YouTube広告はBtoBで使うべきか|向く商材の判断とターゲティング・成果の見方

検索広告は一通り回っているものの、クリック単価は上がり、獲得件数は頭打ちになってきた。次の手としてYouTube広告を勧められたが、法人向けの商材を動画で流して本当に商談につながるのか判断がつかない。

YouTube広告は、いま探している人を捕まえる広告ではありません。まだ探していない見込み客に先に名前と課題の輪郭を覚えてもらい、後日の検索や問い合わせの段階で選ばれやすくするための投資であり、直接のコンバージョンで評価すると必ず判断を誤ります。この前提に合う商材と体制がある会社だけが、使う価値を持ちます。

検索広告の獲得が頭打ちになり、次の手として動画を検討している段階では、まだ探していない見込み客を配信の対象として切り出せる商材か、直接のコンバージョン以外で成果を測る体制があるか、の2点を比べると、始めるかどうかの見当がつきます。取引先の候補が限られる商材では、YouTube広告を使わないほうが合うこともあります。

BtoBでYouTube広告を使うべきか|先に向き不向きを判断する

YouTube広告が機能するのは、課題を自覚する前の見込み客が十分に多く、1件の受注で広告費を回収できる商材です。この2つが揃わないなら、設定を工夫する前に見送る判断が合理的です。

BtoBでYouTube広告を検討するとき、最初に問うべきは「動画で伝えられるか」ではありません。問うべきは、自社の見込み客の中に「まだ探していないが、いずれ探す人」がどれだけいて、その人たちに先に知ってもらうことが後の受注につながるのか、という点です。動画は作れば何でも伝えられますが、届けた相手が将来の買い手にならなければ、表示回数が積み上がるだけで終わります。

向く商材と向かない商材

判断の材料になるのは、市場の広さ、課題の自覚の度合い、単価、比較検討の構造です。次の表で、自社がどちらに近いかを確認してください。

観点向く向かない
対象企業の数業種横断で数千社以上いる国内で数十〜数百社に限られる
課題の自覚困っているが解決策があると知られていない課題が明確で、探す人はすでに検索している
カテゴリの認知新しいカテゴリで、名前を知られる必要がある定番カテゴリで、比較サイトや検索で決まる
受注単価1件の受注で数か月分の広告費を回収できる単価が低く、認知投資を回収しきれない
接点の担い手現場担当者が情報収集の起点になる決裁者1人が人脈や紹介で決める
受け皿資料・ウェビナー・事例など軽い接点がある問い合わせフォームしか用意できない

勤怠や経費精算、営業支援のように、業種を問わず多くの企業に当てはまる業務課題を扱う商材は、YouTube広告の条件に合いやすい部類です。一方で、特定業界の特定工程向けの装置や、取引先が国内で数百社しかない専門サービスは、YouTubeで対象者だけを切り出す手段がなく、表示の大半が対象外の人に向かいます。この場合は社名を特定して当てにいく設計や、業界メディアのほうが筋が通ります。

始める前に満たしておく3つの前提

商材が向いていても、次の3つが欠けている段階では、YouTube広告を始めても判断材料が揃いません。

  1. 検索広告で取れる需要を取り切っている:指名語や課題語で取りこぼしがあるなら、そちらのほうが確実に商談になります。YouTube広告は、検索で取れる需要の外側を広げるための投資です。
  2. 接触した人の受け皿がある:動画を見て興味を持った人が次に取れる行動として、資料、ウェビナー、事例ページなどが用意されていること。問い合わせフォームしかない状態では、温度の低い人は何もせずに離れます。
  3. 指名検索と直接流入を定点で見られる:YouTube広告の成果は、主に指名検索や直接流入といった間接指標に現れます。配信前の水準を記録していないと、配信後に動いたかどうかが判定できません。

たとえばマーケティング責任者が検索広告の管理画面で、指名語と課題語のキャンペーンのインプレッション シェアを開き、予算不足で失った割合を確認します。予算不足による損失が残っているなら、YouTube広告より先に検索広告の予算を足します。損失がほとんどなく、表の「向く」側に2つ以上当てはまる段階で、はじめてYouTube広告の検討に進みます。

チャネル全体の中でYouTube広告をどの位置に置くかは、BtoB広告運用ガイドの「チャネルの選び方」と合わせて判断してください。

検索広告との役割の違い|まだ探していない人に先に知ってもらう

検索広告は探している人を捕まえ、YouTube広告は探す前の人に覚えてもらいます。同じGoogle広告の管理画面で動かしていても、役割も評価指標も別物として扱います。

検索広告は、ユーザーが自分の言葉で課題を打ち込んだ瞬間を捕まえる広告です。「経費精算 システム 比較」と検索した人は、少なくともその日、その課題を意識しています。BtoBの検索広告が高い商談化率を出せるのは、この意識されたタイミングを条件にできるからです。

YouTube広告が接触するのは、業務の合間や移動中に動画を見ている人です。課題を意識しているかどうかは選べません。その代わり、数か月後にその人が課題を自覚して検索したとき、検索結果に並ぶ複数の会社のうち「前に見たことがある会社」として自社を思い出してもらえる状態を作れます。BtoBの比較検討では、知っている会社から問い合わせるという行動が珍しくありません。YouTube広告の役割は、この「知っている会社」の枠に入ることです。

検討段階ごとの役割分担 探す前|YouTube広告 役割:名前と課題の輪郭を覚えてもらう 対象:課題を自覚する前の見込み客 評価:指名検索・直接流入の推移 直接CVでは評価しない 探し始めた|検索広告 役割:探したときに見つけてもらう 対象:課題語や社名で検索した人 評価:商談化率・受注率 YouTubeの成果はここに現れる 接触済み|リマーケティング 役割:検討中に思い出してもらう 対象:サイト訪問者・動画視聴者 評価:再訪からの商談化 YouTube面でも配信できる 同じ管理画面でも指標は段階ごとに分ける
図1:買い手の検討段階とYouTube広告・検索広告・リマーケティングの役割

検索広告とYouTube広告の役割の違いを曖昧にしたまま運用すると、YouTube広告を検索広告と同じCPAの表に並べることになります。探す前の人に当てている以上、クリックしてすぐ資料請求する人は少なく、CPAは必ず悪く見えます。その数字だけを見て止めると、後から指名検索や商談として現れるはずだった接触を途中で捨てることになります。

キャンペーンの種類は目的で選ぶ

Google広告でYouTubeに配信する方法は、目的によって分かれます。認知や視聴を目的にする場合は動画キャンペーン(動画リーチキャンペーンや動画視聴キャンペーン)を使います。コンバージョン獲得を目的にする場合は、デマンドジェネレーション キャンペーンを使います。Google広告ヘルプによると、動画アクションキャンペーンは2025年4月に新規作成ができなくなり、既存のキャンペーンも2026年4月までにデマンドジェネレーション キャンペーンへ自動でアップグレードされました。

「まだ探していない人に知ってもらう」使い方では、動画キャンペーンが中心になります。主な広告フォーマットと課金の仕組みは次のとおりです。

フォーマット特徴課金の考え方BtoBでの使いどころ
スキップ可能なインストリーム広告5秒後にスキップできるCPV。30秒視聴(30秒未満の広告は最後まで)か、広告の操作で課金主力。課題を説明できる長さを取れる
バンパー広告6秒以内でスキップ不可インプレッション単価社名とひとことを反復して覚えてもらう
インフィード動画広告検索結果や関連動画の横に表示サムネイルのクリックか、自動再生の10秒以上の視聴で課金自ら調べている人に解説動画を見せる
YouTubeショート広告縦型で上下スワイプで離脱できる視聴単価かインプレッション単価縦型素材がある場合の追加面

スキップ可能なインストリーム広告は、最初の5秒で離脱した人には費用がかからず、30秒まで見た人か広告を操作した人に対して費用が発生します。BtoBにとってこの仕組みは都合がよく、関心のない人はすぐにスキップして離れ、費用は関心を持って見続けた人に寄ります。逆に言えば、最初の5秒で対象者に「自分の話だ」と思わせられなければ、誰にも見られないまま表示だけが積み上がります。素材の設計はこの仕組みから逆算します。

ターゲティングの組み方|カスタムセグメント・データセグメント・配信面の除外

BtoBのYouTube広告で最も狙いが正確になるのは、Googleで検索した語句を手がかりにするカスタムセグメントです。そこに自社データでの除外と配信面の除外を重ね、属性での絞り込みは最後に回します。

YouTube広告のターゲティングには、年齢や性別などのユーザー属性、興味/関心、購買意向の強いセグメント、カスタムセグメント、データセグメント、カスタマーマッチといったオーディエンスの指定と、チャンネルや動画、トピック、キーワードといった配信面の指定があります。選択肢は多いのですが、BtoBで実際に軸になるものは限られます。

カスタムセグメント|「Googleで検索した語句」を使う

カスタムセグメントは、キーワード、URL、アプリを入力して、それに関心を持つと推定される人の集まりを作る機能です。BtoBで重要なのは、キーワードを「Googleでこれらのいずれかのキーワードを検索したユーザー」として指定できる点です。この指定はYouTubeなどGoogleのサービス上で配信するキャンペーンでのみ検索行動として機能し、それ以外では興味/関心や購買意向として扱われます。

検索語句を使うカスタムセグメントがあるため、YouTube広告は「まだ探していない人」だけでなく「探し始めたばかりの人」にも届きます。検索広告では入札が見合わない情報収集段階の語句、たとえば課題の言い換えや業務用語、関連する制度名などを検索した人に、動画で先に自社の考え方を見せることができます。

語句の選び方は、検索広告のキーワード選定とは基準が変わります。検索広告では商談につながる語を選びますが、カスタムセグメントでは「この語を調べる人は、自社の見込み客である可能性が高いか」で選びます。実務では次の3種類から集めると組み立てやすくなります。

  • 課題の言い換え:「残業 削減 方法」「属人化 解消」のように、商材名ではなく困りごとの言葉。検索広告では商談化しにくいため入札していない語が候補になります。
  • 業務の専門用語:対象部門の担当者しか調べない制度名や業務名。語自体が相手の職種を示すため、属性指定より確かな手がかりになります。
  • カテゴリ名と比較語:自社が属するカテゴリ名。すでに探している人に届くため、リマーケティングに近い役割を持ちます。

URLを入れる場合は注意が必要です。URLは「そのページを閲覧したような人」に当てるための手がかりであり、指定したサイトに広告が表示されるわけではありません。業界メディアのURLを入れて「そのメディアに広告が出る」と誤解している運用は珍しくありません。

データセグメント|再接触と除外の元データにする

データセグメントは、自社サイトの訪問者や、自社のYouTubeチャンネル・動画に接触した人をもとに作るオーディエンスです。YouTube上の行動を使うには、YouTubeチャンネルとGoogle広告アカウントのリンクが前提になります。リンクすると、チャンネルの動画を視聴した人、特定の動画を視聴した人、チャンネル登録した人などを条件にできます。

BtoBでの使い道は2つあります。1つは再接触で、料金ページや事例ページを見た人、解説動画を最後近くまで見た人に、次の段階の動画や資料の案内を出します。もう1つは除外で、既存顧客のリスト(カスタマーマッチ)や、すでに資料請求したリードを外します。既存顧客に認知目的の動画を流し続けても獲得は増えず、費用だけが二重にかかります。再接触の対象と期間を決めるときは、BtoBリターゲティング広告の設計と同じ基準でリストを分けます。

配信面の除外|BtoBに無関係な視聴枠を先に外す

YouTubeは視聴の母数が大きいぶん、BtoBの見込み客がほとんどいない枠にも配信されます。配信前に次の設定を確認してください。

  • 広告枠タイプ:拡張・標準・制限の3段階から選びます。標準が推奨とされており、BtoBでは標準から始めて、ブランド上の理由がある場合だけ制限を検討します。
  • 除外するコンテンツ:埋め込みYouTube動画、ライブ配信動画、ファミリー向けのコンテンツを除外できます。デジタルコンテンツラベルは、2024年9月以降YouTube上の広告には適用されていません。ファミリー向けのコンテンツは、BtoBでは外して困ることはまずありません。
  • Google動画パートナー:YouTube以外のサイトやアプリへの配信です。検索語句のカスタムセグメントはGoogleのサービス上で本来の意味を持つため、少なくとも立ち上げ期はYouTubeに寄せて検証するほうが結果を読みやすくなります。
  • プレースメントの除外:配信後にプレースメントのレポートを確認し、明らかに無関係なチャンネルや動画を除外します。アカウント単位で除外リストを持っておくと、キャンペーンを増やしたときに漏れません。

属性で絞り込みすぎない

BtoBで最初に試したくなるのは、年齢や世帯年収、興味/関心のビジネス系カテゴリで絞り込むことです。しかしこれらはGoogleの推定であり、法人の役職や業種を検証した情報ではありません。検索語句のカスタムセグメントに属性の条件を何重にも掛けると、母数が細って配信が止まり、どの条件で成果が変わったのかも判別できなくなります。属性は明らかに対象外の層を外す程度にとどめ、軸は検索行動に置きます。推定属性に頼らない組み方の考え方は、媒体は違いますがMeta広告のBtoBターゲティング設定とも共通しています。

自社の検索広告の語句データから、どの語をカスタムセグメントに回すべきかを整理したい場合は、運用中のアカウントを前提にした個別の相談もご利用ください。

BtoB向け動画素材の作り方|スキップされる前提で最初の5秒を設計する

BtoBの動画広告は、見られない前提で作ります。最初の5秒で「誰の、どの課題の話か」を言い切り、30秒までに1つの気づきを渡し、社名と次の行動を覚えやすい形で残します。

BtoBの動画広告でよく見る失敗は、会社のロゴアニメーションから始まり、企業理念を語り、最後に製品名が出てくる構成です。企業紹介としては整っていますが、広告としては最初の5秒でほぼ全員がスキップします。スキップ可能な広告は、見たい人だけが見続ける仕組みです。その5秒で見込み客が「自分に関係がある」と判断できなければ、残りの尺はどれだけ作り込んでも見られません。

スキップ前提の時間設計 0〜5秒|対象者を呼び止める ▸ 誰のどの課題かを言い切る ▸ 職種名や業務の場面を出す ▸ ロゴや企業理念から始めない 5秒でスキップ可能になる 5〜30秒|気づきを1つ渡す ▸ 課題が起きる構造を説明する ▸ 解き方の考え方を1つだけ示す ▸ 機能の一覧は並べない 30秒視聴か操作で課金される 30秒以降|名前と次の行動 ▸ 検索してほしい社名を画面に出す ▸ 資料やウェビナーなど軽い行動 ▸ 問い合わせは急がせない 費用は見続けた関心層に寄る
図2:スキップ可能なインストリーム広告の時間設計

最初の5秒|誰のどの課題かを言い切る

冒頭に置くのは、対象者が自分のことだと分かる言葉です。「毎月の締めで経理が残業している会社へ」「営業の引き継ぎで顧客情報が消える問題」のように、職種や業務の場面を具体的に出します。社名やロゴは、この段階では必要ありません。むしろ最初に広告主の名前が出ると、視聴者は「広告だ」と判断してスキップします。

冒頭で対象を絞ると、対象外の人は早くスキップします。これは失敗ではなく、狙いどおりの動きです。課金は30秒視聴か操作の時点なので、対象外の人に早く離れてもらうほど、費用は見込み客に集中します。

5〜30秒|課題の構造と解き方を1つだけ見せる

5秒を越えて見続けている人は、その課題に心当たりがある人です。ここで製品機能を並べると、急に広告の顔に戻って離脱されます。代わりに、その課題がなぜ起きるのかという構造と、解き方の考え方を1つだけ見せます。見込み客にとって「そういうことだったのか」と思える気づきが1つあれば、この会社は分かっている、という印象が残ります。

どの切り口で見込み客が見続けるかは、社内の会議より商談や失注の記録から探すほうが当たります。候補の切り口が2つ以上出たら、広告クリエイティブのABテストの手順で1つずつ比べます。動画の場合、切り口の差はほぼ最初の5秒の言葉に表れるため、検証するなら冒頭だけを変えた2本を比べるのが効率的です。

30秒以降|社名と次の行動を残す

最後に社名と、次に取ってほしい行動を出します。YouTube広告の成果は後日の指名検索に現れることが多いため、検索してほしい社名やサービス名を画面上にはっきり出してください。次の行動は、問い合わせではなく、資料やウェビナー、事例のように負担の軽いものにします。探す前の段階の人に「まずは無料相談を」と求めても動きません。

撮影より構成に時間を使う

BtoBの動画広告は、撮影機材や出演者より構成の良し悪しで決まります。スライドにナレーションを載せたもの、実際の管理画面を収録したもの、ウェビナー録画の一部を切り出したもので十分に機能します。特にウェビナーの録画は、話者が実務の言葉で課題を語っているため、冒頭5秒の素材として使える部分が見つかりやすい資産です。過去の録画を棚卸しするときは、ウェビナーアーカイブの活用法に沿って切り出す場面を選びます。音声を聞けない環境で見る人もいるため、要点はテロップでも読めるようにしておきます。

制作会社に丸ごと依頼すると、ブランド映像としては美しいが最初の5秒で誰の話か分からない動画が納品されがちです。依頼時には冒頭5秒の台詞と画面を自社で決めてから渡してください。

広告用の素材とは別に、サイトや商談で使う操作デモや導入事例も作る場合は、広告以外のBtoB動画を検討段階ごとに作り分ける方法に沿って、どの段階の誰に見せる動画から作るかを決めます。

成果の見方|直接コンバージョンで判断しない

YouTube広告の成果は、主に指名検索と直接流入、その先の検索広告経由の商談に現れます。管理画面のコンバージョンは補助的な参考値として扱い、配信前後と配信有無の比較で判断します。

YouTube広告を止める判断の多くは、「管理画面のコンバージョンが付かない」という理由で下されます。しかし、動画を見た人がその場で広告をクリックして資料請求まで進むことは、探す前の段階の人にとって自然な行動ではありません。多くの人は動画を閉じ、数日から数週間後に課題を自覚したとき、社名で検索するか、直接サイトを訪れます。この経路は、YouTube広告の直接コンバージョンにはほとんど現れません。

見る指標の順番と時期

評価は、早く貯まる指標から順に、それぞれ別の問いに答えさせます。

時期見る指標答えさせる問い
配信開始〜2週表示回数、視聴率、プレースメント想定した面と相手に配信されているか
2〜4週視聴率、再生の維持、素材別の差冒頭5秒で対象者を呼び止められているか
1〜3か月指名検索数、直接流入、指名語の検索広告の表示回数名前を覚えて検索する人が増えたか
3か月以降指名検索経由・直接流入経由の商談数増えた接触が商談につながっているか

序盤の視聴率やスキップの状況は、配信が機能しているかの確認には使えますが、続けるかどうかの判断には使いません。視聴率が高くても、見ているのが見込み客でなければ意味がないからです。継続の判断は、指名検索と商談の段階まで待ちます。

指名検索と直接流入を「比較できる形」で見る

指名検索は、Search Consoleの社名・サービス名を含むクエリの表示回数や、指名語で出稿している検索広告の表示回数で追えます。直接流入は、アクセス解析の参照元なしのセッションで追えます。ただし、これらは展示会や記事の反響、季節要因でも動くため、単に増えたかどうかを見るだけでは判断材料になりません。

比較できる形にする方法は3つあります。1つ目は、配信開始前の数か月分を基準値として記録しておき、前後で比べる方法です。最も手軽ですが、他の施策と時期が重なると切り分けられません。2つ目は、地域を分けて配信する方法です。配信する地域としない地域を決め、両者の指名検索の伸びを比べます。対象企業が全国に分散している商材なら、社内でも説明しやすい比較になります。3つ目は、一定期間配信を止めて、指名検索や直接流入が下がるかを見る方法です。

Google広告には、ブランド効果測定や「検索数の増加」測定といったリフト測定の仕組みもあります。ただしブランド効果測定は、Googleのアカウント担当者がいないアカウントでは利用できないとされており、中小規模のBtoB企業が前提にできるものではありません。自社で比較の枠組みを持つほうが現実的です。配信後に指名検索が増えてきたら、その検索に指名検索広告を出すべきかもあわせて判断します。

ビュースルーとエンゲージビュー コンバージョンの扱い

Google広告には、広告をクリックしなかった人のコンバージョンを数える指標があります。ビュースルー コンバージョンは、広告が表示されたものの操作しなかった人が、後でサイトを訪れてコンバージョンした場合の数です。エンゲージビュー コンバージョンは、スキップ可能なインストリーム広告を10秒以上(10秒未満の広告は最後まで)視聴し、クリックせずに計測期間内にコンバージョンした場合の数で、ウェブのコンバージョンでは計測期間の初期値が3日とされています。

ビュースルーとエンゲージビューのコンバージョンはYouTube広告の間接的な貢献を示す手がかりになりますが、そのまま成果として積み上げるのは危険です。動画を見た人が同じ期間に検索広告や自然検索、メールからも接触していれば、そのコンバージョンは他の施策の成果でもあります。実務では、次のように扱います。

  • クリック経由のコンバージョンとは列を分けて表示し、合算した数字で報告しない
  • 計測期間を長く取りすぎない。期間を延ばすほど数は増えるが、広告の影響とは言いにくくなる
  • コンバージョンしたリードをCRMで確認し、商談になったかまで見る。数が付いても商談がなければ評価を上げない

検索広告とYouTube広告が同じ商談をそれぞれ自分の成果として数え始めたら、アトリビューションの設計を見直し、どの接点をどう評価するかを社内で決め直します。

たとえば配信3か月目の月次報告の前に、マーケティング担当がエンゲージビュー コンバージョンで獲得したリードをCRMで抽出し、商談になった件数を数えます。商談がゼロなら、管理画面の数字が伸びていても評価を上げず、指名検索と直接流入の推移とあわせて報告します。

止める判断の基準を先に決めておく

評価期間を決めずに始めると、成果が出る前に止まるか、成果が出ないまま惰性で続くかのどちらかになります。配信前に、「3か月時点で指名検索と直接流入に配信前との差が見えなければ、冒頭5秒の素材を作り直す。作り直して次の3か月も動かなければ停止する」といった基準を決めておきます。止めると決めた予算は、検索広告や、受け皿となるコンテンツの制作に戻します。

YouTube広告の評価指標を、既存の広告レポートやCRMのどこに組み込むかで迷っている場合は、計測の現状をうかがったうえでの設計相談をご利用ください。

最初の3か月の進め方

最初は1キャンペーン・少数の素材・検索語句のカスタムセグメントに絞り、比較の基準を先に取ってから配信します。広げるのは指名検索に変化が見えてからです。

  1. 配信前の基準値を記録する:直近数か月の指名検索、直接流入、指名語の検索広告の表示回数、それらを経由した商談数を控えます。
  2. カスタムセグメントを作る:検索広告の検索語句レポートから、情報収集段階の語や入札していない課題語を拾い、検索語句として登録します。
  3. 除外を先に設定する:既存顧客と獲得済みリードの除外、広告枠タイプ、除外コンテンツ、動画パートナーの扱いを決めます。
  4. 素材は2本から始める:冒頭5秒の言葉だけを変えた2本を用意し、どちらが見続けられるかを比べます。
  5. 1か月目は配信の確認に使う:プレースメントを見て無関係な面を除外し、視聴率で冒頭を見直します。
  6. 2〜3か月目で指名検索を見る:基準値と比べ、事前に決めた基準で継続・作り直し・停止を判断します。

予算は、検索広告から回す場合でも一部に留め、判断に必要な期間続けられる額にします。検索広告から何割を回すかはBtoB広告の予算配分の型に当てはめて決め、ディスプレイ広告も動かしているなら、ディスプレイ広告の効果と同じ物差しで認知施策どうしを比べます。

まとめ

BtoBのYouTube広告は、探す前の見込み客に先に覚えてもらうための投資であり、向く商材と測る仕組みがある会社だけが使うべきチャネルです。

使うかどうかは、対象企業の数、課題の自覚の度合い、受注単価、受け皿の有無で決めます。対象が限られる専門商材や、検索広告の需要をまだ取り切っていない段階では、見送るほうが合理的です。

使うと決めたら、ターゲティングはGoogleで検索した語句を使うカスタムセグメントを軸にし、既存顧客や獲得済みリードの除外と、配信面の除外を先に固めます。属性での絞り込みは最小限にとどめます。動画素材は、スキップされる前提で最初の5秒に「誰の、どの課題か」を置き、30秒までに気づきを1つ渡し、最後に社名と軽い次の行動を残します。

評価は直接コンバージョンではなく、指名検索と直接流入の変化、その先の商談で行います。配信前の基準値を取り、前後比較や地域分けで比べられる形にしておくこと、ビュースルーやエンゲージビューの数字はCRMの商談と突き合わせて扱うこと、止める基準を先に決めておくこと。この3つが揃っていれば、YouTube広告は「成果が出ているのか分からない広告」ではなく、判断できる投資になります。

無料相談

自社の商材でYouTube広告を使うべきか、測り方から一緒に決めます

「検索広告の次にYouTubeへ広げるべきか」「どの検索語句をカスタムセグメントに回すか」「指名検索の変化をどう社内に説明するか」といった判断は、商材の市場規模と現在の計測環境を見ないと決まりません。Ampelは外部CMOとして、チャネルの判断から配信設計、CRMでの商談までの計測を実務で伴走します。現在の広告運用の状況をうかがったうえで、始めるべきかどうかを含めて整理してお返しします。

よくある質問

BtoBでYouTube広告は効果がありますか
商材によります。業種を問わず多くの企業が抱える業務課題を扱い、1件の受注で広告費を回収できる商材であれば、探す前の見込み客に名前を覚えてもらう手段として機能します。一方、対象企業が国内で数百社に限られる専門商材では、対象者だけに届ける手段がないため効果は出にくくなります。効果は直接のコンバージョンではなく、指名検索や直接流入、その先の商談で判断してください。
YouTube広告で法人の担当者だけに配信できますか
役職や勤務先を指定して法人の担当者だけに絞る機能はありません。実務で最も有効なのは、カスタムセグメントで「Googleでこれらのいずれかのキーワードを検索したユーザー」を指定し、対象部門の担当者が調べる業務用語や課題の言葉を登録する方法です。これに既存顧客の除外と配信面の除外を組み合わせ、年齢や興味/関心などの推定属性での絞り込みは最小限にします。
YouTube広告の費用はどのように発生しますか
フォーマットによって異なります。スキップ可能なインストリーム広告は視聴単価(CPV)で、30秒視聴(30秒未満の広告は最後まで)するか広告を操作した場合に費用が発生し、5秒以内にスキップされた場合はかかりません。6秒以内のバンパー広告はインプレッション単価で課金されます。予算は、指名検索の変化を判断できる3か月程度は続けられる額で組むのが現実的です。
BtoBの動画広告は何秒がよいですか
長さそのものより、最初の5秒で誰のどの課題の話かを言い切れているかで、見続ける人の数が決まります。スキップ可能なインストリーム広告であれば、30秒前後で課題の構造と解き方を1つ示し、最後に社名と次の行動を置く構成が組みやすくなります。社名を反復して覚えてもらう目的なら、6秒以内のバンパー広告を補助的に使います。
YouTube広告でコンバージョンが付かない場合は止めるべきですか
直接のコンバージョンだけで止める判断はおすすめしません。探す前の段階の人は、動画を見てもその場では行動せず、後日社名で検索するか直接サイトを訪れる傾向があります。配信前の指名検索と直接流入を基準値として記録し、3か月程度で変化を比べてください。そこでも変化がなく、冒頭の素材を作り直しても動かない場合は、止めて予算を検索広告や受け皿のコンテンツに戻します。

BtoBマーケティングの戦略設計から施策実行、運用定着までを一気通貫で支援します。