CRMの外注は、SaaSの導入支援会社に設定を頼むか、システム開発会社に開発を頼むかで、見積もりが数十万円から数千万円まで開きます。金額の差がどこから来ているのか分からないまま比べても、稟議で「なぜこの会社にこの金額を払うのか」と聞かれたときに答えられません。
CRMの外注費用と発注先は、SaaSの設定で済ませるか、カスタマイズ開発をするか、スクラッチで開発するかという方式を先に決めれば絞れます。方式が決まると、見積もりに入るべき作業の範囲も、声をかけるべき発注先の種類も決まります。
稟議で「なぜこの会社にこの金額なのか」と問われる立場にいるなら、答えの出発点はSaaSの設定で済ませるか、カスタマイズ開発か、スクラッチ開発かという方式の選択です。方式を発注側で決めてから見積もりを取れば、金額の開きは作業範囲の違いとして説明できるようになります。
目次
- 1 CRMの外注は3つの方式に分かれ、方式ごとに費用の桁が変わる
- 2 SaaSの設定で足りるか、システム開発が必要かを決める条件
- 3 方式別の費用相場と工期の目安
- 4 発注先は方式で決まる:導入支援会社・開発会社・フリーランスの向き不向き
- 5 見積もりは金額ではなく「何に払っているか」で比べる
- 6 発注から稼働までは6段階で進め、各段階の完了を発注側が判定する
- 7 契約で決めておくこと:権限・データ・納品物・変更の扱い
- 8 構築は外注し、運用は社内に残す:内製との分け方
- 9 社内稟議に出す費用の根拠の作り方
- 10 外注したCRM構築が途中で止まる原因は、発注前の準備にある
- 11 まとめ
- 12 よくある質問(FAQ)
CRMの外注は3つの方式に分かれ、方式ごとに費用の桁が変わる
CRMの外注とは、顧客・商談・問い合わせを管理する仕組みの設計、設定、開発、データ移行、保守のうち、社内でやらない作業を外部に発注することです。CRMの外注は「SaaSの設定」「パッケージのカスタマイズ開発」「スクラッチ開発」の3方式に分かれ、費用はおおむね方式ごとに1桁ずつ変わります。外注先を探す前に、どの方式で作るかを決めます。
「CRM 外注」で検索すると、SaaSの導入支援、システム開発会社への発注、運用代行の情報が混ざって出てきますが、発注する作業の中身で分けると次の3方式になります。
- SaaSの設定:HubSpotやSalesforceなど既存のクラウドCRMに、項目、商談のパイプライン、自動化、権限を設定し、既存データを移す
- カスタマイズ開発:SaaSやパッケージの標準機能にない処理を追加し、基幹システムや請求システムとAPIでつなぐ
- スクラッチ開発:既存の製品を使わず、画面、データベース、権限、インフラを一から設計して開発する
方式によって、見積もりに入る作業も相手になる会社も変わります。SaaSの設定なら作業の中心は設定とデータ移行で、相手はSaaSの導入支援会社や認定パートナーです。スクラッチ開発では要件定義から保守までをシステム開発会社と進めることになり、1,000万円を超える予算と半年以上の期間を見込みます。
運用保守、データのクレンジング、利用者向けの説明会を範囲に含めるかどうかでも総額は変わります。問い合わせの前に「どの方式で」「どの作業までを」外注するかを1枚の文書にまとめておくと、各社の見積もりが同じ範囲で返ってきます。
SaaSの設定で足りるか、システム開発が必要かを決める条件
管理したい情報がSaaSの標準機能で表せ、連携先が2〜3システムまでなら、SaaSの設定で足ります。カスタマイズ開発やスクラッチ開発に進むのは、標準機能で表せない業務が売上や受注に直接関わる場合です。
「crmシステム開発 外注」で調べている段階の会社でも、実際に発注してみるとSaaSの設定で足りたという例は珍しくありません。方式は次の5つの条件で判定します。
| 条件 | SaaSの設定で足りる | カスタマイズ開発が要る | スクラッチ開発を検討する |
|---|---|---|---|
| 管理する対象 | 会社・担当者・商談・問い合わせで表せる | 見積もりや契約など、標準にない情報を1〜2種類追加する | 製品構成や独自の料金計算など、業務の中心が標準の型に収まらない |
| 連携するシステム | フォーム、メール、カレンダーなど標準の連携で済む | 基幹システムや請求システムとデータを同期する | 複数の社内システムと双方向にリアルタイムでつなぐ |
| 業務の独自性 | 一般的な営業の流れに合わせられる | 一部の承認や計算だけが自社独自 | その独自の業務が競合との違いになっている |
| データ保管の制約 | クラウドに顧客情報を置ける | 項目ごとに閲覧権限を細かく分けたい | 社内規程で社外クラウドに置けないデータがある |
| 構築後に直す人 | 社内に設定を変えられる担当が1人いる | 開発部分の改修を外注先に継続して頼める | 保守を担う開発会社か社内エンジニアを確保できる |
たとえば営業20名の製造業で、営業部長が「見積もりの承認と製品構成の管理もCRMでやりたい」と言い出した場面を考えます。承認の流れは多くのSaaSで設定できますが、部品の組み合わせから価格を計算する製品構成の管理は、SaaSの標準機能では表しにくい処理です。この場合でも全体をスクラッチで作る必要はなく、顧客と商談はSaaSで管理し、価格計算だけを既存の基幹システムかカスタマイズ開発に任せてAPIでつなぐ構成が候補になります。
スクラッチ開発を選ばないほうがよいのは、「今のExcelの画面をそのまま再現したい」という理由しかない場合です。スクラッチ開発には毎年の保守費がかかり、開発した会社との関係が切れると改修できなくなります。Excelの画面に合わせた業務の手順のほうを見直し、SaaSの標準機能に寄せたほうが、構築費も保守費も下がります。
kintoneのようなノーコード・ローコードの基盤で作る方法は、SaaSの設定とカスタマイズ開発の中間にあたります。画面と項目を自由に作れるので、社内に作れる人がいれば外注する範囲を小さくできます。一方で作った人が異動すると中身が分からなくなるため、画面と項目の一覧を文書で残すことを外注の条件に入れてください。
方式を決める基準は、今の業務をそのまま画面にできるかではありません。SaaSの標準機能に業務を合わせたときに失うものが売上や受注に関わるかどうかで決めます。
CRMとMAのどちらで何を管理するかが決まっていない場合は、方式を決める前にCRMとMAの違いと使い分けを確認してください。
方式別の費用相場と工期の目安
SaaSの設定は50万〜200万円で1〜3か月、カスタマイズ開発は200万〜1,000万円で3〜6か月、スクラッチ開発は1,000万円以上で6か月〜1年超が実務上の目安です。いずれもSaaSのライセンス費用は含みません。
次の表の金額は、導入支援会社や開発会社が公開している相場の幅と、見積もりを比べてきた実務から置いた目安で、公的な統計ではありません。予算の桁を決めるための起点として使い、実際の金額は同じ範囲を書いた依頼書で取った見積もりで確かめてください。
| 方式 | 構築費の目安 | 工期の目安 | 主な作業 | 構築後にかかる費用 |
|---|---|---|---|---|
| SaaSの設定 | 50万〜200万円 | 1〜3か月 | 項目とパイプラインの設計・設定、自動化、データ移行、利用者向けの説明 | ライセンス費、設定変更の保守(月5万〜30万円程度) |
| カスタマイズ開発 | 200万〜1,000万円 | 3〜6か月 | 上記に加えて追加機能の開発、外部システムとのAPI連携、データ同期の処理、テスト | ライセンス費、開発部分の保守と改修 |
| スクラッチ開発 | 1,000万円〜数千万円 | 6か月〜1年超 | 要件定義、設計、画面とデータベースの開発、インフラ構築、セキュリティ対策、テスト | インフラ費、保守(年100万〜300万円程度) |
SaaSの設定で200万円を超えるのは、複数の部門で使う設計をする場合や、数万件規模の既存データを重複の整理をしながら移す場合です。HubSpotで構築する前提なら、HubSpot設定代行の費用相場で依頼先ごとの金額の幅を確かめてから予算を置きます。
同じ方式でも見積もりが数倍違う理由
経営企画の担当者がSaaSの設定を3社に見積もり依頼したところ、120万円、380万円、650万円と返ってきた、という開きは珍しくありません。金額の差は、次の5つの条件の置き方の違いから生まれます。
- 利用者の数とデータの量:利用者が10名と200名では、権限の設計、テストの件数、移行するデータの整理にかかる工数が変わる
- 連携するシステムの数:連携先が1つ増えるごとに設計とテストの工数が積み上がり、古い社内システムとの連携は工数が読みにくい
- 要件がどこまで決まっているか:要件があいまいな依頼には、外注先が手戻りの分を上乗せする
- 外注先の体制:大手は進行管理と品質の確認に人を割くぶん単価が高く、小規模な会社や個人は単価が低いぶん進行管理を発注側が担う
- 保守の範囲:構築後の設定変更や不具合の対応をどこまで含めるかで、初年度と2年目以降の総額が変わる
120万円の見積もりにはデータ移行と要件定義が入っておらず、650万円の見積もりには半年分の保守が入っていた、というように、安い見積もりと高い見積もりでは作業の範囲そのものが違うことがほとんどです。MAツールと合わせて予算を組む場合は、MAツール導入費用の内訳と見積もりの見方も確認してください。
発注先は方式で決まる:導入支援会社・開発会社・フリーランスの向き不向き
SaaSの設定は導入支援会社かSaaSの認定パートナーに、カスタマイズ開発とスクラッチ開発はシステム開発会社に頼みます。フリーランスは、範囲が小さく、社内に出来上がりを確かめられる人がいる場合に候補にします。
| 発注先 | 向く方式 | 契約前に確認すること | 向かない場面 |
|---|---|---|---|
| SaaSの導入支援会社・認定パートナー | SaaSの設定、軽いカスタマイズ | 同じSaaSでの構築実績、データ移行が範囲に入るか、構築後の設定変更の扱い | 独自画面の開発や基幹システムとの双方向連携が中心の案件 |
| システム開発会社(SIerを含む) | カスタマイズ開発、スクラッチ開発 | 要件定義を別契約にするか、テストの範囲、保守の体制と費用 | SaaSの設定で済む案件(開発を前提にした提案になりやすい) |
| ノーコード開発会社 | ノーコード・ローコード基盤での構築 | 基盤の利用料、作った画面を社内で修正できるか | 利用者が数百名規模の案件、厳しいセキュリティ要件がある案件 |
| フリーランス・クラウドソーシング | 部分的な設定、小さな改修 | 設計書を残すか、連絡が取れなくなったときの引き継ぎ方法 | 要件定義から任せたい案件、担当が1人に集中する長期の案件 |
発注先の種類を方式に合わせないと、提案の中身がずれます。SaaSの設定で足りる案件をシステム開発会社に相談すると、開発を前提にした提案と見積もりが返ってきやすく、逆にAPI連携の多い案件をSaaSの設定を主な仕事にしている会社に頼むと、連携部分だけを別の会社に出し直すことになります。
社長の知人のフリーランスに設定を頼むような場面では、金額より引き継ぎの取り決めを先に確認します。設定の一覧と操作手順を文書で受け取り、管理者権限を自社で持っておけば、担当が替わっても設定の中身を追えます。
相談相手がまだ決まっていないなら、CRM導入コンサルの選び方にある商談での質問を候補の各社に投げて比べます。HubSpotで構築すると決めているなら、HubSpotパートナーの選び方で認定の段階と同じ規模の構築実績を確かめます。
見積もりは金額ではなく「何に払っているか」で比べる
見積もりは合計額ではなく、工程ごとの工数と前提条件で比べます。同じ範囲を書いた依頼書を各社に渡さないと、金額を並べても比べたことになりません。
見積もりを受け取ったら、まず次の4つを確かめます。
- 工程が分かれているか:要件定義、設計、開発、テスト、データ移行、利用者向けの説明が別々に計上されているか
- 工数(人日)が書かれているか:単価と工数が分かれていれば、どの作業に何日かけるつもりかが読める
- 前提条件が書かれているか:「要件定義書は発注側が用意」「データのクレンジングは含まない」などの条件
- 追加費用の条件が書かれているか:仕様変更や工数が超えたときの扱い
「CRM構築一式:XXX万円」とだけ書かれた見積もりでは、前提が変わったときに追加費用を交渉する材料がありません。工程別の明細を求めるのは発注側として当然の依頼で、出せないと答える会社には範囲を詰めないまま契約するリスクがあります。
範囲がそろっていない見積もりは比べられない
よくある失敗は、いちばん安い見積もりを選んだあとで、要件定義とデータ移行が含まれていないことが分かり、追加費用がかさむ例です。比べられる状態にするために、依頼書(RFP)には次の5項目を書いてください。
- 対象の業務と、登録するデータの種類と件数
- 連携が必要な外部システムの一覧
- 利用者の数と、権限の種類
- 納品物の一覧(設計書、項目一覧、テストの記録、操作手順書、スクラッチ開発ならソースコード)
- 保守の範囲と期間
同じ依頼書で3社程度から見積もりを取ると、金額の差がどの工程の工数の差なのかが読めるようになります。見積もりの読み方で判断がつかない場合は、見積もりの範囲の比べ方をご相談いただけます。
発注から稼働までは6段階で進め、各段階の完了を発注側が判定する
CRMの外注は、業務の整理、依頼書と見積もり、契約と要件定義、構築、受入テストとデータ移行、稼働と定着の6段階で進みます。各段階を終えたかどうかは、外注先ではなく発注側が決めた基準で判定します。
| 段階 | 発注側がやること | 外注先がやること | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 1. 業務と見たいレポートの整理 | 今の業務の流れと、CRMで見たいレポートを3つ決める | なし(相談として関わる場合もある) | 見たいレポートの見本が1枚ずつある |
| 2. 依頼書と見積もり | 方式と範囲を書いた依頼書を作り、3社程度に渡す | 工程別の見積もりと進め方の提案 | 見積もりの工程と前提がそろっている |
| 3. 契約と要件定義 | 業務の担当者を要件定義の打ち合わせに出す | 要件定義書と画面・項目の一覧を作る | 要件定義書を発注側が承認した |
| 4. 設計・構築・開発 | 週1回の確認で、途中の画面を見て直しを伝える | 設定と開発、単体と結合のテスト | 要件定義書の項目がすべて作られている |
| 5. 受入テストとデータ移行 | 実際の業務の手順で操作し、不具合を記録する | 不具合の修正と、本番データの移行 | 決めておいた受入テストの項目がすべて通った |
| 6. 稼働と定着 | 入力のルールを現場に説明し、会議でCRMの画面を使う | 操作の質問への対応と、初期の設定の手直し | 進行中の商談の多くがCRMに登録され、更新されている |
段階5の受入テストは、外注先が用意したテスト項目を確認するだけで終わらせないでください。営業担当者を3人ほど選び、先週の実際の商談を1件ずつ入力してもらうと、項目の並びや必須項目の多さなど、仕様書の上では見えなかった使いにくさが稼働前に分かります。
全社で一度に稼働させる必要はありません。まず1つの部門かチームで1か月使い、入力ルールと項目を直してから広げると、全社で稼働したあとに作り直す範囲を小さくできます。段階1では、見たいレポートから逆算する設計で、稼働後に誰がどのレポートを見るかを先に決めます。
契約で決めておくこと:権限・データ・納品物・変更の扱い
契約書には、管理者権限とデータの持ち主、納品物、検収の基準、仕様変更の扱いを書きます。書かないまま進めると、外注先を替えるときや社内運用に切り替えるときに、設定を一から調べ直すことになります。
| 項目 | 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 管理者権限とSaaSの契約名義 | SaaSの契約は自社名義にし、管理者権限を自社で持つ | 外注先との契約を終えたときに設定を変えられなくなる |
| データとソースコード | データの持ち主、スクラッチ開発のソースコードの権利と改変の可否 | 別の会社に保守を移せず、改修を元の会社にしか頼めなくなる |
| 納品物 | 設計書、項目と自動化の一覧、連携の仕様、操作手順書 | 何がどう設定されているかが外注先の担当者しか分からない |
| 検収 | 受入テストの項目、合格の基準、検収にかける期間 | 使えない状態のまま支払いの時期を迎える |
| 仕様変更 | 変更の申し込み方、追加見積もりの出し方、費用の上限 | 小さな変更が積み重なり、終わったときに予算を大きく超えている |
契約の形も確認します。請負契約は完成した成果物に対して支払い、準委任契約は作業の遂行に対して支払う契約です。要件が固まっていない段階を請負で契約すると、外注先は手戻りの分を見積もりに上乗せするため、要件定義は準委任、構築は請負と分けて契約する方法がよく使われます。
スクラッチ開発のソースコードの著作権は、契約で譲渡や利用の条件を決めていなければ、開発した会社に残るのが原則です。保守を別の会社に移す可能性があるなら、権利の帰属と改変の可否を契約書に書いてください。
運用まで委託する場合は、マーケティング業務委託の契約の項目に沿って、委託する範囲、成果の扱い、解約の条件も契約書に書きます。
構築は外注し、運用は社内に残す:内製との分け方
中小のBtoB企業では、初期構築を外注し、設定の変更と日々の運用を社内に残す分け方が多くの場合合います。運用まで外注し続けるのは、社内に担当者を置けない期間に限ります。
導入から半年たち、営業部長が「商談に失注理由の項目を足したい」と言った場面を考えます。設定を変えられる担当が社内にいれば当日に直せますが、毎回外注先に見積もりを頼む体制だと、項目1つの追加に1〜2週間かかります。CRMは使い始めてから項目や自動化を直す回数が多いため、作業ごとに外注と社内のどちらが持つかを先に決めておきます。
| 作業 | 持つ側 | 理由 |
|---|---|---|
| 見たいレポートと商談ステージの定義 | 社内 | 自社の営業の進み方を知らないと決められない |
| 項目・自動化の初期設定 | 外注 | 手順が決まっている作業で、慣れた会社のほうが早く正確 |
| API連携と開発 | 外注 | 専門の技術が要り、社内で人を育てるより早い |
| 既存データの移行 | 外注(どのデータを移すかの判断は社内) | 重複の整理と変換に経験が要る |
| 入力ルールと現場への説明 | 社内 | 外部の説明だけでは入力が続かない |
| 稼働後の項目や自動化の変更 | 社内(担当がいない間は運用代行) | 頻度が高く、外注の見積もりを待つと遅れる |
内製は初期費用が低く見えますが、担当者の採用と育成、SaaSの管理者としての学習、進行管理にかかる時間が別にかかります。マーケティング担当者が兼任で構築まで担うと、その間の施策が止まります。社内に設定を任せられる人が1人もいない会社は、全部を内製にする選択をしないでください。
外注先に運用まで任せる業務委託にも課題があります。設定の理由が社内に残らず、担当者の交代や契約の終了で運用が止まりやすい点です。運用代行を使う場合も、月に1回は設定の変更内容を一覧で受け取り、社内で読める状態にしておきます。HubSpotで運用代行を検討するなら、HubSpot運用代行に頼める作業と運用代行の費用相場を並べて、社内に残す作業を決めます。
社内稟議に出す費用の根拠の作り方
稟議では、CRMがない今の状態で失っている時間、導入後に変わる数字、CRMがないことで起きうる損失の3つで費用の根拠を示します。他社事例の数字をそのまま使わず、自社の数字で試算します。
稟議でCFOや社長から聞かれるのは「なぜこの金額が妥当か」です。見積もりの工程別の明細に加えて、次の3つの試算を1枚にまとめます。
今の状態で失っている時間を金額にする
CRMがない状態で、営業担当者が顧客情報の転記や報告書づくりに使っている時間を数えます。20名が週2時間ずつ使っているなら、20名×週2時間×52週×1時間あたりの人件費で、年間の金額が出ます。この金額が構築費と年間の保守費の合計を上回るなら、投資の根拠として示せます。
導入後に変わる数字を自社の前提で置く
報告にかかる時間の削減、商談の見込み額を集計する手間の削減など、導入後に変わる数字を自社の業務に当てはめて置きます。他社事例の数字をそのまま使うと、稟議の場で「それはうちの数字か」と聞かれたときに答えられません。
CRMがないことで起きうる損失を示す
担当者の退職で顧客とのやり取りの記録が消える、問い合わせへの対応が漏れる、といった損失を過去の実例から拾います。直近1年で担当者の退職が2件あり、そのたびに引き継ぎに数週間かかったといった自社の事実があれば、試算が難しい場合でも費用を出す理由として示せます。
外注したCRM構築が途中で止まる原因は、発注前の準備にある
外注したCRM構築が予算を超えたり止まったりする原因は、要件定義を任せきりにすること、データの構造を後で変えられると考えること、部門ごとの要望を積み上げることの3つです。いずれも発注前に社内で防げます。
要件定義を外注先に任せきりにする
「要件定義から全部お願いしたい」という発注は、外注先から見ると範囲が決まらないため、手戻りの分を上乗せした見積もりになるか、あとから追加費用が発生します。外注先が自社の経験から要件をまとめると、業務の実態と合わない設計になることもあります。業務の流れ、登録するデータの一覧、利用者の役割、今の課題の一覧は、発注側が用意してから渡してください。
データの構造を「あとで変えられる」と考えて決める
CRMの設計のうち、オブジェクト、項目、オブジェクト同士の関係といったデータの構造は、稼働後に変えるほど費用がかかります。データが溜まってから構造を変えると、既存データの移し替えと、つながっているレポートや自動化の作り直しが発生するためです。「まず動かして後で直す」進め方は、画面や自動化には使えても、データの構造には使えません。
部門ごとの要望をそのまま積み上げる
CRMはマーケティング、営業、カスタマーサクセスにまたがって使われます。各部門が必要な機能を出し合って積み上げると、要件が膨らみ、予算超過と工期の遅れが起きます。発注前に「このCRMで誰が何を決めるのか」を部門長の間で合意し、その判断に使わない要望は次の段階に回します。
どこまでを外注し、どこを社内に残すかで迷っている場合は、今の体制と目的を前提にご相談いただけます。
まとめ
CRMの外注は、方式を決めてから発注先と見積もりを比べる順番で進めます。管理したい情報がSaaSの標準機能で表せるならSaaSの設定を導入支援会社に頼み、標準機能で表せない業務が売上に関わる場合に限ってカスタマイズ開発やスクラッチ開発をシステム開発会社に頼みます。どの方式でも、見たいレポートの定義と稼働後の設定変更は社内に残します。
今週やることは3つです。CRMで見たいレポートを3つ決めて見本を作ること、方式を判定する表の5つの条件に自社を当てはめること、依頼書に書く5項目の下書きを作ることです。この3つがそろえば、3社程度に同じ条件で見積もりを依頼できます。
無料相談
CRMの外注範囲と見積もりを、発注前に一緒に整理します
SaaSの設定で足りるか開発が必要か、手元の見積もりの範囲がそろっているか、どこまでを社内に残すか。HubSpotを中心にCRMの設計と構築を支援してきた立場から、発注前の判断を一緒に整理します。
よくある質問(FAQ)
- CRMの外注費用の相場はいくらですか?
- 実務上の目安は、SaaSの設定で50万〜200万円、カスタマイズ開発で200万〜1,000万円、スクラッチ開発で1,000万円以上です。利用者の数、連携するシステムの数、データ移行の量、保守の範囲で金額が変わるため、同じ範囲を書いた依頼書で複数社から見積もりを取って確かめてください。SaaSのライセンス費用は別にかかります。
- CRMのシステム開発はどこに外注すればよいですか?
- カスタマイズ開発やスクラッチ開発はシステム開発会社に、SaaSの設定で足りる場合は導入支援会社かSaaSの認定パートナーに頼みます。開発が必要かどうかを決める前にシステム開発会社だけに相談すると、開発を前提にした提案になりやすいため、先に方式を判定してから発注先を選んでください。
- CRMの要件定義は発注側と外注先のどちらが担いますか?
- 業務の流れ、登録するデータの一覧、利用者の役割、見たいレポートは発注側が用意し、それをもとに要件定義書にまとめる作業を外注先が担います。要件定義を任せきりにすると、手戻りの分が見積もりに上乗せされ、業務と合わない設計になりやすくなります。
- 外注したCRMの保守費用はどのくらいかかりますか?
- SaaSの設定変更を中心にした保守は月5万〜30万円程度、スクラッチ開発の保守は年100万〜300万円程度が実務上の目安です。対応する時間帯、月あたりの変更件数、不具合への対応期限で金額が変わるため、契約前に保守の範囲を書面で確認してください。
- 社員数の少ない会社でもCRM構築を外注したほうがよいですか?
- 営業担当が数名で、管理したいのが顧客の一覧と商談の状況程度なら、外注せずにSaaSの無料プランや低価格のプランを社内で設定するほうが費用を抑えられます。複数の部門でデータを共有したい、既存システムからデータを移したい、他のシステムと連携したいといった条件が出てきた時点で、外注を検討してください。