ウェビナーの参加率を上げる方法|申込の瞬間から設計するリマインドと欠席前提の導線

申込は目標に届いた。登壇資料も仕上がった。それなのに開始5分を過ぎても入室者が申込者の半分に届かない。ウェビナーを続けている企業なら、この光景に覚えがあるはずです。しかも集客を頑張るほど申込者と参加者の差は広がり、営業に渡せるリードは増えません。

この問題は、開催直前のリマインドを1通足しても解決しません。参加率は当日の問題ではなく、申込ボタンを押した瞬間から始まっています。申込完了の画面、確認メール、カレンダーへの登録、開催までの接点、欠席した人の扱い。この一連の設計が抜けたまま当日を迎えると、どれだけ良い内容でも半分の人には届きません。

この記事は、ウェビナーを継続的に開催しているBtoB企業のマーケティング担当者と、少人数でイベント運営を回す責任者に向けて、申込後から開催までの区間に絞って参加率を上げる設計を扱います。集客・当日運営・録画活用は別記事に譲り、必要な箇所でリンクします。

参加率が下がる原因は当日ではなく申込の瞬間にある

申込者が当日来ない理由は4つに分解でき、そのすべてが開催前に手を打てる問題です。当日朝に対処できるものはひとつもありません。

まず言葉を揃えます。この記事で「参加率」と呼ぶのは、申込者数を分母、当日ライブで入室した人数を分子にした比率です。単純な式に見えますが、実務では分子の定義が揺れます。1秒でも入室した人を数えるのか、5分以上視聴した人だけを数えるのか、開始後に途中入室した人を含めるのか。ツールによって「参加者」の集計方法が違うため、他社の数字と自社の数字を並べて比較しても意味を持ちません。この点は記事の後半で改めて扱います。

そのうえで、申込したのに来なかった人を分類すると、ほぼ次の4つに収まります。

申込したが当日来なかった人 欠席の理由 開催前に打てる手当 忘れていた カレンダー登録の導線と 複数回のリマインド 予定が入った アーカイブ送付を前提に 欠席後の導線を用意する 優先度が下がった 前日に見どころを再掲し 期待値を上げ直す 録画を待っている ライブ参加でしか得られない 要素を申込時に明示する 4つとも当日朝には手遅れ。申込直後から手当を始める
図1:欠席の4分類と、それぞれに対応する開催前の手当

「忘れていた」は最も多く、最も対処しやすい層です。申込から開催までの期間が長いほど、そして申込の手間が軽いほど増えます。「予定が入った」は避けられませんが、欠席後の導線があれば回収できます。「優先度が下がった」は申込時点の期待値が開催日まで維持されなかった状態で、開催直前の接点の内容で戻せます。「録画を待っている」は申込ページに「アーカイブ配布あり」と大きく書いた場合に必ず出てくる層で、ライブに来る理由を別途用意しないと減りません。

4つの分類を見て気づくのは、どれも開催当日の運営で解決する問題ではないことです。当日にできるのは、来た人から良い情報を取ることだけです。その設計はウェビナー当日の運営で扱っており、この記事は「来る人を増やす」側に集中します。また、そもそもの申込数が足りない場合は参加率ではなく集客の問題なので、ウェビナー集客の設計手順から見直してください。

参加率を下げる3つの構造

参加率は担当者の努力量ではなく、申込のハードル・申込から開催までの日数・開催の曜日と時間帯という3つの構造でほぼ決まります。構造を知らずに施策を積んでも数字は動きません。

申込のハードルが低いほど参加率は下がる

最初に受け入れなければならない事実があります。申込数と参加率はトレードオフの関係にある、ということです。氏名とメールアドレスだけの1画面フォーム、共催相手の会員向け一斉配信、SNS広告からの1タップ登録。これらは申込数を確実に増やしますが、「とりあえず申し込んでおく」層を大量に含むため、参加率は下がります。逆に、部署名・役職・現在の課題まで書かせるフォームは申込数を減らしますが、書いた人は来ます。

ここで大事なのは、どちらが正しいかではなく、自社がどちらを選んでいるかを自覚することです。申込フォームの項目を減らして申込数が増えたのに参加率が落ちた、という相談は珍しくありません。それは失敗ではなく、設計どおりの結果です。問題は、申込数の増加を成果として報告した一方で、参加率の低下を運営の失敗として扱ってしまうことにあります。フォーム項目の削り方と残し方はBtoBの問い合わせフォーム改善に整理していますが、ウェビナーの場合は「参加率を維持するために残す項目」という観点が加わります。開催テーマに関する質問を1問だけ任意で置いておくと、書いた人の参加率が明らかに高い、という傾向は多くの現場で確認できます。

申込から開催までの日数が長いほど忘れられる

告知期間を長く取れば申込は積み上がります。しかし3週間前に申し込んだ人と前日に申し込んだ人では、開催日に対する記憶の鮮度がまったく違います。申込日ごとに参加率を分けて集計すると、多くの場合、開催まで2週間を超える申込者の参加率が目に見えて低くなります。集客の観点で告知期間を延ばすなら、その分だけ早期申込者に向けた中間の接点を用意しなければ、増えた申込は参加者に変わりません。

実務的には、申込日から開催日までの日数を申込データに持たせておくことを勧めます。MAやCRMを使っていれば、申込日時と開催日時の差分を計算プロパティにするだけです。これがあると、リマインドの回数を「申込が早い人には多く、直前の申込者には少なく」と分けられます。全員に同じ通数を送る設計は、早期申込者には足りず、直前申込者にはうるさい、という両方の不満を生みます。

曜日と時間帯は自社の顧客の勤務パターンで決める

曜日や時間帯については、火曜から木曜の午前後半か昼、というのが一般に語られる無難な線です。月曜の朝は週初めの会議と重なり、金曜の午後は退勤が早まります。ただし、この一般論は自社の顧客に当てはまるとは限りません。製造業の現場管理者、小売の店舗責任者、医療機関の事務長では、自由になる時間帯が違います。一般論で決めた曜日を、自社の過去開催の参加率と照らして確認する作業は一度やっておく価値があります。

時間帯と同じくらい影響するのが所要時間です。60分の枠は、申込時には気にならなくても、当日になると「途中で抜けるくらいなら録画でいい」という判断を誘発します。テーマを絞って30〜40分に収める、あるいは45分にして質疑を任意参加にするだけで、参加率が改善した例はいくつもあります。長さは内容の充実度ではなく、参加者の当日の意思決定コストとして設計してください。

3つの構造は、いずれも集客側の設計と表裏です。申込数だけを追う集客設計になっていないか、申込から参加までの数字を一緒に見直したい方はこちらからご相談ください。

申込完了の瞬間に期待値を上げる仕掛け

申込ボタンを押した直後は、申込者の関心が最も高い瞬間です。ここで「次にやること」をひとつだけ示し、開催日に向けた期待値を作れるかどうかで、その後のリマインドの効き方が変わります。

サンクスページは「次の行動」をひとつに絞る

申込完了画面に会社案内や他のコンテンツへのリンクを並べる設計は、参加率の観点では逆効果です。申込者にこの瞬間にしてほしいことは、カレンダーに登録することだけです。日時、所要時間、開催形式、そしてカレンダー登録ボタンを、画面のいちばん目立つ位置に置いてください。そのほかの導線は、あっても下部に小さく置く程度に留めます。

確認メールを「受付完了」で終わらせない

自動送信の確認メールが「お申し込みを受け付けました。当日のURLは改めてご連絡します」だけで終わっている企業は多いです。これは、申込者の関心が最高潮の瞬間に、何も渡していない状態です。確認メールには次の要素を入れてください。

  • 日時と所要時間を件名と本文冒頭の両方に書く
  • 参加URLをこの時点で渡す(後から送り直すにしても、最初に持たせておく)
  • カレンダー登録の導線をGoogleカレンダー・Outlook・ics形式の3種類で用意する
  • 当日の見どころを3点だけ書く。申込ページの再掲ではなく、「この回でしか聞けないこと」に寄せる
  • 事前質問の受付を1行入れる。返信でも、短いフォームでも構いません

見どころを書くのは、申込者が開催日までのあいだに「なぜ申し込んだのか」を思い出せるようにするためです。人は自分が申し込んだ理由を忘れます。理由を忘れた予定は、当日に何か別の予定が入った瞬間に負けます。

カレンダー登録の導線を設計する

カレンダーに登録した申込者と、していない申込者では、参加率に明確な差が出ます。ツールの機能で「カレンダーに追加」ボタンが自動で付くケースもありますが、その中身まで確認している担当者は少数です。次の点を確認してください。

  • 予定のタイトルに自社名とテーマが入っているか(「ウェビナー」だけでは当日に何の予定か分からない)
  • 予定の説明欄に参加URLが入っているか(メールを探さずにカレンダーから直接入室できる状態にする)
  • 予定の通知が開始15分前に設定されているか
  • 登録された予定の時刻がタイムゾーンを含めて正しいか(海外拠点の申込者がいる場合に事故が起きやすい)

カレンダーの説明欄に参加URLを入れておくと、開始直前のリマインドが届かなかった場合の保険にもなります。リマインドメールが迷惑メールに振り分けられたり、受信トレイに埋もれたりする事態は、こちらの努力とは無関係に起こります。

事前質問で「自分の回」にしてもらう

申込時または確認メールで「当日聞きたいこと」を募集し、集まった質問の一部を開催前の接点で「いただいた質問にお答えします」と予告する。この動きは、申込者にとってウェビナーを「誰かのイベント」から「自分の質問が扱われる場」に変えます。質問を書いた人の参加率は、書かなかった人より高くなります。加えて、集まった質問は登壇内容の調整材料にもなるため、内容の質も上がります。

申込直後の接点は、リマインドの前段ではなく参加率設計の本体です。確認メールとカレンダー登録の中身を整えるだけで、リマインドの通数を増やすよりも大きく数字が動きます。

リマインドは回数・タイミング・内容で設計する

リマインドは「前日と当日に1通ずつ」では足りません。役割の違う複数の接点を、申込日からの経過に合わせて配置します。開催直前の接点だけでは、忘れた人を呼び戻せても、優先度が下がった人を戻せないからです。

開催直前だけでは遅い理由

当日朝のリマインドは、「今日だったのか」と思い出させる効果はあります。しかし、その時点で別の予定が入っていれば動かせません。「行けたら行く」程度に温度が下がっている人に、朝の1通で温度を戻すのも難しいです。開催前日の夕方までに、予定を確保し直す理由と期待値を渡しておく必要があります。逆に言えば、前日と当日は「URLをすぐ見つけられる状態にする」ことに徹し、期待値を上げる役割はそれより前の接点に持たせます。

標準の5接点

次の表は、申込から開催までに2週間以上ある場合の標準構成です。開催まで数日しかない申込者には、後半の3通だけを送る設計にします。

タイミング役割主な内容件名の考え方
申込直後(自動)期待値の形成日時・URL・カレンダー登録・見どころ3点・事前質問受付「お申込み受付」+開催日時
申込3〜5日後(開催1週間以上前の申込者のみ)当事者化登壇者からの短いメッセージ、寄せられた質問の一部紹介、事前資料登壇者名を差出人にした一言
前日午後予定の再確保見どころの再掲、当日の流れ、視聴環境の確認、URL「明日」を明記+テーマ
当日朝想起URLを本文冒頭に、開始時刻、所要時間「本日」+開始時刻
開始15〜30分前入室誘導URLのみ。文章は2行以内「まもなく開始」+URL

2通目の「当事者化」の接点は、多くの企業が飛ばしています。しかし、申込日から開催日までの空白を埋めるのはこの1通だけです。内容は凝らなくて構いません。登壇者の名前で「当日はこの3点をお話しします。事前に聞きたいことがあれば返信してください」と送るだけで、申込者側の記憶に開催日が残ります。

申込直後 確認メールにカレンダー登録の導線 見どころを先出しして期待値を作る 申込3〜5日後 登壇者名で一言のメールを送る 事前質問を募集して当事者化する 前日午後 見どころを再掲して予定を確保し直す 視聴環境の確認と参加URL 当日朝 参加URLを本文の冒頭に置く 開始時刻と所要時間を再掲する 開始15〜30分前 URLだけの短いメールで入室を促す 開始10分後の追い打ちも用意する 期待値を上げるのは前半、URLを届けるのは後半の役割
図2:申込から開始直前までの5つの接点と、それぞれの役割

各回の内容で押さえること

リマインドの中身で最も多い失敗は、参加URLが本文の下のほうにあることです。当日朝と開始直前のメールは、スマートフォンで開いた瞬間にURLが見える位置に置きます。挨拶文は不要です。件名には「本日」「明日」「まもなく」といった時間を示す語と、テーマを入れます。差出人は会社名ではなく担当者名か登壇者名にしたほうが開封されやすい傾向がありますが、これは自社の配信で確認してください。開封率の改善策そのものはBtoBメールマーケの開封率を上げる改善施策に整理しています。

開始10分後の「追い打ち」は見落とされがちですが、効果があります。「開始しています。今からでも途中から参加できます」という1通で、忘れていた人や別の作業をしていた人が入ってきます。冒頭を聞き逃しても価値が伝わる構成にしておけば、途中参加者もきちんと参加者です。

リマインドの通数を増やすほど参加率が上がるわけではありません。開催まで数日の申込者に5通送ると、配信停止と苦情が増えます。申込日からの経過日数で通数を変える分岐を入れないなら、通数は3回までに抑えてください。

MAでの自動化と、少人数なら個別連絡

ここまでの接点は、MAツールを使っていれば申込日と開催日を条件にした分岐で自動化できます。申込日から開催日までの日数で分岐し、早期申込者には5通、直前申込者には3通、という構成をワークフローとして組みます。ステップメールの間隔や通数の設計はBtoBステップメール設計の実務ガイドと同じ考え方で、実装面はHubSpotワークフロー設計の基本のような記事が参考になります。

一方で、申込者が30名に満たない回であれば、自動化に時間をかけるより、営業やインサイドセールスから個別に連絡したほうが確実です。「先日お申込みいただいた回、明日ですので」という一言の電話やメールは、どんなリマインド設計より参加率を上げます。少人数の回に凝った自動化は要りません。

リマインドの通数や分岐をどこまで作り込むべきかは、開催頻度と申込規模で変わります。自社の規模に合ったリマインド設計を相談したい方はこちらからお問い合わせください。

集客経路によって参加率は変わる

同じウェビナーでも、どの経路から申し込んだかで参加率は大きく違います。全体の参加率だけを見ていると、どこに手を打つべきかが分かりません。

経路ごとの傾向を、実務で繰り返し見られる範囲で整理します。数値は載せません。自社の経路構成と集客規模で変わるためです。

集客経路参加率の傾向下がりやすい理由経路別の手当
営業・インサイドセールスの個別案内最も高い人間関係で申し込んでいるため、断りにくい反面、義理での申込も混じる案内した担当者から前日に一言添える
既存リードへのメール配信高めテーマへの関心はあるが、日程は流動的申込日からの経過に応じたリマインド分岐
共催パートナーからの送客中程度自社を知らない申込者が多く、期待値が形成されていない確認メールで自社の立ち位置と見どころを伝える
SNS・ディスプレイ広告低め衝動的な申込が多く、申込のハードルも低い申込フォームに1問だけ関心を問う項目を足す
外部のセミナー掲載サイト低め複数のイベントに同時申込している人が多い自社ドメインからの確認メールを必ず届かせる

この表を使うには、申込データに経路が残っていることが前提です。申込フォームのURLに経路パラメータを付け、フォームの非表示項目に保存する。共催相手からの送客は専用の申込ページを分ける。この2つを開催前に仕込んでおかないと、開催後に経路別の参加率を出せません。共催の場合は、相手側の申込者データをどの形で受け取るかも事前に決めておく必要があります。取り決めの範囲は共催ウェビナーの進め方で扱っています。

広告経由の参加率が低いのは、広告で集めること自体が間違いなのではなく、申込単価だけで広告を評価していることが問題です。広告で集めるなら、申込単価ではなく「参加者1人あたりの獲得単価」で評価してください。参加率込みで見ると、広告経由の実質単価は申込単価の倍以上になることが珍しくありません。それを踏まえて、広告予算をウェビナー集客に使うか、別のリード獲得に回すかを判断します。ウェビナー1回あたりのコストの見方はウェビナー開催の費用に整理しています。

欠席者を前提にした設計にする

どれだけ設計しても、欠席者はゼロになりません。欠席者の扱いを開催前に決めておくと、参加率の数字に振り回されずに済み、欠席者からも商談の芽を拾えます。

アーカイブ送付を前提にしつつ、申込ページでは大書しない

欠席者に録画を送ることは、今や標準の対応です。問題は、それを申込ページでどう扱うかです。「見逃した方にはアーカイブを配布します」と申込ボタンの近くに大きく書くと、申込数は増えますが、ライブに来る理由がなくなります。「録画を待っている」層をわざわざ作る設計です。

実務では、録画配布は申込ページの下部かFAQ欄で触れる程度に留め、代わりにライブ参加でしか得られない要素を前面に出します。質疑応答、その場での個別相談枠、参加者限定の資料、登壇者との名刺交換に相当する接点。こうした要素があれば、録画配布を告知しても参加率は極端には下がりません。ライブ限定要素が何もない回は、正直に言えば、最初からオンデマンド配信で良い回です。

欠席者へのメールは「録画のお届け」で終わらせない

開催翌日に欠席者に送るメールは、録画URLと資料に加えて、次の接点への導線を1つ入れます。個別相談、次回開催の案内、関連する資料の請求。どれか1つで十分です。欠席者は「来なかった人」ではなく「テーマに関心があって申し込んだが、その日時が合わなかった人」です。関心の証拠は残っています。

ここで注意したいのは、欠席者に送る録画の視聴データを取れる形にしておくことです。視聴したか、どこまで見たかが分かれば、欠席者の中から優先してフォローすべき人を選べます。録画をリード獲得の常設チャネルに育てる設計はウェビナーアーカイブの活用法で扱っており、この記事の範囲は「欠席者への一次対応」までとします。

欠席理由を1問だけ聞く

欠席者メールに「参加できなかった理由」を1問だけ、選択式で入れます。「予定が入った」「忘れていた」「時間帯が合わなかった」「録画で見るつもりだった」の4択で十分です。回答率は高くありませんが、数回分を集めると、自社の欠席がどの分類に偏っているかが見えます。忘れていた人が多いならリマインドと登録導線、時間帯が合わない人が多いなら開催時間、録画待ちが多いなら申込ページの書き方。手を打つ順番が決まります。

参加率の目安は自社の推移で見る

参加率の平均値は業種・集客経路・集計方法で大きく違い、公開されている数字をそのまま自社の目標にはできません。目安は他社の数字ではなく、自社の回ごとの推移から作ります。

公開されている数字が自社の目標にならない理由

「ウェビナーの参加率は何割くらいが普通か」という質問には、正直に答えると「集計の定義が揃っていないので比較できない」となります。配信ツールのベンダーが公開する統計は、そのツールの利用企業の傾向であり、業種も集客経路も申込フォームの重さも自社と違います。分子の定義も、入室者数なのか一定時間以上の視聴者数なのかで変わります。数字を引用するとしても、出典と定義を確認したうえで「参考値」として扱い、目標には使わないでください。

実務で使える目安は、自社の直近の開催から作るものです。過去5回の参加率を並べて、その平均を現在地とし、経路別・申込日別に分解したうえで、次の回で動かす変数をひとつ決める。この繰り返しのほうが、他社平均との比較よりずっと早く数字が改善します。

計測の定義を固定する

推移を見るには、定義を固定する必要があります。最低限、次の項目を決めて記録してください。

  • 分母:申込者数から、社内関係者・重複申込・テスト申込を除いた数
  • 分子:ライブで一定時間以上(5分など)視聴した人数。途中入室を含む
  • 参加率:分子÷分母。回ごとに全体・経路別・申込日区分別(開催まで2週間以上/1〜2週間/1週間未満)で出す
  • 開催条件:曜日、開始時刻、所要時間、申込フォームの項目数、リマインド通数
  • 欠席後の回収:欠席者のうち録画を視聴した人数と、その後の商談化

この記録が5回分あれば、参加率を動かしている変数がどれかは大体見えてきます。曜日を変えた回、フォームを軽くした回、リマインドを増やした回。一度に複数を変えると原因が分からなくなるので、1回につき変える変数は1つに絞ります。計測設計の考え方はBtoBマーケの効果測定で扱っている内容と共通です。

参加率の目標は「他社より高いか」ではなく「自社の前回より上がったか、その理由を説明できるか」で置きます。説明できる改善だけが、次の回に再現できます。

参加率より先に見るべき数字

参加率が上がっても、来た人が営業の対象外であれば意味がありません。参加者のうち、自社の理想顧客の条件に当てはまる企業の割合、そして参加者からの商談化数。この2つを参加率と並べて見てください。参加率だけを追うと、特典で集めた個人や学生の参加が増えて数字は上がるのに、営業に渡せるリードは増えないという状態に陥ります。

参加率を上げない判断もある

参加率はすべての回で高ければよい指標ではありません。追わないほうがよい場面と、やらないほうがよい施策を先に決めておくと、設計が過剰になりません。

やらないほうがよい施策

  • テーマと無関係な参加特典:ギフト券や抽選は参加率を上げますが、特典目当ての参加者が増えて営業に渡せる比率が下がります。特典を付けるなら、テーマに直結する資料やチェックリストに限ります。
  • 申込フォームの極端な軽量化:申込数の増加が目的ならよいですが、参加率と参加者の質が下がることを織り込んだうえで選んでください。
  • 一律の多通数リマインド:申込日を無視して全員に同じ通数を送る設計は、直前申込者の配信停止を招きます。分岐を組めないなら通数を減らすほうが安全です。
  • 録画配布の大書:申込数のためにアーカイブ配布を前面に出すなら、ライブ限定要素とセットでないと参加率は戻りません。

参加率を追わなくてよい場面

製品説明や使い方の解説のように、内容が固定されていて質疑の価値が小さい回は、ライブの参加率を追うより、最初からオンデマンド配信にして視聴数と視聴後の行動を追ったほうが合理的です。同様に、申込者が20名以下の回に凝ったリマインド設計は不要で、担当者からの個別連絡で済みます。そして、参加率が低くても参加者からの商談化が安定して出ている回は、参加率の改善より開催回数を増やすほうが成果に直結します。

参加率は、開催の目的が「その日時に人を集めること」であるときにだけ意味を持つ指標です。目的がリード獲得や商談化であるなら、参加率はその途中経過にすぎません。途中経過を上げる努力が最終目的に効いているかは、常に確認してください。

まとめ

ウェビナーの参加率は、当日の運営ではなく、申込完了の瞬間から開催までの接点設計で決まります。

この記事で扱った要点を整理します。欠席は「忘れていた」「予定が入った」「優先度が下がった」「録画を待っている」の4つに分かれ、いずれも開催前に手を打てます。参加率を下げる構造は申込のハードル・申込から開催までの日数・曜日と時間帯の3つで、施策を積む前にこの構造を自覚することが先です。

そのうえで、申込直後のサンクスページと確認メールで期待値を作り、カレンダー登録の中身まで整え、申込日からの経過に応じた5つの接点でリマインドを設計します。集客経路別に参加率を分けて見られるよう、申込データに経路を残しておく。欠席者にはアーカイブ送付を前提としつつ、申込ページではライブ限定の要素を前面に出す。参加率の目安は他社の数字ではなく、定義を固定した自社の推移から作る。この流れが、申込から参加までの設計の全体像です。

まずは次回の開催で、確認メールの中身とカレンダー登録の導線だけを見直してください。それだけで数字が動く企業は多く、動いた理由を説明できる状態が、その後の改善の出発点になります。

ウェビナー参加率のご相談

申込から当日までの接点を、自社の申込データから設計し直します

「申込は取れるのに当日来ない」「リマインドを増やしても数字が動かない」という状態を、集客経路・申込日・開催条件の分解から整理し、次回の開催で変える変数を一緒に決めます。開催実績が数回でも問題ありません。

よくある質問

ウェビナーの参加率の平均はどのくらいですか。
公開されている数字は配信ツールのベンダー調査が中心で、業種・集客経路・「参加」の定義が自社と揃っていないため、そのまま目標にはできません。実務では、申込者から社内関係者と重複を除いた数を分母、一定時間以上ライブ視聴した人数を分子と定義したうえで、自社の直近5回の推移を目安にしてください。経路別に分けると、営業の個別案内経由は高く、広告経由は低い、という傾向が多くの企業で見られます。
リマインドメールは何回、いつ送るのが適切ですか。
申込から開催まで2週間以上ある申込者には、申込直後・申込3〜5日後・前日午後・当日朝・開始15〜30分前の5接点が標準です。開催まで数日の申込者には後半3通のみに絞ります。申込日で分岐できない場合は3回までに抑え、直前申込者への配信過多を避けてください。前半の接点は期待値を上げる役割、後半は参加URLをすぐ見つけられる状態にする役割と分けて内容を作ります。
申込者が当日来ない主な理由は何ですか。
「忘れていた」「予定が入った」「優先度が下がった」「録画を待っている」の4つにほぼ収まります。最も多いのは忘れていた層で、カレンダー登録の導線と複数回のリマインドで減らせます。優先度が下がった層には前日に見どころを再掲し、録画待ちの層にはライブ限定の要素を申込時に示します。欠席者メールで理由を1問だけ聞いておくと、自社がどの分類に偏っているかが分かります。
参加特典を付ければ参加率は上がりますか。
上がりますが、特典の種類によっては営業に渡せる参加者の比率が下がります。ギフト券や抽選のようにテーマと無関係な特典は、特典目当ての申込を増やすため勧めません。付けるなら、テーマに直結するチェックリストやテンプレートなど、参加者の業務に使える資料に限定してください。特典よりも、事前質問の募集や登壇者からの一言メールのほうが、参加者の質を落とさずに参加率を上げられます。
アーカイブ配布を告知すると参加率は下がりますか。
申込ページの目立つ位置に大きく書けば下がります。録画で十分だと判断する層を自ら作るためです。欠席者への録画送付自体は標準の対応として行いつつ、申込ページでは質疑応答・個別相談枠・参加者限定資料など、ライブでしか得られない要素を前面に出してください。ライブ限定の要素が何もない回は、参加率を追うよりオンデマンド配信に切り替えたほうが合理的です。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。