自社のハウスリストが1,000件しかない状態で、ウェビナーに200名集めたい。この差を埋める最も現実的な手段が共催です。相手のリストにリーチできるため、単独開催では届かない層に一度に接触できます。
ただし共催には非対称性があります。リストが少ない側は「組んでもらう側」になるため、相手にとって組む理由を用意できるかどうかで話が進むかが決まります。パートナーの探し方を知っていても、提案の中身がなければ返信は来ません。
この記事では、自社が出せる価値の棚卸しから、パートナーの選定基準、提案の持ちかけ方、リード分配と個人情報の事前合意、当日までの進行までを扱います。これから初めて共催を仕掛ける企業を想定しています。
目次
共催が効く状況と、向かない状況
共催はリストの不足を補う手段であり、集客が足りている企業には手間が見合いません。
共催は準備に1〜2ヶ月かかります。日程調整、コンテンツのすり合わせ、リード分配の合意、当日の進行確認。単独開催に比べて工数は倍近くになります。それでも組む価値があるのは次の状況です。
- ハウスリストが必要な集客数に届かない
- これまで接触できていない業界や職種にリーチしたい
- 自社だけでは語れないテーマを扱いたい(例:ツール提供側と運用支援側の組み合わせ)
- 相手の信頼を借りて、認知の薄い自社の説得力を補いたい
逆に、単独開催で必要な申込数が取れている場合、共催を選ぶ理由は薄くなります。リード分配で獲得数が半分になるうえ、調整工数が増えるためです。まず自社のハウスリストで何名集まるかを把握してから判断してください。必要な集客数を商談目標から逆算する方法はウェビナー集客の設計手順で扱っています。
単独開催と共催で費用がどう変わるかはウェビナー開催の費用で扱っています。保有リストが1,000件に満たない段階では、費用面でも共催が有利になります。
組んでもらうために、自社が出せる価値を棚卸しする
リストの数で劣る場合は、リスト以外で相手が得るものを用意します。
共催の提案が通らない最大の理由は、相手にとってのメリットが「自社も集客する」だけになっていることです。リストが1,000件の会社が10,000件の会社に持ちかける場合、集客貢献では釣り合いません。別の価値を出す必要があります。
最も通りやすいのは1と2の組み合わせです。「企画・資料・登壇・運営をすべてこちらで持つので、貴社は告知だけしていただければ結構です」という提案は、相手の工数をほぼゼロにします。集客力のある企業ほどウェビナーの開催工数に困っているため、この提案は刺さります。
3は自社のポジションによります。ツールを売っていない支援会社であれば、ツール提供側が言いにくい「向かないケース」まで話せます。この中立性は相手にとって自社では作れない価値です。
パートナーの選び方|業界と部署の両方を合わせる
競合しないことは前提条件にすぎません。顧客の業界と部署が重なっているかで成果が決まります。
「BtoB企業だから」「同じSaaSだから」という粒度で選ぶと、集客はできても参加者が自社のターゲットではない、という結果になります。確認すべき軸は次のとおりです。
| 確認する軸 | 合っている状態 | ズレていると起きること |
|---|---|---|
| 顧客の業界 | 主要顧客の業界が重なる | 参加者はいるが商談にならない |
| 顧客の部署・役職 | 接触する部署が同じ | 決裁に関わらない層ばかり集まる |
| 企業規模 | 従業員規模の帯が近い | 予算感が合わず失注する |
| 提供領域 | 隣接するが競合しない | 競合すると内容が浅くなる |
| 集客への熱量 | 相手も本気で告知する | こちらの集客だけで終わる |
最後の「集客への熱量」は事前に確認しにくい項目ですが、最も成果を左右します。相手が過去に共催をしているか、その告知にどれくらい力を入れていたかを事前に見ておきます。相手のメルマガやSNSで過去の共催がどう扱われていたかを見れば、おおよその温度は分かります。
自社のターゲット定義が曖昧なままパートナーを選ぶと、この照合ができません。先にICPの設定を済ませてください。
提案の持ちかけ方と、断られる理由
初回の連絡で決まります。相手の負担と得るものを、具体的な数字で先に示します。
面識のない企業に共催を持ちかける場合、最初の連絡に何を書くかで返信率が変わります。含めるのは次の5点です。
- なぜ貴社なのか:顧客層が重なる根拠を具体的に書く。「BtoB企業だから」では通りません
- テーマ案:既に企画が固まっていることを示す。相手に考えさせない
- 役割分担:こちらが何を持ち、相手に何をお願いするかを明示する
- 相手の工数:「告知のみ、所要2時間程度」のように具体的に
- リードの扱い:申込者情報を双方で共有する前提であることを最初に伝える
5のリードの扱いを後回しにすると、日程まで決まった段階で条件が合わずに白紙になります。最初の連絡に必ず含めてください。
断られる理由の大半は次の3つです。1つ目は時期。相手の繁忙期や決算期は避けます。2つ目は相手の社内承認。担当者は乗り気でも、上長やコンプライアンス部門で止まることがあります。この場合は担当者が社内を通しやすい資料を渡すと進むことがあります。3つ目はテーマの重なり不足。相手の顧客にとって関心の薄いテーマだと、告知の熱量が上がりません。
断られた場合も関係は残ります。時期の問題であれば数ヶ月後に再度打診できますし、テーマが合わなければ別の切り口を提案できます。1社ずつ丁寧に当たるより、5社程度に並行して打診するほうが結果的に早く決まります。
リード分配と個人情報の扱いを先に決める
合意すべきは5項目です。曖昧なまま進めると開催後に必ず揉めます。
共催で最もトラブルになるのが申込者情報の扱いです。開催後に「そちらの集客分はこちらには渡せない」という話になると、費やした工数が回収できません。開催前に文面で合意しておきます。
- 申込者情報を双方で共有するか:全件共有が基本です。集客元で分けると、どちらの告知で申し込んだかの判定が実務上難しくなります
- 共有する項目:会社名・氏名・メールアドレス・役職まで。それ以上は不要です
- 共有のタイミング:開催後何営業日以内に渡すか
- フォローの開始時期:双方が同日に営業連絡すると参加者の心証が悪くなります。開始日を揃えるか、ずらすかを決めます
- アーカイブと資料の二次利用:録画や資料を各社が自由に使ってよいかを決めます
参加者の個人情報を共催先と共有するには、申込フォームの時点で共有先と利用目的を明示し、同意を得ておく必要があります。開催後に共有を決めると、この同意が取れていない状態になります。実際の文言は自社の法務や個人情報保護方針に照らして確認してください。
申込フォームには「本ウェビナーは○○株式会社との共催です。お申し込みいただいた情報は両社で共有し、各社からのご案内に利用いたします」といった記載を入れます。この一文があるかないかで、開催後に使える情報の範囲が変わります。
受け取ったリードをどう扱うかは、共催前に自社側でも決めておきます。共催で獲得したリードは自社単独の獲得より温度が低い傾向があるため、そのまま営業に渡すと接続率が落ちます。分岐の設計はMQL・SQLの定義と設計方法、その後の育成はナーチャリングのシナリオ設計で扱っています。
共催の条件設計で迷う場合は、自社のリスト規模と目標を前提にした組み立てをご相談いただけます。
当日までの進行と役割分担
初回は6週間前から動きます。共催は日程調整に時間がかかるため単独開催より前倒しします。
単独開催であれば4週間前からの告知で足りますが、共催では相手との調整期間が加わります。
リハーサルは必ず1回行います。共催では登壇者が複数社にまたがるため、話の順序や画面共有の切り替えでつまずきやすくなります。通しで1回やっておけば当日の事故はほぼ防げます。
当日の司会は、集客を多く担った側ではなく、進行に慣れている側が務めるほうが安全です。ここは工数分担とは切り離して決めます。
当日の進行設計や、温度を記録する運用はウェビナー当日の運営で詳しく扱っています。
2回目につなげる
共催の価値は2回目以降に出ます。初回の振り返りをその場で設定します。
初回は互いに手探りになるため、成果が想定を下回ることがあります。それでも関係ができていれば、2回目は準備工数が半分以下になり、集客の見込みも読めるようになります。単発で終わらせないために、開催直後に次の3点を共有します。
- 申込数と参加率の実績を双方の集客チャネル別に共有する
- 参加者の属性が想定と合っていたかを確認する
- 次回のテーマ候補を1つ出しておく
1つ目を共有することが信頼につながります。自社の集客が想定を下回った場合も正直に伝えるほうが、次につながります。
共催で作った関係は、ウェビナー以外にも広がります。相手のメディアへの寄稿、資料の相互紹介、顧客の相互送客。ウェビナー単体の成果だけで判断せず、関係全体で見てください。獲得したリードをその後の施策に接続する設計はBtoBリード獲得施策一覧で整理しています。
うまくいかないときの対処
共催では相手の動きに依存する部分があり、想定外は必ず起きます。事前に対応を決めておきます。
相手が告知してくれない
最も多いトラブルです。合意はしたものの、開催2週間前になっても相手側の告知が始まらない。この状態を放置すると、自社の集客分だけで開催することになり、共催にした意味がなくなります。
防ぐには、告知の予定を日付で握っておきます。「4週間前に1通目、2週間前に2通目、前週にSNSで1回」のように、いつ何を配信するかを合意の段階で決めます。曖昧に「告知をお願いします」とだけ伝えると、相手社内での優先度が下がって後回しになります。
それでも動かない場合は、告知文と画像をこちらで作って渡してください。作業負荷が理由で止まっていることが多く、そのまま使える素材があれば配信されます。文面を用意する工数は、集客が半減するリスクに比べれば小さなものです。
申込数が目標に届かない
2週間前の時点で目標の半分に届いていない場合、追加の手を打ちます。ただし申込は最終週に集中するため、この時点での不足は必ずしも失敗ではありません。判断の目安は、前回の単独開催時と同じ時期の申込数と比較することです。
打ち手としては、両社での再告知、登壇者個人のSNSでの発信、既存顧客への個別案内があります。個別案内は手間がかかりますが、確度が高く、共催相手にも同じ動きを促しやすくなります。追加のポータル掲載は、この段階からでは間に合わないことが多くなります。
どうしても届かない場合は、開催を延期する判断もあります。参加者が数名の状態で開催すると、登壇者の意欲も下がり、次回の共催の話がしにくくなります。1ヶ月延ばして集客し直すほうが、双方にとって良い結果になることがあります。
当日に相手側の登壇者が不在になる
体調不良や急な予定変更は起こり得ます。両社の登壇者がそれぞれ単独でも成立する内容を用意しておくと、片方が欠けても開催できます。事前のリハーサルで、相手の担当分の要点を把握しておくことも保険になります。
資料は事前に共有しておいてください。当日に相手のパソコンからしか出せない資料がある状態だと、代替が効きません。
リードの共有が滞る
開催後、相手から申込者情報が渡ってこないケースがあります。事前に文面で合意していれば督促できますが、口頭の合意しかない場合は交渉が難しくなります。合意内容はメールなど記録に残る形で残しておいてください。
共有の期限も具体的に決めます。「開催後3営業日以内」と書いておけば、催促する根拠になります。期限を決めずに「後日共有」とだけしていると、そのまま数週間が過ぎ、リードの鮮度が落ちます。
共有されたリードの扱いも決めておきます。共催で獲得したリードは自社単独より温度が低い傾向があるため、そのまま営業に渡すと接続率が落ちます。分岐の設計はMQL・SQLの定義と設計方法を参照してください。
相手と成果の認識がずれる
開催後に「思ったより集まらなかった」という評価だけが残ると、次回の話が出ません。防ぐには、開催前に両社で目標を数字で合意しておきます。申込数、参加率、それぞれの集客目標。これがあれば、結果を客観的に振り返れます。
結果が目標に届かなかった場合も、チャネル別の実績を正直に共有してください。自社の集客が想定を下回ったのであれば、そう伝えるほうが信頼につながります。
まとめ
共催ウェビナーで押さえるべき点を整理します。
- 共催はリスト不足を補う手段。単独で必要数が集まるなら工数が見合わない
- リストで劣る側は、企画・登壇・運営を引き受けることで釣り合いを作る
- パートナーは業界・部署・企業規模・提供領域・集客への熱量の5軸で選ぶ
- 初回の連絡に、なぜ貴社か・テーマ案・役割分担・相手の工数・リードの扱いの5点を入れる
- リード分配は開催前に文面で合意する。申込フォームに共有の同意文言を入れておく
- 単独開催より2週間前倒しで動く。リハーサルは必ず1回行う
- 価値が出るのは2回目以降。初回の実績を正直に共有して関係をつなぐ
1社目が決まるまでは時間がかかります。5社程度に並行して打診し、断られた理由を記録しておくと、2社目以降の提案が通りやすくなります。
共催設計のご相談
パートナー選定から条件設計まで、実務ベースでご相談いただけます
「組みたい相手はいるが提案の作り方が分からない」「リード分配の条件をどう決めるべきか判断できない」といった状態を、自社のリスト規模と目標から具体化します。共催が初めての段階でも問題ありません。
よくある質問
- 自社のリストが少なくても共催相手は見つかりますか。
- 見つかります。ただし集客貢献では釣り合わないため、別の価値を出す必要があります。企画・資料作成・登壇・運営をこちらが主担当で引き受け、相手には告知だけをお願いする形が最も通りやすい提案です。集客力のある企業ほど開催工数に困っているため、この分担は相手にとって合理的です。
- 獲得したリードはどう分けるのが一般的ですか。
- 全件を双方で共有するのが基本です。集客元で分ける方法もありますが、どちらの告知経由で申し込んだかを実務上判定しにくく、揉める原因になります。ただし共有するには申込フォームの時点で共有先と利用目的を明示し、同意を得ておく必要があります。開催後に決めると同意が取れていない状態になります。
- 準備はどのくらい前から始めるべきですか。
- 6週間前です。単独開催の4週間前より2週間前倒しします。テーマと日程の合意、リード分配の条件確認、両社での告知準備に時間がかかるためです。相手の社内承認が必要な場合はさらに余裕を見てください。
- 競合企業とは共催できませんか。
- 直接の競合とは避けたほうが無難です。内容が当たり障りのないものになり、双方にとって成果が薄くなります。狙うのは「顧客層は重なるが提供領域が隣接している」相手です。たとえばツール提供側と運用支援側、あるいは異なる業務領域のツール同士といった組み合わせです。
- 初回で成果が出ませんでした。続けるべきですか。
- 関係が良好であれば続ける価値があります。2回目は準備工数が半分以下になり、集客数の見込みも読めるようになります。初回の申込数と参加率をチャネル別に正直に共有し、次のテーマ候補を1つ出しておくと、2回目の話が進みやすくなります。