記事は増えているのに商談が増えない、という相談をよく受けます。順位は上がり、月間のアクセスも去年の3倍になった。それでも営業から「マーケ経由の商談が増えた実感がない」と言われる。数字は伸びているのに、社内での評価だけが上がらない状態です。
原因の多くは、施策そのものではなく指標の置き方にあります。PVと検索順位を目標に据えた瞬間から、記事は商談ではなくアクセスを取りに行く方向へ最適化されていきます。
この記事は、自社でSEOを回しているBtoB企業のマーケ責任者に向けて、SEO・コンテンツに限定したKPIの置き方、記事のCV貢献の測り方、経営層への報告の粒度を扱います。マーケティング全体のKPI設計や、計測ツールの設定手順そのものは扱いません。
目次
PVと順位を目標にすると、記事が増えても商談は増えない
PVと検索順位は、SEOが動いているかを確かめる材料としては有効です。ただし目標に置いた瞬間から、記事の作り方と改善の方向が商談から離れていきます。
順位が上がったページほど商談から遠いことがある
検索ボリュームが大きい語は、たいてい検討のずっと手前にいる人が打つ語です。「〜とは」「〜 意味」「〜 課題」といった語がそれにあたります。競合も本気で取りに来ていないため、丁寧に書けば比較的短期間で上位に入ります。一方、商談に近いのは「〜 費用」「〜 比較」「〜 乗り換え」といった語で、月間の検索数は二桁台のことも多く、上位には既に強いページが並んでいます。
順位を目標に置くと、担当者の行動は自然に前者へ寄っていきます。取りやすい語を選び、取りやすい記事を書き、平均順位のグラフをきれいにしていく。半年後、順位のレポートは右肩上がりなのに、商談数だけが一切動いていない。順位を追った結果として、商談から遠い場所ばかりが埋まったからです。この構造は、担当者の努力不足では説明できません。指標がそう仕向けています。
PVを目標にすると、記事の作り方そのものが変わる
目標がアクセス数であれば、より多くの人が読む記事を作るのが合理的な選択になります。網羅的なまとめ記事、業界ニュースの解説、話題のツールの使い方。どれもアクセスは伸びます。しかし読者の幅が広がるほど、その中に含まれる自社の顧客候補の濃度は下がっていきます。
BtoBは、そもそも母集団が小さい商売です。月1万PVのうち自社の想定顧客に当たるのが10人しかいない記事より、月300PVで100人が該当する記事のほうが事業には効きます。PVという指標は、読んでいるのが誰かをいっさい区別しません。だから「PVは意味がない」と言われるのですが、正確には「PVは読者の質を区別しないので、母集団の小さいBtoBでは単独の判断材料にならない」ということです。
もうひとつ厄介なのは、PVを目標にすると記事の入れ替えができなくなることです。アクセスは集めているが商談にはつながらない記事が積み上がっていき、それを削るとPVが落ちるので削れない。目標の置き方が、資産の整理を止めてしまいます。
それでもPVと順位は見る。目標にしないだけ
ここを取り違えると、今度は逆に振れすぎます。PVと順位を完全に捨ててしまうと、記事が見つかっているかどうかの手がかりまで失います。表示回数が伸びていないのは、記事の質の問題ではなく、そもそも検索結果に現れていないという事実の表れです。順位が20位から圏外に落ちたなら、技術的な問題か、競合の大幅な更新が起きた合図です。どちらも早く気づくべき事象で、それを教えてくれるのはPVと順位しかありません。
実務的な整理はシンプルです。目標として社内にコミットする指標と、異常を検知するために毎週見る監視指標を分ける。PVと順位は後者に置き、チーム内の運用会議では見るが、経営会議の資料には出さない。この線引きだけで、議論の質はかなり変わります。
目標から外すことと、見るのをやめることは別の話です。監視指標として残さないと、記事が検索結果に出ていないという最も重要な事実に気づけなくなります。
SEOのKPIは3つの段階に分けて置き換える
同じ指標を12か月追い続ける設計は、ほぼ確実に途中で破綻します。立ち上げ期・中期・成熟期で、目標に置く指標そのものを入れ替えてください。
立ち上げ期(0〜6か月)|指名以外の流入とインデックス
この時期に商談数を目標に置くと、報告書にゼロが並び続けます。それは施策が失敗しているからではなく、まだそこまで到達していないからです。見るべきは「自社が検索結果の中に存在し始めたか」の一点に絞られます。
具体的には3つです。公開した記事のうち検索結果に載っている割合、社名やサービス名を含まない語からの自然流入セッション数、そして狙ったキーワード群での表示回数の推移。この3つ目までは、どれも数か月で動き始めます。
特に重要なのが、指名検索を分けて数えることです。分けずに自然検索セッションをまとめて見ていると、広告や展示会やメルマガで増えた指名流入までSEOの成果として計上されてしまいます。立ち上げ期のセッション増加の大半が指名だった、という例は珍しくありません。ここを分離しないと、後の段階の判断がすべて狂います。
なお、この時期に商談が出ることはあります。ただしそれは幸運として扱い、再現性のある成果としては報告しないでください。1件出たから来月も出るという前提で計画を組むと、翌月にゼロが返ってきたときに説明ができなくなります。
中期(6〜12か月)|キーワード群の表示回数と資料ダウンロード
表示回数が伸び、クリックが起き、フォームに到達する人が出始める時期です。ここで目標に置くのは、対象キーワード群の表示回数とクリック数、自然検索経由の資料ダウンロード・問い合わせ件数、そしてそのうち想定顧客に合致する会社名がついている割合の3つです。
3つ目を必ず入れてください。件数だけを見ていると、個人事業主・学生・同業他社・営業目的の登録が混ざったまま「今月は20件」と報告することになります。会社名、従業員規模、業種で絞ったうえでの件数が実質値です。社内にMQLの定義があるなら、その定義でそのまま数えるのが早い。定義の作り方そのものはMQL・SQLの定義と設計方法にまとめています。
この段階で商談数を主目標にするのはまだ早いのですが、参考値として見始めるのは構いません。中期の終わりに商談が数件出ているかどうかが、成熟期に進めるかの判断材料になります。
成熟期(12か月〜)|商談数と受注
ここで初めて、商談数を目標として置けます。自然検索を起点とする商談件数、そこからの受注件数と受注金額、そして商談1件あたりにかかったコスト。この3つが揃うと、広告や展示会と同じ土俵で比較できるようになり、予算配分の議論に載せられます。
ただし、SEOには他チャネルと違う性質が1つあります。制作を止めても、数か月は流入と商談が残ります。逆に、今月増やした記事は今月の数字にはほぼ現れません。この遅延があるため、月次の増減で判断すると必ず読み違えます。成熟期の評価は四半期の累計で行ってください。
| 段階 | 目標に置く指標 | 目標にしないもの | 次の段階へ進む条件 |
|---|---|---|---|
| 立ち上げ期(0〜6か月) | インデックス率、指名以外の自然流入、対象語の表示回数 | 商談数、CV件数、PV総数 | 対象語の半数以上で検索結果に自社が出ている |
| 中期(6〜12か月) | キーワード群の表示回数とクリック、資料ダウンロード件数、想定顧客の合致率 | PV総数、平均順位、記事本数 | 自然検索経由のフォーム到達が月5件以上で安定 |
| 成熟期(12か月〜) | 自然検索起点の商談数、受注件数と金額、商談1件あたりコスト | 記事本数、更新本数、被リンク数 | 四半期累計で他チャネルと比較できる状態 |
この表はSEO・コンテンツに限った切り出しです。広告や展示会を含めたマーケティング全体でKPIツリーを組む場合は、BtoBマーケのKPI設計完全ガイドで全体の設計順序を確認したうえで、その中のSEOの枠にこの3段階を差し込む形にしてください。
記事単位ではなくキーワード群単位で評価する
1記事ごとにCV数を割り振る運用は、BtoBではほぼ機能しません。評価の単位を、記事からキーワード群へ一段上げてください。
記事単位のKPIが機能しない3つの理由
1つ目は、母数が小さすぎることです。月300セッションの記事でCVRが1%なら、月3件。実際には0件の月も2件の月も普通に発生します。この振れ幅の中で「先月は0件だったので改善が必要」と判断しても、それは判断ではなく偶然の解釈です。BtoBの記事1本あたりのトラフィックでは、月次で意味のある差を検出できません。
2つ目は、検索意図が記事をまたぐことです。読者は1本で完結しません。課題を整理する記事を読み、手段を比較する記事に移り、費用の目安を確認してから問い合わせます。1本ずつ評価すると、この回遊の中で担っていた役割が消え、最後の1本だけが評価されます。
3つ目は、記事の入れ替えができなくなることです。記事単位に目標を持たせると、成績の悪い記事を削除・統合する判断が「担当者の失敗の認定」になります。そうなると誰も提案しません。結果として、読まれない記事が残り続け、サイト全体の評価を薄める方向に働きます。
キーワード群の切り方
群の定義は「同じ課題を持つ人が、検討の同じ段階で打つ語のまとまり」です。検索ボリュームでもサイトのカテゴリ分類でもなく、読者の状態で切るのが要点になります。
たとえば請求業務のツールを売っているなら、課題認識前の群として「請求書 手入力 ミス」「経理 属人化」、手段検討の群として「請求書 発行 ツール 比較」「請求業務 自動化 やり方」、発注直前の群として「請求 システム 費用」「請求システム 導入 期間」といった分け方になります。同じ商材でも、読者の状態がまったく違います。
1つの群は5語から15語程度、そこに紐づく記事は3本から8本が扱いやすい単位です。群が大きすぎると平均が意味を持たなくなり、小さすぎると記事単位で見るのと変わりません。キーワードの洗い出しと群への分解の手順は、BtoB SEOコンテンツ戦略の設計手順で扱っています。
群単位にすると、何を決められるようになるか
群ごとに、表示回数・クリック・フォーム到達・商談を並べます。すると、落ちている場所が群によって違うことが見えてきます。
表示回数はあるのにクリックされない群は、タイトルと検索意図がずれています。クリックはあるがフォームに到達しない群は、記事内の導線が弱いか、そもそもその段階の読者に問い合わせを求めるのが早すぎます。フォームには来るが商談にならない群は、集めている読者の属性が想定顧客とずれています。記事単位で見ていると、これらがすべて「この記事は弱い」という一言に丸められてしまいます。
撤退の判断ができるようになるのも群単位の効用です。半年見て表示回数が伸びない群は、需要そのものが薄いか、上位を大手の比較サイトが固めていて構造的に入れないかのどちらかです。この場合に必要なのは記事を追加することではなく、群ごと畳んで別の群に工数を移すことです。記事単位で見ていると、「あと2本足せば」という判断を繰り返して1年を溶かします。
群単位で見ると、伸ばす群と畳む群の判断が記事単位より2〜3か月早く下せます。判断が早いほど、同じ工数から生まれる商談は増えます。
群の切り方と評価の軸を自社の商材で決めきりたい場合は、現在のキーワード構成をもとにした個別の相談もご利用ください。
記事のCV貢献をどう測るか
ラストクリックだけで評価すると、読み物系の記事は永久にゼロのままです。補助的な見方を1つ足したうえで、分からない部分は割り切ってください。
ラストクリックだけだと読み物系の記事がゼロ評価になる
多くの計測は、フォーム送信の直前に見ていたページにCVを紐づけます。ところがBtoBの読者は、課題整理の記事を読んだ数週間後に、社名で検索し直してサービスページから問い合わせます。このときCVはサービスページか指名検索に付き、最初に信頼を作った記事には1件も付きません。
この状態で記事別のCV数一覧を作ると、比較系と費用系の記事だけが並び、読み物は全部ゼロで表示されます。数字を素直に読んで読み物の制作を止めると、半年後に比較系・費用系の記事に来る人が減り始めます。上流を止めたのだから当然の結果ですが、原因が半年前の判断にあるため、そのときには誰も結びつけられません。
閲覧履歴から補助的に見る
CRMやMAを使っているなら、コンタクトごとのページ閲覧履歴が残っています。使い方は難しくありません。直近で商談化したコンタクトを30件ほど取り出し、フォーム送信の前に見ていたページを時系列で並べます。そこに繰り返し登場する記事が、実際に効いている記事です。
30件を目で追って、同じ記事が10件以上に現れているなら、その記事は入口として機能しています。ラストクリックのCVが0でも残す。これだけの判断ができれば、読み物を誤って切る事故は防げます。
注意点が2つあります。1つは、これは貢献度の定量化ではないということです。出現率を比率にして予算配分の根拠にすると、根拠のない精度を装うことになります。あくまで生死の判断に使う道具です。もう1つは、匿名の閲覧が後からコンタクトに紐づくかどうかがツールの設定に依存する点です。計測環境そのものの作り方はBtoBマーケの効果測定を参照してください。複数接点の重みづけをどこまでやるかについてはBtoBアトリビューション分析に判断軸をまとめています。
それでも分からない部分は割り切る
個人のスマートフォンで記事を読み、後日社用パソコンから問い合わせる。社内で共有されたPDFだけを読んで、決裁者本人は一度もサイトに来ていない。BtoBではこれが普通に起きます。完全な計測は原理的に不可能で、精度を上げようとするほど、記事を作る時間が削られていきます。
実務的な落とし所は決まっています。ラストクリックの数字を主指標に置き、閲覧履歴は読み物の生死判断にだけ使い、それ以上は追わない。この線を最初に引いておくと、計測の議論が延々と続くことを防げます。
もう1つ、計測ツールより早く実態が分かる方法があります。商談の冒頭で「弊社のどのあたりをご覧になりましたか」と聞き、その回答を営業メモに残す運用です。定量化はできませんが、判断材料としては十分に使えます。半年分たまると、どの記事が話題に上がるかの傾向がはっきり見えてきます。
目標値は商談数から逆算し、同じ期では評価しない
目標は商談数から逆算して置きます。ただし、逆算した数字をその期のうちに達成させようとすると、設計が壊れます。
逆算の順序
順序は決まっています。年間の新規受注目標から必要商談数を出し、そのうち自然検索が担う割合を決め、自然検索経由で必要な商談数を出す。そこから商談化率を戻してフォーム到達数を出し、さらにCVRを戻して必要セッション数を出します。
要点は、途中で使う率をすべて自社の実績から取ることです。業界平均を持ってくると、逆算した数字が現場の感覚と合わず、誰も本気で追わない目標になります。実績がまだない率だけは仮置きし、その項目に「仮」と明記しておいてください。商談化率をどう改善するかはBtoB商談化率を上げる施策で扱っています。
| 逆算の項目 | 計算 | 数値 |
|---|---|---|
| 年間の新規受注目標 | 経営計画から | 12件 |
| 商談から受注に至る率 | 直近1年の実績 | 25% |
| 必要な商談数 | 12件 ÷ 25% | 48件 |
| 自然検索が担う割合 | チャネル方針から決める | 40% |
| 自然検索で必要な商談数 | 48件 × 40% | 20件 |
| フォーム到達から商談化する率 | 直近1年の実績 | 30% |
| 必要なフォーム到達数 | 20件 ÷ 30% | 67件 |
| 対象群のセッションからのCVR | 直近1年の実績 | 1.5% |
| 必要な年間セッション数 | 67件 ÷ 1.5% | 約4,500 |
| 月あたりに直した必要数 | 4,500 ÷ 12か月 | 約375 |
数字が出たら、現在値と並べます。月375セッションに対して現在が月40セッションなら、必要なのは記事を増やす計画ではなく、その差が到達可能なのかの検証です。差が10倍以上あるなら、SEO単独では埋まりません。この場合は自然検索が担う割合を下げるか、他チャネルに配分を移すかの判断が先に来ます。逆算の価値は、目標を作ることよりも、無理な前提を早く発見できる点にあります。
時間差を目標設計に織り込む
ここが最大の落とし穴です。今期に書いた記事は、今期の商談をほとんど作りません。効いてくるのは来期以降です。にもかかわらず、今期のSEO投資は今期の商談数で評価されます。この構造のまま運用すると、投資しているチームが毎期未達になります。
避け方は単純で、期の目標を2つに分けます。今期の商談数は、前期までに公開した記事群が担うものとして評価する。今期に公開する記事群は、来期の商談数として来期に評価する。つまり、記事群を「公開した期」でひとまとまりにして、その群を追いかけます。
この形にすると、今期の投資判断は「前期に公開した群が今期どれだけ商談を作ったか」で下せます。判断材料が実績になるので、「今期は投資期なので数字は見ないでください」という曖昧な説明をしなくて済みます。この考え方は、着手時に経営層と合意しておく必要があります。後から持ち出すと、未達の言い訳として受け取られます。
期の途中で目標を動かしてよい条件
逆算した目標は、期の途中で動かして構いません。ただし動かしてよい条件を先に決めておいてください。認めるのは2つだけです。前提に置いた率が実績で明確にずれたとき。そして、対象キーワード群の検索結果が構造的に変わったとき。上位が大手の比較サイトで埋まった、生成AIの回答が上部を占めるようになった、といった変化がこれにあたります。
逆に、認めてはいけないのが「達成しそうにないから下げる」です。これを一度許すと目標が意味を失い、翌期からは誰も真剣に置かなくなります。自社の数字で目標を置き直す作業を伴走してほしい場合は、現状の受注データをもとにした個別の相談をご利用ください。
経営層への報告は粒度を落とす
経営層に毎月PVを見せるのをやめてください。報告の粒度を落とすほど、SEOへの理解と予算の通りやすさは上がります。
毎月PVを見せない
PVを毎月見せると、2つのことが起きます。1つは、経営層がPVを成果指標として覚えてしまうことです。一度覚えられると、以降ずっとPVで質問されます。もう1つは、PVが下がった月に説明工数が発生することです。季節要因やアルゴリズムの更新について、毎月のように説明する羽目になります。どちらも、事業には1円も貢献しません。
経営層が知りたいのは「投じた金が事業に返ってくるか」だけです。返ってくる見込みがあるのか、いつ返るのか、今どこまで来ているのか。この3つに答えられれば報告は成立します。予算承認の場での説明の組み立て方はBtoBマーケ予算のROI説明方法に整理しています。
月次で出すもの、四半期で出すもの
| 場 | 頻度 | 出すもの | 出さないもの |
|---|---|---|---|
| チーム内の運用会議 | 週次 | 表示回数、順位変動、公開・更新の進捗、異常の有無 | 受注金額(週次では動かない) |
| マーケ部門の定例 | 月次 | キーワード群ごとの到達件数、想定顧客の合致率、投資の累計 | 記事ごとのPV一覧 |
| 経営会議 | 月次は1枚 | 自然検索経由のフォーム到達数、商談数、投資累計 | PV、平均順位、記事本数 |
| 経営会議 | 四半期 | 商談1件あたりコスト、他チャネルとの比較、次に張る群 | 技術的な施策の詳細 |
順位や表示回数は、四半期の補足資料に回します。聞かれたら出す、聞かれなければ出さない。この扱いで十分です。報告の器をどう作るかはBtoBマーケKPIダッシュボードの作り方を参考にしてください。SEOの行は、そのダッシュボードの中の1ブロックとして収まります。
成果が出ていない月の報告の仕方
立ち上げ期は商談ゼロが続きます。ここで「商談はまだですがPVは伸びています」と言うと、指標をすり替えたと受け取られます。一度そう見られると、その後どんな数字を出しても信用されません。
代わりに、事前に置いた段階の定義に照らして報告します。「立ち上げ期の指標は表示回数とインデックス。これは計画通りに進んでいます。商談は成熟期の指標なので、評価は9か月後です」。これなら、すり替えではなく計画の進捗報告になります。
ただし、これができるのはKPIの段階分けを着手時に合意している場合だけです。着手後に持ち出せば、どれだけ論理が正しくても言い訳に聞こえます。段階の定義は、最初の1か月で必ず終わらせてください。
経営層に毎月出すのは、商談への接続と投資回収の見通しだけで足ります。PVと順位はチーム内の監視指標にとどめてください。
この設計が向かない場合と、やらないほうがいいこと
段階を分けたKPI設計は万能ではありません。次のケースでは、運用が重くなるだけで判断の質は上がりません。
記事ごとにCV目標を割り振る
母数の問題に加えて、もう1つ副作用があります。記事ごとにCV目標を持たされた担当者は、CVしやすい記事だけを書くようになります。比較系と費用系ばかりが増え、上流の課題整理の記事が枯れる。半年後には、比較記事に来る人そのものが減ります。目標の置き方が、書く内容を歪めた結果です。
KPIを5つ以上置く
1つの段階で目標に置くのは3つまでにしてください。5つを超えると、どれかは必ず未達になります。そして未達の項目があると、報告の時間が言い訳の説明に消えます。追う指標を減らすほど、意思決定は速くなります。減らして困ったことは、実務ではほとんどありません。
そもそもSEOのKPIを作らないほうがいい場合
月の公開本数が1本以下なら、KPIを置いても数字が動きません。先にやるべきは体制の話です。誰が書き、誰が内容を確認し、誰が公開するのか。ここが埋まらないうちに指標だけ作っても、未達の記録が積み上がるだけです。BtoBオウンドメディアの運用体制でペース設計から整えてください。
商材の検索需要が確認できていない場合も同じです。需要のない場所に指標を置いても、達成不可能な目標を作るだけになります。計測環境がなく、フォーム到達すら数えられない状態も同様で、ツールの設定が先です。
そして、3か月以内に商談数の成果を求められている場合。SEOのKPI設計では応えられません。この条件下では、指標を工夫するより広告に配分を寄せるほうが誠実です。SEOは、その期間を確保できる会社の施策です。
まとめ
PVと検索順位を目標に置くと、記事が増えても商談は増えません。指標が、商談から遠い場所を埋める行動を促すからです。目標に置く指標は、立ち上げ期・中期・成熟期の3段階で入れ替えてください。立ち上げ期は指名以外の流入とインデックス、中期はキーワード群の表示回数と資料ダウンロード、成熟期に初めて商談数と受注を置きます。
評価の単位は記事ではなくキーワード群です。記事単位では母数が小さすぎて判断ができず、撤退の意思決定も止まります。記事のCV貢献は、ラストクリックを主に置きつつ、商談化したコンタクトの閲覧履歴で読み物の生死だけを判断する。それ以上は測れないものとして割り切ってください。
目標値は商談数から逆算して置きますが、同じ期では評価しません。今期に公開した記事群は来期に評価する。この時間差を着手時に経営層と合意しておくことが、SEOを続けられるかどうかを分けます。そして経営層への報告からは、PVと順位を外してください。粒度を落とすほど、SEOは事業の言葉で語れるようになります。
無料相談
SEOの指標を、商談から逆算して置き直します
「今のKPIのままで経営層に説明し続けてよいのか」「キーワード群をどう切るのが自社に合うのか」「時間差をどう合意しておけばよいのか」といった論点は、受注データと営業の実感を突き合わせないと決まりません。Ampelは外部CMOとして、段階の定義、自社の率での逆算、経営会議に出す1枚の設計までを一緒に整理します。現在の記事数と計測環境をうかがったうえで、次の3か月にやるべきことをお返しします。
よくある質問
- SEOのKPIにPVを入れてはいけないのですか
- 目標としてコミットする指標には入れないでください。PVは読者が誰かを区別しないため、母集団の小さいBtoBでは事業への貢献と相関しません。ただし監視指標としては有効です。表示回数が伸びていないのは検索結果に出ていないという事実の表れで、これを早く知る手段は他にありません。チーム内の週次では見て、経営会議の資料には出さない、という使い分けが実務的です。
- SEOの効果測定を商談数で見てよいのはいつからですか
- 着手から12か月以降が目安です。それ以前に商談数を主目標に置くと、報告書にゼロが並び続け、施策そのものが止まります。0〜6か月は指名以外の自然流入とインデックス、6〜12か月はキーワード群の表示回数と資料ダウンロード件数を目標に置き、商談数は参考値として見始めるという順序が現実的です。ただしこの段階分けは、着手時点で経営層と合意しておく必要があります。
- 記事ごとのCV数はどう見ればよいですか
- 記事ごとに目標を割り振るのはやめて、キーワード群単位で集計してください。記事1本あたりの月間セッションでは母数が小さく、0件と2件の差を意味のある差として読めません。加えて、ラストクリックだけで見ると読み物系の記事は必ずゼロになります。商談化したコンタクトの閲覧履歴を30件ほど目で追い、繰り返し出てくる記事を入口として残す、という補助的な見方を足してください。
- 経営層への報告には何を載せればよいですか
- 月次は1枚で足ります。自然検索経由のフォーム到達件数、そこから商談になった件数、投資額の累計。この3つだけです。四半期で、商談1件あたりのコスト、他チャネルとの比較、次の四半期にどのキーワード群へ投資するかを加えます。PV、平均順位、記事本数は載せません。載せると、その指標で質問され続けることになります。
- 今期に書いた記事を今期の成果として報告できないのですか
- できません。記事が検索結果で評価され、読まれ、検討を経て商談になるまでには数か月かかります。今期の商談は、前期までに公開した記事群が作ったものです。そのため、記事群を公開した期でひとまとめにし、その群を翌期以降に追いかける形にしてください。今期の投資判断は、前期に公開した群が今期どれだけ商談を作ったかという実績で下せます。