HubSpotを導入してマーケティングEメールを送り始めると、最初の数回は問題なく配信できます。つまずくのは運用が1〜2か月続いたころです。配信停止した人から「全部止めたつもりなのにセミナー案内が届く」と言われる。営業が商談中の相手に一斉メールが届いて気まずくなる。マーケティングコンタクトの数が想定より増えて、契約数の上限が上がってしまう。どれもメール本文の出来ではなく、送る前に決めておくべきルールが決まっていなかったことが原因です。
HubSpotのマーケティングEメールは、エディターの操作を覚えるより先に「誰を送信対象にできる状態にするか」と「受信者が何を止められるか」の2つを設定として固めておくことが、配信事故と課金のずれを防ぐ一番確実な方法です。この2つが決まっていれば、テンプレートや配信対象の組み方は自然に決まります。
Marketing Hub(Starter以上)で配信を任されたとき、配信事故や課金のずれを防げるかは、エディターの操作よりも、誰を送信対象にできる状態にするかと、受信者が何を止められるかの設定にかかっています。テンプレートや配信対象の組み方は、その2つが固まってから考えても遅くありません。
目次
HubSpotのマーケティングEメールでできること|営業の1対1メールとの違い
マーケティングEメールは、購読タイプとマーケティングコンタクトの管理下で多数の相手に送るための機能です。営業が1人の相手に送る1対1メールやシーケンスとは、送信の仕組みも課金の扱いも別物です。
HubSpotでは、画面左のナビゲーションから「マーケティング」>「Eメール」に進み、「Eメールを作成」から新しいメールを作ります。作成時に選べる送り方は、特定のコンタクトやセグメントにその場で送る「通常送信」、ワークフローから条件に応じて送る「自動送信」(Marketing Hub Professional以上)、ブログ更新を購読者に届ける「ブログ/RSS」の3種類です。メルマガやセミナー案内を送るなら、まず通常送信を選びます。
マーケティングEメールと、CRMのレコード画面から営業が送る1対1のメールは、HubSpotの中で明確に区別されています。運用で違いが出るのは次の3点です。
- マーケティングEメールは、有料のMarketing Hubではマーケティングコンタクトに設定された相手にしか送れません。1対1の営業メールにはこの制限がかかりません。
- マーケティングEメールは、毎月の送信上限にカウントされます。CRMから送る1対1メールとテスト送信はカウントされません。
- マーケティングEメールには必ず購読タイプを1つ紐づけ、配信停止のリンクを入れます。受信者はその単位で受け取りを止められます。
マーケティングEメールは「多くの人に、止める自由を渡したうえで送る」ための道具です。1人の見込み客との会話を進めるための道具ではありません。この線引きを最初に社内で共有しておくと、営業の1対1メールやシーケンスとの使い分けで迷わなくなります。メール以外の機能もまだ使い始めていないなら、HubSpotの運用全体の順番の中でメール配信をどの時期に始めるかを決めておきます。
送る前に決める3つのルール|購読タイプ・配信停止・マーケティングコンタクト
最初の配信の前に、購読タイプの分け方、配信停止した人の扱い、マーケティングコンタクトにする基準の3つを決めます。どれも後から変えると、過去の配信停止や請求に影響が残ります。
購読タイプは「受信者が止めたい単位」で作る
購読タイプは、受信者が受け取るかどうかを選べるメールの分類です。日本語の画面では「サブスクリプションタイプ」や「配信カテゴリー」と表記されており、「設定」>「マーケティング」>「Eメール」の「サブスクリプションタイプ」タブで作成・編集します。マーケティングEメールは1通ごとに購読タイプを1つ選んで送り、受信者は配信設定ページで種類ごとに受け取りを止めたり、すべての配信を止めたりできます。
分け方の基準は、社内の部署や施策名ではなく、受信者が「これは要らないが、あれは欲しい」と判断する単位です。BtoBで最初に作るなら、次の3〜4種類で足ります。
- メールマガジン(定期的なノウハウ配信)
- セミナー・イベントのご案内
- 製品・サービスのお知らせ(機能追加、料金改定など)
- 既存顧客向けのご連絡(顧客がいる場合)
細かく分けすぎると、配信設定ページが長くなって受信者が選べず、結局「すべて停止」を押されます。反対に1種類しかないと、セミナー案内を止めたい人がメルマガまで止めることになります。使わなくなった購読タイプは削除できず、アーカイブして配信設定ページから外す扱いになるため、作る前に名前と説明文まで決めておくのが安全です。
配信停止の扱いと、既定の「指定なし」
購読タイプを1つ解除した人は、その種類のメールだけが届かなくなります。すべての配信を停止した人には、どの購読タイプのマーケティングEメールも送れません。HubSpotはこれを送信時に自動で除外するため、担当者が手作業でリストから消す必要はありません。
見落とされやすいのは、明示的に購読していないコンタクトの扱いです。購読状況が「指定なし」のコンタクトは、データプライバシー設定を有効にしていない場合、配信停止をしていない限りマーケティングEメールを受け取れます。データプライバシー設定を有効にすると、この「指定なし」のコンタクトには送れなくなります。どちらの状態で運用しているかを担当者が把握していないと、「送れるはずの相手に届かない」「送るべきでない相手に届いた」の両方が起こります。
配信停止した人をCSVで書き出して別のツールから送ることは、受信者が明示した意思を無視する行為です。HubSpotの外に出したリストでも、配信停止の状態は必ず引き継いでください。
マーケティングコンタクトの設定と課金への影響
マーケティングコンタクトは、Marketing Hub Starter・Professional・Enterpriseで、マーケティングEメールや広告などのマーケティングツールの対象にするコンタクトです。この数が契約上のコンタクト契約数にカウントされます。マーケティング対象外のコンタクトはCRMに何件あっても契約数に数えられませんが、マーケティングEメールは送れません。
課金について、HubSpotの公式ヘルプに書かれている仕様は次の4つです。
- マーケティングコンタクトが現在の契約数を超えると、アカウントは自動で次の段階の契約数に上がり、次の契約更新まで上がったまま請求されます。
- 契約数を下げられるのは契約更新のタイミングだけです。
- コンタクトをマーケティング対象外に変えても、すぐには外れません。次回の変更反映日(更新日)から対象外になり、それまでは「次回の更新までのマーケティングコンタクト」プロパティーが「はい」になります。
- マーケティングコンタクトを削除しても、上がった契約数は自動では下がりません。
契約数は上がりやすく下がりにくいため、増えてから減らすのではなく、入口で増やしすぎない設定にしておきます。新しく作られるコンタクトの既定のステータスは、作成経路によって違います。
| 作成経路 | 既定のステータス | 変更できるか |
|---|---|---|
| HubSpotフォーム | マーケティング対象 | フォームごとの設定で変更できる |
| HubSpot以外のフォーム(取り込み) | マーケティング対象 | 設定画面で変更できる |
| 単一オブジェクトのインポート | マーケティング対象外 | インポート時に選べる |
| 連携アプリ・API | マーケティング対象外 | 各連携の設定で変更できる場合がある |
| Eメール拡張機能・BCCによる記録・ミーティングリンクなど | マーケティング対象外 | 変更できない |
実務で決めておくのは、「どの経路で入った人を、どの時点でマーケティングコンタクトにするか」です。資料請求やセミナー申込のフォーム経由は対象のままでよいとして、展示会の名刺や営業が交換した名刺はインポート時に対象外で入れ、配信の同意が取れている分だけを対象に切り替える、といった基準を文書にしておきます。Professional以上なら、ワークフローの「マーケティングコンタクトのステータスを設定」アクションで、配信停止した人やバウンスした人を自動で対象外に戻す運用も組めます。
送信上限も同じ契約数に連動する
マーケティングEメールには毎月の送信上限があり、上限の数は契約しているプランとマーケティングコンタクトの契約数によって決まります。具体的な数はHubSpotの製品・サービスカタログで確認してください。数え方は通数ではなく受信者数で、1通を100人に送れば100送信です。上限は暦月の初めにリセットされます。ワークフローからの自動送信やフォーム送信後のフォローアップメールも同じ枠を使うため、一斉配信だけを見て計画すると月末に枠が足りなくなることがあります。年間の配信計画で枠が足りなくなりそうなら、HubSpotの料金プランを見直す前に、自動送信の通数を数え直します。
マーケティングコンタクトは「送る可能性がある人」ではなく「今月送る人」に絞ります。契約数は上がりやすく下がりにくい仕組みなので、入口の既定値を決めることが、課金額を抑えるいちばん確実な方法です。
購読タイプを作る前に、送信ドメインの認証が終わっているかを確認してください。認証がまだなら、HubSpotの初期設定の手順で送信ドメインを接続し、DNSの設定を社内の管理者に依頼します。
フォームの設定でマーケティングコンタクトにする項目をオフにしていると、フォーム送信後の自動返信が届かない原因になるため、フォームごとの設定もあわせて確認します。
テンプレートとドラッグ&ドロップ編集の使い分け
テンプレートは「毎回変えない部分」を固定するために使い、ドラッグ&ドロップ編集は本文の中身を差し替えるためだけに使います。毎回レイアウトから組むと、確認の手間と表示崩れが増えます。
社内の型は2〜3種類に絞る
HubSpotのEメール作成画面では、用途別のドラッグ&ドロップテンプレートを選び、画像・テキスト・ボタンなどのモジュールを追加しながら編集します。ブランドキットを設定していれば、ロゴや色をテンプレートにまとめて適用できます。便利な分、担当者ごとにレイアウトを変えられてしまうので、社内で使う型を先に決めておきます。
BtoBで必要になる型は、多くの場合次の3つです。
- テキスト中心の型:メルマガや個人名で送る案内。画像は最小限にし、読み物として成立させる
- 告知の型:セミナーや資料公開の案内。見出し、日時や対象、申込ボタンの位置を固定する
- お知らせの型:機能追加や規約変更などの事務的な連絡。装飾をせず、要点を先に書く
型を決めたら、基準になるメールを1本ずつ作り、それを元に毎回の配信を作る運用にします。例えば異動してきた担当者が初めてセミナー案内を作るときは、告知の型の基準メールを複製し、日時・対象・申込リンクだけを差し替えます。こうすると、フッターの会社所在地や配信停止リンク、差出人の設定を毎回確認する必要がなくなります。
編集で変えてよい範囲を決めておく
型を使っても、毎回の編集でボタンの色や文字サイズが少しずつ変わっていくことがあります。「本文テキスト、画像、ボタンの文言とリンク先は毎回変えてよい。レイアウト、フォント、色、フッターは変えない」のように、変えてよい範囲を担当者間で決めておくと、配信ごとの差が内容の差だけになり、後から成果を比べやすくなります。
HTMLで作り込んだテンプレートを最初から作らない
デザイン性の高いHTMLテンプレートを外注で作る会社もありますが、最初の半年は勧めません。BtoBのメールは画像を多用した凝ったデザインより、送り手が見えるテキスト中心の構成のほうが読まれることが多く、HTMLで作り込んだテンプレートはマーケ担当者が自分で直せなくなりがちです。ドラッグ&ドロップで作れる範囲で運用し、どうしても表現できないものが具体的に出てきてから検討しても遅くありません。
配信対象の指定|「送信先」と「送信しない」の組み方
配信対象は「送信先」に入れるセグメントより、「送信しない」に常設する除外セグメントで品質が決まります。送信時にHubSpotが自動で外す人と、自社で外すべき人を分けて考えます。
HubSpotのマーケティングEメールでは、送信設定の「送信先」ドロップダウンにコンタクトやセグメント(以前のリスト)を指定し、「送信しない」ドロップダウンに除外したいセグメントを指定します。送信先に含まれ、かつ送信しないに含まれない人が受信者になります。ここに、配信停止やバウンス、マーケティング対象外といったHubSpot側の除外が重なり、実際に届く人数が決まります。
送信先は条件で更新されるセグメントにする
送信先には、配信のたびに手でコンタクトを集めたセグメントではなく、条件で自動更新されるセグメントを使います。手作業で作ったものは、作った日から古くなり始めるためです。「メルマガ配信対象」のように用途で名前を付けたセグメントを1つ用意し、毎回それを指定するだけにしておくと、担当者が変わっても同じ相手に届きます。業種や検討段階で送り分けたくなったら、メール配信のセグメントの分け方に沿って、条件を2つまでに絞ってセグメントを追加します。
「送信しない」に常設する除外セグメント
配信事故の多くは、送信先の指定ではなく除外の漏れで起こります。毎回の配信で必ず「送信しない」に入れる除外セグメントを、次のように決めておきます。
- 営業が商談中の相手:取引が進行中のコンタクト。一斉メールが商談の文脈を壊すのを防ぐ
- 競合他社・取引先で配信対象にしない相手:ドメインや会社名で条件を作る
- 自社の社員・テスト用アドレス:開封やクリックの数字を汚さないため
- 直近に同種のメールを受け取った人:ステップメールやワークフロー配信と重なる相手
商談中の相手を外すかどうかは、営業と合意して決めます。セミナー案内は届けてほしいという営業もいれば、すべて止めてほしいという営業もいます。どちらにしても、個々の担当者の判断に任せず、除外の条件として決めておきます。
「エンゲージメントしていないコンタクトに送信しない」の扱い
送信設定には「エンゲージメントしていないコンタクトに送信しない」というチェックボックスがあり、既定で有効になっています。HubSpotの公式ヘルプでは、これまで一度もマーケティングEメールに反応(開封またはクリック)がなく直近11通にも反応していないコンタクトと、以前は反応していたが直近16通に反応していないコンタクトが、エンゲージメントのないコンタクトとして除外されます。反応のない相手に送り続けると送信元の評価が下がるため、基本は有効のままにしておきます。
外してよいのは、契約更新の案内や規約変更の通知など、開封の有無にかかわらず届ける必要があるお知らせに限ります。その場合も、購読タイプは「お知らせ」側を使い、メルマガの配信と混ぜないようにします。取引先から「メールが届いていない」と言われたら、メールが届かない原因と到達率の確かめ方で送信ドメインの認証と迷惑メール判定を確認します。
「理由を確認」で届かない人数を点検する
送信設定の画面では、受信者の人数と、送信できないコンタクトの内訳を「理由を確認」から見られます。配信停止、バウンス、マーケティング対象外など、どの理由で何人が外れたかが分かるので、毎回の配信前に想定との差を確認します。前回より急に受信者が減っていたら、セグメントの条件が壊れているか、マーケティングコンタクトの設定が変わっている可能性があります。
送信前のチェック|プレビュー・テスト送信・確認して送信
送信前の確認は、HubSpotが自動で検査する項目と、人が見なければ分からない項目を分けて行います。自動の検査を通っても、宛名の差し込みやリンク先の誤りは残ります。
メールを送る直前に「確認して送信」をクリックすると、HubSpotが必須項目、警告、提案の3段階で設定を検査します。必須項目が埋まっていないと送信できないので、件名や送信者、購読タイプ、フッターの会社所在地といった基本の漏れはここで止まります。一方で、次の項目は人が見ないと気づけません。
- 差し込みの表示:「プレビューおよびテスト」の「コンタクトとしてプレビュー」で、会社名や氏名が空のコンタクトを選んで表示を確かめる
- スマートフォンでの見え方:テスト送信を自分の端末で受け取り、ボタンが押しやすいか、画像が大きすぎないかを見る
- リンク先:すべてのリンクを実際にクリックし、フォームやページが公開状態か、UTMの付け方が社内ルールどおりかを確かめる
- 購読タイプ:メールの内容と選んだ購読タイプが一致しているか。セミナー案内をメルマガの種類で送らない
- 送信時刻とタイムゾーン:予約送信の日時と、「アカウント既定値」「受信者のタイムゾーン」などの選択
- 受信者数:「理由を確認」の内訳が前回と比べて不自然でないか
「テストEメールを送信」で送ったテストは、毎月の送信上限に数えられません。確認者を1人決め、担当者以外の目で最低1回はテストを見る運用にすると、単純な誤りの大半は防げます。確認者が見るのは上のリストだけ、と範囲を決めておくと、確認が負担になって形骸化することも避けられます。
A/Bテストの条件と、やらないほうがよい場合
HubSpotのマーケティングEメールのA/Bテストは、Professional以上で使え、公式には1,000件以上のコンタクトへの送信が推奨されています。母数が足りない配信では、テストより内容の改善に時間を使うほうが成果につながります。
A/Bテストは、Marketing Hub ProfessionalとEnterpriseで利用できます。Eメールエディターから2つ目のバージョンを作り、次の項目を設定します。
- テストに回す受信者の割合(残りの受信者には勝ったバージョンが送られる)
- 勝者を決める指標:開封率、クリック率、クリックスルー率から選ぶ
- テスト期間:勝者を決めるまでの時間を時間単位で指定する
- 結果が出ない場合に送るバージョン
テストできるのは件名だけではなく、本文、オファー、画像、送信者なども対象です。ただし一度に変えるのは1か所にします。件名と本文を同時に変えると、どちらの変更で開封率やクリック率が変わったのか分からなくなります。
BtoBでテストが成立しにくい理由
公式は、信頼できる結果を得るために1,000件以上のコンタクトに送ることを推奨しています。BtoBでは配信リストが数百件という会社も多く、その規模でテスト用に2割ずつ切り出すと、各バージョンは数十件です。数十件の差は偶然の範囲に収まることが多く、勝者として選ばれたバージョンが本当に良いとは言えません。
また、勝者の指標に開封率を選ぶと、後で説明するように開封の記録そのものの精度が問題になります。BtoBでテストするなら、指標はクリック率にし、テスト期間は受信者が平日に確認できる長さを取ります。朝に送って数時間で勝者を決めると、朝に反応しやすい人の結果だけで判断することになります。件名のテストを続けても開封率が動かないときは、開封率を上げる改善施策のうち、送信者名と配信時間を先に見直します。
テストをやらない判断
配信リストが1,000件に届かない、あるいは同じ種類のメールを月に1回しか送らないのであれば、A/Bテストは無理に使わなくて構いません。代わりに、同じ型のメールを数か月続け、件名の付け方や冒頭の書き方を1つずつ変えて推移を見るほうが、実務では判断材料になります。テストの結果を読めないまま「Bが勝った」と報告し続けるより、誠実で再現性のある改善になります。
送信後レポートで見る数字と、見ない数字
送信後は、開封率を主な指標にせず、クリックと配信停止、その先の行動で判断します。HubSpotのパフォーマンス画面には多くの数字が並びますが、判断に使えるものは限られます。
送信したメールは、「マーケティング」>「Eメール」からメール名を選ぶと、「パフォーマンス」タブで結果を確認できます。「受信者」タブではコンタクトごとの配信状況と反応を見られます。主な数字と、実務での扱いは次のとおりです。
| 数字 | HubSpotでの定義 | 実務での扱い |
|---|---|---|
| 開封率 | 配信できた人のうち開封した人の割合 | 単体では判断に使わない。推移の異常検知に留める |
| クリック率 | 配信できた人のうちリンクをクリックした人の割合 | 主に見る数字。メールごとの比較はこれで行う |
| クリックスルー率 | 開封した人のうちクリックした人の割合 | 分母が開封なので、開封の精度の影響を受ける |
| 配信停止 | そのメールから配信を止めた人数 | 必ず見る。急に増えたら内容か頻度か対象がずれている |
| バウンス・迷惑メール報告 | 届かなかった件数と、受信者が報告した件数 | 件数は少なくても必ず確認する。増えたら配信を止めて原因を調べる |
開封率を主な指標にしない理由
HubSpotの開封は、メール内の画像が読み込まれたときや、リンクがクリックされたときに記録されます。受信側のプライバシー保護の仕組みによっては、本人が読んでいなくても画像が自動で読み込まれ、開封として記録されることがあります。反対に、画像の表示を止めている受信者は、読んでいても開封として記録されません。開封率は上にも下にもずれるため、メール同士の良し悪しを比べる数字としては使いにくいのです。
見る場合は、同じ型のメールの開封率が急に大きく下がっていないか、という異常検知の用途に限ります。急な低下は到達の問題を疑うきっかけになります。
メールの数字で終わらせない
本当に見たいのは、クリックの先で何が起きたかです。クリックした人がフォームを送信したか、その後に商談が作られたか。HubSpotでは、クリックしたコンタクトをセグメントとして取り出し、その後の行動を追えます。月に一度は「今月のメール配信から、資料請求や問い合わせが何件あり、そのうち何件が商談になったか」を確認します。配信停止が月に数件ずつ増え始めたら、配信頻度の上限を先に決め直します。
配信の設計と数字の見方を一緒に整理したい場合は、現状の設定を確認したうえでご相談を受け付けています。
営業の1対1メール・シーケンス・ワークフローとの使い分け
一斉に知らせたいならマーケティングEメール、1人との会話を進めたいなら1対1メールかシーケンス、行動をきっかけに自動で送るならワークフローです。迷ったら「受信者が返信する前提か」で分けます。
HubSpotにはメールを送る手段が複数あり、同じ内容をどれでも送れてしまうことが混乱の原因になります。送る手段ごとに、向いている場面と向かない場面が分かれます。
| 手段 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| マーケティングEメール(通常送信) | メルマガ、セミナー案内、お知らせなど、多数に同じ内容を届ける | マーケティングコンタクトと購読タイプの管理下で送る。送信上限に数えられる |
| マーケティングEメール(自動送信) | 資料請求後のフォローなど、行動をきっかけに決まった内容を送る | ワークフローに組み込んで送る。一斉配信との重なりに注意する |
| 1対1メール(CRMから送信) | 商談中の相手や、個別に確認したいことがある相手への連絡 | 送信上限には数えられない。個人として送るため、多数への一斉送信には使わない |
| シーケンス(Sales Hub) | 営業が複数の相手に、個人名で段階的にフォローする | 返信があれば止まる前提の営業活動。マーケの育成配信の代わりにしない |
よくある誤りは、マーケティングコンタクトの数を抑えたいという理由で、営業の1対1メールやシーケンスを使って実質的な一斉配信をすることです。配信停止の仕組みを通らない大量送信は、受信者から見れば止め方の分からないメールであり、送信元の評価を下げる原因にもなります。1対1メールは1人との会話のため、マーケティングEメールは多数への告知のため、と目的で使い分けます。
資料請求のあとに自動でメールを続けたくなったら、HubSpotのワークフローで配信のきっかけを決め、ステップメールの通数と間隔を決めてから作り込みます。営業が個別に追いかける流れは、Sales Hubのシーケンスに任せます。
営業が個別に送るメールをCRMに残すには、営業のGmail・OutlookのメールをHubSpotに記録する設定で受信トレイを接続します。
HubSpotからのメール配信に向かない場合
マーケティングEメールは、配信の同意と連絡先の管理ができている会社で効果を出す機能です。前提が整っていない段階では、配信を増やすより先にデータと同意を整えるほうが結果的に早く進みます。
次のような状態なら、マーケティングEメールの本格運用はいったん保留し、先に準備を進めることを勧めます。
- 配信の同意が確認できない名刺や購入リストが中心で、送ってよい相手を説明できない
- 重複コンタクトや古いアドレスが多く、送る前にデータを整える必要がある
- 送る内容が月に1本も用意できず、配信を続けられる見込みがない
- 主な顧客が数十社で、個別の連絡のほうが関係づくりに向いている
主な顧客が数十社の場合は、無理にメルマガを始めるより、営業やカスタマーサクセスが1対1で連絡するほうが自然です。それでも後でメルマガを始めるなら、先にHubSpotのデータ整備で重複と古いコンタクトを片付けておきます。
開封やクリックの計測はほかのMAツールでも備えている機能で、製品を分けるのは営業への通知とCRMとの連携です。MAツールごとのメール計測の違いで比べる観点をまとめています。
まとめ
HubSpotのマーケティングEメールは、エディターの操作よりも、送る前のルールで成果と事故の有無が決まります。
- 購読タイプは受信者が止めたい単位で3〜4種類に絞り、名前と説明文まで決めてから作る
- マーケティングコンタクトは契約数に直結し、上がりやすく下がりにくい。作成経路ごとの既定値を先に決める
- テンプレートは2〜3種類に絞り、編集で変えてよい範囲を担当者間で合意する
- 送信先は自動更新のセグメントにし、商談中の相手や社内アドレスを「送信しない」に常設する
- 「確認して送信」の自動検査に加えて、差し込み、リンク、購読タイプ、受信者数は人が確認する
- A/Bテストは母数が足りるときだけ使い、指標はクリック率を基本にする
- 送信後は開封率ではなく、クリック、配信停止、その先の商談で判断する
最初の配信の前に半日かけてルールを決めておくと、その後の数十回の配信で迷う時間と、配信停止や課金をめぐる後始末が大きく減ります。自社の設定のどこから手を付けるべきか判断に迷う場合は、現状の設定を見たうえで優先順位を一緒に整理します。
無料相談
HubSpotのメール配信ルールを、送る前に一緒に決めます
「配信停止した人の扱いが担当者ごとに違う」「マーケティングコンタクトが想定より増えている」「商談中の相手に一斉メールが届いてしまった」。こうした問題の多くは、購読タイプ、マーケティングコンタクトの既定値、除外セグメントを決めるだけで防げます。Ampelは外部CMOとして、現在のHubSpotの設定と配信の実績を確認し、運用ルールと確認の手順を担当者の方と一緒に作ります。
よくある質問
- HubSpotの無料プランでもマーケティングEメールは送れますか
- 無料のツールでもマーケティングEメールは送れますが、毎月の送信数や使える機能は有料プランと条件が異なります。購読タイプやマーケティングコンタクトの管理を前提にした運用を組むなら、Marketing Hub Starter以上を想定して設計するほうが後から作り直さずに済みます。
- マーケティングコンタクトを減らしたのに請求が下がりません
- マーケティング対象外への変更は、次回の変更反映日から有効になります。また、契約数を下げられるのは契約更新のタイミングだけで、コンタクトを削除しても上がった契約数は自動では下がりません。減らす作業は更新日より前に済ませ、更新時に契約数を見直す流れで進めます。
- 配信停止した人に、営業から個別にメールを送ってもよいですか
- 購読タイプの配信停止は、マーケティングEメールの受け取りを止めるものです。営業が1対1で個別の用件を連絡すること自体は別の扱いですが、配信停止した人に一斉メールと同じ内容を営業の名前で送るのは避けてください。受信者の意思に反するうえ、苦情や迷惑メール報告の原因になります。
- リストとセグメントは何が違いますか
- 現在のHubSpotでは、以前「リスト」と呼ばれていた機能が「セグメント」という名前で表示されています。マーケティングEメールの送信先や除外に指定する対象は、このセグメントです。条件で自動更新されるものと、手動で管理するものがあり、配信には自動更新のものを使うのが基本です。
- A/Bテストの勝者はどの指標で決めるべきですか
- HubSpotでは開封率、クリック率、クリックスルー率から選べますが、BtoBではクリック率を基本にすることを勧めます。開封の記録は受信側の仕組みによって実際とずれることがあり、メール同士の比較に向かないためです。そもそも受信者が1,000件に満たない場合は、テストより同じ型の配信を続けて推移を見るほうが判断材料になります。