サイトに料金を載せるかどうかは、BtoBで必ず一度は議論になります。載せれば安く見られる、競合に知られる、案件ごとに違うから書けない。載せない理由はいくらでも出てきます。
しかし判断すべきは載せたいかどうかではありません。載せなかった場合に、検討している相手の社内で何が起きるかです。BtoBの購買では、担当者が上長や関連部署に説明する必要があり、そのとき価格が分からなければ検討そのものが始まりません。非公開には目に見えないコストがあります。
料金を載せるかで社内の意見が割れているなら、判断材料になるのは自社の事情よりも、価格が見えないまま検討している相手の担当者が上長にどう説明するかです。案件ごとに金額が変わる商材でもレンジや算出の根拠という出し方があるので、全面公開か非公開かの二択で考える必要はありません。
目次
価格を出すか出さないかの判断軸
定額や計算式がある商材は公開し、案件ごとに設計が変わる商材はレンジを出し、大型で交渉前提の商材だけは非公開でもかまいません。商材の性質と、検討プロセスのどこで価格が問われるかで決めます。
すべての商材が価格を公開すべきというわけではありません。ただし「なんとなく出したくない」で決めているなら、一度判断軸に当てて確認してください。たとえば営業責任者が失注理由を見返して「価格が分からず比較から外した」という回答が続いていたら、非公開の判断を見直す時期です。
| 商材の性質 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 定額・プランが決まっている | 公開する | 比較検討の土俵に乗るために必要 |
| 利用量で変動するが計算式がある | 公開する | 算出ロジックと目安を出せば足りる |
| 案件ごとに設計が変わる | レンジを出す | 帯だけでも社内で話せる状態になる |
| 大型で交渉前提 | 非公開でもよい | そもそも問い合わせ前提の商材 |
迷いやすいのは3行目です。コンサルティング、制作、運用代行など、要件によって金額が大きく変わる商材が該当します。「案件ごとに違うので出せない」と判断されがちですが、レンジは出せます。
4行目のように非公開が合理的なケースもあります。ただしその場合でも、問い合わせ後にどのタイミングで金額が示されるかをページ上で伝えておくと、問い合わせのハードルが下がります。
近年は検索結果に加えて生成AIの回答経由で情報が参照される場面も増えています。料金という具体的な問いにAIが答えるとき、価格が書かれていないページからは答えを引用しようがありません。生成AIの回答に自社が出てこないと気づいたら、LLMO対策として料金のような具体的な情報のページから整えます。
値付けの根拠を社内で説明できない段階なら、ページの見せ方より先に価格設定を決め直してください。
非公開にすると実際に何が起きるか
問い合わせが増えるのではなく、比較検討の段階で外されます。
価格を非公開にすると「まず問い合わせてもらえる」と考えられがちですが、実際には逆のことが起きます。
検討者は複数社を比較しています。その段階で価格が分からない会社は、比較表に載せられません。上長に「A社は月30万、B社は月50万、C社は不明」と報告するとき、C社は検討から外れます。問い合わせて聞けばよいのですが、まだ検討の初期段階でそこまでの手間はかけられません。
価格の非公開は、問い合わせの質も下げます。価格が分からない状態で問い合わせてくる相手には、予算感が自社と合わない層が一定含まれます。商談で金額を提示した瞬間に検討が終わるケースが増え、営業の工数が消費されます。
価格の非公開は、問い合わせを増やす施策ではありません。比較検討から外れるリスクと、予算の合わない商談が増えるコストを引き受ける選択です。
価格が分からない会社が比較から外れるのは、BtoBの購買が複数人で進むためです。担当者が一人で決められるなら問い合わせて聞けばよいのですが、社内で説明する必要がある以上、その場で示せる材料が要ります。料金を公開したあとは、問い合わせ件数だけでなく商談化率が変わったかを3か月単位で比べてください。
案件ごとに金額が変わる商材の出し方
プラン表が作れなくても、レンジ・構成例・算出ロジックのいずれかは出せます。
コンサルティングや制作、運用代行のように要件で金額が変わる商材では、SaaSのようなプラン表が作れません。それでも次の3つのうちどれかは提示できます。
最も実用的なのはAとBの併記です。レンジで幅を示したうえで、代表的な3パターンの構成と概算を並べる。これだけで、読者は自分がどのあたりに該当するかを判断できます。
レンジの幅が広いことを気にする必要はありません。「30万円から80万円」でも、予算が月10万円の企業は問い合わせを見送り、月100万円の企業は検討対象に入れます。この振り分けが起きること自体に価値があります。
Cの算出ロジックは、金額を書きたくない場合の代替になります。「稼働日数と対象範囲で決まります」と書いたうえで、何日程度の稼働が標準かを示せば、相手は概算できます。標準の稼働日数を決めるときは、マーケティングコンサルの費用相場や広告運用代行の費用相場と並べ、相手が比べる金額の幅から外れていないかを確かめます。
HubSpotで見積書を出している場合は、HubSpotで見積書を作るときの商品ライブラリの登録単位を料金ページの変動要因と同じ数え方にそろえておきます。
料金ページの構成
料金ページには、金額、含まれるもの・含まれないもの、金額が変わる要因、初期費用と最低契約期間、見積が確定するまでの流れ、FAQの6つを1ページに収めます。
料金ページに金額だけを載せると、かえって質問が増えます。読者が知りたいのは金額そのものより「この金額で何をしてもらえるのか」だからです。営業が商談のたびに「この金額に何が含まれますか」と聞かれているなら、その答えがページに書かれていません。
2の「含まれないもの」を明記すると、かえって信頼されます。範囲を曖昧にしておくほうが受注しやすいと考えられがちですが、契約後の認識違いを生み、結果として関係が悪化します。
4の初期費用と最低契約期間は必ず書いてください。商談が進んだ後にこれらが出てくると、それまでの検討が無駄になったと受け取られます。
料金ページは相手の社内で共有されます。URLを転送されることを前提に、1ページで完結する構造にしてください。複数ページに分かれていると転送しにくくなります。
料金ページから問い合わせへ進む流れも、ランディングページと同じく、担当者が稟議の資料にそのまま貼れる情報の順に並べます。
新設したページは、公開しただけでは検索結果に出ないことがあります。新しく作ったページのインデックス確認の手順を、公開後2週間ほど(実務上の目安)で実施してください。
料金表を読んだ人が条件を確かめたい場合に備えて、ページ下部にチャットを置く方法もあります。返信できる人がいるかを確かめたうえで、料金ページに置くチャットの設定を検討します。
よくある失敗
よくある失敗は、問い合わせ導線だけのページ、4つ以上のプラン、最安プランの強調、金額の画像化の4つです。価格を出すと決めても、出し方を誤ると比較の材料になりません。
「お問い合わせください」だけのページ
料金ページを作ったのに、中身が問い合わせ導線だけというケースです。これは料金ページを設置していないのと同じで、検索して訪れた読者は何も得られずに離脱します。レンジも構成例も出せないのであれば、ページを作らないほうがまだ誠実です。
プランを4つ以上並べる
選択肢が増えるほど判断が難しくなります。実務上は3つまでに絞ります。4つ以上ある場合は、代表的な3つを前面に出し、残りは詳細ページに送ります。
最も安いプランを目立たせる
安さで引くと、予算の合わない層が集まります。BtoBでは中位のプランを推奨として示し、そこを基準に判断してもらう形が機能します。
金額を画像にする
価格を画像で作ると、検索エンジンや生成AIにテキストとして読み取られる保証がありません。料金という具体的な問いに答える材料として使われにくくなります。必ずテキストで記述してください。
見積提示への接続
商談で出す見積は、料金ページに書いたレンジと変動要因の範囲に収めます。超える場合は、ページに書いた変動要因で説明できるようにしておきます。
料金ページを見た相手は、その金額を前提に社内で話を進めています。商談で提示する見積がそこから大きく外れると、それまでの検討が崩れます。営業責任者が月に一度、ページのレンジと直近の見積金額を並べ、外れている案件がないかを確認してください。
レンジの上限を超える提案をする場合は、なぜ超えるのかをその場で説明できる状態にしておきます。「対象範囲が標準より広いため」といった、ページに書いた変動要因と対応する説明ができれば、納得は得られます。
ページに書いた金額から見積が大きく上振れするパターンが続く場合、レンジの設定が実態と合っていません。ページ側を実態に寄せてください。安く見せて問い合わせを増やしても、商談で失注が増えるだけです。
問い合わせの段階でどこまで情報を取るかは、フォームの設計と関係します。予算感を先に聞くべきかは商材によりますが、料金を公開している場合は聞かなくても大きくは外れません。誰に向けた価格設定かが曖昧な場合は、先にICPの設定方法を整理してください。料金ページ経由の問い合わせをどの時点で営業に渡すかは、MQLとSQLの定義に合わせて決めておきます。
自社の料金をどう見せるべきか判断に迷う場合は、商材の性質と検討プロセスを前提にご相談いただけます。
比較メディア経由で社名検索してきた相手が最初に探すのも価格です。比較メディア経由で来た人の受け皿の作り方で、掲載前に用意しておくページを確認してください。
ページの最後には、見積依頼のボタンと社内に転送しやすい資料を並べます。料金ページに置くCTAは、今すぐ相談したい人と上長に回したい人の両方が次に進める形にします。
値引き要請と価格改定への備え
価格を公開すると、そこを起点に交渉が始まります。応じ方を先に決めておきます。
料金を公開する判断をすると、必ず出てくるのが値引きの要請です。公開した金額が交渉の出発点になるため、非公開のときとは違う対応が必要になります。
値引きの基準を先に決める
その場で判断すると、担当者ごとに条件が変わります。すると顧客同士で情報が共有されたときに問題になります。基準を決めておいてください。
- 値引きしない:最も運用が単純で、価格の信頼性も保たれます。その代わり失注する案件は出ます
- 条件付きで応じる:年間契約、複数拠点での導入、事例掲載への協力など、こちらが得るものと引き換えにします
- 提供範囲を減らして金額を下げる:値引きではなく、内容を調整する形です。価格の根拠が保たれます
提供範囲を減らして金額を下げる方法が最も健全です。単純な値引きは、提示していた金額が根拠のないものだったと示すことになります。範囲を減らして金額を下げるのであれば、価格と提供内容の対応関係は維持されます。
値引きの記録を残す
誰にいくらで提供したかを記録してください。記録がないと、次の更新時に元の金額に戻せません。また、値引き案件が増えているのであれば、公開している価格が市場と合っていない可能性を示しています。
四半期に1回、値引き率の分布を確認します。実務上の目安として、半数以上の案件で値引きが発生しているなら、レンジの設定を見直す時期です。
価格改定をどう伝えるか
価格を公開していると、改定したときに気づかれます。非公開であれば新規の見積から静かに変えられますが、公開している以上はそうはいきません。
既存顧客への影響を先に整理してください。既存契約は据え置きなのか、更新時から新価格なのか。この方針を決めずに公開価格だけ変えると、既存顧客から問い合わせが来たときに答えられません。
改定の理由も用意します。提供範囲の拡大、人件費の上昇、市場水準との調整。理由なく上げると、それまでの価格が高すぎたか、今回が便乗かのどちらかに見えます。
競合に見られることをどう考えるか
価格を公開したくない理由として、競合に知られることを挙げる企業があります。しかし競合は、問い合わせや共通の顧客との商談を通じて価格を把握できます。非公開にしても知られないわけではありません。
価格を公開すると、価格帯が合わない見込み客が最初に離れるという利点があります。予算が1桁違う相手との商談に営業の時間を使わずに済みます。予算の合わない商談が月に何件も発生しているなら、この振り分けの効果は競合に知られる不利益より大きくなります。
ただし、案件ごとに大きく金額が変わる商材で、しかも競合との差別化が価格でしかない場合は、非公開のほうが合理的なこともあります。自社がどちらかは、失注理由を見れば判断できます。
値引き要請の背景には、比較されている他社の価格帯が自社から見えていないという事情が隠れていることも少なくありません。値引きを求められる案件が続いたら、失注データから比較相手を特定し、相手の価格帯を確かめてから応じるかを決めます。
無料相談や初回無料の位置づけ
無料相談や初回無料は、料金を見て判断材料が足りずに離れる相手を拾うための接点です。判断材料を渡すところまでを無料、実行からを有料と線を引きます。
料金を公開すると、金額を見た時点で問い合わせを見送る層が出ます。これは本来望ましい振り分けですが、予算はあるが判断材料が足りないだけの相手まで逃す可能性があります。
予算はあるが判断材料が足りない相手を拾う手段が、金額の発生しない接点です。無料相談、初回のみ無料の診断、簡易的な現状分析などの形があります。
無料の範囲を明確にする
無料で何をどこまでやるのかを、料金ページ上で明示してください。曖昧にしておくと、期待値がずれて後の商談で摩擦が生じます。「60分の打ち合わせで、現状の課題整理と進め方の提案まで」といった粒度で書きます。
無料の範囲を広げすぎると、そこで満足されて有料に進みません。判断材料を渡すところまでに留め、実行は有料という線引きを保ちます。
無料相談からの転換率を測る
無料の接点を設けたら、そこから有料契約に至る割合を記録し、四半期ごとに確認してください。この数字が極端に低い場合、無料相談が本来の見込み客以外を集めている可能性があります。
対処としては、無料相談の申込フォームで対象条件を明示する方法があります。「従業員50名以上の企業様を対象としております」と書くだけで、対象外からの申込は減ります。
まとめ
料金ページで決めることは、公開の範囲、金額の出し方、ページの構成、見積との整合の4つです。まず自社の商材を判断軸の表に当て、公開・レンジ・非公開のどれにするかを決めてください。
- 非公開は問い合わせを増やす施策ではない。比較検討から外れるリスクを引き受ける選択
- 案件ごとに変わる商材でも、レンジ・構成例・算出ロジックのいずれかは出せる
- 最も実用的なのはレンジと構成例3つの併記
- レンジの幅が広くてよい。予算感による振り分けが起きること自体に価値がある
- 金額だけでなく、含まれるもの・含まれないもの・変動要因・初期費用・最低契約期間まで書く
- プランは3つまで。中位を推奨として示す
- 金額は画像にせずテキストで書く。画像では検索エンジンや生成AIに読み取られる保証がない
- ページのレンジと実際の見積が整合しているかを定期的に確認する
価格を出すかどうかは、一度決めたら終わりではありません。問い合わせの質と商談の失注理由を見ながら、レンジや構成例を調整していく対象です。
料金設計のご相談
出すか出さないかの判断からご相談いただけます
「案件ごとに金額が変わるので出せない」「問い合わせは来るが予算が合わない」といった状態を、商材の性質と検討プロセスから具体化します。現在のページを拝見したうえでご提案します。
よくある質問
- 案件ごとに金額が変わるので料金を出せません。
- レンジで構いません。「月額30万円から80万円」のように幅を示し、何が幅を決めるのかを1行添えてください。加えて代表的な依頼パターンを3つ並べ、それぞれの概算を書くと、読者は自分がどこに該当するかを判断できます。幅が広いこと自体は問題になりません。
- 価格を出すと安い会社に流れませんか。
- 価格だけで選ばれる商材であれば流れますが、その場合は非公開にしても商談の段階で同じことが起きます。むしろ非公開だと、比較検討の初期段階で候補から外されます。価格に加えて、含まれる範囲と成果の根拠を示すことで、金額だけの比較を避けられます。
- プランはいくつまで並べるべきですか。
- 3つまでです。4つ以上あると判断が難しくなり、決めきれずに離脱します。実際に4種類以上ある場合は、代表的な3つを前面に出し、残りは詳細ページに送ってください。中位のプランを推奨として示すと、判断の基準ができます。
- 初期費用や最低契約期間も書くべきですか。
- 書いてください。商談が進んだ後にこれらが出てくると、それまでの検討が無駄になったと受け取られ、信頼を損ないます。同じ理由で「含まれないもの」も明記することをおすすめします。範囲を曖昧にしたほうが受注しやすいと考えられがちですが、契約後の認識違いにつながります。
- 料金表を画像で作ってもよいですか。
- テキストで書いてください。画像にすると、検索エンジンや生成AIに内容がテキストとして読み取られる保証がありません。料金という具体的な問いに答える材料として使われるには、価格がテキストで書かれている必要があります。