6か月や12か月の最低契約期間を設ける代理店は多くあります。BtoBの広告は3か月では判断材料がそろわないことが多いため、期間の設定自体は妥当です。そのうえで、成果が出なかったときの見直しの手順と、解約の予告期間を契約前に決めておきます。
広告アカウントとデータの所有権
広告アカウントが代理店名義になっていると、契約終了時に過去の運用データとコンバージョン履歴を引き継げません。広告アカウント、GA4、タグマネージャー、CRM上のリードデータは自社名義にする条件で契約します。この条件は交渉で譲る項目ではありません。
代理店がまとめて開設した広告アカウントは、代理店の管理アカウントの下にぶら下がっている場合があります。契約前に、アカウントの名義と支払い者がどちらになっているかを管理画面で確認してください。
レポートと運用ログの提供範囲
月次レポートに加えて、管理画面の生データと運用の変更履歴を出してもらえるかを確認します。レポートに載る数字しか出てこない状態では、自社で検証できません。
競合の担当と機密保持
代理店が同業他社を担当している場合、競合排除の条件をどこまで入れるかを決めます。完全な排除は手数料を上げる理由になりやすいため、同じ顧客を取り合う直接の競合は担当しない、という条件に絞る方法があります。
クリエイティブの権利
バナーやLPの著作権がどちらに帰属するか、契約終了後に使い続けられるかを確認します。代理店側に権利が残る契約では、切り替え後に同じ素材を使えません。著作権以外の条項も、署名の前にマーケティング業務委託の契約で決める項目と1つずつ突き合わせます。
選定から契約までの進め方
選定は、社内で要件を決めてから問い合わせる順番で進めます。候補は3〜5社に絞り、問い合わせから契約までは実務上の目安として1.5〜2か月を見込みます。
- 社内で決める:狙う顧客像、広告に期待する役割、月の予算、評価に使う指標、代理店とやり取りする担当者を決めます。
- 候補を絞る:依頼先のタイプを決め、BtoBの支援実績と対応媒体で3〜5社に絞ります。
- 提案を依頼する:同じ資料と同じ質問を全社に渡し、提案の条件をそろえます。
- 面談で採点する:質問リストで聞き取り、採点表に記入します。運用担当者との面談もこの段階で行います。
- 契約条件を詰める:上位1〜2社と、範囲・期間・所有権・レポートの条件を書面で確認します。
最初の手順を省くと、代理店ごとに前提の違う提案が届き、比べられなくなります。マーケティング担当が1人の会社で、営業部長から「来月から広告を始めたい」と言われた場面を考えてください。顧客像と評価指標を決めないまま3社に声をかけると、1社は認知向け、1社は資料請求の件数、1社は商談数を目標にした提案を出してきます。問い合わせの前にICPの設計で顧客像を決め、BtoBマーケのKPI設計で商談数を目標に置けば、3社の提案を同じ物差しで比べられます。
契約後に代理店が改善を続けられるかは、発注側が商談化と受注のデータを返せるかで決まります。CRMの商談ステージを月1回共有する仕組みと、クリエイティブや予算の変更を誰がどこまで承認するかを、契約前に社内で決めておきます。データを返す前提として、広告リードをHubSpotに自動取り込みする設定は契約前に済ませておきます。
社内で決める範囲が固まらない段階でも、要件の整理から始められます。代理店に渡す要件の整理から相談する
代理店選びで失敗する3つの選び方
失敗の多くは、実績件数・手数料の安さ・提案書の見た目の3つで決めたケースです。どれも運用の中身と関係の薄い材料です。
実績件数の多さで選ぶ
「導入実績500社」のような数字で選ぶと、支援先の多くが自社と業態の違う会社で、自社の商材に合わない運用になることがあります。実績の母数より、自社に近い案件の数字と、その結果に至った判断の過程を聞いてください。
手数料の安さで選ぶ
手数料を抑えると、代理店の作業時間も削られ、入札やクリエイティブの見直しの頻度が落ちます。BtoBは広告費に対して必要な作業量が大きいため、手数料を絞りすぎると商談数で見た費用は逆に上がります。総額ではなく、月に何時間の作業と何回の改善が含まれるかで比べます。
提案書の見た目で選ぶ
整った提案書は営業のための資料で、運用の品質とは別物です。比べる材料は、ヒアリングでの質問の具体性、過去事例の数字、レポートのサンプルの中身です。広告以外の代行会社も並べて比べているなら、BtoBマーケ代行で失敗する原因と回避策を見て、提案書の見た目以外に比べる項目をそろえます。
まとめ
BtoBの広告代理店は、商談化と受注まで自分の仕事として扱うかで選びます。課題が広告の外にあるなら、広告代理店ではなくマーケティング支援会社を候補にします。
次にやることは3つです。社内で顧客像・予算・評価指標を決めること、6つの評価軸の採点表と重みを先に作ること、面談で質問リストを使って運用担当者の答えを記録することです。契約前には、アカウントとデータを自社名義にする条件だけは必ず書面に入れてください。
無料相談
代理店の提案を、発注側の立場で一緒に比べます
比較中の代理店の提案書レビュー、採点表の重み付け、契約条件の確認まで、選定の途中からご相談いただけます。今の代理店を続けるか替えるかの判断材料の整理にも対応します。
よくある質問(FAQ)
- BtoBマーケティングの代理店と広告代理店は何が違いますか?
- 広告代理店は広告の出稿と運用を代行し、BtoBマーケティングの支援会社は戦略設計やMA・CRMの構築、コンテンツまで含めて支援します。リードは来るが商談にならない場合はマーケティング支援会社、広告経由のリードの量や質を上げたい場合は広告代理店が候補になります。
- BtoB広告代理店の選定にはどれくらいの期間をかけるべきですか?
- 3〜5社を比べる場合、問い合わせから契約まで1.5〜2か月が実務上の目安です。提案の依頼、面談、社内検討、契約条件の確認までを含めた期間で、1か月未満で決めると契約条件の確認が抜けやすくなります。
- 代理店の候補は何社くらい比べるべきですか?
- 3〜5社が現実的です。2社以下では比較の軸が弱く、6社以上では面談と採点の負荷が大きくなり、選定が止まります。
- 小規模な会社やスタートアップでも大手の広告代理店に頼めますか?
- 頼むことはできますが、月の最低出稿額を設けている代理店があるため、問い合わせの前に確認してください。月の広告費が数十万円規模なら、BtoB特化の運用会社や個人の専門家のほうが、設計から細かく関わってもらえる場合があります。
- 代理店を切り替える判断の基準はありますか?
- 3〜6か月運用しても改善の仮説が出てこない、レポートが数字の一覧のまま、担当者が頻繁に変わる、のいずれかが続く場合は切り替えを検討します。切り替えには引き継ぎの期間がかかるため、現在の代理店と改善の議論を1回行い、それでも変わらなければ替えるのが現実的です。