問い合わせフォームの入力項目を減らせばコンバージョン率は上がります。これは一般に正しく、多くの改善記事がそこを勧めています。しかしBtoBで同じことをすると、問い合わせ件数は増えたのに商談が増えない、という結果になることが珍しくありません。
理由は単純です。入力項目はハードルであると同時にフィルターでもあり、減らすほど確度の低い問い合わせが混ざります。BtoBのフォーム設計で見るべき指標はフォーム通過率ではなく、そこから生まれた商談の数です。この視点がないまま項目を削ると、営業の工数を増やしただけで終わります。
この記事では、フォーム改善に着手すべきかの判定から、項目数と商談数のトレードオフの考え方、フォームの種類ごとの設計、送信後の導線までを扱います。BtoBサイトでリード獲得を担当している方を想定しています。
目次
まず、フォーム改善に着手すべきかを判定する
フォーム通過率が25%を下回っていなければ、改善すべきはフォームではなくその手前の導線です。
フォーム改善は成果が出るまでが短く、着手しやすい施策です。だからこそ、本来の課題が別の場所にあるのに手を付けてしまうことが起こります。最初に確認するのはフォームページに到達した人のうち、送信まで至った割合です。
| フォーム通過率 | 判断 | 優先して手を付ける場所 |
|---|---|---|
| 10%未満 | フォームに問題がある | 入力項目とエラー表示 |
| 10〜25% | 改善余地あり | 入力支援と安心材料 |
| 25%以上 | フォームは足りている | フォームへの流入と訴求 |
通過率が25%を超えているのに問い合わせ件数が足りない場合、原因はフォームより手前にあります。そもそもフォームページへの流入が少ないか、フォームに進む前のページで納得できていないかのどちらかです。この場合はフォームをいくら磨いても件数は動きません。流入側の設計はBtoBリード獲得施策一覧で整理しています。
数字が取れていない場合は、まず計測を入れるところから始めます。フォームページの表示数と送信完了数の2つが分かれば判定できます。
項目を減らすとCVRは上がり、リードの質は下がる
項目数は通過率と商談化率の両方に効き、方向が逆です。最大化すべきは掛け合わせた商談数です。
「項目を減らせばCVRが上がる」は正しい一方で、話がそこで止まっているのが多くの改善記事の問題です。BtoBでは減らした分だけ、情報収集段階の人や対象外の企業からの送信が増えます。営業が対応した結果として商談にならなければ、増えた件数には意味がありません。
図の数値は説明のための例であり、実際の値は商材と流入元によって変わります。重要なのは形です。項目を減らすと通過率は上がり商談化率は下がるため、掛け合わせた商談数はどこかで最大になります。自社の最適点を知るには、項目数を変えた期間ごとに商談数まで追う必要があります。
この計測をするには、フォーム送信から商談発生までをCRM側で紐づけておく必要があります。接続ができていない状態では、通過率という手前の数字だけで判断することになり、必ず項目を削る方向に寄ります。計測設計はBtoBマーケの効果測定で扱っています。
フォームは1種類ではない|用途ごとに設計を変える
問い合わせ・資料ダウンロード・ウェビナー申込では、必要な項目も許容できる離脱も違います。
多くの改善記事が「フォーム」を単数で扱いますが、BtoBサイトには通常3種類以上のフォームがあります。それぞれ目的が違うため、同じ基準で項目を揃えるべきではありません。
| フォームの種類 | 送信者の温度 | 推奨項目数 | 設計方針 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ・無料相談 | 高い | 5〜7 | 質を優先。課題の自由記述を入れる |
| 資料ダウンロード | 中〜低 | 3〜5 | 量を優先。属性は後で聞く |
| ウェビナー申込 | 中 | 3〜5 | 量を優先。当日の参加率を重視 |
| メルマガ登録 | 低 | 1〜2 | メールアドレスのみで足りる |
問い合わせフォームだけは項目を減らしすぎないほうが機能します。すでに温度が高い人は多少の入力を厭いませんし、自由記述で課題を書いてもらえると初回接触の質が大きく変わります。逆に資料ダウンロードで7項目を要求すると、量が必要な場面で量が取れません。
資料ダウンロードのフォーム設計はホワイトペーパーの作り方、ウェビナー申込はウェビナー集客の設計手順でそれぞれ扱っています。
自社のフォームをどう分けるべきか整理したい場合は、現在の流入構成を前提にした設計をご相談いただけます。
問い合わせフォームが置かれるページ側の設計はBtoBのランディングページ改善で扱っています。
減らす・支援する・後押しするの3系統で直す
改善施策は目的別に3つに分かれ、着手の優先順位もこの順です。
減らす
- 郵便番号・住所・部署名・ふりがなを外す。BtoBの初回接触では不要です
- 任意項目を消す。任意でも「入力するもの」と認識されて負荷になります
- 確認画面を省略する。1画面増えるごとに離脱が発生します
- フォームページのヘッダー・フッター・サイドバーのリンクを非表示にする
支援する
- エラーは送信後ではなく入力中にその場で表示する
- 電話番号やメールアドレスの入力形式を柔軟に受ける(ハイフンあり・なし両方)
- 必須と任意を色ではなく文字で明示する
- 1画面に収める。スクロールが発生すると完了までの距離が見えなくなります
後押しする
- 送信ボタンの文言を具体化する。「送信」ではなく「無料で相談する」
- ボタン付近に不安を消す一文を置く。「営業のご連絡はいたしません」など
- 電話番号を併記する。使われなくても安心材料として機能します
- 導入企業のロゴを置く。信頼の担保として離脱を抑えます
この3系統のうち、最も効果が大きく最も工数が小さいのは「減らす」です。支援と後押しは、減らす作業を終えてから着手してください。
BtoB特有の落とし穴
フォーム単体では見えない、後工程との噛み合わせで起きる問題があります。
フォームの画面上は問題がなくても、その前後の設計で成果を落としているケースがあります。実務でよく見るのは次の3つです。
自動返信メールが届いていない
送信直後の自動返信が迷惑メールに入る、あるいはそもそも設定されていない。送信者からすると届いたかどうか分からない状態になり、その後の接触の反応が落ちます。テスト送信は自社ドメイン以外のアドレスでも行ってください。
営業への通知が遅い
送信から営業が認識するまでに1日以上かかると、接触時の温度は大きく下がります。通知を即時にし、誰が一次対応するかを決めておきます。ここが決まっていないと、通知は飛んでいるのに誰も動かないという状態が起こります。
フォーム送信を全部同じ扱いにしている
問い合わせと資料ダウンロードを同じ通知・同じ対応フローに流すと、営業の初動が鈍ります。温度の違うリードを分けて渡す基準はMQL・SQLの定義と設計方法、営業との合意形成はマーケ・セールス連携の仕組み作りで扱っています。
入力項目を変更した際は、CRM側のプロパティとの対応関係が崩れていないかを必ず確認してください。項目を消したことでデータが入らなくなり、数ヶ月後に気づく事故が起こりやすい箇所です。
フォームは重複が最も生まれる入口でもあります。メールアドレスを一意キーにする設定など、重複を作らない設計はリードの名寄せと重複管理で扱っています。
送信後の設計まで含めてフォーム改善
通過率を上げても、送信後の接触が設計されていなければ商談は増えません。
フォーム改善を通過率の話に閉じないためには、送信後72時間をセットで設計します。ここが決まって初めて、項目を減らしたときに何が起きるかを観測できます。
資料ダウンロード層に送るステップメールの組み方はBtoBステップメール設計、シナリオ全体の設計はナーチャリングのシナリオ設計にまとめています。送信後の接触を含めて商談化率を上げる施策はBtoB商談化率を上げる7つの施策が具体的です。
広告からフォームに流している場合は、広告側の商談化率と合わせて見ないと判断を誤ります。リスティング広告の商談化率を改善する設計も参照してください。
変更の効果をどう検証するか
BtoBは母数が小さくA/Bテストが成立しません。期間で区切って比較し、1回に1か所だけ動かします。
フォームを変更したら効果を測る必要がありますが、ここでBtoB特有の制約に突き当たります。一般的に推奨されるA/Bテストは、統計的に意味のある差を検出するために一定の母数を必要とします。フォームページへの月間訪問が数百件という規模では、期間内に有意な差は出ません。ツールを導入してテストを回しても、出てくるのは判断に使えない数字です。
それでも検証しないまま変更を重ねると、何が効いたのか分からないまま時間が過ぎます。母数が小さい環境なりの進め方があります。
期間を区切って前後で比較する
変更前の3ヶ月と変更後の3ヶ月で、フォーム通過率を比較します。同時に走らせるA/Bテストではなく、時期をずらした前後比較です。精度は落ちますが、判断材料にはなります。
注意点は、比較する期間の条件を揃えることです。広告の出稿量が変わっていないか、大型の展示会やウェビナーが挟まっていないか、季節性のある商材ではないか。これらが動いていると、フォームの変更による差なのか判別できません。比較期間中は他の施策を大きく動かさないと決めておきます。
期間を3ヶ月とするのは、BtoBの検討サイクルを考慮したものです。1ヶ月では母数が足りず、たまたま大型の問い合わせが1件入っただけで数字が動いて見えます。
1回の変更で1か所だけ動かす
項目数を減らし、同時にボタンの文言も変え、確認画面も省いた。この状態で数字が動いても、何が効いたのかが分かりません。次に別のフォームを直すときに、その知見が使えなくなります。
母数が小さい環境では、1回に1か所だけ変更してください。効果が出るまでの観測期間は長くなりますが、変更のたびに知見が積み上がります。優先順位は前述のとおり、項目を減らすことから着手します。
やむを得ず複数を同時に変える場合は、少なくとも変更内容を記録しておいてください。日付と変更点を残しておけば、後から数字の変化と突き合わせられます。この記録がないと、半年後に「なぜこの仕様になっているのか」を誰も説明できなくなります。
通過率だけでなく、後工程まで追う
フォーム通過率が上がっても、商談数が変わらなければ意味がありません。項目を減らした場合は特に、通過率の改善と商談化率の低下が同時に起きている可能性があります。変更後3ヶ月の商談数まで確認してから、成否を判断してください。
この確認には、フォーム送信から商談発生までをCRM側で追える状態が前提になります。整っていない場合は、フォームを触る前に計測の接続を済ませるほうが順序として正しくなります。通過率という手前の数字だけで判断すると、必ず項目を削る方向に寄ります。設計の考え方はBtoBマーケの効果測定で扱っています。
数字が動かない場合に疑うこと
項目を減らしても通過率が変わらないのであれば、離脱の原因はフォームの外にあります。フォームに到達する手前で、そもそも問い合わせる動機が形成されていない可能性が高い状態です。
この場合に確認するのは、フォームの手前にあるページの内容と、そこに至る流入の質です。広告からの流入であれば、広告文とページの内容が噛み合っているか。検索からの流入であれば、検索意図に対して答えを返せているか。フォームは最後の関門にすぎず、その手前で納得が作れていなければ、入力欄をいくら減らしても送信されません。
逆に、通過率が25%を超えているのに問い合わせ件数が足りない場合も、原因はフォームの外です。この場合はフォームページへの流入そのものを増やす施策に移ってください。
フォームの手前にある離脱も見る
フォーム自体の改善が一巡したら、そこに至る手前の導線を確認してください。問い合わせボタンがページのどこにあるか、押した後にどの画面が表示されるか、別ページに遷移するのか同じページ内で開くのか。
特に、問い合わせボタンを押してからフォームが表示されるまでにページ遷移が挟まると、そこで一定数が離脱します。同じページ内でフォームが開く形にできるなら、その分の離脱は減らせます。
ボタンの設置位置も確認します。ページの最下部にしかない場合、最後まで読んだ人しか到達しません。BtoBのページは長くなりがちなので、中盤にも設置してください。
まとめ
BtoBのフォーム改善で押さえるべき点を整理します。
- 通過率が25%を超えているなら、直すべきはフォームではなく手前の導線
- 項目を減らすと通過率は上がり商談化率は下がる。最大化すべきは掛け合わせた商談数
- フォームは1種類ではない。問い合わせは質優先で5〜7項目、資料ダウンロードは量優先で3〜5項目
- 施策は減らす・支援する・後押しするの3系統。効果と工数の比が最も良いのは「減らす」
- 自動返信の到達、営業への通知速度、リードの分岐という後工程が成果を左右する
- 送信後72時間の接触を設計して初めて、フォーム変更の影響を観測できる
フォーム単体の最適化は短期で成果が出る一方、頭打ちも早く来ます。通過率が25%前後に達したら、そこから先は流入と送信後の設計に投資したほうが商談数は伸びます。
フォーム設計のご相談
通過率だけでなく、商談数で見たフォーム設計をご相談いただけます
「問い合わせは増えたのに商談が増えない」「どこまで項目を減らすべきか判断できない」といった状態を、流入構成と営業体制を前提に具体化します。計測がまだ整っていない段階でも問題ありません。
よくある質問
- 入力項目は何個が最適ですか。
- フォームの用途によって変わります。問い合わせや無料相談は5〜7項目、資料ダウンロードやウェビナー申込は3〜5項目、メルマガ登録は1〜2項目が目安です。ただし最適解は商材と流入元で変わるため、項目数を変えた期間ごとに商談数まで追って自社の値を見つけてください。
- 項目を減らしたら問い合わせは増えましたが、商談が増えません。
- 想定される動きです。項目はハードルであると同時にフィルターでもあるため、減らすと確度の低い送信が混ざります。通過率ではなく商談数で評価し、減らしすぎている場合は1〜2項目戻してください。あわせて、リードを温度別に分けて営業に渡す基準を作ると、営業側の負荷が下がります。
- 確認画面はなくしてよいですか。
- BtoBの一般的な問い合わせフォームであれば省略して構いません。画面が1つ増えるごとに離脱が発生します。入力内容の確認が必要な場合は、確認画面を挟むのではなく、入力中のリアルタイムエラー表示で担保するほうが離脱を抑えられます。
- EFOツールは導入すべきですか。
- 先に無料でできる改善を終えてから判断してください。項目を減らす、確認画面を省く、ヘッダーとフッターを非表示にする、といった対応はツールなしで実施できます。これらを終えても通過率が10%を下回る場合に、入力支援機能の導入を検討する順序が無駄がありません。
- フォーム改善の効果はどのくらいで出ますか。
- 通過率への影響は変更の翌週から見えます。ただし商談数への影響は、BtoBの検討期間があるため1〜3ヶ月遅れて現れます。通過率が上がった時点で成功と判断せず、商談数が確定するまで観測を続けてください。