BtoBプレスリリースの効果と書き方|中小企業が取材より信用を積むために出す

マーケ担当が兼務でプレスリリースを1本出したものの、取材の連絡は来ず、問い合わせも増えない。2本目を出す理由を社内で説明できないまま半年が過ぎる。中小のBtoB企業でプレスリリースが止まるのは、たいていこの流れです。

止まる原因は書き方より、出す目的の置き方にあります。中小BtoB企業のプレスリリースは、取材されるために出すものではなく、あとから何度も使える「信用の在庫」を積むために出すものです。この前提に立つと、出すべきネタも、書き方も、出した後にやることも変わります。

広報を兼務するマーケ担当が次のリリースを出すか迷ったときは、そのネタが営業資料や提案書であとから使える実績になるかを考えると、答えが出やすくなります。使えるネタがない時期は、中身のない定期配信で埋めずに見送ってかまいません。

目次

プレスリリースで直接リードは取れない|何のために出すのか

プレスリリースを読んでその場で問い合わせてくる買い手は、ほとんどいないと考えてください。価値は配信した日の反応ではなく、その後に何度参照されるかで決まります。

配信したリリースを当日に読むのは、記者、業界関係者、ニュース面をたまたま眺めていた人です。そのなかに、自社の商材をいままさに検討している買い手が含まれている可能性は高くありません。BtoBの購買は検討期間が長く、決める人も一人ではないため、発表を見た日に問い合わせる理由がそもそも生まれにくいのです。リリースは「お知らせ」なので、読んだ人に行動を促す作りにもなっていません。

取材も同じ構造です。中小企業の発表が記事になるかどうかは媒体側の判断で、自社では動かせません。取材を目的に置くと、連絡が来なかった時点でその1本は失敗扱いになり、2本目を出す理由が消えます。兼務の担当者がプレスリリースを続けられない理由の多くは、ここにあります。

信用の在庫とは何か

ここで言う「信用の在庫」は、日付と事実を添えて公に発表した記録のことです。内容はあくまで自社の発表ですが、「この日にこういう発表をした」という事実は残り、あとから誰でも確かめられます。在庫と呼ぶのは、出した瞬間ではなく後から取り出して使う場面で価値が出るからで、1本のリリースは少なくとも次の4つの場面で繰り返し使えます。

1本のリリースを4つの場面で使う 取材されるかどうかに関係なく残る プレスリリース1本 日付と事実が残る公式な記録 1 社名で検索されたとき 検索結果に事業の動きが日付つきで並ぶ 2 営業資料と提案書 実績ページに出典つきで載せられる 3 採用と取引先の確認 応募者や新しい取引先が会社を調べる 4 他サイトでの転載・言及 自社で選べない場所に社名が残る 取材や記事化は、起きたら使う副産物
図1:1本のプレスリリースが繰り返し使われる4つの場面。価値は配信日ではなく、その後の参照回数で決まります。

在庫が使われる4つの場面

1つめは、社名で検索されたときです。BtoBの買い手は、商談の前や稟議の前に相手の会社を調べます。そのときに新サービスの開始、提携、導入事例といった発表が日付つきで並んでいる会社と、会社概要しか出てこない会社では、同じ提案内容でも受け取られ方が変わります。

2つめは、営業資料と提案書です。実績のページに「〇年〇月、△△社と提携」と書くとき、発表の記録があれば出典として示せます。口頭で「実績があります」と言うより、確かめられる形で出すほうが話が早く進みます。リリースを出したら、その週のうちに営業資料の実績ページに1行足し、発表のURLを出典として添えます。

3つめは、採用と取引先の確認です。応募者も、新しい取引先やパートナー候補も、会社を調べます。事業が動いている記録の有無はマーケティングの指標には出ませんが、確実に見られています。

4つめは、他サイトでの転載や言及です。配信した内容がニュースサイトや業界のまとめ記事に転載され、自社が選べない場所に社名が残ります。転載先で社名やサービス名の表記がばらついていたら、サイト外での言及の棚卸しで、どこに何が書かれているかを一覧にしてから直せるものを直します。

誤解されやすいのですが、プレスリリースは第三者の評価ではありません。書いているのは自社なので、読み手もそう受け取ります。第三者の声として読み手が信用するのは、顧客が書いた口コミや、顧客の名前を出した事例のほうです。この違いはレビューサイトが比較検討の段階でどう見られているかを読むとよく分かります。リリースの中に顧客や提携先の言葉を入れる理由は、この弱さを少しでも補うためです。

出す前に「このリリースを半年後にどこで使うか」を1行で書けるか確かめてください。書けないなら、そのネタは配信するより自社サイトのお知らせ欄に置くほうが合っています。

出す価値があるネタと、出しても意味がないネタ

判断基準は「社外の誰かに知らせる理由があるか」と「日付と数字で事実として書けるか」の2つです。どちらかが欠けるネタは、書き方を工夫しても在庫になりません。

プレスリリースのネタとしてよく挙がる項目を、在庫としての価値で並べると次のようになります。同じ「新サービス」でも、対象や開始日が書けない段階なら価値は下がるので、分類だけで決めず右の列で確かめてください。

ネタ在庫としての価値出す前に確かめること
新サービス・新プランの提供開始高い開始日と対象顧客を具体的に書けるか
他社との提携・連携高い相手先が社名の掲載とコメントを了承しているか
導入事例・顧客との取り組み高い顧客の許諾があり、変化を具体的に書けるか
自社で実施した調査の結果条件つき調査方法・対象・時期を明記できるか
主催・共催イベントの開催条件つき告知だけでなく開催後の報告まで出すか
資金調達・拠点開設・体制変更中程度取引先や応募者に知らせる理由があるか
機能の小さな改善低い複数をまとめて1本にできないか
サイトの更新・創立記念日低い顧客の行動が何も変わらないなら出さない
登壇・メディア掲載のお知らせ低い自社サイトのお知らせ欄で足りないか

出す前に確かめる3つの問い

表で迷うネタは、次の3つの問いに答えられるかで決めます。

  • 誰が知ると何が変わるか:顧客、取引先、応募者のうち、誰かの行動や判断が変わるか。変わる相手が思い浮かばないなら、それは社内の出来事です
  • 固有の事実で書けるか:日付、固有名詞、数字のうち、少なくとも2つを入れて書けるか。形容詞でしか説明できないなら、まだ発表の段階ではありません
  • 半年後に引用したいか:営業資料、提案書、採用ページに載せたいと思えるか。前章の「どこで使うか」の問いと同じです

3つとも答えられたら出します。1つでも詰まるなら、自社サイトのお知らせ欄に日付つきで記録するか、次のネタとまとめて1本にします。

ネタがないと感じるときに探す場所

「うちには発表するようなネタがない」という声はよく聞きますが、実際にはネタがないのではなく、マーケの席から見えていないだけのことがほとんどです。発表になりうる出来事は、たいてい他部署の予定表の中にあります。

  • 営業:受注した案件のうち、業種や規模が新しいもの、顧客側の変化が大きいもの。事例として出せるかを早めに打診します
  • カスタマーサクセス:顧客と一緒に進めている取り組み、利用の広がり方が特徴的な顧客
  • 開発:今後3か月の提供予定、連携先の追加、対応範囲の拡大
  • 経営:提携の交渉、拠点や体制の変更、採用の方針
  • 商談の記録:顧客から繰り返し聞く課題を集計したもの。調査結果として出せる場合があります

5つの出どころのうち、中小BtoB企業にとって最も在庫価値が高いのは、顧客との取り組みです。自社の発表でありながら、顧客の名前と言葉が入ることで、自己申告の弱さがかなり補われます。依頼の通し方や、社名を出せない場合の扱いは導入事例の依頼の通し方と匿名事例の設計がそのまま使えます。事例の取材の時点で「プレスリリースとしても出してよいか」を一緒に確認しておくと、依頼し直す手間が省けます。ネタが見つからない四半期は、出さなくて構いません。

書き方の要点|見出しで何が起きたかを言い切る

プレスリリースは読み物ではなく記録です。タイトルと最初の段落だけで、誰が、いつ、何をしたかが分かるように書きます。

開発の背景や会社の思いを冒頭に置く書き方は、読み手が記者でも買い手でも、途中で離れる原因になります。そして在庫として後から引用するときにも、冒頭で事実が言い切られていないリリースは使いにくい。営業が提案書に1行で引用しようとしても、どこを抜き出せばよいか分からないからです。構成は毎回同じで構いません。

要素書くことよくある失敗
タイトル社名、何をしたか、対象、日付か数字「〜を加速」「〜への挑戦」で中身が分からない
リード文誰が、いつ、誰に向けて、何を始めたかを1段落で会社紹介や市場の話から始まる
背景顧客のどんな課題に応えるのか業界の一般論が長く、自社の話が出てこない
内容の詳細提供内容、開始日、対象、条件機能を全部並べて要点が埋もれる
関係者の言葉顧客・提携先・責任者の具体的な発言誰が言っても同じ抱負で終わる
会社概要・問い合わせ先正式な社名表記、所在地、窓口表記が毎回違う、窓口が個人アドレスだけ

タイトルは「誰が何をしたか」を言い切る

タイトルで伝えるのは、社名、何をしたか、誰に向けてか、そして日付か数字です。架空の例で比べます。

弱い例は「〇〇社、製造業のDXを加速する新サービスを開始」です。「DXを加速」は何も言っていないのと同じで、読んだ人は何が始まったのか分かりません。強い例は「〇〇社、中小製造業向けに設備点検記録の電子化支援を10月1日から提供開始」です。対象、中身、日付が入っているので、このタイトルだけを営業資料に貼っても意味が通ります。短くしたいときは、事実ではなく形容詞から削ります。

数字は比較の基準とセットで書く

数字は強い材料ですが、比較の基準がない数字は引用しづらくなります。「作業時間を大幅に削減」ではなく、例えば「点検記録の作成時間が、1回あたり約30分から約10分になった(導入企業1社での測定)」のように、何と比べて、どこで測った数字なのかを添えます。この書き方なら、後から誰かに聞かれても説明できます。

顧客の成果を数字で書く場合は、顧客が了承した範囲だけにとどめます。1社で出た結果を「導入企業では」と一般化するのは、次の章で書く「盛る表現」の入口です。

関係者の言葉は「その人しか言えないこと」を載せる

コメント欄は、「今後もお客様に価値を届けてまいります」のような抱負で埋まりがちです。これは誰が言っても同じなので、読まれませんし、引用もされません。

読まれて引用されるのは、顧客や提携先が「何に困っていて、なぜこの会社を選んだのか」を自分の言葉で話したコメントです。プレスリリースの中で唯一、自社以外の視点が入る場所なので、ここに最も手間をかける価値があります。自社の代表のコメントを入れる場合も、抱負ではなく「なぜ今この判断をしたのか」を書きます。

関係者のコメントは、確認と承認に時間がかかります。本文を書き上げてから依頼するのではなく、ネタが決まった時点で先に依頼してください。

会社概要と問い合わせ先は毎回同じ表記にする

末尾の会社概要と問い合わせ先は、全リリースで同じ文面を使います。報道関係の窓口と、サービスについての問い合わせ窓口は分けて書きます。社名や所在地の表記がリリースごとに違うと、転載先にばらばらの表記が残り、あとから直せません。社名・所在地・サービス名の正式表記を1枚の表記ガイドにまとめ、全リリースでその文面を使ってください。

画像は、サービスの画面、提携先とのロゴの並び、取り組みの様子など、本文の事実を補うものを1〜2点つけます。他社のロゴを使う場合は、先に使用の了承を取ります。

配信サービスは何にお金を払っているかで判断する

配信サービスで買えるのは「届ける手間の削減」と「載る場所」であり、取材や記事化ではありません。何を買っているかを分けて考えると、使うかどうかの判断がつきます。

配信サービスの料金体系や配信先の範囲はサービスごとに違い、改定もされます。契約前に比べるべきなのは相場や優劣ではなく、支払っている中身です。

払っているもの得られること得られないこと
媒体や記者への送付自社で宛先リストを持たずに届けられる読まれること、記事になること
サービス上の掲載ページ日付つきの公開ページが外部に残る自社の買い手がそのページを見に来ること
提携サイトへの転載社名が複数のサイトに載る転載先を選ぶこと、読者の質
入稿と配信の仕組み形式を整えて決まった時刻に出せる原稿の中身の良し悪し

払っている中身を分けると、配信サービスが特に役立つのは、「知らせたい相手の宛先を自社で持っていない」と「日付つきの記録を自社サイトの外にも残したい」の2つが重なるときだと分かります。新サービスの開始や提携のように、社外の複数の相手に同じ日に知らせたい発表がこれに当たります。

「取材されたい」を理由に選ぶと判断を誤ります。記事にするかどうかは媒体の判断で、配信サービスにも約束できないからです。

配信サービスを使わなくていい場合

  • 知らせたい相手が既存顧客と取引先に限られる:自社サイトのお知らせ欄とメールで届きます。むしろ直接届けるほうが確実です
  • 業界が狭く、読んでほしい媒体が数件に絞れる:過去に接点のある記者や業界媒体の編集部に、個別に送るほうが丁寧に届きます
  • 小さな更新や告知:前章の表で「低い」に入るネタは、自社サイトに記録すれば足ります

使うか迷うなら、ネタの重さで分けるのが現実的です。年に数回の大きな発表だけ配信サービスを使い、それ以外は自社サイトに日付つきで置く。例えば期初に兼務のマーケ担当が配信サービスの見積もりを取る前に、今期の発表予定を並べ、新サービスの開始や提携のように社外の複数の相手へ同じ日に知らせたいものが何本あるかを数えます。その本数を見てから、契約の形を選んでください。

今期の発表予定を並べて、配信するもの、自社サイトに置くもの、出さないものに分けたい場合は、事業の予定表をもとにした振り分けの相談もお受けしています。

出した後にマーケがやること|4か所に置いて在庫にする

配信した時点では、在庫はまだ棚に並んでいません。自社サイト、営業、既存顧客、SNSの4か所に置いて、はじめて使える状態になります。

広報の専任者がいる会社なら、配信後の仕事は反応の確認や記者対応が中心になります。一方、マーケ担当が兼務で広報を持つ強みは、むしろ配信した後にあります。営業との連携、既存顧客へのメール、サイトの導線は、もともとマーケが持っている道具だからです。

出した後にやること 配信ボタンを押してからが兼務マーケの出番 配信当日 ・自社サイトのお知らせに全文を置く ・担当者や経営者の言葉でSNSに投稿 3営業日以内 ・営業に要約と使いどころを渡す ・既存顧客へのメールに載せる 1か月以内 ・営業資料の実績ページに追記する ・転載先と掲載URLを記録する 半年後 ・どこで使われたかを確認する ・次の四半期のネタを洗い出す 取材や転載の数ではなく、使われた場面を数える
図2:プレスリリースを出した後にマーケ担当がやること。配信当日から半年後までの4段階で、リリースを使える場所に置いていきます。

自社サイトに原文を置く

配信サービスのページだけに置かず、自社サイトのお知らせやニュースの欄に全文を載せます。配信サービス上のページは自社で管理できる場所ではないので、自社側に原本を持っておくのが基本です。

あわせて、関係するサービスページや事例ページから、そのリリースにリンクします。サービスページに「〇年〇月に提供を開始しました」と書くなら、その一文をリリースにつなげるだけで、ページを見に来た人が経緯を確かめられるようになります。

営業に「使いどころ」とセットで渡す

社内チャットにURLを流すだけでは、営業はまず使いません。自分の商談のどこで使えばいいのかが分からないからです。渡すときは、次の3行を添えます。

  • 何が起きたかを1文で
  • どんな顧客との、どの段階の商談で使えるか
  • 営業資料のどのページに追記したか

3行目は後回しにされやすい作業です。営業資料や提案書の実績ページへの追記は、マーケ側で済ませてから渡します。営業に「資料に足しておいてください」と頼むと、1か月後も古いままです。

既存顧客へのメールに載せる

新機能、提携、他社の導入事例は、既存顧客にとっては利用を広げるきっかけになります。専用のメールを作る必要はなく、定期的に送っているお知らせの中の1トピックで十分です。件名や見出しにはリリースのタイトルをそのまま使わず、「この提携で、〇〇の連携が設定画面からできるようになりました」のように、顧客側で何が変わるかで書きます。既存顧客へのお知らせをまだ定期的に送っていないなら、既存顧客向けのコミュニケーション設計で配信の頻度と担当を決めてから載せます。

SNSでは担当者や経営者の言葉で紹介する

企業アカウントでリリースのリンクを貼るだけの投稿は、ほとんど届きません。経営者や担当者が一人称で「なぜこれを始めたのか」「顧客のどんな声がきっかけだったのか」を書き、リリースは根拠として添える形にします。発信する人がまだ決まっていないなら、SNS運用をやるべきかの判断に照らして、経営者と担当者のどちらが続けられるかを先に決めます。

転載先と使った場面を記録する

転載されたサイトのURLは一覧に残します。自社サイト外の掲載をまとめた台帳をすでに持っているなら、そこに行を足すだけで構いません。加えて、プレスリリース固有の列として「どこで使ったか」を持っておきます。営業資料に載せた、提案書に引用した、採用ページに貼った、という記録です。この列が、後で書く効果の見方の材料になります。

頻度と続け方|本数ではなくネタの出方で決める

「月1本」のように本数を先に決めると、ネタのない月に中身のないリリースを出すことになります。決めるのは本数ではなく、ネタを拾う日と、1本を仕上げる手順です。

事業の動きが多い会社でも、前の章で書いた基準を満たすネタが毎月出ることはあまりありません。出る時期にも偏りがあり、期初や大きな提供開始の前後に集中します。だから、本数の目標を置くのではなく、出てきたネタを取りこぼさない仕組みのほうを作ります。

四半期に1回、ネタの棚卸しの日を置く

四半期の初めに、営業、カスタマーサクセス、開発、経営のそれぞれに「次の3か月で社外に言えることになりそうな予定」を聞きます。1部署15分程度で足ります。集まった予定を一覧にし、配信サービスで出すもの、自社サイトに置くもの、出さないものの3つに振り分けます。1部署15分という時間は実務上の目安で、予定の多い部署には延ばしてください。

四半期ごとの予定の一覧があれば、「来週発表なので書いてほしい」と直前に言われる事故が減り、発表日から逆算して準備を始められます。

1本を「出した後まで」で数える

プレスリリース1本の作業は、原稿を書くことだけではありません。兼務で時間を見積もるときは、次の工程をすべて含めて1本と数えます。

  • ネタの確認と、関係者へのコメント依頼
  • 原稿の作成
  • 社内の確認と、提携先や顧客など相手先の確認
  • 配信の設定
  • 出した後の4か所への展開

5つの工程のうち、兼務の担当者が実際に詰まるのは原稿ではなく、確認待ちです。とくに提携や事例は相手先の社内確認が入るため、自社の都合では進みません。発表日を決めたら、確認に使える日数を先に押さえ、コメント依頼はネタが決まった日に出します。

テンプレートと定型文を固定する

構成を毎回考えないように、前の章の表の順番をそのままテンプレートにします。会社概要、問い合わせ先、画像の点数も固定します。考えるのはタイトル、リード文、関係者の言葉の3か所だけにすると、1本にかかる時間はかなり読めるようになります。

マーケティングと他の業務を兼ねている場合、週のどこにこの作業を置くかも先に決めておくほうが続きます。営業と兼務しているなら、商談の入りにくい曜日の午前など、マーケ業務に充てる時間枠を固定し、配信準備はその枠に入れます。

効果の見方|掲載数と閲覧数を目標にしない

転載された数や閲覧数を目標にすると、数が伸びやすい発表に寄っていきます。見るのは、出したリリースがその後どこで使われたかです。

転載数は、配信サービスの仕組みや配信先の範囲で決まる部分が大きく、原稿の出来や読者の質を表しません。閲覧数も、記者、同業者、求職者、たまたま見た人が混ざった数字です。これを目標に置くと、話題になりやすいネタや派手な表現に寄っていき、BtoBの買い手に必要な事実の記録から離れていきます。

見るのは3つだけ

  • 使われた回数:営業資料、提案書、採用ページ、サービスページ、事例ページに引用された数。前の章の「どこで使ったか」の列を半年ごとに数えます
  • 商談や面接で触れられたか:営業や採用担当に「発表を見たと言われた」ことを記録してもらいます。商談の記録に1項目足すだけで済みます
  • 指名検索と認知経路の傾向:社名やサービス名での検索の推移と、問い合わせ時に書かれた認知のきっかけを並べます

3つめについては、プレスリリース単体の効果には切り分けられない前提で見てください。展示会、広告、SNSなど他の施策の影響も混ざるため、外部への露出全体が動いているかの傾向を読むための材料です。施策ごとの成果を分けて見たくなったら、効果測定の手順に沿って流入経路の記録から整えます。社名での検索が増えてきたときに広告で受け皿を作るかどうかは、指名検索広告を出すべきかの判断基準が別の判断として出てきます。

半年後に確認して、どこにも引用されていないリリースが続くなら、見直すのは書き方ではなくネタの選び方です。使われるリリースは、出す前の3つの問いに答えられています。

自社が過去に出したリリースが、営業や採用の場面で実際に使われているのかを確かめたい場合は、発表の履歴と営業資料を並べて見直す相談からでも始められます。

やらない判断|中身のない定期配信と成果を盛る表現

やらないのは、本数を保つための中身のない定期配信と、根拠を社外に示せない表現で成果を盛ることの2つです。プレスリリースは出したら消せない記録として残るため、出さない判断のほうが数年後の会社の見え方を左右します。

本数を保つための定期配信はしない

「毎月1本は出す」と決めた会社で起きるのは、ネタのない月の穴埋めです。サイトの小さな更新、同じセミナーの繰り返しの告知、記念日のお知らせ。1本ずつは害がないように見えますが、社名で検索したときにこうした告知が並ぶと、本当に見てほしい提携や事例の発表が埋もれます。在庫の棚が、見つけにくい棚になるということです。

成果を盛らない

「業界初」「No.1」「圧倒的」のように、根拠を社外に示せない表現は使いません。比べた範囲と調べた時点を書けないなら、書かないのが原則です。顧客の成果を、顧客が了承した範囲を超えて一般化するのも同じです。1社の結果を「導入企業では」と書き換えた時点で、確かめられない主張になります。

最上級の表現や「初」を名乗る表現には、表示に関するルールが関わる場合があります。どこまで書けるかの判断が必要なときは、自社だけで決めず、社内の法務担当や専門家に確認してください。

盛った数字や「初」の表現は、リリースそのものより、後から営業資料や提案書に転記されたときに問題になりやすくなります。社外に根拠を説明できない表現は、最初の原稿の段階で削ってください。

プレスリリースを後回しにしてよい会社

次のどれかに当てはまるなら、配信サービスを使ったプレスリリースは後回しで構いません。

  • 自社サイトに受け皿がない:サービスの説明、会社情報、問い合わせの導線が揃っていない状態で外に出しても、調べに来た人が戻れません
  • 取引先が特定の数社に限られる:知らせたい相手が数社なら、直接伝えるほうが確実です
  • 顧客名も数字も出せない業界:固有の事実を書けないリリースは、在庫として使えません
  • 提供内容がまだ頻繁に変わる:古い説明が外に残り、あとから直せなくなります

4つのどれかに当てはまる場合も、自社サイトのお知らせ欄に日付つきで記録するところまではやっておきます。コストはほとんどかからず、後で配信したくなったときの原稿の土台になります。

まとめ

中小BtoB企業のプレスリリースは、取材やリードのためではなく、あとから何度も使える信用の記録を積むために出すものです。

出すかどうかは、社外の誰かに知らせる理由があるか、日付と数字で事実として書けるか、半年後に営業資料や採用ページで使いたいか、で決めます。ネタがないと感じたら、マーケの席ではなく営業、カスタマーサクセス、開発、経営の予定表を見に行きます。なかでも顧客との取り組みは、自己申告の弱さを補える最も価値の高いネタです。

書き方は、タイトルと最初の段落で誰が何をしたかを言い切り、数字には比較の基準を添え、関係者の言葉にはその人しか言えないことを載せます。配信サービスは、届ける手間と載る場所にお金を払うものとして、大きな発表に絞って使います。

兼務のマーケ担当が一番力を発揮するのは配信した後です。自社サイト、営業、既存顧客、SNSの4か所に置き、効果は掲載数ではなく使われた回数で見ます。本数を保つための配信と、成果を盛る表現はやりません。

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よくある質問

中小企業のプレスリリースでも、メディアに取材されますか?
取材されることはありますが、媒体の判断なので目標には置かないことを勧めます。取材がなくても、日付つきの記録として営業資料や採用ページ、社名での検索結果で繰り返し使えるので、その価値で出す判断をしてください。取材が来たら、掲載記事も自社サイトと営業に同じように展開します。
プレスリリースにSEOの効果はありますか?
検索順位を上げる目的で出すものではない、と考えてください。転載先のサイトでリンクがどう扱われるかは媒体ごとに違い、自社では管理できません。効果として期待できるのは、社名やサービス名で検索されたときに事業の動きが確かめられる状態を作ることです。検索順位への影響を理由にプレスリリースを勧められた場合は、何をもってそう言えるのかを確認してください。
プレスリリースのネタがないときは、何を出せばいいですか?
無理に出す必要はありません。まず営業、カスタマーサクセス、開発、経営に、次の3か月で社外に言えそうな予定を聞いてください。事例にできる受注案件、連携先の追加、提供範囲の拡大などが見つかることが多いです。それでも見つからない四半期は出さないほうが、中身のない告知が並ぶより良い状態です。
配信サービスを使わず、自分でメディアに送ってもいいですか?
構いません。知らせたい相手が既存顧客や取引先に限られる場合や、読んでほしい媒体が数件に絞れる場合は、自社サイトへの掲載と個別の送付のほうが確実に届きます。配信サービスが役立つのは、宛先を持っていない相手に同じ日に知らせたいときと、自社サイトの外にも記録を残したいときです。大きな発表だけ配信サービスを使う使い分けが現実的です。
プレスリリースはどれくらいの頻度で出すべきですか?
本数の目標は置かないことを勧めます。「月1本」と決めると、ネタのない月に中身の薄いリリースを出すことになるからです。四半期に1回ネタの棚卸しをして、出す価値のあるネタが出たときに出します。年に数本になっても問題ありません。頻度より、出した後の展開までやり切れているかのほうが効果に直結します。

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